遺言書とは|弁護士が教える基礎知識

相続トラブルを防止するには遺言書の活用が有効です。しかし、「遺言書」として法的な効果をもたせるには正式な形での記載や、法的な手続きが必要なので簡単にはいきません。活用のポイントを知らないままだとせっかく作った遺言書が効力を持たず、有効な手段として使えなくなるかもしれません。
遺言書は故人の最後の意思を伝える大切なものです。その意思を相続に正しく反映させるためにも遺言書のポイントを確認していきましょう。
目次
遺言書とは
遺言書とは、遺言者(相続の段階では被相続人と言います。)が死亡後にその意思を実現させるためのものです。例えば、自身の財産について、誰に何を引き継がせるかといった相続の分配方法などが主流です。
遺言は、法律の定めにのっとった書面にすることで、法的効果を発揮します。特に、法定相続人以外に財産を引き継がせたい場合や、法定相続割合とは違った比率で分配したい場合などに非常に有効です。遺言書の作成は、満15歳以上であれば誰でも残すことができます。
遺書、エンディングノートとの違い
遺言書と混同されやすいものとして、「遺書」や「エンディングノート」があります。どちらも、被相続人の意思が書かれたものになります。
遺書は、亡くなる方の思いや無念さなど、法的要件を気にせず、手紙として残されたものがイメージされるのが一般的でないでしょうか。また、エンディングノートは自身の終末期に対する希望や、所有財産の内容、葬式やお墓、家族への感謝など、その内容は遺言書よりも幅広いことが多いようです。そしてこれらは遺言書と違い、形式に定めがなく、非常に自由度が高いものになっています。
しかしながら、たとえ遺書やエンディングノートに相続に関する希望を書いていても、遺言書としての法的効力を持つ形式になっていることはまれです。どれも死後に意思を伝えるものですが、その意思を法的に実現させることを目的とするのが遺言書、意思を伝える自体を目的とするのが遺書やエンディングノートとなります。
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遺言書の種類
法的効力をもつ遺言書には以下3種類があります。どの形式を選ぶかは遺言者の自由です。
① 自筆証書遺言 | 遺言者本人が本文・氏名・日付を自筆します。財産目録についてはパソコンによる作成が可能です。法務局の保管制度を活用することができます。 |
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② 公正証書遺言 | 遺言者が話した内容を公証人が遺言書として作成し、公証役場で遺言書原本を保管します。 |
③ 秘密証書遺言 | 遺言者が作成した遺言書を、公証役場で封印し、保管します。内容を公証人が確認しない為、遺言書の形式に不備の可能性があります。 |
どの遺言書であっても法的効果は同じです。相続人は遺言書の種類によって保管場所が異なる点を知っておくと、遺言書を探しやすいでしょう。
遺言書の保管場所
前述の通り、遺言書の種類によって保管される場所は異なります。自筆証書遺言については保管場所が限定されていないので、探すのが最も難しい可能性があります。
公正証書遺言もしくは秘密証書遺言の場合、平成元年以降の作成分については公証役場で保管されているので、まずは公証役場で遺言書の検索を行いましょう。その後、自筆証書遺言を法務局に保管した可能性を考え、法務局で保管されているか確認手続きをします。それでも見つからなければ自宅や銀行の金庫を探すのが効率的でしょう。
遺言書はその場で開封しないようにしましょう
遺言を見つけたら内容が気になってすぐにも開封したいと思うのは当然です。しかし、実際には自筆証書遺言を勝手に開封してしまうと法律違反となり、5万円以下の罰金刑が科せられる可能性があります。
さらに、開封し遺言書の内容を変えたり、遺言書を隠匿・廃棄してしまった場合には相続人としての資格を失う恐れもあります。そうでなくても他の相続人から偽造などを疑われる可能性もあるでしょう。
自筆証書遺言を発見したら、すぐに法律の定めにしたがって検認手続きをしましょう。
開封には検認の申立てが必要
遺言書を開封するには、家庭裁判所へ検認の申立てが必要です。この手続きは、必要書類を家庭裁判所へ提出すると、検認を行う日が確定します。その検認期日に申立人や相続人が立ち会い、裁判官が遺言書を開封して状態を確認します。
しかし、検認の申立てはすべての遺言書に必要な手続きではありません。この手続きは遺言書の有効性を判断する手続きではなく、遺言書の状態などを明らかにし、後日の遺言書偽造を防ぐためのものです。そのため、原本が公証役場で保管されている公正証書遺言と法務局で保管されている自筆証書遺言については検認不要です。
「勝手に開封すると効果がなくなる」は本当か?
検認の前に遺言書を開封してしまった場合、その遺言書の法的効力は無くなってしまうのでしょうか?
検認前の開封によって、5万円以下の罰金となる可能性はありますが、遺言書の法的効力自体がただちに無効になるということではありません。しかし、正式な場で開封していないという事で、遺言書の内容に納得できない相続人からは遺言書の偽造や隠匿が疑われる可能性があります。そうなると無用なトラブルに繋がりかねないので、遺言書を勝手に開封することは絶対に避けましょう。
知らずに開けてしまった場合の対処法
検認の手続きは広く周知されているとは言い難く、その手続き自体、相続人が知らないことも多いでしょう。さらに、遺言書とは思わずに開けてしまったというケースもあります。仮に開けてしまったとしても、そのことを家庭裁判所へ報告したうえで検認の手続きを進めることが必要です。開けてしまったからといってその遺言書を隠したり、廃棄しては絶対にいけません。相続人としての資格を失うリスクがあります。
遺言書の内容は何よりも優先されるのか
遺言書で遺産分割をどう指定するかは遺言者の自由です。そのため、財産の分配が民法で定めた法定相続分を下回ることも当然あります。しかし、相続においては法定の内容よりも遺言書の内容が優先となっています。
遺言書の内容に相続人全員が反対している場合
例えば、遺産をすべて寄付したい、愛人に財産を渡したいといった遺言書内容だと、多くの相続人は拒否反応を示すことでしょう。しかし、このような内容でも、原則として遺言書は有効であり法的な効果が発生します。
しかし、遺言により財産を取得する者(受遺者と言います。)も含め、全員が遺言内容に反対し、かつ遺産分割協議の内容に全員が納得するのであれば、遺言書と異なる内容で遺産分割を行うことは可能です。ただし、遺言書に、遺言内容と異なる遺産分割の禁止が記載されていた場合は不可能となります。
遺言書に遺産分割協議を禁止すると書かれていたら
遺言書により5年を超えない範囲の期間で財産の全部、または一部の分割協議を禁止することができます。これは相続人のなかに未成年者がいるなど、相続開始時点ではトラブルが生じそうだと判断した場合に有効な手段です。この分割協議の禁止が遺言書に書かれていると、たとえ相続人全員が反対したとしても原則として、指定された期間内は遺産分割協議を行えないことになります。分割協議の禁止事項があれば、その遺言書の有効性について弁護士へ確認した方が良いでしょう。
遺言書の内容に納得できない場合
遺言書の内容に納得できない場合、まずはその遺言書の有効性を確認しましょう。
遺言書の有効性とは①遺言書作成時に被相続人がしっかりとした判断が可能な意思能力があったか、そして、②遺言書の形式に不備は無いか、という2点です。
遺言書の有効性に問題が無ければ、兄弟姉妹以外の法定相続人については遺留分という最低限の相続財産を受け取る権利がありますので、この権利を主張することで、いくらかフォローすることになるでしょう。遺留分については自動的に貰えるわけではなく、希望する相続人が請求の意思表示を行うことが必要です。
遺言書の通りに分割したいけれど、反対する相続人がいる場合
反対する一部の相続人がいることで手続きが難航するようであれば、家庭裁判所へ「遺言執行者」の選任を申し立てるのがよいでしょう。遺言執行者には、遺言の内容を実行するために必要な行為をする権利と義務があります。そして、相続人がその行為を妨害することは許されません。遺言執行にあたっては権利関係が複雑であることも多いので、弁護士などの専門家であれば安心して任せられるでしょう。
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遺言書で指定された財産を受け取りたくない場合
財産の内容によっては、遺言書で指定されていても拒否したいケースがあります。基本的には、遺言書に記載された特定の財産について「遺贈する(相続させる)」とされていた場合、その特定の財産を受け取りたくない者は、拒否することができます。たとえば、利用価値の低い土地が、ある相続人が受け取る旨指定されている場合、その不動産取得を拒否することができます。
しかし、遺言書に相続人の取得割合が記載されており、その中に不必要な財産が含まれている場合には、特定の財産を受け取ることのみを拒否することはできません。これは、包括遺贈というのですが、この場合には、不必要な財産を含めて包括遺贈を受けるか、全ての包括遺贈を放棄するかを決める必要があり、包括遺贈を放棄する場合には、相続放棄の手続きを検討しなければなりません。
ただし、包括遺贈の場合でも、相続人や受贈者等の全員が協議して遺言書と異なる遺産分割をすることは可能です。
遺言書が2通出てきた場合
遺言書が2つ以上あるケースは実は珍しくありません。なぜなら遺言書は何度でも作成しなおすことができるからです。基本的には作成日が最も新しいものが有効な遺言書となります。
しかし、それぞれの遺言書の内容が、同一の財産について書かれているとは限りません。例えば古い遺言書に「Aの土地は相続人Bに」、と記載され、新しい遺言書に「Cの土地は相続人Dに」と記載されていた場合、この2つの遺言は違う財産についての指定であり、内容が重複しないので、どちらも有効な遺言内容となります。
遺言書にない財産が後から出てきた場合
遺言書に記載されていない財産は、その財産の分割方法が指定されていないので、相続人全員による遺産分割協議によって決めることになります。ただし、遺言書の内容が個別の財産ごとに分割方法を指定する形式(例えば、「不動産Eは相続人Fへ」などの内容)ではなく、包括的な割合の指定(例えば、「遺産の2分の1を相続人Gへ」などの内容)であれば、遺言書に記載されていない財産であっても、この遺言書に指定された割合によって相続することになります。
また、遺言書に含まれない遺産が生じないように、遺言書には「その他、本遺言書に記載のない遺産は、全て相続人Aに相続させる」等と、記載しておくのが良いでしょう。
遺産分割協議の後に遺言書が出てきた場合、どうしたらいい?
遺言書の形式が有効なものであれば、遺産分割協議が終わっていたとしても遺言書の内容が優先されます。「せっかくみんなで協議したので見なかったことに・・・」と思うかもしれませんが、遺言書が無いことを前提とした遺産分割協議は、原則無効となります。もちろん遺言書が見つかった後も、相続人全員の協議により、以前の合意と同じ内容で分割することに合意ができれば有効となります。
ただし、遺言書には法定相続人以外の者(受遺者)に遺贈させることが書かれていることもあります。この場合には、受遺者を含めて改めて協議をすることが必要になります。
遺言書が無効になるケース
遺言書は被相続人の最後の意思になりますので、尊重されてしかるべきですが、遺言書が無効になるケースもあります。無効の原因の一つは、遺言書としての形式を満たしていない場合です。自筆証書遺言や秘密証書遺言については遺言者が自分で作成する為、日付や署名・押印の漏れといった不備によって無効になるケースがみられます。公正証書遺言については専門家である公証人が作成するので不備による無効は非常に稀です。
さらに、遺言者の遺言書作成時の意思能力に問題があるケースもあります。作成時に認知症などを発症し、正確に判断する能力が失われていたと認められると、その遺言書は無効となります。意思能力の有無を確認するには医療記録や当時の動画などが必要ですが、これらを集めるのは簡単ではありません。経験のある専門家の協力を仰いだ方が良いでしょう。
遺言書に関するトラブルは弁護士にご相談ください
遺言書は被相続人の意思を相続人に伝え、その意思を反映させた相続を実現するのにとても有用な制度です。しかし、その作成に不備があったり、保管場所が分かりにくく見つけられないなど、運用のつまずきによって無用のトラブルを発生させてしまうこともあり得ます。
遺言書について不安があれば専門家である弁護士が適任です。弁護士は遺言書を作成するだけでなく、遺言執行者となることもできます。そして、遺言書を発見したあとも、弁護士であれば必要な手続きや、分割についてなど広くアドバイスすることができます。被相続人の意思を尊重し正しく受け継ぐためにも、まずは弁護士へご相談ください。
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保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)