交通事故の損害賠償金の相場はいくら?何が含まれている?
交通事故の被害に遭い、ケガをしたり、車が損傷したりした場合、相手方に対して損害賠償を請求することが可能です。この場合、治療費や車の修理費はもちろんのこと、慰謝料なども請求できることをご存知でしょうか?
被害者の方にとっては、自分のケースでは、どのぐらいの損害賠償金を請求できるのか気になるところでしょう。
そこで、このページでは、交通事故の被害者が請求できる損害賠償の内訳を紹介したうえで、それぞれの損害賠償の金額の決め方や相場について解説していきます。示談交渉に臨む際の基礎知識として、ぜひ参考になさってください。
目次
交通事故の請求できる損害賠償の種類
交通事故の被害者は、損害賠償として、以下の項目を加害者に請求することが可能です。
- 慰謝料:交通事故によるケガ、後遺障害、死亡によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料
- 積極損害:交通事故が原因で実際に支払ったお金。治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費など
- 消極損害:交通事故がなければ得られたはずのお金。休業損害、逸失利益など
- 物的損害:交通事故によって壊れた車や物の修理費(全損の場合は買い替え費用)、休車補償、代車使用料など
なお受け取れる賠償金のおおよその金額を知りたい方は、以下のリンク先の自動計算機をご活用ください。
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損害賠償の相場を決める3つの基準
交通事故の損害賠償の金額は、以下の3つの算定基準のいずれかを使って計算します。
- ①自賠責基準
- ②任意保険基準
- ③弁護士基準
算定基準とは、賠償金を計算するための「ものさし」のようなものとイメージして下さい。
3つの基準の内容は、以下のとおりです。
自賠責基準 | 自賠責保険で利用されている最低補償基準。被害者に過失がない事故の場合は最も低額となる。支払い限度額あり(傷害事故は120万円までなど)。物損は適用外。 |
---|---|
任意保険基準 | 各任意保険会社が独自に定めている基準。自賠責保険ではカバーできない損害を補てんする上乗せ保険。自賠責基準とほぼ同額が多少高い程度。 |
弁護士基準 | 過去の裁判例を参考に作られた、裁判所や弁護士が利用する基準。被害者に過失がない事故の場合は、最も高額となる。(「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(赤本)に掲載) |
使う基準により、損害賠償金の相場が変わります。
自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準
の順で金額が上がり、基本的に、弁護士基準が最も高くなります。
それならば、弁護士基準で統一して賠償金を計算すればいいのでは?と思われるかもしれませんが、それが難しいのが交通事故なのです。
保険会社は営利企業であるため、支払いをおさえるため、任意保険基準を使い、低額な賠償金を提示する傾向にあります。そのため、賠償金を増額させるには、弁護士が示談交渉に入り、弁護士基準による賠償金の増額を保険会社に認めさせるしかないのです。
交通事故の3つの慰謝料
交通事故の慰謝料は、以下のとおり3種類あります
- ①入通院慰謝料
- ②後遺障害慰謝料
- ③死亡慰謝料
各慰謝料の内容を下表にまとめましたので、ご覧ください。
交通事故で請求できる損害賠償の中でも、特に慰謝料は高額になるケースが多いため、損害賠償金額には慰謝料の金額が大きく関わっているといえます。
入通院慰謝料 | 交通事故によりケガを負い、入院・通院を強いられた精神的苦痛に対する慰謝料 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 交通事故により後遺障害が残ってしまった場合の精神的苦痛に対する慰謝料(基本的には自賠責保険の定める後遺障害等級認定を受けた場合に請求可能) |
死亡慰謝料 | 交通事故により被害者が死亡した場合の、本人及び遺族の精神的苦痛に対する慰謝料 |
入通院慰謝料の計算方法
それでは、自賠責基準・弁護士基準による入通院慰謝料の計算方法と相場をみてみましょう。なお、任意保険基準は保険会社ごとに基準が違うため、ここでは説明を省略します。
【自賠責基準】
自賠責基準では、日額4300円に、治療にかかった日数をかけて、入通院慰謝料を計算します。
日額4300円×治療日数=入通院慰謝料
治療日数=①入通院期間(治療期間)と②実際に入通院した日数×2を比べて、少ない方の日数
(2020年3月31日以前の事故は4200円で計算)
【弁護士基準】
弁護士基準では、以下の「慰謝料算定表」を使って、入通院慰謝料を算定します。骨折や脱臼など重傷の場合は「別表Ⅰ」、他覚所見のないむちうちや軽い打撲など軽傷の場合は「別表Ⅱ」を使います。入院期間と通院期間が交差する数字が求める慰謝料の相場となります。
ただし、表の金額は目安であり、通院頻度、ケガの症状、治療内容などにより、慰謝料が増減する場合があります。
なお、交通事故でケガをした場合は、たとえ1日だけの通院でも、入通院慰謝料を請求することができます。自賠責基準では、1日分の入通院慰謝料は4300円となります。
一方、弁護士基準では、1ヶ月目の入通院慰謝料の相場は軽傷で19万円、重傷で28万円となるため、1日分の入通院慰謝料は、軽傷の場合は約6333円、重傷の場合は約9333円となります。
交通事故の慰謝料について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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【重症の場合】(別表Ⅰ)
【軽症の場合】(別表Ⅱ)
重傷の場合の相場
それでは、具体例を使って、重傷の場合の入通院慰謝料を計算してみましょう。
重傷とは骨折や脱臼などのケガを指します。
(例)「骨折で通院6ヶ月、実通院日数85日、入院なし」
【自賠責基準による入通院慰謝料】
通院期間6ヶ月(180日)よりも、実際に通院した日数85日×2(170日)の方が少ないため、治療日数は170日となります。よって、自賠責基準による入通院慰謝料は
4300円×170日=73万1000円 となります。
【弁護士基準による入通院慰謝料】
重傷用の「算定表・別表Ⅰ」を確認すると、通院期間6ヶ月で116万円となります。
重傷の場合、自賠責基準よりも、弁護士基準による慰謝料の方が高額になることが確認できます。
【骨折で通院6ヶ月、実通院日数85日、入院なし】
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
73万1000円 | 116万円 |
軽傷の場合の相場
次に、軽傷の場合の入通院慰謝料を計算してみましょう。
軽傷とは、他覚所見のないむちうち※、捻挫、打撲、すり傷などのケガを指します。
※痛みやしびれなどの自覚症状があるものの、レントゲンやMRIなどの画像に映らないむちうち
(例)「他覚所見のないむちうちで通院3ヶ月、実通院日数30日、入院なし、後遺障害なし」
【自賠責基準による入通院慰謝料】
通院期間3ヶ月(90日)よりも、実際に通院した日数30日×2(60日)の方が少ないため、治療日数は60日となります。よって、自賠責基準による入通院慰謝料は
4300円×60日=25万8000円 となります。
【弁護士基準による入通院慰謝料】
軽傷用の「算定表・別表Ⅱ」を確認すると、通院期間3ヶ月で53万円となります。
軽傷の場合でも、自賠責基準より、弁護士基準による慰謝料の方が高額になることが確認できます。
【他覚所見のないむちうちで通院3ヶ月、実通院日数30日、入院なし、後遺障害なし】
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
25万8000円 | 53万円 |
後遺障害慰謝料の計算方法
後遺障害慰謝料とは以下のような特徴があります。
- 交通事故によって残った後遺症が、自賠責保険の後遺障害等級に該当するとの認定を受けると、後遺障害慰謝料を請求できるようになる
- 後遺障害等級は障害の重さに応じて1級~14級に区分され、最も重いものが1級、最も軽いものが14級です
- 等級ごとに後遺障害慰謝料の相場が決められています
以下表のとおり、自賠責基準による後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて32万円から1650万円、弁護士基準による後遺障害慰謝料の相場は、110万円から2800万円となります。
交通事故の後遺障害について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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【介護を要する後遺障害の後遺障害慰謝料の相場】
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1650万円(1600万円) | 2800万円 |
2級 | 1203万円(1163万円) | 2370万円 |
【介護を要さない後遺障害の後遺障害慰謝料の相場】
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1150万円(1100万円) | 2800万円 |
2級 | 998万円(958万円) | 2370万円 |
3級 | 861万円(829万円) | 1990万円 |
4級 | 737万円(712万円) | 1670万円 |
5級 | 618万円(599万円) | 1400万円 |
6級 | 512万円(498万円) | 1180万円 |
7級 | 419万円(409万円) | 1000万円 |
8級 | 331万円(324万円) | 830万円 |
9級 | 249万円(245万円) | 690万円 |
10級 | 190万円(187万円) | 550万円 |
11級 | 136万円(135万円) | 420万円 |
12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
むちうちの場合の相場
【通院6ヶ月、実通院日数45日、入院なし、後遺障害等級14級9号】
それでは、むちうちの場合の後遺障害慰謝料の相場をみてみましょう。
むちうちで認定され得る後遺障害等級は12級13号(他覚所見のあるむちうち)と14級9号(他覚所見のないむちうち)ですが、実際に認定されるのは14級9号であることがほとんどです。
(例)「むちうちで通院6ヶ月、実通院日数45日、入院なし、後遺障害等級14級9号」
14級9号のむちうちの後遺障害慰謝料の相場は、上記表を参照すると、自賠責基準では32万円、弁護士基準では110万円になります。
自賠責基準より、弁護士基準による後遺障害慰謝料の方が約3倍以上高額になることが確認できます。
【通院6ヶ月、実通院日数45日、入院なし、後遺障害等級14級9号】
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
32万円 | 110万円 |
死亡慰謝料の計算方法
【自賠責基準】
自賠責基準による死亡慰謝料は、死亡した被害者本人の遺族に対して支払われます。慰謝料を請求できる遺族は、被害者の父母(養父母)、配偶者、子(養子、認知した子、胎児も含む)です。
本人分の慰謝料は400万円(2020年3月31日以前の事故は350万円)、遺族分の慰謝料は、遺族の人数が1人で550万円、2人で650万円、3人以上では750万円となります。被害者に被扶養者がいるときは、さらに200万円がプラスされます。
【弁護士基準】
弁護士基準による死亡慰謝料は、被害者の家庭内の立場に応じて目安の金額が定められており、本人が一家の支柱(稼ぎ頭)であれば2800万円、母親や配偶者であれば2500万円、独身の男女や子供等であれば2000~2500万円が相場となります。なお、これらは死亡した被害者本人分の慰謝料と遺族分の慰謝料の合計額となります。
ただし、これらの金額はあくまで目安であり、実際に慰謝料を算定する際には、被害者の年齢や収入、家庭環境、事故態様なども考慮して、算定することになります。
死亡事故の慰謝料について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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一家の支柱が亡くなった場合の相場
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
死亡慰謝料 | 被害者本人分 400万円 遺族が1名の場合+550万円 遺族が2名の場合+650万円 遺族が3名の場合+750万円 被扶養者がいる場合+200万円 |
2800万円 |
例えば、交通事故により、一家の支柱である夫が死亡し、遺族が妻、小学生の子供2人の場合の死亡慰謝料は、自賠責基準では、400万円+750万円+200万円=1350万円となります。
一方、弁護士基準では2800万円となります。
計算方法が違うため比較は難しいですが、弁護士基準による死亡慰謝料の方が1000万円以上高くなることも少なくありません。
慰謝料が増額・減額するケース
交通事故の慰謝料が、個別の事情により増額・減額するケースとして、以下のようなものが挙げられます。ご自身のケースがこれらに該当する場合は、加害者側に事情を説明し、慰謝料の増額を求めるか、または、減額要素を減らすことを求める必要があるでしょう。
【慰謝料が増額するケース】
- 事故態様が悪質な場合:加害者側にひき逃げ、飲酒運転、無免許運転、著しいスピード違反、信号無視、薬物の使用による運転などの事情があった場合
- 加害者の態度が著しく不誠実な場合:事故後すぐに救護措置を行わない、自分の非を認めず一切謝罪をしない、不合理な弁解をする、被害者に暴言、侮辱的な発言をするなど
- 被害者や親族に大きな精神的苦痛が伴う場合:事故によるケガや後遺症によって失業したり、生死に関わる大ケガをしたり、被害者の死亡により、親族がうつ病やPTSDなどの精神疾患になってしまったりしたなど
【慰謝料が減額するケース】
- 素因減額:被害者が事故前から患っていた持病や症状(既往症)などがあった場合、例えば、ヘルニアを患う人が事故によってむちうち症になり、必要以上に治療が長引いたり、本来なら残らない後遺障害が残ったりした場合
- 通院頻度が少ない場合:通院期間が長期に亘っても、実際に通院した日数が極端に少ない場合も、慰謝料減額のおそれがあります。減額を避けるためには、医師の指示のもと、治療に必要な範囲で、適切な頻度で通院を続けることが必要です。
- 過失相殺:前方不注意など被害者にも過失があった場合は、過失割合に応じ、慰謝料を含む賠償額全体が減額されます。例えば、慰謝料が200万円で、過失割合が9対1の場合は、20万円の慰謝料減額となります。
- 損益相殺:自賠責保険から慰謝料相当分の保険金を既に受け取っている場合。この場合、加害者からさらに慰謝料を満額受け取ると、慰謝料の二重取りとなってしまうため、自賠責保険から受け取った慰謝料分を慰謝料から減額します。
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消極損害としての損害賠償と相場
「消極損害」とは、交通事故が原因で得られなくなってしまった収入や利益のことで、損害賠償を請求できる対象となっています。
消極損害は、次の2種類に分けられます。
- 休業損害
- 逸失利益(後遺障害逸失利益・死亡逸失利益)
以下、それぞれの相場を確認していきましょう。
休業損害
休業損害とは、交通事故によるケガのために仕事を休んだことで得られなかった収入のことです。一般的に、事故が発生した時点で、仕事をして収入を得ていた人以外には認められませんが、収入のない主婦(主夫)でも休業損害を受け取ることが可能です。主婦(主夫)の行う家事労働には金銭的な価値があると評価されているからです。
休業損害の計算式は、以下のとおりです。
【自賠責基準】
日額6100円×実際に働けなかった日数
【弁護士基準】
1日あたりの基礎収入×実際に働けなかった日数
(例)「被害者の事故前3ヶ月間の給与の総額が90万円、休業日数30日」
このケースでの休業損害額は、以下のとおりとなります。
(自賠責基準)6100円×30日=18万3000円
(弁護士基準)90万円÷90日=1万円 (基礎収入)1万円×30日=30万円
【被害者の事故前3ヶ月間の給与総額が90万円、休業日数30日】
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
18万3000円 | 30万円 |
基礎収入の考え方など、詳しい説明は下記の記事でご確認ください。
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後遺障害逸失利益・死亡逸失利益
逸失利益とは、交通事故がなければ本来得られたはずの収入のことです。
逸失利益には、事故により後遺障害が残ったことにより発生する「後遺障害逸失利益」と事故により被害者が死亡したことにより発生する「死亡逸失利益」と2種類あります。
事故時点で仕事をして収入を得ていた人に認められるのが基本ですが、事故時点で無職であっても、子供や学生、求職者など、将来働いて収入を得られる可能性が高い人であれば、逸失利益を請求できる場合があります。
逸失利益の金額は、被害者の方の立場・職業(サラリーマン、個人事業主、学生や子供、主婦、高齢者、失業者など)、収入、年齢などにより異なります。
逸失利益について詳しく知りたい方はぜひ下記の記事をご覧ください。
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積極損害としての損害賠償と相場
「積極損害」とは、交通事故の影響で実際に支払わなければならなくなったお金をいいます。
主に、次のようなものが挙げられます。
- 治療費(治療に関連するもろもろの費用)
- 付添看護費用
- 入院雑費
- 将来の介護費用
- 自宅改装費用、自動車改装費用
- 器具、装具の費用
- 通院交通費、宿泊費
- 葬儀に関する費用
- 文書料、雑費
- 弁護士費用
以下、それぞれの相場を解説していきます。
なお、任意保険基準の記載は省略しますが、基本的に自賠責基準と同程度となります。
治療費
治療費とは、ケガの治療にかかる費用をいいます。交通事故によるケガの治療のために必要性かつ相当性があると認められる治療費に限り、加害者に賠償請求することが可能です。
損害賠償の対象となるかどうかが争われやすい治療費について、以下で解説します。
- 個室を利用した場合の差額ベッド代
差額ベッド代は、医師の指示またはケガの内容、治療経過、部屋の空き状況等を考慮し、個室を利用すべき特別の事情があれば、請求が可能です。 - 高額診療・過剰診療
一般的な水準に比べて治療に対する医師の報酬額が高額すぎる診療、医学的にみて必要性・合理性が認められない過剰診療にあたると判断された場合は、一般的な治療にかかる費用を超えた部分の治療費は支払ってもらえず、超えた部分は自己負担となります。 - 症状固定後の治療費
基本的に損害賠償の対象になりません。
症状固定とは治療を続けても症状の改善が見込めない状態を指し、医師が判断します。ただし、症状固定後に、医師の指示により症状悪化を防ぐためのリハビリや手術等をした際の費用は賠償の対象になる場合があります。 - 整骨院での施術費用
医師の指示がある、または治療として有効な場合には、適切な範囲であれば、損害賠償の対象となります。ただし、治療として有効かどうかを証明するのは難しいので、整骨院へ通う場合には、必ず事前に医師の許可を得るようにしましょう。
付添看護費用
「付添看護費用」とは、交通事故の怪我の影響により本人だけでは通院や入院、日常生活を送ることが難しく、付き添ってくれる人が必要と判断できる場合に賠償請求できる、積極損害のひとつです。
入院の場合には「入院付添費用」、通院の場合には「通院付添費用」、自宅で介護・介助を行った場合には「自宅付添費用」が請求できます。
なお、付添看護費用を請求するためには、
- 看護師などを雇った場合:領収書
- 家族が付き添った場合:付添看護自認書(付き添った家族本人が作成します)
が必要になります。
下記は、自賠責基準と弁護士基準それぞれを適用した場合の付添看護費用の相場です。
付添費用 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
入院付添費用 | 日額4200円 | 実費または日額6500円 |
通院付添費用 | 日額2100円 | 日額3300円 |
自宅付添費用 | 日額2100円 | 必要かつ相当な金額 |
※自賠責基準は、新基準です。
入院雑費
入院の際にかかるもろもろの費用を含めた「入院雑費」も、交通事故で発生する積極損害のひとつとされています。
例えば、日用品や雑貨の購入費用(パジャマや洗面道具、食器などの購入費用)、通信費(電話代、手紙の切手代など)といったものが入院雑費に含まれます。
自賠責基準と弁護士基準では、入院雑費として下記の金額を認めています。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
入院雑費 | 日額1100円 | 日額1500円 |
将来の介護費用
交通事故により重い後遺障害が残り、将来にわたって介護が必要となった場合、例えば寝たきりの状態になってしまった場合には、「将来の介護費用」を請求することができます。
自賠責保険の後遺障害等級1級(常時介護が必要な障害)、2級(随時介護が必要な障害)の認定を受けた場合には、基本的に、将来介護費を請求することが可能です。
ただし、3級以下の後遺障害であっても、後遺障害の内容や程度、日常生活への支障の程度などを考慮し、介護の必要性があると判断されれば、将来の介護費用の請求が認められる場合があります。
例えば、高次機能障害で見守りや声掛けなどのサポートが必要な状況であれば、請求が認められる可能性があります。
将来の介護費用は、以下の計算式で求めることができます。
【将来の介護費用】
請求できる日額×365日×介護が必要な期間に対応するライプニッツ係数
請求できる日額は、誰が介護を行うかによって変わります。以下の表をご覧ください。
なお、以下の金額は具体的な看護の状況により増減することがあります。
近親者が介護を行う場合 | 職業介護人(介護士など) | |
---|---|---|
介護費 | 日額8000円程度 | 実費(日額1万2000円~2万円程度) |
自宅改装費用、自動車改装費用
交通事故に遭って重い後遺症が残った場合など、自宅や自動車を改装する必要性・相当性が認められるときには、積極損害として、改装にかかる実費に相当する金額を支払ってもらえる可能性があります。
●自宅改装費用
被害者の怪我の内容、後遺症の程度や内容等から自宅を改装する必要があると認められる場合、相当額を賠償してもらえます。
自宅改装費用が認められる具体例としては、
- 車椅子が移動しやすいように玄関にスロープを設置する
- 自宅内の段差をなくす
- トイレやお風呂場を使いやすくする
といったケースが挙げられます。
●自動車改装費用
被害者の後遺症などの内容からみて自動車を改装する必要性がある場合、社会的に相当と認められる範囲で賠償金を支払ってもらえます。
例えば、後遺症により車椅子を使用しなければならなくなったときに、車椅子でも運転できるように自動車を改装するのにかかる費用などが自動車改装費用として認められます。
なお、自動車は使える年数が限られているので、数年に1度は買い替えなければなりません。そこで、自動車改装費用を計算する際には、買い換え費用も考慮することになります。
器具、装具の費用
交通事故の治療や後遺症のために必要になる、器具・装具の費用も積極損害として認められます。
交通事故でいう「器具」「装具」とは、サポーターやネックカラー、義足・義手・義眼・義歯などです。
こうした器具・装具は数年ごとに換えるのが通常なので、平均余命を迎えるまでにかかる買い換え費用を含めて賠償金を計算しなければなりません。購入した際の領収書をもとに計算するのが基本なので、領収書をもらったらきちんと保管しておきましょう。
通院交通費、宿泊費
交通事故で通院しなければならなくなった場合には、通院にかかる交通費である「通院交通費」を支払ってもらうことができます。通院交通費には、被害者本人の交通費だけでなく、場合によっては付き添った家族等の交通費も含めることが可能です。
通院交通費とみなされる金額は、通院する際に「何を利用したか」によって変わってきます。
●公共交通機関を利用して通院した場合
通院するのに実際にかかったバス代や電車賃などが、通院交通費と認められます。通院にかかった費用は、通院交通費明細書を作成したり、特急券等の領収書を提出したりして証明することになります。
●自家用車を利用して通院した場合
ガソリン代として、1キロメートルあたり15円で計算した金額が通院交通費となります。また、高速道路代や駐車料金も併せて請求できるので、領収書やETCカードの利用履歴等でかかった金額を証明できるよう、準備しておきましょう。
●タクシーを利用して通院した場合
タクシーを利用しなければならなかった場合には、かかったタクシー代が通院交通費として認められます。ただし、タクシーを利用する必要性がないケースでは、公共交通機関の利用にかかる金額しか支払ってもらえません。
タクシーを利用する必要性は、怪我の内容や部位・程度、被害者の年齢、病院や最寄り駅までの距離、他に利用できた交通手段の有無などから判断します。
タクシー代については、高額になりすぎると揉める原因になりますので、必要性がなくなった場合には、控えることをおすすめします。
葬儀に関する費用
交通事故で被害者が亡くなってしまった場合、葬儀を行うことになります。この葬儀に関係する費用も交通事故によって支払うことになった損害ですので、賠償請求が可能です。
一般的に、
- 遺体運搬費
- 火葬代
- 葬儀社に支払う葬儀費用
- 戒名、お布施、読経にかかる費用
- 49日法要にかかる費用
- 香典返しにかかる費用
- 仏壇購入費・墓碑建立費
また、葬儀に関する費用としては、下記の表にあるとおりの金額が認められるケースが多いです。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
葬儀費用 | 100万円 | 150万円程度 (実際にかかった費用が150万円未満の場合は実費) |
※自賠責基準は、新基準です。
旧基準の場合も100万円を上限に実費を請求可能です。
文書料や雑費
交通事故の積極損害には、文書料や雑費も含まれます。
「文書料」は、交通事故による怪我の診断書を作成してもらうときにかかる費用で、1通あたり5000円~1万円程度になることが多いです。かかった実費が損害として認められます。
「雑費」とは、住民票や印鑑登録証明書を取得するためにかかる費用、事故の相手方や裁判所への書類の送付にかかる費用などです。こちらも積極損害として実費を請求することができます。
弁護士費用
交通事故後の相手方との対応などを弁護士に依頼されることもあるでしょう。弁護士への依頼にかかる費用(弁護士費用)は積極損害といえるので、賠償を請求できる場合があります。
ただし、そのためには、裁判で損害賠償金の支払いを命じる判決を得る必要があります。通常、判決で支払いが命じられた金額の10%程度が弁護士費用として認められることになります。
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- ※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
- ※事案によっては対応できないこともあります。
- ※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。
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物的損害としての損害賠償
物的損害とは、交通事故で車や物が破損した場合の損害です。加害者に賠償請求できる物的損害として、主に以下のものが挙げられます。
車の修理費 | 破損した車の修理にかかった費用。交換部品代や工賃なども含まれ、必要かつ相当な修理費のみ請求可能。修理費の上限は、事故直前の車両の時価額に買い替え諸費用を加えた額まで |
---|---|
車の買替費用 | 事故により車が大破し、修理不可能となった場合または修理費が上限を超える場合は、車の買い替え差額(事故直前の車の時価-事故車の売却価格)と、買い替え諸費用を合計したものを、買替費用として請求可能 |
評価損 | 車に事故歴や修理歴が残ったことにより、下落した車の市場価値分 |
休車損害 | 事故車がタクシーやトラックなど営業車両の場合は、修理で車が使えなかった間に得られていたはずの利益 |
その他 | 代車使用料、積載品の損害、家や店舗等の修理費・評価損、レッカー代、破損した手持ち品など |
物損事故の損害賠償は慰謝料請求できない
交通事故の慰謝料は、事故によるケガで受けた精神的苦痛に対して支払われるものです。
物損事故では、ケガが発生していないため、基本的に、慰謝料の請求は認められていません。
ただし、物損事故であっても、例えば、事故によって同乗していたペットが亡くなったり、重い後遺障害を負ったり、被害者自身にケガはなかったものの、事故による恐怖感のために日常生活に支障が出たケースのように、精神的苦痛が著しく大きいと判断される場合には、例外的に慰謝料の請求が認められる場合があります。
物損事故についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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交通事故の損害賠償請求の流れ
交通事故発生から損害賠償金の受け取りまでの流れは、以下のとおりとなります。
- ①交通事故発生
- ②事故直後の対応:事故直後は警察への連絡など初期対応を行い、加害者側の保険会社とも連絡を取り合います。
- ③ケガの治療、後遺障害等級認定の申請:事故によりケガをした場合は、完治・症状固定まで治療を続け、後遺症が残ってしまった場合は、後遺障害認定を申請し、等級認定を受けます。
- ④示談交渉:すべての損害額が確定したら、保険会社と示談交渉を行い、損害賠償金について取り決めます。
- ⑤損害賠償金の受け取り:示談成立後、または、裁判になった場合は判決が出た後に、取り決めた損害賠償金を受けとることになります。
なお、慰謝料など損害賠償金の請求には、以下のような時効がありますので、ご注意ください。
- 人身事故:交通事故発生日の翌日から5年
- 物損事故:交通事故発生日の翌日から3年
- 後遺障害が残った事故:症状固定日の翌日から5年
- 死亡事故:死亡日の翌日から5年
交通事故の損害賠償請求について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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交通事故の示談交渉では、相手方の保険会社が必要資料を収集し、それをもとに賠償額を提示する方法が主流となっています。しかし、このような方法が被害者にとっては便利である反面、示談交渉のプロである保険会社を相手に交渉していかなければならないため、賠償額が低くおさえられてしまうおそれがあります。
そのため、適正な賠償を受けたいと思われる場合は、弁護士への相談をご検討ください。
交通事故に詳しい弁護士に任せれば、保険会社から提示された示談案を検討し、賠償項目に不備があったり、過失割合が適正でなかったりする場合は、法的根拠にもとづき、その修正を主張していきます。
また、弁護士基準を用いて示談交渉を行いますので、賠償額アップも期待できます。
交通事故の損害賠償についてお悩みの場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
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- ※諸経費20,000円( 税込22,000円 )がかかります。
- ※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
- ※事案によっては対応できないこともあります。
- ※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。
- ※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。