弁護士依頼前
日額5700円
交通事故に遭った際に請求できる損害賠償金の費目の一つに休業損害があります。休業損害とは、事故のケガによって仕事を休んだことに対する補償です。
「休業」と聞くと会社員など給与の出る職業を思い浮かべるかもしれませんが、休業損害は主婦でも請求することができます。
例えば、むちうちになってしまった場合、主婦でも家事・育児に支障が出ているのであれば休業損害を請求することができます。
主婦の場合、休業損害の計算が少し複雑で、弁護士基準で算定した賃金を用いる方法や自賠責基準で算定した賃金を用いる方法など複数あります。
この記事では、「主婦の休業損害」に着目し、複数の計算方法の違いやケース別の注意点について解説していきます。
弁護士依頼前
日額5700円
弁護士依頼後
日額9718円
約4000円の増額
目次
主婦の家事労働には金銭的価値があると認められています。なぜなら、主婦の家事労働は、家族のために無償で行われますが、これを外注すれば、当然費用が発生するからです。
では、100%家事に従事している専業主婦に対し、パートやフルタイムの正社員などの兼業主婦では、休業損害の考え方はどうなるのでしょうか。
兼業主婦の場合は実際に働いて得た収入と主婦としての家事労働の評価額を比較して高い方の金額のみ請求することになります。
また、「主婦」に限らず「主夫」であっても、家事従事者であれば、同じように休業損害を請求することができます。
ただし、家事従事者として認められるのは「自分以外の家族のために家事」を行っていると認められる必要があるため、1人暮らしの方は家事従事者には該当しません。
なお、シングルマザーやシングルファザーは子供の育児や子供のために家事を行っているという点は主婦と何ら変わりないため、家事従事者の休業損害を請求することができます。
休業損害は以下の計算式で求められます。
●1日当たりの基礎収入×休業日数
比較的わかりやすい式ですが、主婦の場合、1日の家事労働に対する収入はどのように算出するのでしょうか。
また、主婦の場合、家事を休んだ日を客観的に証明することが難しく、どうやって休業日数を主張すればいいのでしょうか。
各項目の判断基準についてひとつずつ見ていきましょう。
交通事故の損害賠償額の算定基準には、以下の3つの基準があります。
休業損害では、3つの基準ごとに「基礎収入」の考え方が変わります。基準ごとの違いについては以下の表にまとめています。
この基準の中で、弁護士基準では「賃金センサス」の女性の全年齢平均賃金を使用して計算します。主夫であっても、性別で家事労働の評価に差を発生させないため、同じく女子の全年齢平均賃金を使います。
次項からは基準ごとの基礎収入の考え方について解説していきます。
基礎収入 | |
---|---|
自賠責基準 | 休業一日あたり6100円 |
任意保険基準 | 自賠責基準と同等か少し高額になる程度 |
弁護士基準 | 1万804円 |
自賠責基準では、基礎収入は1日当たり6100円と定められており、会社員であっても主婦であっても、職業によって金額に違いはありません。
また、実際の収入が日額6100円を上回ることを証明できれば、最高で日額1万9000円まで認められます。
しかし、それを超える収入がある場合には、自賠責基準では現実の収入補填の面からは不足してしまう場合もあります。
なお、2020年3月31日以前の事故については基礎収入1日当たり5700円と考えられていました。
任意保険会社の基礎収入の考え方は、任意保険会社ごとに異なります。そのため明確な基準はありませんが、多くの任意保険会社では以下のような基礎収入の計算方法を取っています。
多くの場合、現実の収入をもとに基礎収入を算定した方が休業損害の金額が大きくなるので、任意保険会社が基礎収入を日額6100円で提案してきても安易に受け入れないようにしましょう。
弁護士基準では「賃金センサス」を用いて、休業損害の基礎収入を計算します。
賃金センサスとは、厚生労働省が発表している男女別年齢別の平均年収の統計データです。このデータの全年齢女子平均賃金を365日で割ったものが、1日当たりの基礎収入となります。なお、基礎収入の算定の際には、交通事故があった年の一年前の賃金センサスを使います。
2022年(令和4年)の全年齢女子平均賃金は394万3500円でした。
この金額を365で割ると、主婦の1日当たりの基礎収入は1万804円(切捨)となり、自賠責基準より高額であることが分かります。
主婦の場合の休業日数の考え方は以下のとおりです。
自賠責基準・入院日、通院日⇒休業日数となる
・自宅で安静⇒休業日数とならないことが多い
自賠責基準では入院日や通院日は休業日数としてカウントされますが、「体が痛くて自宅で安静にしていた」場合には、休業日としてカウントされないことが多くあります。
・入院日、通院日⇒休業日数となる
・自宅で安静⇒ケガの内容や程度、具体的に制限された家事労働の内容や程度などを証拠により証明⇒証明された事実に基づいて休業の日数を決定し、休業損害の補償額を決定
兼業主婦の場合の計算式も、基本的には専業主婦と同じく
「一日あたりの基礎収入×休業日数」
になります。ただし、弁護士基準での基礎収入の考え方は専業主婦と少し違います。
兼業主婦は、仕事も家事も両方担っているので、収入としては、仕事での現実収入と家事労働としての評価収入の二つがあります。
しかし、この合算額を一日当たりの基礎収入とすることは基本的にできません。なぜなら、兼業主婦は専業主婦に比べて、家事労働の密度に差があるので、単純に家事労働の評価額を同額とはできないと考えられるからです。
休業損害の基礎収入の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準がありますが、基準ごとに考え方が異なります。 各基準の違いを以下の表にまとめます。
基礎収入 | |
---|---|
自賠責基準 | 休業1日あたり6100円~1万9000円 |
任意保険基準 | 自賠責基準と同等か少し高額になる程度 |
弁護士基準 | 実際の収入 または 賃金センサスのいずれか高い方 |
兼業主婦の基礎収入は、自賠責基準では1日当たり6100円※です。この額は、専業主婦の場合と同じです。
しかし兼業主婦の場合は、実際の収入の方が日額6100円を上回っているケースもあるでしょう。そのことを給与明細などで証明することができれば、実際の収入額で計算することが可能です。ただし、上限は1日当たり1万9000円と定められています。
※2020年3月31日以前に発生した事故については、1日5700円で計算されます
兼業主婦は「家事従事者」と「給与所得者」としての二つの側面を持ちます。そのため、「家事従事者」としての休業損害と「給与所得者」としての休業損害のいずれか高い方を採用します。
2022年度賃金センサスの女性全年齢平均賃金は394万3500円であるため、主婦としての休業損害は上記の平均賃金から1日の基礎収入を算定し、計算します。
事故前年度の収入が上記平均賃金を上回る場合は給与取得者としての収入を、下回る場合は上記平均賃金を基礎収入として休業損害を算定し、請求することになります。
弁護士基準では、自賠責基準のように基礎収入に上限はありません。
兼業主婦の休業日数には、「実際に仕事を休んだ日数」と「家事労働ができなかった日数」のどちらかの日数を使います。
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以下では、休業損害の請求方法について、専業主婦と兼業主婦と分けて解説していきます。
専業主婦が休業損害を請求する際に必要な書類は以下の通りです。
交通事故の休業損害については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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兼業主婦の方で、給与取得者として休業損害を請求する場合は、専業主婦の場合と請求方法が異なります。
実際の給与所得に基づいて休業損害を請求する場合は、休業の事実を証明するために以下の書類が必要です。
休業損害証明書は相手方の任意保険会社または自賠責保険会社に連絡すれば書式をもらうことができます。
次項からは、主婦の休業損害の注意点についてケース別に解説していきます。
交通事故の怪我により、家事が行えない場合、家政婦を雇うことも考えられます。家政婦の実費は相手方保険会社に休業損害の代わりとして請求することができます。
もっとも、主婦としての休業損害との二重取りはできません。なぜなら家政婦の費用も主婦としての休業損害も家事労働ができなかったことによって生じた損失に対する補償だからです。
また、友人や家族に家事代行を依頼し、代行業者よりも高い金額を支払った場合には、家政婦を雇う場合にかかる相当な費用の範囲内でのみ請求が認められるでしょう。
複数世帯で暮らしていると、その中に家事従事者が複数いることが考えられます(例えば、嫁と姑など)。
その場合、被害者がその世帯の中で、家事労働を主として行っていたのか、もしくはサブとして家事労働を助けていたのか、家事労働の割合が判断のポイントとなります。
実際の家事の内容や程度から、被害者が家事労働の主担当として認定されれば、通常の主婦としての休業損害を獲得できる可能性は高いと考えられます。
しかし、被害者が主担当でないなら、家事労働の休業損害は通常の主婦よりも小さいと判断され、主婦としての休業損害は減額される可能性があります。
一時保育を利用した場合は、一時保育の金額か休業損害のどちらかしか請求できません。
例えば、休業日数10日のうち3日間は一時保育を利用した場合は以下の金額が請求できます。
一時保育と休業損害の費用を比べてどちらで請求するか決めることになるでしょう。
ご高齢の主婦の場合、休業損害の計算方法が少し異なります。
一般的には賃金センサスの「女性の全年齢平均賃金」を使用して計算しますが、高齢者の場合は「年齢別の女性の平均賃金」を用いて休業損害を算出します。
これは、一般的な方法で休業損害を算出すると、被害者と同年代の女性の平均賃金より不相応に高額となってしまうためです。
また、高齢であることから、比較的軽い家事を行っていた場合は、事故前の家事の程度によって休業損害が何割か減額されてしまう可能性もあります。
何とか我慢ができる痛みだから、職場に迷惑かけられない等、仕事は無理をして行っているが、家事はできていない、というパターンは意外と多いのではないでしょうか。
このような場合、保険会社との交渉段階では、「仕事に行っているので休業損害は認めません」と対応されることもよくあります。実際、休業損害が認められない判例もあります。
しかし、ケガの内容や程度、支障の生じた家事の内容などを具体的に証明することで、主婦としての休業損害を一定程度認められる可能性はあります。
個別事情による判断が難しいパターンなので、専門家の交渉力が必要とされるでしょう。
会社によっては産休、育休中も一定の給与が支払われる場合もあり、これは事故によって減るものではありません。したがって、その場合は給与取得者としての休業損害は認められません。
しかし、一定の給与が支払われているとしても、家事労働に具体的な支障が生じたことを証明できた場合には、家事従事者として休業損害を請求できる可能性があります。
一方、休業中に給与がなく無収入で、家族のために家事労働を行っている場合は、専業主婦と同様に、家事労働に具体的な支障が生じたことを証明できれば、家事従事者として休業損害を請求することができます。
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休業損害を弁護士に依頼するメリットは以下のとおりです。
ご依頼者様(専業主婦)の車両が渋滞待ちのため停車していたところ玉突き事故に遭い、ご依頼者様は頚椎捻挫、末梢神経障害等の傷病を負い、後遺障害等級14級9号が認定されました。
相手方から賠償案が提示されましたが、賠償案が適切であるか判断がつかなかったため、
ご相談を受け、ご依頼を頂戴しました。
当方弁護士が相手方の賠償案を検討したところ、休業損害の提示額が自賠責基準を使っており、基礎収入額は日額5700円、期間は1ヶ月にとどまっていました。
そこで、担当弁護士は基礎収入額を賃金センサスに基づいて日額9178円で計算するよう交渉しました。
ご依頼者様は通院日数が多く、お子様もいらっしゃる世帯だったため、具体的に支障が生じた家事の内容を説明して見直しを求めたところ、日額を9718円として、80日を超える休業期間が認められ、最終的に相手方の当初の提示額から160万円増額する内容で示談が成立しました。
主婦の休業損害には、客観的な証明資料が少ないので、個別的判断になることが多い事案といえます。
かつては、主婦の休業損害を認めないという考え方もあり、今でも保険会社によっては、主婦の休業損害を正しく提示してこない場合もあるでしょう。
たとえ提示があっても自賠責基準とあまり変わらないような金額であることがほとんどです。しかし、証拠書類に乏しい主婦の休業損害では、その保険会社の提示を覆すのは困難です。
弁護士であれば、弁護士基準を使えるのはもちろん、様々な判例を根拠とした交渉力で、あなたの休業損害を主張する大きな後ろ盾となれます。
現在では、主婦とひとくくりにもできず、専業・兼業・主夫と多様化しています。それぞれの事情に合った交渉が求められ、専門家への相談は必須といえるでしょう。
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