刑事事件では示談成立を目指すべき!流れ・タイミング・示談金の相場など
被害者が存在する刑事事件において重要なこととして、早期に被害者と示談することが挙げられます。
事件の当事者である被害者との示談は、罪の重さを量る量刑の判断においても大きく影響します。しかし、被害者との示談交渉はそう簡単に行えるものではありません。
そのため、被害者との示談交渉を円滑に進めて成立を目指すためには、弁護士への相談・依頼は欠かせないでしょう。
本記事では、刑事事件における示談に着目し、刑事事件で示談するべき理由や刑事事件の示談交渉の流れなどについて、詳しく解説していきます。
目次
刑事事件の示談とは?
刑事事件における示談とは、事件の当事者である被害者と加害者との間で和解契約を結ぶことをいいます。
示談の締結は、被害者が加害者に対して処罰を求めない意思を表わしているため、軽い刑事処分や有利な判決を獲得できる可能性を高めます。このことから、刑事事件における示談の重要性が非常に大きなものであることがわかります。
なお、示談に向けて行うことには、主に「被害者への謝罪」「被害弁償」が挙げられます。
被害者が、加害者のこれらの行動や内容をもって事件の和解を承諾した場合は、示談成立となり、その後加害者が被害者に被害弁償として金銭を支払います。
示談の対象となる犯罪
刑事事件で示談の対象となる犯罪には、必ず被害者がいる犯罪であることという条件がつきます。
薬物犯罪や賭博罪などは、被害者のいない犯罪の典型例です。
被害者のいる犯罪には、以下のような犯罪が挙げられます。
被害者の身体を傷つける犯罪
- 暴行罪、傷害罪
被害者の財産を奪う犯罪
- 窃盗罪、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪
性犯罪
- 不同意わいせつ罪、不同意性交等罪 など
被害者が存在している犯罪でなければ、示談という概念は生まれません。
そのため、公務員が作成する公文書を偽造・変造する罪である公文書偽造罪や、児童の権利を擁護することを目的とし取り締まっている児童買春は、法による保護利益の対象が被害者ではないことから、「被害者のいない犯罪」とされています。
刑事事件で示談をするべき5つの理由
刑事事件で示談をするべき理由には、次の5つが挙げられます。
- 被害届が取り下げられる可能性があるため
- 早期釈放が期待できるため
- 不起訴処分になる可能性が高まるため
- 刑事処分の軽減が期待できるため
- 民事訴訟を起こされるリスクが下がるため
では、それぞれの理由について詳しく解説していきます。
被害届が取り下げられる可能性がある
刑事事件では、被害者と示談することで被害届が取り下げられる可能性が高まります。
ただし、被害者と示談を締結する際には、確実に被害届を取り下げてもらうために、示談内容に被害届の取り下げを盛り込むことが重要です。つまり、被害者と取り交わす示談書に被害届を取り下げる旨を明記してもらうということになります。
さらに被害届の取り下げを確実なものとするためには、「示談を締結する際に被害届の取り下げ書を準備すること」が挙げられます。
被害者へ被害届の取り下げ書についての説明を行い、示談書と併せて署名・捺印してもらった後、警察署へ提出するというのが主な流れです。
早期釈放が期待できる
刑事事件では、被害者と示談することによって早期釈放に期待することができます。
被害者との示談成立は、被害者が加害者に対して「処罰してほしい」という処罰感情がないことを表わします。そのため、加害者である被疑者が逮捕によって身柄を拘束されている場合、被害者との示談を理由に早期釈放となる可能性が高まります。
もっとも、身柄の拘束を解くためには、被害者との示談が必ず条件となるわけではありません。
被害者と示談が成立する前であっても、弁護士が被害者と示談交渉していることで処分保留となり、釈放されるケースなどもあります。
処分保留とは?
検察官が刑事裁判を行うかどうかの処分を保留にして、身柄を釈放することをいいます。
不起訴処分になる可能性が高まる
刑事事件では、被害者と示談することで不起訴処分になる可能性が高まります。
検察官から起訴されて刑事裁判にかけられた場合、99.9%の確率で有罪判決が下されるのが実情です。有罪判決が下されれば、前科がつくこととなり、社会的な信頼を失うことにつながるおそれがあります。
しかし、不起訴処分となれば、刑事裁判にかけられないため、前科がつくことはありません。検察官が被疑者を起訴するかどうか判断するうえで、被害者との間で示談が成立しているかどうかは特に大きな影響を与えます。
刑事処分の軽減が期待できる
刑事事件では、被害者と示談を締結し、事件の当事者同士で和解していることを示すことによって、刑事処分の軽減に期待できます。被害者と示談していることは、被疑者・被告人にとって有利な事情として考慮される傾向にあるからです。
そのため、「そこまで重い刑事処分を与える必要はない」という判断につながりやすいです。たとえば、罰金や執行猶予付きの判決といった、軽い刑事処分が下されやすくなる可能性があります。
ただし、被害者と示談すれば確実に刑事処分が軽減されるというわけではなく、あくまで量刑を判断するうえで有利な情状となるということに限られます。そのため、被害者と示談していても、刑罰が科される可能性も当然あります。
民事訴訟を起こされるリスクが下がる
被害者との示談成立は、民事訴訟を起こされるリスクが下がる可能性があります。
示談を締結する際に、「今後一切の請求等を行わず示談書の内容をもって解決とする」というような内容を示談書に含めることによって、民事上においても和解することができます。
刑事事件では、加害者は被害者に対して刑事上の責任だけでなく、民事上の責任を負わなければなりません。民事上の責任とは、被害者からの損害賠償請求に応じることを指します。
この民事上の責任について、民事訴訟を起こされた場合には、刑事上の責任とは別に被害者に対して被害の弁償を行わなければなりません。
しかし、被害者と民事上の賠償関係についても示談によって清算することで、民事訴訟を回避することができます。
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刑事事件で示談交渉を成立させるためのポイント
刑事事件で被害者との示談交渉を成立させるためには、次のようなポイントが重要となります。
- なるべく早いタイミングで示談交渉すること
- 刑事事件に強い弁護士に依頼すること
では、それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。
なるべく早いタイミングで示談交渉する
被害者に対して示談交渉を行うタイミングは、早ければ早いほど望ましいといえます。
具体的な示談交渉のタイミングは、一般的に捜査機関である検察官が刑事処分(=起訴不起訴の判断を下すこと)を行うまで、または裁判所が刑罰を決定するまでに行われるのが通常です。
なお、逮捕される前に被害者と示談することができれば、事件化せずに終わることもあります。
検察官が起訴するかどうか判断する前に示談した場合は、被害者との示談成立を理由に不起訴と判断される可能性が高まります。一方で、起訴後に示談した場合には、情状として考慮され、執行猶予の獲得など軽い刑事処分となる可能性が高まります。
しかし、被害者との示談交渉は容易に行えるわけではないため、時間をかけて交渉していけるようになるべく早いタイミングで着手することが大切です。
刑事事件に強い弁護士に依頼する
被害者との示談を迅速に成立させるためには、刑事事件に精通した弁護士に弁護の依頼をするべきといえます。
もちろん、弁護士に依頼せずに被害者との示談交渉を進めることは可能です。しかし、弁護士に依頼した方がより円滑に示談交渉を進められ、示談が成立する可能性を非常に高めることができます。
事件の被害者や被害者家族は、加害者本人や加害者側の関係者との接触を拒むことがほとんどです。そのため、示談について話し合うための場を設けることも困難となりやすいですが、弁護士が間に入ることで受け入れてもらいやすくなります。
また、弁護士であれば、示談金の適正額もわかりますし、豊富な知識や経験を活かして訴訟のリスクを軽減できる可能性があります。
刑事事件の示談交渉の流れ
刑事事件では、被疑者の身柄が拘束されている場合も多いことから、被害者との示談交渉は弁護士が行うというのが一般的です。 なお、具体的な示談交渉の流れは、以下のとおりです。
- 弁護士に依頼する
- 被害者の連絡先を入手する
- 示談交渉
- 示談交渉の成立
では、さらに詳しく解説していきます。
①弁護士に依頼する
まずは、弁護士に弁護の依頼を行い、被害者との示談交渉に向けた方針の打ち合わせを行います。なお、弁護士であれば、逮捕直後から接見することができるため、自由にやり取りすることができます。
示談交渉を行うため、事前に弁護士と確認すべきポイントは次のとおりです。
- 示談金(いくら用意できるか)、謝罪文の用意
- 誓約事項をまとめる
- 交渉の方針を確認する など
弁護士はこれらのポイントについて確認し、被害者とどのように交渉を進めていくべきなのかを考えます。そのため、弁護士が示談交渉の方針を具体的に決めやすくするために、示談金として用意できる金額などについて、嘘偽りなく正直に話すことが大切です。
②被害者の連絡先を入手する
被害者の連絡先は、捜査機関である警察・検察が知っているため、弁護士から捜査機関に依頼して教えてもらいます。
弁護士から依頼を受けた捜査機関は、その後被害者に加害者側の弁護士が連絡先を知りたがっている旨を伝え、教えてもいいかと承諾を得ます。
被害者が連絡先の開示を承諾した場合は、その後捜査機関から連絡先を教えてもらえることとなりますが、承諾しなかった場合には、弁護士から「加害者へは絶対に連絡先を開示しない」と伝えるなどして、再度依頼を試みます。
なお、事件が検察に送られていない場合には、それを理由に警察から連絡先の開示を断られることもあります。
③示談交渉
被害者と示談交渉を行うためには、先に示談の話を出すのではなく、まず被害者に対して誠心誠意謝罪の気持ちを伝えることが大切です。そして、謝罪の場を設けることに承諾してもらえた場合は、弁護士だけで被害者または被害者家族と対面するのが一般的です。
対面できた際に、まず謝罪を伝え、その後示談についての話を持ち出します。ただし、示談の話をすぐに持ち出すことが望ましいとは限らず、被害者の感情を汲み取りながら交渉のスピードを調整していくことが重要です。
そのため、示談交渉を行う弁護士の人柄や交渉力はもちろんのこと、これまでの経験なども重要となるため、弁護士選びは大切です。
④示談交渉の成立
被害者と示談交渉を行い示談が成立した場合は、示談書を作成して被害者と加害者の両名が署名・押印します。
これで示談が成立となりますが、ここで重要となるのが、示談書に記載すべき項目に注意するという点です。
示談書に記載すべき項目
- 謝罪
- 示談金
- 清算条項
- 接触禁止条項
- 宥恕条項
- 守秘義務条項 など
事件によって示談書に記載する項目の内容は異なりますが、特に重要となるのが③清算条項と⑤宥恕条項です。
清算条項は、示談書をもって事件を清算するという意味を持つため、示談書には必ず記載が必要です。また、宥恕条項は、被害者が加害者に対して処罰を求めないと明記するものであるため、刑事処分の軽減を目指すためには必要となります。
刑事事件の示談金の相場
刑事事件では、被害者が加害者に対する処罰感情の強さも、示談金の金額に大きく影響します。
そのため、事件によって示談金額に差が生じやすく、示談金の相場を示すことは非常に難しいとされます。
下表はあくまで参考ですが、各犯罪における示談金の相場です。
| 罪名 | 相場 |
|---|---|
| 傷害罪 | 10~100万円 |
| 暴行罪 | 10~30万円 |
| 窃盗罪 | 被害額+~20万円 |
| 詐欺罪 | 被害額+~20万円 |
| 横領罪 | 被害額+~20万円 |
| 恐喝罪 | 被害額+~20万円 |
| 強盗罪 | 被害額+~50万円 |
| 不同意性交等罪 | 100~200万円 |
| 痴漢 | 10~30万円 |
| 盗撮 | 10~30万円 |
| 名誉毀損罪 | 30~50万円 |
| 器物損壊罪 | 被害額+~数百万円 |
示談金の支払方法
示談金の支払方法は、当事者である被害者と加害者の合意のもと決定します。
主な示談金の支払方法は以下となりますが、被害者が合意している場合は分割払いでも問題ありません。
主な示談金の支払方法
- 現金一括の直接手渡し
- 銀行口座への一括振り込み
また、加害者から直接被害者に示談金を支払うのではなく、弁護士を経由してやり取りするのが一般的です。そのため、加害者はまず弁護士に示談金を預け、その後、弁護士から被害者へ支払われるというような流れになります。
刑事事件の示談成立を目指すためにも、お早めに弁護士法人ALGにご相談下さい。
刑事事件では、被害者と示談が成立することで、被疑者・被告人にとって有利な情状となり、不起訴の獲得や刑事処分の軽減に期待ができます。
しかし、被害者との示談を成立させることは決して容易ではなく、被害者が加害者に対して抱いている処罰感情が大きければ大きいほど、交渉の場に立つことも困難です。
また、加害者が直接被害者に連絡することもできないため、被害者との示談交渉を行う際には、弁護士の力が必要不可欠となるでしょう。
私たち弁護士法人ALGには、刑事事件を得意とする弁護士が多数在籍しております。
豊富な知識やこれまでの経験を活かして、被害者との示談交渉が円滑に進むように尽力いたします。
ご自身やご家族が刑事事件を犯してしまった場合には、お早めに弁護士法人ALGへご相談ください。
