起訴されてしまった場合の
有罪率は99.9%


刑事事件においては、警察官、検察官による捜査を経た上で、最終的に、検察官が起訴・不起訴にするかを判断します。
法務省の犯罪白書によれば、起訴された場合の有罪率は約99.9%となっています。
つまりは、起訴されてしまった場合は、ほぼ100%に近い確率で有罪となり、前科がついてしまいます。
【動画で解説】起訴と不起訴の違い
起訴とは

起訴とは、検察官が裁判所に対して、被疑者(起訴されて以降は「被告人」と呼ばれます)を裁判によって処罰することを求めることをいいます。
起訴は、検察官にのみ権限があります(起訴独占主義といいます。刑事訴訟法247条)。被害者が刑事処罰を強く求めても、それだけで起訴の効果が生じることはなく、最終的な判断は検察官が行うことになります。
そのため、起訴されることを避けるには、弁護人から検察官に対して訴えかけていくことが重要になります。
起訴には、大きく分けて、通常の起訴と、簡易な手続きによる起訴の2つがあります。
起訴の種類
通常起訴
通常の起訴がされた場合には、法廷において裁判手続を行い、被告人の処遇を決定することになります。公判請求という言い方もします。
検察官は、起訴状(被告人の犯罪行為、罪名等が記載されているものです。)を裁判所に提出するのみならず、起訴状記載の犯罪事実を裏付けるべく証拠を提出して、犯罪事実の立証を図ります。
弁護人はこれに対し、自白事件の場合には、示談書を証拠として提出する、被告人の再犯防止のために監督を行う親族の尋問を行う、被告人本人の尋問を行い(被告人質問といいます)、被告人本人が反省している旨を裁判所に伝える、などして刑を少しでも軽くすべく行動します。
他方で、否認事件の場合は、検察官の主張等の不合理性を弾劾する、被告人のアリバイを裏付ける証拠や証人を探す、検察官証拠の証拠能力等を争う(自白が強要されたり、違法な手段で証拠が収集されたりした場合等)等して、検察官と徹底的に戦っていきます。
このような手続を経た上で、裁判所が最終的な判断をし、判決を下します。
簡易な手続きの起訴
簡易な手続きによる起訴とは、前述の通常の起訴のように、厳格な審理を求めるものではなく、手続を簡略化し、スピーディーに手続を進めるものです。
通常の起訴をすると、前述のように厳格な手続をもって裁判が進められることになり、事件が終了するまで長期化してしまうこともあります。実際に、過去には判決まで10年以上かかった事件もあります。
簡易な手続きによる起訴であれば、このような長期化のおそれはなく、書面審理のみで完結したり、1回の期日で判決がなされたりします。
逆に、簡易な手続きによる起訴は、厳格な手続が要求されないため、否認事件や重大事件などに適用されると、被疑者・被告人としては、言いたいことも言えないままに結論が出されてしまうおそれもあります。
このような点を考慮して、簡易な手続きの場合は、被疑者の同意のもと行う、軽微な事件のみ可能である、といった配慮がされています。
略式手続
略式手続とは、公判手続を行わずに、罰金または科料を科す手続です。
書面審理のみで刑が決定され、法廷での審理は行いません。
略式手続は、
①簡易裁判所の管轄に属し、
②50万以下の罰金または科料を科し得る事件であり、
③被疑者が略式手続をとることに異議がない場合に、検察官の判断でとることができる手続です。
交通事故(業務過失致傷、道交法違反)といった事件のときに用いられることの多い手続です。略式手続の際には、罰金または科料が科されるので、身柄は釈放され、刑務所に行くことはありません。
即決裁判手続き
即決裁判手続とは、事案が明白かつ軽微な争いの事件について、即決裁判手続によって審判する旨の決定から判決言渡しまでを原則として1日で行う手続です。
即決裁判手続は、
①死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮にあたる事件ではなく、
②事案が明白である等の事情を考慮し、即決裁判手続によることが相当であること、
③即決裁判手続によることについて被疑者の同意がある場合に行うことができます。
即決裁判手続の場合は、通常の裁判と同様に法廷で審理が行われますが、原則として判決はその日に言い渡され、懲役または禁錮刑を言い渡すときは、必ず執行猶予がつきます。