脅迫罪・恐喝罪・強要罪とは?それぞれの違いや刑罰について
以下では、脅迫罪、恐喝罪、強要罪の違い、刑罰の内容について解説します。
目次
脅迫・恐喝・強要罪の刑罰
脅迫罪の刑罰
脅迫罪の法定刑は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金であり、恐喝罪、強要罪と異なる点は、罰金刑が定められている点です。
恐喝罪の刑罰
恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役刑であり、詐欺罪と同じ法定刑です。罰金刑が定められていない点に注意が必要です。
起訴され有罪となると、必ず拘禁刑になるため、被害者と示談するなどして不起訴処分を得ることが、他の犯罪にも増して重要となります。
強要罪の刑罰
強要罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑となっています。罰金刑が定められていない点に注意が必要です。
恐喝罪の箇所でも述べたように、起訴され有罪となると、必ず拘禁刑になるため、被害者と示談するなどして不起訴処分を得ることが、他の犯罪にも増して重要となります。
脅迫・恐喝・強要罪の違い
脅迫罪は、人に対して、生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を告知した場合に成立します。
恐喝罪は、暴行または脅迫により、相手を畏怖させ、財物を交付させるまたは財産上の利益を得た場合に成立します。
強要罪は、暴行または脅迫により、人に義務のないことを行わせた場合に成立します。
脅迫罪について
脅迫罪は、「殺す」「痛い目に遭わせる」「指を詰めろ」等、人に危害を加えることを伝えることによって成立します。
面と向かって脅迫する態様もあれば、SNSのメッセージ、手紙などで脅迫するという態様もあります。脅迫罪は未遂罪の処罰規定はないため、脅迫未遂罪はありません。
脅迫罪の時効
刑事事件で時効期間が過ぎると、検察官が起訴することができなくなります。
脅迫罪の時効期間は、3年です。
害悪の告知
害悪の告知は、被害者またはその親族の「生命」「身体「自由」「名誉」「財産」に対して危害を加えることを伝える行為のことを言います。
害悪の告知を伝える方法は様々なものが考えられ、口頭の発言、文書、電話、メール、SNSといった方法でも害悪の告知を伝えたことになりえます。
脅迫の対象
害を加える旨の告知対象となるには、本人またはその親族に限られます。ですので、友人や恋人に対する害悪の告知をおこなっても、脅迫罪とはなりません。
恐喝罪について
恐喝罪は、暴行または脅迫を用いて、相手方を畏怖させ、財物または財産上の利益を得る犯罪です。
恐喝罪は、いわゆるカツアゲと呼ばれる態様で金銭の交付を受ける場合に成立します。
また、恐喝罪は、未遂罪を処罰する規定があるため、暴行、脅迫をしたが、相手が金を交付しなかった場合でも、恐喝未遂罪が成立します。
恐喝罪の時効
恐喝罪の時効期間は7年です。
親族間の場合の特例
恐喝罪は、親族相盗例の規定が適用されます。
親族相盗例は、配偶者、直系血族又は同居の親族を被害者として恐喝罪等の一定の犯罪行為を犯した場合、刑が免除されることを言います。
配偶者、直系血族、同居の親族以外に対して恐喝罪を起こした場合は、親告罪として取り扱われます。
権利の行使と恐喝罪
お金を貸している相手に、お金の返還を請求することは、正当な行為です。
しかし、お金の返還を求めるためなら、何をしてもよいというわけではありません。お金の返還を請求する際、「金を返せないなら指を詰めろ」など、脅迫するような言葉を用いた場合、社会相当性を逸脱した行為として、恐喝罪が成立する可能性があります。
強要罪について
強要罪にあたる行為の例として、カスタマーハラスメントの事例があげられます。
客が店員に対してクレームをつけ、土下座を要求する行為であり、このような事例は、ニュースでも報道されることがあると思われます。
強要罪は未遂でも処罰されるため、土下座を強要して、相手が従わなかった場合でも強要未遂罪として処罰される可能性があります。
強要罪の時効
強要罪の時効期間は3年です。
関連する犯罪
強盗罪
強盗罪は、相手が犯行抑圧する程度の暴行脅迫を用いて、相手の財物を奪う、または財産上の利益を得る罪です。
暴行脅迫を用いて財物を得る等することは、恐喝罪と類似していますが、恐喝罪は、暴行脅迫を受けたとはいえ、その程度が相対的に低く、財物を任意に交付した場合です。
名誉毀損罪
名誉棄損罪は、不特定多数の人が認識しうる状態で、人の社会的評価を下げるような事実を適示することにより成立する犯罪です。
不特定多数を対象としている点で、脅迫罪は、特定の人に対する害悪の告知であること異なります。
威力業務妨害罪
威力業務妨害罪は、人の意思を抑圧するに足りる勢力を示すことにより業務を妨害することによって成立する犯罪です。
過度なクレームにより、店舗の営業ができなかった場合、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。
人質による強要行為罪
ニュース等で、人質を取って建物に立てこもるという事件を耳にすることがあるかもしれません。
人質を取って建物で籠城した時点で、監禁罪や建造部侵入罪が成立すると思われます。
そして、人質を取ったうえで、第三者に義務のないことを要求した場合、人質による強要行為罪が成立る可能性があります。
また、人質による強要行為罪は未遂に終わった場合でも処罰されます。
脅迫・恐喝・強要罪で逮捕される場合
脅迫、恐喝、強要罪は、現行犯逮捕は少ないと思われます。
加害者が被害者を恐喝する場合、密室で行われることが多く、痴漢や盗撮事件のように他の目撃者に現行犯逮捕されるというようなことは考え難く、脅迫されたり恐喝されたりしている被害者が加害者を現行犯逮捕するといった事態も想定し難いでしょう。
脅迫、恐喝等の被害にあった被害者が、後に警察等に相談し、被害届を提出すること等によって事件が発覚し、加害者を逮捕するに至る場合が多いと言えます。
脅迫・恐喝・強要を行ってしまった際の対応
脅迫罪、恐喝罪、強盗罪はいずれも被害者が存在する犯罪です。
被害者が存在する犯罪では、身柄釈放、されるか否か、起訴されるか否かについて、被害者と示談ができたか否かが、大きく影響します。
身柄釈放や不起訴処分を目指して、弁護士が弁護活動をすることになります。
脅迫・恐喝・強要の罪に問われた場合は弁護士へ相談を
脅迫、恐喝、強要罪は、被害者への接触のおそれが懸念されるためか、身柄拘束される事件も多いと思われます。
そして、上述のように被害者と示談ができるかが最重要であり、被害者と示談するには、弁護士に依頼することが必要です。
ですので、脅迫、恐喝、強要の罪に問われた場合は、直ぐに弁護士に相談してください。