【駐車場内での事故】基本的な過失割合の考え方と修正要素
駐車場内で、早く駐車して買い物や商業施設へ遊びに行きたいといった焦りを抱いた経験はありませんか?
スーパーやショッピングモールでは、駐車場内での事故が多く発生しています。駐車しようとバックで走行中に後ろから追突されることも稀ではありません。
駐車場内の事故では道路上の事故とは異なり、保険会社から5:5で過失割合が提示されることも多くありますが、過去の判例では事故状況に応じて5:5ではない事案も多くあります。
この記事では「駐車場内の事故」に着目し、どのような事故形態になるのか、弁護士法人ALGの解決事例などを例にあげて解説していきます。
目次
駐車場内での事故の過失割合
駐車場内で発生した事故は道路交通法の適用を受けませんが、任意保険を使用する場合、道路上の事故と同様に、まずは過失割合についての算出がおこなわれます。
駐車場内の事故は意外と多く、事故状況に応じた基本の過失割合が一応決まっています。
「過失割合」とは相手のいる事故が起きてしまった時に、その事故における「自分の過失(責任)」と「相手の過失(責任)」を割合にしてあらわしたものをいいます。
その割合について、検討基準となるのは過去の事例です。実際の交通事故の態様と類似した過去の判例等を基準にして、個別に実際の事故状況へあてはめて過失割合を判断します。
過失割合に決め方については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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四輪車同士の事故
駐車場内の事故で1番多いのは車と車の事故です。
以下で車と車の事故について解説していきます。
【入庫する車と直進車】 2対8
バックしながらハンドルを切って車を駐車しようとしているBとBの後方から直進してきたAとの間で衝突事故が起こった場合、Bの過失割合は20%、Aの過失割合は80%となるのが一般的です。
駐車場で駐車区画に自動車が侵入しようとする場合は、周囲の自動車は駐車しようとしている自動車を妨げないようにすべきですから、駐車スペースへ進入している車は、通路の進行よりも優先度が高いといえます。
また、以下の場合では、それぞれ過失修正されることがあり、「過失割合A:B=8:2」ではなくなることもあります。
- Aが徐行していなかった場合 A:B=9:1
- Bが急発進した場合 A:B=7:3
駐車スペースへ入ろうとしたBを見つけたAは、停止して待つか、Bと衝突しないように考えて走行する義務があると考えられます。
【出庫する車と直進車】 7対3
駐車スペースから出庫しようとしているBと、直進方向に進行しているAとの間に衝突事故が起きた場合、Bの過失割合は70%、Aの過失割合は30%となるのが一般的です。
入庫者とは違い、直進するAが優先されます。
また、以下の場合では、それぞれ過失修正されることがあり、「過失割合A:B=3:7」ではなくなることもあります。
- Aが順路に反して進行してきた場合 A:B=4:6
- Bがわき見して急発進した場合 A:B=2:8
駐車場から出庫する際は、通路を進行してくる車があることに気を付け、Bはライトをつけるなど、「今から出庫する」という合図を出すだけでなく、左右に気を付けながら徐行しなければなりません。
【十字路での出合い頭】 5対5
駐車場内の十字路でAとBが出合い頭に衝突した事故です。AとBどちらも空いている駐車スペースを探しながら、方向転換やバックなど様々な動きをすることが予想されます。
このような事故ではA:B=5:5となるのが一般的です。
また、以下の場合では、それぞれ過失修正されることがあり、「過失割合A:B=5:5」ではなくなることもあります。
- Bの通路が狭く、Aの道路が明らかに広い通路である場合 A:B=4:6
- Aが一時停止無視した場合 A:B=6:4
通路を交差部分に進行する車両はどちらも等しく注意義務を負います。一般道路の交差点では、「左方優先」の法則がありますが、駐車場内の通路では適用されないため、注意が必要です。
また、駐車場によっては、進行方向が定められ侵入を禁止されている場合があります。これらは、法令とは異なりますが、過失割合の際にはA15%~20%の修正要素として働き得ますので、標識の指示に従い運転することは重要です。
【T字路での右左折車と直進車】5対5
駐車場内のT字路で直進するAと左右に進行するBとの衝突事故では、A:B=5:5となるのが一般的です。
以下の場合では、それぞれ過失修正されることがあり、「過失割合A:B=5:5」ではなくなることもあります。
- Bが一時停止をしなかった場合 A:B=4:6
- Aがわき見運転をしていた場合 A:B=6:4
この場合でも、駐車場内においては双方に注意義務があります。
【入庫する車と駐車中の車】 10対0
駐車場内の駐車スペースに進入するBが隣に停車しているAに衝突した事故です。
この事故形態ではBに100%の過失があり、Aには原則として過失はありません。
Aがクラクションを鳴らさなかったら過失になるのか
保険会社の中には、Aがクラクションを鳴らさなかったとして過失割合をA:B=1:9と主張してくることもあるようです。
確かに、駐車場の通路で停止している際に、B自動車が駐車しようとバックを開始しに逆突された場合には、クラクションを鳴らしたかということが問題にされ、停止していたA車に過失が認められるケースもあります。
しかし、A車が駐車スペースに停車している場合には、あまり過失が認められることはなさそうです。
ただ、バック駐車してくるBに対し、クラクションを鳴らす余裕があったのに鳴らさなかった場合には、Aに過失があると判断される余地もあり得るので、クラクション等により注意喚起ができるのであれば、行った方が良いでしょう。
【入庫する車同士(バック同士)】 5対5
駐車場内の駐車スペースに停車しようとしてAとBがバック同士で衝突した事故では過失割合がA:B=5:5となるのが一般的です。
また、以下のような場合では、それぞれ過失修正されることがあり、「過失割合A:B=5:5」ではなくなることもあります。
- Aがわき見運転をして、急制動をした A:B=6:4
- Bが携帯電話で通話しながら運転していた A:B=4:6
駐車場内でバック同士の事故では後方に気を取られ、前方不注意で衝突してしまうこともあります。
駐車場内でバック駐車するときは周りに注意しましょう。
車と歩行者の事故は9対1
ここからは、駐車場内で、自動車と歩行者が衝突した事故です。
左は、駐車区画内に歩行者がいた状況です。
駐車スペースは車両を駐車する場所でもあり、歩行者が乗車、降車する場所でもあります。ただ、駐車区画であったとしても、自動車は歩行者の存在に注意しなければなりません。
右は、駐車場の通路上に立っている歩行者にぶつかった状況です。
駐車場の通路を進行する車両は、人の往来を予見し、歩行者の通行を防がない速度と方法で走行しなければなりません。
よって、どちらも自動車:歩行者=9:1となるのが一般的です。
しかし、以下のような場合では、過失割合が修正されることがあります。
- 歩行者に急な飛び出しがあっ場合 自動車:歩行者=2:8
- 自動車がわき見運転をしていた場合 自動車:歩行者=10:0
駐車場内は、歩行者が予想外の場所にいることもあるので、特に歩行者には十分注意する必要があります。
バイクや自転車との事故はどうなる?
車とバイク、車と自転車で事故を起こしてしまった場合には、交通弱者であるバイクや自転車の方が過失割合は小さくなる傾向にあります。
しかし、以下の場合では、バイクや自転車の過失が多く修正される要素となります。
- バイクが徐行していなかった場合
- 自転車の片手運転
駐車場内は、車やバイク、自転車、歩行者など様々な方が利用します。
空いている駐車スペースを探すことだけに集中せず、周りにも気を配り運転しましょう。
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駐車場内での事故の過失割合が修正される要素と割合
交差点で片方の通路の幅が明らかに広い | 10% |
---|---|
走行車が徐行していない | 10% |
一時停止・通行方向表示等の違反 | 15~20% |
急な飛び出しがあった場合 | 10% |
飲酒していた | 20% |
歩行者が幼児(6歳未満)・身体障害者等の場合 | 10% |
歩行者が児童(6~13歳)・高齢者の場合 | 5% |
隣接区画で乗降していた場合 | 10% |
わき見運転等著しい前方不注意 | 10% |
居眠り運転 | 20% |
駐車場内の事故では、事故の当事者双方に過失が付くことが多く、10:0になることは少ないとされています。
駐車場内で起きた、動いている車同士の事故は5:5と判断されることも多いですが、過失割合には様々な修正要素があり、交通弱者である歩行者でさえも過失修正される場合があります。
上記の表では、過失修正される内容をまとめました。上記の表以外にも、修正要素はありますが、交通事故に詳しくないと分からないことだと思います。
少しでも、相手方保険会社から提示された過失割合に違和感を持った場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。
適切な過失割合の主張をするためにできること
過失割合は慰謝料など受け取れる損害賠償に大きく影響を及ぼします。
そのため、適切な過失割合を主張するために、事故の状況証拠はできるだけ保存しておきましょう。
具体的な方法として次のような方法があります。
- 事故の状況をメモしておく
- 事故現場、事故車両の写真を撮っておく
- 目撃者に警察への証言をお願いする
- ドライブレコーダーを装着している場合は、録画が上書きされないよう、録画の停止やバックアップを取る
- 加害者との会話を録音する
駐車場内の事故の過失割合についての裁判例
駐車中のバック同士の事故
A車が駐車場の入り口から、進行してすぐのところで、大きな弧を描いて進行してくるB車を発見した。
A車は、B車が弧を書いて前進した後バック向きに駐車スペースに駐車しようとしていると思ったため、車をやり過ごそうと思いB車の動向を確認したまま停車させたが、B車は前方を確認せず、通路に停車しているA車に前方から衝突した。
A車は、B車の異常に気付き停車させているのであるから、過失割合は0か、少なくとも1割程度であると争った。
これに対し、裁判所はB車に注意義務があることを認めながらも、A車に事前に左方向指示器で合図するなど、B車の動静に応じた適切な措置をとるべきだったとして、A車とB車の過失割合を2:8と判断しました。
(大阪地方裁判所 令和3年12月15日判決)
駐車場内で過失割合10対0の事故
駐車しようと駐車区画に進入してきたA車がその隣に駐車していたB車に接触していった事故です。
通常、駐車して完全に停車していれば、接触してしまったA車の過失割合が100%となりますが、この事故では停車していたB車が駐車区画からはみ出して駐車していたという事情がありました。
そこでAはこの事故はBがはみ出して駐車していたから悪いと主張しました。
裁判所は、駐車区画に駐車する際、駐車区画内の障害物の存在を確認し、安全に駐車させる注意義務があるとしたうえで、もし障害物などがあり、駐車できない状態であれば駐車をあきらめるべきだとしてAの過失を100%認めました。
(東京地方裁判所 平成26年3月4日判決)
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【弁護士法人ALGの解決事例】駐車場出入り口の事故で8:2と提示された過失割合を0:5に修正
事故様態
ご依頼者様の自動車が駐車場から出ようと、出口付近で停止したところ、駐車場内の駐車スペースに停車しようとした相手方と衝突した事故です。
ご依頼経緯
相手方保険会社はこの事故の過失割合を2:8(ご依頼者様)としたため、当法人にご相談いただきました。
交渉結果
当方弁護士は、事故状況を詳細に聞き取って、追加の証拠資料を集め、過失割合について相手方保険会社と交渉を重ねました。
そして、最終的に5:0(ご依頼者様)という過失割合で相手方保険会社と合意に至りました。争点に対し追加の資料収集を行い、積極的に交渉を重ねたことで、ご依頼者様も納得していただける結果を残すことができました。
駐車場内における事故の過失割合に関するQ&A
駐車場内における事故の過失割合について質問にお答えしていきます。
駐車場内の駐停車禁止場所での事故の過失割合はどうなりますか?
駐車禁止場所であっても、駐車している自動車にぶつけた場合は、基本的にぶつけた自動車に責任があります。そのため、10(質問者):0が基本的な過失割合でしょう。
もっとも、駐車禁止場所や、駐車の仕方が極めて悪質な場合には、駐車していた自動車にも一定の責任が認められ、過失割合が10%~20%程度修正される場合があります。
そのため、駐車禁止場所に停車していた車にぶつけてしまった場合、仮に、基本過失割合が修正されるような状況が、駐車側にあれば、過失割合が9(質問者):1と修正される場合がありえます。
駐車場での事故の最も多い事故パターンは何ですか?
駐車場内の事故では、「後退時」が最も多いです。
駐車場では道路のように交通規制がないため、駐車スペースを見つけた車が、周囲を確認せずいきなり後退しようとしたり、駐車スペースを探して走行したりと不規則な動きをする車が多くなります。
【まとめ】駐車場内での事故は複雑なため、不利な過失割合で示談しがちです。過失割合でお困りの場合は弁護士にご相談ください
駐車場内の事故では、過失割合の判断が難しく、相手方保険会社の提示する過失割合が正しいとは限りません。
納得のいかない過失割合で示談交渉してしまうと、損害賠償請求で大きな損をしてしまうおそれもあります。
過失割合に納得がいかないときは弁護士に相談しましょう。
弁護士なら、過去の判例から正しい過失割合を導くことができます。
また、示談交渉を任せることができるため、相談者様の負担を減らすことができるだけでなく、損害賠償は1番高額な「弁護士基準」で算出するため損害賠償額が提示金額より高額になる可能性もあります。
弁護士に依頼すると高額になるのではないかと心配な方は、ご自身の保険やご家族の保険に「弁護士費用特約」が付帯していないか確認してみましょう。
駐車場内の事故でお困りの方は私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
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