事情聴取はどんなことをするの?不利にならない対応を解説!

事情聴取はどんなことをするの?不利にならない対応を解説!

監修
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

警察等から事情聴取を求められた場合、ほとんどの人が驚き、不安になってしまうでしょう。

状況によっては、自分が疑われているのではないか、このまま逮捕されてしまうのではないかといった恐怖心が生じることもあるかもしれません。

聴取を断るべきではないのか、遠くへ逃げてしまうべきではないかといったことを考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それらの行為にはリスクが伴うため、実行するのはおすすめできません。

ここでは、事情聴取とはどのような場合に行われるのか、聴取を拒否するとどのようなリスクが生じるのか、聴取を受ける際に気を付けるべきことは何か等について解説します。

事情聴取とは

事情聴取とは、被疑者や参考人が、捜査機関から事件についての供述を求められる手続きです。

逮捕・勾留された対象から話を聞く場合には事情聴取とは呼ばず、取調べと呼ぶのが通常です。

聴取の際には、原則として呼ばれた者が任意に捜査機関へ赴き事情を尋ねられます。

そして、被疑者や参考人が話した内容は供述調書にまとめられ、署名・捺印を求められます。

署名・捺印のある供述調書は重要な証拠となり、裁判でも利用されることになります。

逮捕された場合の取調べには、起訴するか否かを決められるまでに最大23日という時間制限がありますが、任意の事情聴取が繰り返されている間には制限がないため、何度でも聴取を受けることになるおそれがあります。

事情聴取されるのはどんな場合か

事情聴取は、事件が発生した際に目撃者等の参考人として話を聞かれる場合や、被疑者として自白等の獲得のために呼び出される場合があり、既に逮捕状が発行されていて警察等に呼び出してから逮捕する予定であるケースもあります。

被疑者

被疑者とは、犯罪を行ったと疑われているが起訴されていない者のことです。

マスコミでは「被害者」との混同を防ぐために「容疑者」という言葉を使います。

なお、被疑者が起訴された後は被告人と呼ばれるようになります。

警察等の捜査機関は、被疑者を起訴するための証拠を集めようとしますが、特に物証が乏しい場合には、自白は起訴のための重要な証拠であると考えられています。

そのため、被疑者は事情聴取を求められるのです。

参考人

参考人とは、被疑者を除く事件の関係者であり、被害者や目撃者等のことです。なお、重要参考人とは、参考人の中で疑いの強い者を指します。

参考人の場合には、警察官等に黙秘権について告知する義務が課せられていません。

しかし、捜査が進んで疑いが深まることによって、参考人であった者が被疑者になる場合があるため、黙秘権等について知っておくことは有益です。

事情聴取と取り調べは違う?

事情聴取は法律で定められた言葉ではありませんが、一般的には逮捕・勾留されていない被疑者や参考人に対する任意の取調べのことを指します。

取調べは、身柄を逮捕・勾留された相手に対しても、されていない相手に対しても用いられますが、取調べという言葉から刑事が被疑者を厳しく追及する様子をイメージする人も多いため、任意の場合には事情聴取という言葉を用いるのです。

事情聴取を受ける際の流れ

事情聴取を受ける際には、まず警察等から電話によって期日を指定され呼び出されます。

その期日に警察署等に出頭すると、取調室に連れて行かれて聴取を受けることになります。

かつての事情聴取は極めて長時間に及ぶこともありましたが、近年では、過度に長い時間では行われなくなってきています。

とはいえ、否認事件については、現在でも事情聴取が長引く傾向にあるようです。

1回の呼び出しで用が済まなければ、何回か呼び出されることがあります。

そのまま逮捕・勾留されずに嫌疑が固まれば、身柄を伴わない検察官送致(いわゆる書類送検)をされることになります。

拒否することはできるか

事情聴取は任意に応じるものなので、拒否することは可能です。

ただし、被疑者の場合、事情聴取を拒否すると逮捕されるリスクも生じるため、やみくもに拒否するのはおすすめしません。

弁護士付添で取調べを受けられるか

残念ながら、現在の制度では、事情聴取の際に弁護士を同席させる権利は認められていません。

事情聴取にかかる時間

1回の事情聴取は、短時間で終わる場合も多いです。

ただし、証拠が乏しく、被疑者が否認している場合には、時間が長引くこともあるようです。長時間に及ぶ場合には、途中で何回かの休憩を挟みます。

あまりにも長時間に及ぶ事情聴取は、任意性が疑われてしまい、自白が証拠として採用されないリスクを生じさせるため、捜査機関は長時間の事情聴取を行わなくなってきているといわれています。

事情聴取の回数に制限はあるか

事情聴取の回数に制限はありません。

被疑者が逮捕された場合には、逮捕から最大でも23日以内に起訴するか否かが決定されるため、取調べの回数や時間等が制限されることになります。

しかし、任意同行や任意出頭により事情聴取を繰り返している場合には、逮捕した際のような期限が設けられていないため、公訴時効が成立するまでは何度でも事情聴取を実施することが可能となります。

事前に対策できることはあるか

事情聴取を受ける前に、自身が被疑者と参考人のどちらであるかを警察等に確認しておくことで、より適切な対応が可能となります。

自身が被疑者である場合には、事前に弁護士に相談・依頼しておくことで、不当な事情聴取から身を守りやすくなります。

事情聴取の内容について

事情聴取の際には、以下のような事項を質問され、事件に関する話によって供述調書が作成されます。

  • 事件に関して知っていること
  • (被疑者である場合には)生い立ち等の身上に関すること

供述調書には、被害者に関する以下の内容について記載されます。

  • 出生地
  • 学歴、職歴
  • 前科、前歴
  • 身長・体重 等

一見、事件を解決するための役に立たないように思えるかもしれませんが、被疑者の交友関係等が事件を解決するための手掛かりとなる可能性もあるため、それらの内容についても記載されるのです。

録音は可能?

事情聴取を密かに録音することは可能です。

実際に、密かに録音された事情聴取の音声によって、警察の不適切な事情聴取の内容が明らかになったケースがあります。

しかし、事情聴取を録音する権利は法律上認められておらず、録音していることに気づかれれば、それをやめるように言われるでしょう。

録音を断られた場合に備えられて、自己にとって不利な供述をしないよう、取調べ前に弁護士へ相談・依頼して事態を打開することが望ましいでしょう。

警察と検察で事情聴取の内容は違うのか

警察では、検察に被疑者を起訴してもらうための証拠を集めるために事情聴取が行われます。

一方で、検察では一般的に、警察において行われた事情聴取について確認し、起訴するか否か、略式手続きを行うか否かを決定するために行われます。

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事情聴取で気を付ける対応

事情聴取には原則的に応じることが望ましいのですが、その際には注意しておかないと後で不利益を被るおそれがあります。

以下で、事情聴取の際に気を付けるべきことについて解説します。

警察・検察官の誘導に惑わされない

自白偏重が問題視されても、自白が有力な証拠であると考えられていることには変わりありません。

そのため、被疑者が事情聴取を受ける際には、捜査機関の人間によって、自白させるための圧力を受け続けることになります。

例えば、事情聴取の時間を長引かせることにより、自白するまで終わらないという印象を与える手法があります。

近年ではこの手法が問題視され、長時間の事情聴取は行われなくなってきていますが、繰り返し呼び出す等の手法も考えられます。

事情聴取の終盤等、被疑者の注意力が落ちてきたタイミングを狙って、不利な供述調書が作成されるおそれもあります。

捜査機関にとって有利な文言が盛り込まれているのに気づかずに署名・捺印すると、それが有罪を推定する根拠にされるリスクが生じます。

黙秘権を行使する権利

黙秘権とは、要は、言いたくないことを言わなくても良い権利をいいます。

憲法によって「自己に不利益な供述」を強要されないことが保障されていますので、その権利を守るために、捜査機関には被疑者に黙秘権を告知する義務が課せられています。

黙秘権を行使することによって、捜査機関が物証の乏しい状況で、被疑者の自白を主な根拠として有罪にしようとする狙いを阻止することが可能です。

供述調書にサインする時の注意

供述調書に署名・捺印をすると、それは証拠として扱われ、後から署名・捺印を撤回することはできないと考えるべきです。

そして、供述調書の内容が犯行を自白したものだと解釈される場合があるだけでなく、犯人だという疑いを補強する内容になっている場合もあります。

供述調書は被疑者から聞き取った内容に基づいて作成されますが、記載される際に、捜査機関にとって都合の良い内容に変えられてしまう場合があります。

犯行を直接的に自白する内容に変更されていれば気づきやすいですが、犯罪の構成要件に該当していたこと(故意に行動したこと等)を示唆する内容になっている等、巧妙に有罪を推定させるようなものが作られるおそれも否定できません。

内容に違和感がある場合、サインせず弁護士へご相談ください!

供述調書が少しでも自分の意図と異なる内容になっている場合には、供述調書への署名・捺印は拒否しましょう。

また、不自然な空白がある等、違和感がある場合には署名・捺印を行ってはなりません。

もしも、おかしな供述調書が繰り返し作成されているのであれば、耐えきれなくなる前に弁護士にご相談ください。

事情聴取に関するよくある質問

以下で、事情聴取について質問されることが多い事項について説明します。

途中退席は可能ですか?

事情聴取の段階では、まだ任意であるため、自由に退席することが可能です。

これを強引に押しとどめる等した場合には、事実上の逮捕が行われたと考えることも可能であるため、違法捜査とみなされるケースがあります。

ただし、自身が疑われている状況で突然退席すると、逃亡を図ったと考えられるおそれもあります。

予定があるため、時間になれば退席する必要があるなら、事前にそのことを伝えておき、再度の聴取にも応じる意向であると伝えておくことが望ましいでしょう。

事情聴取では携帯を取り上げられますか?

事情聴取の段階では、私物を没収されることはないので、携帯電話等を取り上げられることはありません。

そのため、事情聴取で困った場合には、その場で弁護士に連絡することも可能です。

もしも、それを制止されるようであれば、任意に行われる事情聴取とはいえなくなります。

ただし、逮捕されてしまった場合には、携帯電話は取り上げられ、弁護士以外の人物と話をすることが難しくなります。

事件の内容によっては、連絡した相手や撮影した画像等を見られてしまうことがあるため、逮捕されてしまう懸念があるのであれば、そのことは覚悟しておきましょう。

警察の事情聴取を自宅で行うことはできますか?

事情聴取は任意であることもあり、警察署の取調室ではなく、自宅で行ってもらうことは可能です。

ただし、原則は警察署に赴くことであり、自宅等においての事情聴取は例外的な対応です。

被疑者であれば、そのような対応をしてもらうのは難しいと考えられますが、参考人であれば便宜を図ってもらえる可能性が高く、迎えに来てもらう等の対応をしてもらえる場合もあります。

事情聴取で嘘をつくとどうなりますか?

事情聴取で嘘をついたとしても、それによって直ちに犯罪になるとはいえません。

ただし、参考人が嘘をついて被疑者をかばった場合には、後に犯人隠避罪が成立するおそれがあります。

また、嘘をついたことが明らかになった場合、捜査機関が供述に信用性がないと考えて疑いを深めるおそれがあります。

また、それによって逃亡や罪証隠滅のおそれがあると解釈されれば、逮捕されてしまうリスクが生じます。

事情聴取を行うのは捜査のプロであり、おかしな点があれば追及されることになるでしょう。

嘘をついても、他の点で辻褄が合わなくなり、結局全てを話すことになるおそれがあります。

遠方からの事情聴取の場合、交通費は出るのでしょうか?

事情聴取に赴く際の交通費は、原則として自分で支払うことになります。

そして、自身が被疑者である場合には、費用がかかることを理由として事情聴取を断ると、逃亡や罪証隠滅のおそれがあるとして逮捕されるリスクが生じるため、お金がかかっても出頭するべきでしょう。

一方で、自身が目撃者等の参考人であれば、警察等の方から来てくれたり電話による聴取を行ってもらえたりする便宜を図ってもらえる場合もあります。

事情聴取では冷静に説明することが難しい場合も多いです。ぜひ弁護士へご相談ください

事情聴取に慣れている方は少ないため、冷静に全てをありのまま話して、捜査機関が考えるストーリーを否定し続けることは困難です。

しかし、捜査機関の誘導によって、不相当に重い罪を科せられたら、今後の人生に深刻な影響が生じかねません。

そのような事態を避けるためには、不利な供述調書に署名・捺印することのないようにする必要がありますが、否認した場合における捜査機関の執拗な事情聴取に立ち向かうためには、心の支えとなれる味方が必要です。

被疑者として事情聴取を求められた場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。

逮捕後72時間以内弁護活動が運命を左右します

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逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。

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監修 : 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

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