任意同行とは何か?求められた場合の注意点


ある日突然、警察から任意同行を求められたら、戸惑ってしまうのも当然です。
場合によっては、任意同行に応じると悪いことが起こるのではないか、そのまま逮捕されてしまうのではないかといった恐怖が生じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、任意同行を拒否すると、無用な疑いをかけられたり、状況によっては逮捕されたりするリスクがあるため、必ずしも拒否すれば良いとはいえません。
ここでは、任意同行を求められた際に、なるべくマイナスに働かないようにするための対応について解説していきます。
目次
任意同行とは?
任意同行とは、犯罪の捜査等のために、警察官等が被疑者に対して任意に出頭を求め、捜査機関へ同行させることです。
任意とは、本人の自由な意思に任せるという意味であるため、逮捕の際のように手錠をかけたり、逃げられないように押さえつけたりするといった行為は、現行犯逮捕が可能になった場合等を除いて認められません。
しかし、任意同行を求めた警察官等は、同行を求めた対象について、何らかの疑いを抱いているケースが多いと考えられます。
そのため、有無を言わせないような態度を取ることもあり、断ることができないかのような圧迫感を生み出すと考えられます。
また、手首を掴む等の有形力の行使が許容されたケースも存在します。
任意同行の種類
任意同行には、「司法警察活動としての任意同行」と「行政警察活動としての任意同行」の2種類があります。
司法警察活動としての任意同行は、被疑事実(犯罪事実)の捜査を目的とした任意同行です。
行政警察活動としての任意同行は、公共の安全および秩序の維持回復を目的とした任意同行です。
どちらの場合であっても、拒否することは可能です。
しかし、拒否することによって、「やましいことがあるから拒否している」と疑われてしまう等、得にならない場合もあり得ます。
任意同行と任意出頭の違い
任意同行の場合、同行を求められた者は、警察官等とともに捜査機関に赴きます。
一方で、任意出頭の場合には、出頭を求められた者は、捜査機関から指定された期日に、指定された者が自ら赴きます。
任意出頭であれば呼び出されるだけですが、任意同行の場合には警察官等がやってくることになります。
そのため、緊急性が高い場合や、逃走を防止する必要があると考えられている場合であることを念頭に置く必要があるでしょう。
逮捕ではありません
任意同行を求められ、それに応じたとしても、その時点では逮捕されたわけではありません。
逮捕と任意同行の大きな違いとして、行動の自由の有無が挙げられます。
逮捕されると行動の自由が大きく制限されますが、任意同行であれば、法律上いつでも退去することができます。
ただし、むやみに退去しようとすると、逃亡しようと考えていると受け取られてしまうリスクがあり、逮捕につながるおそれがあります。
予定があって退去する必要がある場合等には、事前に伝えておくべきでしょう。
どんな場合に任意同行の要請があるか
任意同行が行われる場面としては、3つのパターンが考えられます。
1つ目は、捜査機関から疑われている者が、捜査のために任意同行を求められるものです。
2つ目は、事件について事情を知っている者が、参考人として任意同行を求められるものです。
3つ目は、警察官から職務質問を受けた者が、交通の妨げになったり、その場で質問することが職務質問を受けた者にとって不利になったりする場合に、任意同行を求められるものです。
任意同行を求められた場合には、上記のどのパターンによるものなのかを判断する必要があります。
特に、1つ目のパターンであれば、任意同行を拒否しても、逮捕状が請求されて逮捕されるおそれがあるので、慎重に対応を検討しなければなりません。
任意同行を求められたら
警察官等から任意同行を求められたら、忙しい等の理由で、断りたいと思うかもしれません。
果たして任意同行は、本当に断ることができるのでしょうか?
気になるところかと思いますので、詳しく解説していきます。
拒否できる?
任意同行は、「任意」という言葉からもわかるとおり、応じるか応じないかは同行を求められた者の自由とされています。
ただし、制度上は拒否することが可能であっても、拒否することが得になるかは別の問題です。
事実上拒否できない場合や、軽微な犯罪の疑いがかけられているといった特定の状況では、拒否することによって不利になる場合もあるからです。
特に、疑われる心当たりがあるならば、拒否すると逮捕につながるリスクがあるため、慎重に対応を検討した方が良いでしょう。
拒否した場合どうなる?
任意同行を拒否すると、同行を求められた者が被疑者であり、捜査機関で犯行の事実があるという心証が形成されている場合、逮捕に向けて動かれてしまうおそれがあります。
そもそも、任意同行を拒否したすべての被疑者が逮捕されるわけではありません。
逮捕に向けて動かれる要件としては、被疑者が逃走したり、証拠を隠滅したりするおそれがあることが挙げられます。
また、30万円以下の罰金や拘留または科料にあたる罪については、正当な理由なく出頭の求めに応じないことが逮捕の要件とされています。
以上のことから、任意同行を拒否したことによって逃走のおそれが生じると判断されれば、逮捕されてしまうリスクが発生します。
逮捕されてしまうと、自由が制限される等の不利益が生じるため、可能な限り逮捕されるリスクは避けることが望ましいと考えられます。
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任意同行に応じる場合
以下で、任意同行に応じることを想定して、疑問に思う方が多い点についてみていきましょう。
弁護士の付添は可能?
任意同行の際には、弁護士に依頼して、付き添ってもらうことが可能です。
ただし、取調室の中まで同行することについては、拒否されてしまう場合が多いと考えられます。
日本では、事情聴取で弁護士に立ち会ってもらう権利が認められていないためです。
しかし、任意同行であれば自由に退室する権利があります。
そこで、弁護士に待機してもらい、困ったことがあったらアドバイスをもらう方法等が考えられます。
録音は可能か?
任意の取り調べの場合には、ひそかに録音することは可能です。
実際に、そのような方法で、取り調べを行った警察官が暴言を吐いた事実が明らかになったケースもあります。
しかし、現在の日本では、取り調べを受ける者がそれを録音する権利が認められていません。
そのため、もしも録音していることに気づかれると、録音をやめるように求められると考えられます。
取り調べはどれくらい時間がかかるか?
警察の取り調べは、原則、1日8時間以内とされています。
比較的軽微とされている罪に関する場合や、被疑者が素直に罪を認めている場合等であれば、1日2時間以内で終わるケースもあるようです。
しかし、被疑者が否認しているケースでは、可能な限り長時間の取り調べが行われるおそれがあります。
なお、逮捕されたケースでは48時間以内に検察官送致を行う等の時間制限がありますが、任意の取り調べには、そのような時間制限がないため、長期間に及ぶおそれがあります。
身に覚えがない場合の対応
任意同行を求められた際に、まったく身に覚えがなければ、拒否したくなるのは当然のことです。
しかし、状況によっては、任意同行を拒否すると、逮捕されてしまうおそれがあることは前述したとおりです。
そこで、任意同行に応じたとしても、なるべく調書にサインしないことが重要となります。
なぜなら、自身の供述とはニュアンス等の異なる調書が作成されている場合があり、それが有罪の証拠とされてしまうリスクがあるからです。
調書に署名してしまうと、そこに書かれた内容が事実であると認めたことになってしまうため、後になって調書の内容が間違っていると訴えても訂正してもらうのは極めて困難です。
自身の発言が不正確に記載されていたり、不自然な場所に空白があったりする等、少しでもおかしいと思ったら、調書への署名は拒否しましょう。
できる限り早く弁護士へ相談しましょう
警察に任意同行を求められたことのある人は、あまりいないでしょう。
慣れない状況で、身に覚えのないことを自白させられたり、誘導されて罪を重くしてしまったりしないためにも、ぜひ弁護士にご相談ください。
自分に不利な自白等をしてしまった後では、それを覆すのは困難になります。
そのため、なるべく早い段階で相談していただくことが望ましいです。
任意同行に関するよくある質問
以下で、任意同行に関して質問されることが多い点について解説します。
任意同行されやすい時間帯はあるの?
職務質問から任意同行されやすい時間は不明であるものの、被疑者として任意同行を求められやすいのは、基本的に朝であると考えられます。
なぜなら、任意同行を求める対象が家にいる場合が多いのは、出勤や通学等の前である朝だと考えられるからです。
しかし、被疑者が朝に在宅していないことも考えられます。その場合には、後日、改めて任意同行を求められることになるでしょう。
職務質問から任意同行となるのはどのような場合?
警察官等から路上等で職務質問を受けていると、それを目撃した人から、なんらかの犯罪を行ったと誤解されてしまうといった不利益を被るおそれがあります。
また、道路上で長時間話していると、交通の妨げになることもあります。
それらの懸念がある場合には、警察官等が職務質問を行った相手に任意同行を求めることが認められています。
不安な場合は弁護士への相談が効果的です
任意同行を求められた際に、不安になるのは当然のことです。
やってもいないことを自白させられるのではないか、あるいは、誘導されて不当に重い罪を科せられるのではないか等について、専門家に相談し、アドバイスを求めたくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
弁護士であれば、やってもいないことを自白させられたり、罪が重くなる供述をさせられたりすることがないように助言することが可能です。
心証を悪くしないように、素直に話すべき部分についてのアドバイスもできますので、お困りの際はぜひ弁護士にご相談ください。