未成年者略取・誘拐罪とは?成立要件や刑罰、逮捕された場合の対応
未成年者を連れ去る行為は、たとえ本人の同意があったとしても、未成年者略取・誘拐罪に問われる可能性があります。
この罪は、他人の子供を連れ去る行為だけでなく、自分の子供(実子)を連れ去る行為も該当する可能性があり、親権問題にも関連しています。未成年者略取・誘拐罪が成立した場合には、重い刑罰が科せられます。
そこで本記事は、未成年者略取・誘拐罪の成立要件や刑罰、逮捕された後の流れなどについて、詳しく解説していきます。
目次
未成年者略取・誘拐罪とは?
未成年者略取(りゃくしゅ)・誘拐罪は、18歳未満の未成年者を保護者の監護から離し、自分や第三者の支配下に置く行為により成立する犯罪です。いずれも刑法第224条に規定され、成立した場合には重い刑罰が科せられることになります。
未成年者略取・誘拐罪は、報道やネットニュースなどで頻繁に見聞きするような犯罪ではないため、初めて知る方も多いでしょう。しかし、近年ではSNSの普及により、未成年者を含む若年層がSNSを介して連れ去られるケースが増加しており、社会問題となりつつあります。
略取と誘拐の違い
略取と誘拐は、いずれも未成年者を保護者の監護から離し、事実的支配下に置く行為を指しますが、用いる手段に違いがあります。
略取は、暴行や脅迫といった強制的な手段を用いるのに対し、誘拐は、騙しや誘惑といった非強制的な手段を用います。
未成年者略取罪と未成年者誘拐罪は、両罪とも刑法第224条に規定され、刑罰も同じです。そのため、両罪を併せて拐取(かいしゅ)と表現する場合もありますが、用いた手段によって区別されます。
たとえば、SNSで知り合った未成年者を呼び出し、暴行や脅迫などを用いて連れ去った場合は、未成年者略取罪となります。
未成年者略取・誘拐罪の刑罰
未成年者略取・誘拐罪の刑罰は、刑法第224条にて以下のように定められています。
(未成年者略取及び誘拐)
第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
拘禁刑は最大で7年となりますので、かなり重い刑罰が規定されています。また、罰金刑がないため、執行猶予付き判決が下されずに有罪となった場合には、実刑判決を受けることになります。未成年者略取・誘拐罪は、被害対象者である未成年者の同意があっても、成立する可能性のある犯罪です。
同意を得ているからと軽い気持ちで連れ去ると、重い刑罰が科せられる場合があるため、注意が必要です。
未成年者略取・誘拐罪以外に問われる可能性のある犯罪
何らかの目的をもって未成年者を略取・誘拐した場合は、その特定の目的により他の犯罪が成立するケースがあります。
特定の目的があると、対象が未成年者ではなく成人であったとしても、より重い刑罰が科せられます。
営利目的等略取・誘拐罪
営利目的等で略取・誘拐を行った場合は、対象が未成年者でなくても、営利目的等略取・誘拐罪が成立します。「営利目的等」には、財産上の利益を得るという営利目的だけでなく、下表の目的も含まれるため、注意が必要です。
| 営利目的 | 財産上の利益を得る目的 |
|---|---|
| わいせつ目的 | わいせつな行為を行う目的 |
| 結婚目的 | 本人や第三者との結婚を成立させる目的 |
| 生命・身体に対する加害の目的 | 殺害や暴行などを行う目的 |
上表の営利目的等によって略取・誘拐を行うと、1年以上10年以下の拘禁刑(刑法第225条)が科せられる可能性があります。
また、未遂罪も処罰の対象となるため、わいせつな行為を行う目的で略取・誘拐を行ったがわいせつな行為を行えなかった場合でも、罪に問われるケースがあります。
身代金目的略取・誘拐罪
身代金を要求する目的で略取・誘拐した場合は、対象が未成年者でなくても、身代金目的略取・誘拐罪が成立します。身代金目的で略取や誘拐が行われるケースはあまりありませんが、刑事ドラマなどのフィクションでは、よく扱われています。
身代金目的略取・誘拐罪は、相手が誰であっても、身代金を要求または交付させた場合に成立します。身代金目的で略取・誘拐した場合は、無期または3年以下の拘禁刑(刑法第225条の2)が科せられ、未遂罪も処罰の対象となります。
そのため、略取・誘拐を行い、身代金を要求したが手にできなかった場合も、罪に問われる可能性があります。
また、身代金目的略取・誘拐罪は、予備をした者(準備を行った者)も処罰の対象とされています。
(身の代金目的略取等予備)
第二百二十八条の三 第二百二十五条の二第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
所在国外移送目的略取・誘拐罪
国外への移送を目的とした略取・誘拐は、所在国外移送目的略取・誘拐罪が成立します。たとえば、日本にいる対象者を所在地である日本以外の国に移送するために、略取・誘拐した場合が該当します。この犯罪は、刑法第226条にて以下のような刑罰が規定されています。
(所在国外移送目的略取及び誘拐)
第二百二十六条 所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。
また、未遂罪も処罰の対象とされているため、実際に国外へ移送できなくても、その目的で略取・誘拐した場合は、罪に問われる可能性があります。
人身売買罪
人身売買をするために略取・誘拐した場合は、売った人も買った人も人身売買罪に問われます。成立した場合に科せられる刑罰は、下表のとおり、人身売買の対象となった者の年齢や目的によって異なるため、注意が必要です。
| 人を買い受けた場合 | 3ヶ月以上5年以下の拘禁刑 |
|---|---|
| 未成年者を買い受けた場合 | 3ヶ月以上7年以下の拘禁刑 |
| 営利、わいせつ、結婚または生命・身体に対する加害の目的で人を買い受けた場合 | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 人を売り渡した場合 | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 国外へ移送する目的で人身売買した場合 | 2年以上の有期拘禁刑 |
また、未遂罪も処罰の対象とされているため、略取・誘拐を行ったが人身売買できなかった場合も、罪に問われるおそれがあります。
未成年者略取・誘拐罪の成立要件
未成年者略取・誘拐罪の成立要件には、以下の3つが挙げられます。
- 未成年者であること(18歳未満)
- 略取・誘拐が手段であること
- 故意があること
上記3つの要件を満たすと、未成年者略取・誘拐罪が成立します。
以下で、それぞれの要件を詳しく解説していきます。
未成年者(18歳未満)
未成年者略取・誘拐罪の対象となる「未成年者」とは、18歳未満の者を指します。これは、令和4年の民法改正により、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに基づきます。
略取や誘拐の対象は未成年者ですが、暴行や脅迫が未成年者の保護者等に対して行われた場合でも、未成年者を保護者等の監護から離脱させたと認められれば、本罪が成立します。
未成年者から同意を得ていても、保護者等の同意がない限り、未成年者略取・誘拐罪が成立します。
略取・誘拐
未成年者略取・誘拐罪の成立には、手段が略取または誘拐である必要があります。
略取とは、暴行や脅迫などの強制的な手段を用いて、未成年者をその生活環境から離脱させ、自分や第三者の支配下に置く行為を指します。一方で誘拐は、騙しや誘惑といった非暴力的な方法で同様の結果をもたらす行為を指します。
たとえば、「腕をつかんで車に引き込む」「まだ歩けない乳幼児を連れ去る」などの行為は、略取に該当します。
一方で、「お菓子をあげるから付いてきて」「あなたのお母さんが倒れたから付いてきて」などの誘惑や騙しを用いる行為は、誘拐に該当します。
両罪は、いずれも刑法第224条で処罰対象とされ、対象者の同意があっても成立する点に注意が必要です。
故意
未成年者略取・誘拐罪の成立には、「故意」が必要です。
ここでいう故意とは、未成年者を略取・誘拐するという認識をもって行為に及ぶことを指します。そのため、未成年者と知らなかった場合は、故意が否定される可能性があります。
しかし、たとえ対象者が18歳以上だと行為者に伝えていたとしても、対象者の容姿や状況などから、未成年者と認識できた場合や「未成年者かもしれない」と思いながら行為に及んだ場合には、故意が認められる可能性があります。
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本人の同意があっても略取・誘拐が成立するのか?
親の同意がない場合
未成年者略取・誘拐罪は、未成年者本人の同意があっても、保護者等の同意がなければ成立します。この罪は、未成年者の自由だけでなく、保護者の監護権を保護することも目的に規定されているからです。
そのため、たとえ未成年者本人から連れ去りを頼まれた場合でも、保護者等の承諾がなければ犯罪行為とみなされ、刑事責任を負う可能性があります。
未成年者の連れ去りが善意によるものであっても、親の同意は必要です。「未成年者本人からお願いされたから」と軽い気持ちでそのお願いに応じれば、重大な結果を招くおそれがあるため、注意しなければなりません。
親の同意がある場合
未成年者略取・誘拐罪は、未成年者本人と保護者の両方が同意している場合には成立しません。ただし、実の子供を連れ去るケースでも、注意が必要です。
たとえば、夫婦のどちらかが配偶者に無断で子供を連れて別居した場合でも、連れ去り方が乱暴だったり、子供が嫌がっているのに無理やり車に乗せるなどの行為があった場合には、未成年者略取・誘拐罪に問われる可能性があります。
実際に、別居中や離婚後に片方の親が子供を無断で連れ去り、問題となるケースは少なくありません。
親権が争われている状況では、連れ去りの方法や状況によっては、実の親であっても刑事責任を問われることがあります。
本人や親の刑事告訴がなければ処罰されない
未成年者略取・誘拐罪は、親告罪であるため、被害者本人またはその親からの刑事告訴がなければ、処罰されることはありません。
親告罪は、被害者やその法定代理人が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示をしなければ、検察官が起訴できない犯罪を指します。
つまり、親告罪である未成年者略取・誘拐罪は、被害者本人や保護者等からの告訴があってはじめて処罰される可能性が生じます。したがって、被害者本人が「事件化したくない」などを理由に告訴しない場合、犯人は処罰されません。
また、一度告訴されても、告訴が取り消されれば起訴されません。そのため、刑事弁護では、告訴の取り下げを目指した示談交渉が重要となります。
【ケース別】こんな場合も未成年者略取・誘拐罪に該当する?
家出願望のある未成年者を自宅に泊めた
家出を希望する未成年者を自宅に泊めた場合は、たとえ本人から頼まれたとしても、保護者等の同意がなければ未成年者誘拐罪に該当する可能性があります。
「本人から頼まれたから保護してあげた!」と、保護の認識を主張しても、保護者の監護権を侵害したと判断されるケースが多く、刑事責任を免れるのは困難です。
特に、携帯電話を没収するなど、連絡を遮断して長期間に渡り保護者に状況を知らせなかったなどの場合には、悪質性が高いとみなされます。
また、このケースでは、行為者が対象者を未成年者として認識していたかどうかも重視されます。
行為者が未成年者と認識しておらず、かつ対象者を未成年者と認識するのは難しかったと判断された場合には、故意がなかったとみなされます。その場合は、未成年者誘拐罪には問われない可能性が高いです。
未成年者だと知らなかった
未成年者だと知らなかった場合は、基本的に故意が認められず、未成年者略取・誘拐罪は成立しません。しかし、単に「知らなかった」と主張するだけでは、故意がなかったことを立証するのには不十分です。
このような場合は、対象者である未成年者の容姿や服装、言動、出会った状況などから、未成年者である可能性を認識できたかどうかが総合的に判断されます。
たとえば、以下のような場合などは、未成年者であると推測できたとされ、故意が認められるケースがあります。
- 学生服を着ていた
- 学生証を持参していた
- 年齢を確認していない
- 言動が幼い など
たとえ対象者から成人年齢だと偽って伝えられていても、「学生服を着ていた」など、明らかに未成年者であることが分かる場合には、知らなかったが通用しません。
別居していた実子を連れ去った
自分の子供であっても、別居中の配偶者の監護下から無断で子供を連れ去った場合は、未成年者略取・誘拐罪に問われる可能性があります。
過去の裁判では、父親が別居中の母親の監護下にある子を強引に連れ去った事案で有罪が認められました。実務上では、別居や離婚協議中の子の連れ去りが度々問題となっています。
親権が争われている離婚前の子の連れ去りは、連れ去りの方法(粗暴かつ強引な方法など)によっては、正当な理由がない限り、違法とみなされる可能性が高いです。なお、正当な理由とされているのは、以下のような場合です。
- 子供が他方配偶者から虐待を受けている場合
- 他方配偶者からDVやモラハラを受けており、子供に悪影響が及ぶ可能性がある場合
- 子供をずっと監護してきた場合 など
未成年者略取・誘拐で逮捕された後の流れ
未成年者略取・誘拐罪の容疑で逮捕された場合は、主に以下のような流れで手続きが進みます。
- 逮捕
逮捕後は、警察からの取り調べを受けて、逮捕から48時間以内に身柄と事件の資料が検察に引き継がれます(送致)。 - 勾留
送致後は、検察からの取り調べを受けて、送致から24時間以内に検察官が勾留請求を行うかどうかを判断します。勾留請求が行われ、裁判官がこれを認めると、まず10日間の勾留が実施されます。勾留は、さらに10日間の延長が可能なため、最大で20日間行えます。 - 起訴・不起訴の決定
検察官は、勾留期間中または勾留期間が終了するまでに、起訴・不起訴の判断を下します。 - 刑事裁判
検察官から起訴されると、刑事裁判が開かれ、裁判官によって有罪・無罪の判決が下されます。
不当な逮捕や長期間の勾留を回避するためには、弁護士に依頼して、早期段階から弁護活動を始める必要があります。
逮捕された時の流れを図で分かりやすく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します未成年者略取・誘拐における弁護活動
未成年者略取・誘拐罪の容疑で逮捕された場合、長期間の身柄拘束や実刑判決を受ける可能性が高まります。
このようなリスクを回避するには、早期に弁護士へ相談し、釈放や不起訴を目指した弁護活動に着手する必要があります。
身柄の釈放を求める
未成年者略取・誘拐罪で逮捕された場合は、最大で23日間の勾留(身柄拘束)が続く可能性があり、仕事や家庭に深刻な影響を及ぼし兼ねません。
社会生活への影響を軽減するには、早期釈放を目指す必要がありますが、弁護士であれば、検察官や裁判官に「意見書」を提出し、身柄拘束が不要であることを主張できます。
また、準抗告を行い、裁判官が下した勾留決定に対して破棄を求めることもできます。逮捕の段階であれば、証拠隠滅や逃亡のおそれがない=逮捕の必要性がないことを主張して、身柄の拘束を受けない在宅事件への切り替えを求めることも可能です。
弁護士による迅速な弁護活動は、社会復帰や不起訴処分の可能性を高める重要なポイントとなります。
示談で不起訴を目指す
被害者が存在する未成年者略取・誘拐罪では、被害者との示談成立が不起訴を目指すうえで重要です。親告罪である本罪は、被害者本人やその保護者等が告訴を取り下げれば起訴されません。
そのため、告訴の取り下げを条件とした示談交渉を被害者側と行う必要があります。
しかし、加害者に対して強い怒りや恐怖を抱いている被害者との示談成立は、決して容易なものではありません。場合によっては、示談交渉の場を設けるのさえ困難なこともあります。
この点、弁護士であれば、被害者側が示談交渉に応じる可能性が高まり、適切な条件で合意を得やすくなります。示談成立により、告訴の取り下げや刑事処分の軽減が期待できるため、早期に弁護士へ相談することが最善策です。
未成年者略取・誘拐のおそれがある場合には早急に弁護士へ相談してください
未成年者略取・誘拐罪は、たとえ本人から同意を得ていても成立し、重い刑罰が科せられる可能性のある犯罪です。未成年者略取・誘拐罪に該当する行為をしてしまい、さらに、営利目的や身代金目的などの「特定の目的」をもって犯行に及んだ場合には、より厳しい刑罰が科せられます。
「未成年者とは知らなかった」「軽い気持ちでやってしまった」などのケースでも、逮捕や起訴に発展するリスクは高く、いずれの場合も早急な対応が必要となります。未成年者略取・誘拐罪に該当する行為をしてしまった方や、既に容疑をかけられている方は、なるべく早めに弁護士へご相談ください。
早めの相談は、弁護士が活動できる時間の確保につながり、充実した法的サポートの提供を可能にします。
弁護士法人ALGには、刑事事件に精通した弁護士が複数名在籍しており、迅速かつ適切な弁護活動の着手が可能です。早期釈放や不起訴処分の獲得を実現するためにも、お気軽にご相談ください。
