過失運転致死傷罪とは?刑罰や点数、不起訴を獲得するポイントを解説

過失運転致死傷罪とは?刑罰や点数、不起訴を獲得するポイントを解説

監修
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
車

過失運転致死傷罪は、自動車やバイクを運転中に注意を怠った結果、人身事故を起こしてしまった場合に成立する犯罪です。

過失運転致死傷罪が成立すると、拘禁刑や罰金刑といった刑罰だけでなく、行政処分として違反点数の加算や運転免許の停止・取り消しを受ける可能性があります。

この記事では、過失運転致死傷罪に着目し、刑罰の内容や違反点数、不起訴を獲得するためのポイントなどについて、詳しく解説していきます。

過失運転致死傷罪とは?

過失運転致死傷罪とは、「自動車運転中に必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に成立する犯罪」です。

注意を怠って交通事故を起こした結果、人に怪我を負わせると過失運転致傷罪が成立し、人を死亡させてしまった場合は過失運転致死罪が成立します。

つまり、事故発生の結果、人がどうなったのかによって成立する罪が異なる点に注意が必要です。

過失運転致死傷罪の構成要件や刑罰は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の第5条に規定されています。

過失に当たる行為の具体例

過失運転致死傷罪における「過失」とは、自動車運転者として求められる注意義務に違反することです。

注意義務違反の具体例は、以下のようなものが挙げられます。

前方注視義務違反

わき見、スマートフォン操作などにより前方の注視を怠る

速度制限遵守義務違反

制限速度の超過

信号指示遵守義務違反

赤信号無視

徐行義務違反

徐行義務を怠る

居眠りをしない義務違反

疲労による正常運転不能

スマートフォンを操作しない義務違反 など

ながらスマホ運転

過失運転致死傷罪の刑罰【刑事処分】

過失運転致死傷罪の刑罰(刑事処分)は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(自動車運転死傷処罰法※第5条)。

過失運転致死傷

第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

※正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

過失運転致死傷罪の罰金の相場はいくら?

過失運転致死傷罪の罰金の相場は12万~50万円程度であり、事故の程度によって異なります。

例えば、全治15日未満の軽傷事故は12万~20万円程度が罰金の相場です。
一方、全治30日~3ヶ月未満の重傷事故だと20万~50万円程度が罰金の相場となります。

被害者の怪我の程度が重いほど、下表のとおり罰金の相場も高額になります。

事故の程度 罰金の相場
重傷事故(全治3ヶ月以上など)
後遺障害あり
30万~50万円
重傷事故(全治30日~3ヶ月未満) 20万~50万円
軽傷事故(全治15日~30日未満) 15万~30万円
軽傷事故(全治15日未満) 12万~20万円

過失運転致死傷罪の違反点数【行政処分】

過失運転致死傷罪は、刑罰だけでなく行政処分(運転免許に関する処分)も受ける可能性があります。
具体的には、違反点数が加算され、累積点数に応じて免許停止または取り消しが科せられます。

行政処分として加算される点数は下表のとおりです。
基礎点数に、事故の程度などに応じて一定の付加点数が加算されます。

事故の程度と治療期間 加害者のみ過失がある 被害者にも過失がある
死亡事故 20点 13点
重傷事故 3ヶ月以上、又は後遺障害がある 13点 9点
30日以上3ヶ月未満 9点 6点
軽傷事故 15日以上30日未満 6点 4点
15日未満 3点 2点

例えば、運転操作不適や前方不注意などの「安全運転義務違反」の場合は、基礎点数が2点+付加点数により4~15点以上になる可能性があります。

免許停止・取り消しの目安は、累積点数6点以上が免許停止、15点以上が免許取り消しです。

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過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪の違いは?

危険運転致死傷罪は、通常過失(わき見運転やながら運転など)を超える危険な運転方法で走行し、人を死傷させてしまった場合に成立する犯罪です。

危険な運転方法には、「アルコールや薬物影響下での運転」「制御困難な高速度での運転」などが挙げられます。

これらの行為は、悪質・故意に近い重大な危険運転と評価され、過失運転致死傷罪よりも重罰化されています。

過失運転致死傷罪の刑罰は、「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」です。

一方、危険運転致死傷罪は、「人を負傷させると15年以下の拘禁刑、人を死亡させると1年以上20年以下の拘禁刑」が科せられます。

このように、過失運転致死傷罪よりも重い刑罰が定められているため注意が必要です。

【2026年】危険運転致死傷罪に数値基準が導入

2026年7月21日から、改正自動車運転処罰法が施行され、危険運転致死傷罪に適用する明確な数値基準が導入されました。

改正法では、アルコール濃度や自動車の速度が一定の数値を超えた場合、原則として一律で危険運転致死傷罪の適用対象となります。

具体的な数値基準は、下表のとおりです。

危険運転致死傷罪の要件

この改正により、これまで曖昧だった危険運転致死傷罪の判断基準が明確化され、より客観的な判断が可能となりました。

従来は危険運転致死傷罪の成立が争われていたケースでも、施行後に発生した事故で数値基準を満たす場合は、同罪が認められる可能性があります。

飲酒運転や著しい速度超過に対しては、これまで以上に厳しい刑事責任が問われるでしょう。

過失運転致死傷罪で逮捕されたあとの流れ

過失運転致死傷罪で逮捕されたあとは、主に以下のような流れで手続きが進みます。

  • 1. 逮捕
    警察からの取り調べを受け、逮捕後48時間以内に事件の資料と身柄が検察に引き継がれます。
    引き継がれたあとは、検察からの取り調べを受け、24時間以内に検察官が勾留請求を行うかどうかの判断を下します。
  • 2. 勾留
    検察官が「身柄拘束を継続する必要がある」と判断した場合は、裁判官に対して「勾留請求」が行われます。
    裁判官が勾留請求を認めると、まず10日間の勾留が行われ、必要に応じてさらに10日間延長される可能性があります。
  • 3. 起訴・不起訴の決定
    検察官は、勾留期間が終了するまでに起訴・不起訴の決定を下します。
  • 4. 刑事裁判
    起訴されると、刑事裁判が開かれます。
  • 5. 判決
    刑事裁判が進むと、裁判官から有罪・無罪の判決が下されます。

逮捕された時の流れをさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

逮捕された後の流れは?

過失運転致死傷罪の初犯だとどうなる?執行猶予はつく?

過失運転致死傷罪が初犯の場合は、執行猶予付きの拘禁刑または罰金刑を科されることが多いです。

ただし、被害の程度や過失の重さによっては、初犯でも実刑判決を下される可能性があります。

初犯で執行猶予付き判決を獲得するには、弁護士による情状立証や被害者との示談成立などが重要です。また、反省や謝罪の意思をしっかり示すことも重要となります。

執行猶予について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

執行猶予とは?

過失運転致死傷罪で不起訴や無罪を目指すためのポイント

過失運転致死傷罪で不起訴や無罪を獲得するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 被害者との示談成立を目指す
  • 無罪を主張する場合は証拠を集める
  • 刑事事件に詳しい弁護士に依頼する

不起訴処分と無罪の違いや理由・獲得のポイントなどについて知りたい方は、以下のページをご覧ください。

不起訴処分とは?

被害者との示談成立を目指す

被害者との示談成立は、不起訴の可能性を高めるだけでなく、減軽につながる可能性もあります。

過失運転致死傷罪では、示談自体が行政処分に影響するわけではないものの、情状酌量の証拠にはなり得ます。

被害者との示談が成立すれば、被疑者・被告人にとって有利な情状となるだけでなく、再犯防止の意思も示せるため、示談交渉は優先すべき弁護活動の一つです。

しかし、被害者との示談交渉は決して容易ではありません。刑事事件に詳しい弁護士に依頼し、進めてもらうのが得策でしょう。

刑事事件における示談について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

刑事事件における示談とは?

無罪を主張する場合は証拠を集める

無罪を主張する場合は、有利な証拠を提出し、立証を補強しなければなりません。

具体的には、関係者の証言や事故発生付近の監視カメラ、ドライブレコーダーの映像といった証拠の収集が重要です。
専門家による鑑定結果も有利な証拠となり得るでしょう。

弁護士に依頼すれば、事故状況の精査や有利な証拠の収集を適切かつ円滑に行ってもらえます。

なるべく早めに弁護士へ相談し、証拠の戦略的収集・整理を行うことが無罪獲得への大きな一歩となるでしょう。

無罪を主張したい方は、以下のページも併せてご覧ください。

無罪を証明してほしい

刑事事件に詳しい弁護士に依頼する

過失運転致死傷罪で不起訴や無罪を獲得するには、刑事事件に詳しい弁護士に弁護活動を依頼することが大切です。

刑事事件に詳しい弁護士であれば、以下のような弁護活動を行ってもらえます。

  • 逮捕直後から接見(面会)できるため、早期段階から弁護方針を構築できる
  • 捜査機関からの取り調べに対する適切な対応方法について、アドバイスをもらえる
  • 不当な逮捕の回避や不起訴処分の獲得に向けて、有利な情状の主張・立証を行ってもらえる
  • 被害者の心情に配慮しながら示談交渉を進めてもらえる
  • 起訴された場合は、保釈請求の手続きを進めてもらえる など

刑事事件では、初動の対応とスピード感をもった弁護活動が重要となるため、弁護士への依頼はなるべく早めに行うのが得策です。

「接見」や「保釈」の詳細について知りたい方は、以下の各ページをご覧ください。

接見とは? 保釈が認められる条件とは?

過失運転致死傷罪に関するよくある質問

過失運転致死傷罪で前科はつきますか?

はい、過失運転致死傷罪で起訴され、裁判で有罪判決が確定した場合には前科がつきます。

前科とは、「過去に裁判で有罪判決を受けた経歴」を指します。

  • 不起訴処分や無罪判決が確定した場合 → 前科はつきません。
  • 有罪判決を受けた場合 → 執行猶予付き判決や罰金刑であっても前科がつきます。

「前科と前歴の違い」「執行猶予と前科の関係性」などについては、以下の各ページをご覧ください。

前科とは? 執行猶予でも前科はつく?

過失運転致死傷罪の起訴率はどのくらいですか?

法務省が公表する令和7年版犯罪白書によると、令和6年における過失運転致死傷罪の起訴率は15.3%でした。

過失運転致死傷罪は、比較的不起訴となる割合が高い犯罪です。

しかし、被害者が死亡した場合や、飲酒運転などの重大な過失が認められる場合には、起訴される可能性が高くなります。

飲酒運転や無免許運転があると、過失運転致死傷罪は重くなりますか?

はい、飲酒運転や無免許運転がある場合は、過失運転致死傷罪の刑罰が重くなる可能性があります。

飲酒運転は、自動車運転死傷処罰法上の重大な犯罪が成立する可能性があり、軽微な事故でも拘禁刑が科されることがあります。

事故の態様や悪質性によっては、さらに重い処罰を受ける可能性もあるため注意が必要です。

また、無免許運転で人を死傷させた場合は「無免許過失運転致死傷罪」が成立し、10年以下の拘禁刑が科される可能性があります。

罰金刑は定められていないため、起訴された場合は公判請求の対象となります。

交通事故で過失運転致死傷罪に問われている場合は、すぐに弁護士にご相談ください

交通事故で過失運転致死傷罪に問われた場合は、不起訴処分や執行猶予付き判決の獲得に向け、早期段階から適切な弁護活動を行う必要があります。

日本の有罪率は非常に高いため、起訴されれば高い確率で有罪判決が下されるといえます。そうなれば、実刑判決も覚悟しなければなりません。

前科のリスクなどを回避するには、早めに刑事事件に詳しい弁護士へ依頼することが重要です。刑事事件の経験や知識が豊富な弁護士であれば、適切かつ円滑に弁護活動を進めてもらえるでしょう。

過失運転致死傷罪に問われてお困りの方は、お早めにご相談ください。

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