刑事事件における故意と過失の違いは?判断基準などわかりやすく解説

刑事事件における故意と過失の違いは?判断基準などわかりやすく解説

監修
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

刑事事件における「故意」や「過失」は、単に「わざと」「不注意による過ち」という日常的な意味合いとは異なります。

実務上は、罪が成立するかどうか、どの犯罪に問われるのかなどを左右する重大な判断要素となります。

なかには、故意がなければ成立しない罪もあるため、故意と過失の違いをあらかじめ理解しておくことが大切です。

この記事では、刑事事件における故意と過失の違いや判断基準などについて、詳しく解説していきます。

刑事事件における故意と過失の違い

故意過失は似ているように見えますが、法律上の意味合いは大きく異なり、成立する犯罪や刑罰に差が生じます。

刑事事件では、「犯罪行為の結果を認識していたのか」「注意すれば防げたのか」といった点から、故意と過失どちらに該当するかが判断されます。

故意 結果を認識・容認して実行すること
過失 予見できたにもかかわらず、不注意で事故や損害を引き起こすこと

故意とは

故意とは、一般的には「わざと」「意図して」という意味合いですが、刑法上はより厳密に判断されます。

刑法では、自らの行為により犯罪結果が生じると認識しながら、その結果を受け入れて行為に及ぶことを指します。

また、故意には「確定的故意」と「未必の故意」があり、いずれも結果に対する認識と容認があるのが特徴です。

  • 確定的故意
    犯罪結果の発生を確実に予測した上で容認している状態
    → 犯罪結果の発生をはっきりと意図したうえで行為に及ぶこと
  • 未必の故意
    その可能性を認識し、容認している状態
    → 「犯罪結果が生じるかもしれないが、それでも構わない」と考えて行為に及ぶこと

未必の故意の詳細は、以下のページをご覧ください。

未必の故意とは?

過失とは

過失とは、一般的には「不注意」「うっかり」といった意味で使われますが、刑法上はより具体的に判断されます。

刑法では、結果を予見して回避することが可能だったにもかかわらず、結果を防ぐために必要な注意を怠った場合を過失といいます。

結果を望んでいない点が故意との大きな違いですが、「注意すれば防げたかどうか」が厳しく見られて判断されるため注意が必要です。

重過失と過失の違い

重過失と過失の違いは、注意義務違反の程度です。

重過失とは

わずかな注意を払えば結果を回避できたにもかかわらず、基本的な注意を怠った状態をいいます。

通常の過失よりも注意義務違反の程度が著しく、「極めて不注意だった」と評価される点が特徴です。
事案によっては、故意に近いものとして扱われることもあります。

重過失 注意義務違反の程度が著しい場合
過失 一定の注意義務違反はあるが、程度が重過失には至らない場合

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刑法における故意犯処罰の原則

刑法では、原則として故意がある場合にのみ犯罪として処罰する故意犯処罰の原則が定められています(刑法第38条1項)。

つまり、どれほど重大な犯罪結果が生じたとしても、故意が認められなければ、直ちに犯罪として処罰されるわけではないということです。

故意犯処罰の原則は、単に結果だけを見るのではなく、行為者の主観的要素も考慮するという、刑法の基本的な考え方に基づいています。

一方、過失による行為は、法律に明確な規定がある場合に限り、例外的に処罰の対象となります。

また、過失犯が成立する場合でも、故意犯と比べると刑罰は大幅に軽くなるのが特徴です。

故意・過失はどのように判断されるのか?

故意・過失は、客観的な状況証拠に基づき、行為当時の行為者の認識が推認されます。

行為者本人が「故意はなかった」と述べても、当時の心境は本人にしか分からず、そのまま受け入れると言い逃れができてしまうためです。

そのため、刑事事件では、供述内容のみで結論を出すのではなく、行為の態様や前後の行動などから、行為者の内心を合理的に推測することになります。

例えば、殺人事件の場合には、凶器の有無や種類、傷の部位や程度、犯行前後の言動、救護措置の有無などの事情を総合的に考慮して、故意の有無が判断されます。

凶器がサバイバルナイフで、心臓に向かって複数回突き刺しているような場合には、強い殺意があったと評価され、故意犯と判断される可能性が高いでしょう。

故意か過失かで罪名や法定刑は変わる

同じ結果が生じた事件でも、故意か過失かによって、成立する罪や処罰の重さは大きく異なります。

故意が認められると重い犯罪として処罰される可能性がありますが、過失だと「処罰の対象とならない」「軽微な処罰にとどまる」こともあります。

故意か過失かどうかは、刑事責任や量刑に影響を与える重要な要素の一つです。

殺人

殺人事件では、殺意(故意)があったかどうかによって成立する罪が大きく異なります。殺意が認められると、刑罰は重くなります。

具体例 罪名 法定刑
明確な殺意をもって相手を殺した場合 殺人罪 死刑または無期もしくは5年以上の拘禁刑
殺意を持たずに相手を攻撃して、結果的に相手を死亡させた場合 傷害致死罪 3年以上の有期拘禁刑
殺意はないものの、不注意によって相手を死亡させてしまった場合 過失致死罪 50万円以下の罰金

傷害

傷害事件は、相手にケガを負わせる意思(故意)があったかどうかで、成立する罪が異なります。

具体例 罪名 法定刑
ケガを負わせるつもりで相手を攻撃した場合 傷害罪 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
誤って相手にケガを負わせた場合 過失傷害罪 30万円以下の罰金または科料

傷害罪の詳細は、以下のページをご覧ください。

傷害罪とは?

詐欺

詐欺事件は、相手をだまして財物や財産上の利益を得ようとする意思(故意)が成立要件に含まれているため、故意犯のみ詐欺罪に問われます。

具体例 罪名 法定刑
相手をだますつもりで虚偽の説明等を行い、財物・財産上の利益を得た場合 詐欺罪 10年以下の拘禁刑
確認不足などで相手が誤信して財産的損害を受けた場合 詐欺罪にならない

火事

火事に関する事件でも、故意の有無によって成立する罪が異なります。

また、失火によって人を死傷させた場合には、過失致死傷罪などが成立する可能性もあります。

具体例 罪名 法定刑
人の住む建物に放火した場合 現住建造物等放火罪 死刑または無期もしくは5年以上の拘禁刑
火の不始末で家が燃えた場合 失火罪 50万円以下の罰金

故意か過失かを争う場合に弁護士に相談するメリット

弁護士に相談すれば、以下のようなメリットが期待できます。

  • 取り調べでの受け答え方について、具体的なアドバイスをもらえる
  • 裁判を見据え、過失にとどめるための証拠を集めてもらえる
  • 過失を裏付けるための適切な法的主張を行ってもらえる

故意を否定し、過失にとどまることを立証するには、客観的な証拠や事情を整理したうえで、法的観点から主張を行う必要があります。

弁護士に相談すれば、専門的なサポートを受けられるため、不利な状況となるリスクを抑えられる可能性が高いです。

「故意ではなかった」と認めてもらうことは、決して容易ではありません。
対応の仕方が分からない方は、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

故意か過失かによって問われる罪は異なるため、刑事事件は早めに弁護士へご相談ください

刑事事件では、故意か過失かの判断一つで、成立する罪や科される刑罰が大きく異なります。

取り調べで不用意な発言をしてしまい、犯罪行為に「故意があった」と評価されてしまうケースも少なくありません。

一度不利な認定がなされると、後から覆すのが難しくなります。

そのため、捜査の初期段階から弁護士に相談し、取り調べでの供述内容や対応方法についてアドバイスを受けることが重要です。

弁護士法人ALGには、刑事事件の豊富な経験を持つ弁護士が複数名在籍しています。
これまでの経験や知識を活かし、ご依頼者様にとって有利な結果を目指した弁護活動が可能です。

お一人で対応できることは限られてしまうため、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

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