傷害罪とは?成立要件や罰則、暴行罪との違いなど
傷害罪は、我々にとって身近な犯罪かもしれません。以下では、傷害罪の刑罰や成立要件等を説明し、傷害罪で逮捕された場合どうすべきか、傷害罪における示談の重要性等を解説していきます。
なお、逮捕までされなくとも、在宅事件として傷害事件の被疑者となってしまった場合でも、示談の重要性等、身柄拘束に関わる部分以外は、同様です。
目次
傷害罪とは
傷害罪は、他人に何らかの怪我を負わせる犯罪として認識されているでしょう。もちろん、他人に怪我をさせることは、典型的な傷害罪になりえますが、傷害罪は怪我をさせた時だけに留まりません。
傷害罪における傷害の定義は、人の生理機能の侵害とされ、PTSDも傷害に該当するとされています。
傷害罪の刑罰
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
傷害罪において、懲役刑となるか、罰金刑に留まるかについては、傷害の程度が大きな考慮要素となるでしょう。
事件発生に至る経緯、示談の有無、被疑者・被告人の前科によって大きく変わるところだと思いますが、骨折を伴う等の重症事案は、懲役刑が選択されやすくなると思われます。
なお、刑事施設に収容する刑罰は、禁固刑と懲役刑とありますが、法改正により拘禁刑に統一される予定です。
傷害罪の成立要件
傷害罪の成立要件は4つあります。まず、①傷害の実行行為が必要です。次に②傷害結果が生じたことが必要です。
さらに、③実行行為と傷害の結果発生の間に因果関係が必要です。加えて、④故意も必要となります。
人をわざと殴って怪我をさせたら傷害罪ですが、自転車で誤って人にぶつかって怪我をさせても傷害罪にはならないのは、④故意が無いからです。
傷害罪と暴行罪の違い
暴行罪も傷害罪も、人に対して有形力の行使をすることは同じです。傷害罪と暴行罪との違いは、暴行罪が規定されている刑法208条に「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは」とあるのが回答です。
つまり、人に暴力をふるった場合を例にとると、怪我をさせてしまった場合は傷害罪で、怪我はしなかった場合は、暴行罪となります。
暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
傷害結果までは発生させていないことが前提のため、当然、傷害罪より法定刑が軽く、暴行罪の初犯で懲役刑が課されるということは、考え難いといえます。
傷害罪の時効
傷害罪の公訴時効は、10年です。傷害罪を犯しても、10年経過すれば、起訴されることはなくなります。
また、自己の行為により、他人の身体を傷つけてしまった場合、不法行為となり、民事上、損害賠償義務を負います。
民事上の損害賠償義務についても時効の問題があり、不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、人の生命や身体侵害によって生じた損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から5年、不法行為の時から20年で消滅時効にかかります。
傷害罪で逮捕されたときの対処法
逮捕されると、48時間以内に検察庁に送られ、検察官が勾留請求するか釈放するかを判断し、検察官が勾留請求すると、裁判官が検察官の勾留請求を認めるか、釈放するかを判断します。
10日間の勾留が決定されてしまうと、身体拘束が続くことで精神的、肉体的苦痛が長引くことはもちろん、仕事がある場合、欠勤が続くことになり、職場復帰が難しくなるかもしれません。
逮捕された場合、勾留されるか否かが非常に重要で、勾留されないよう、弁護士に依頼することが重要です。
また、最終的に不起訴となるかは、被害者と示談できるかどうかが重要となってきますが、示談をするという観点でも、専門家である弁護士に依頼することが重要となります。
示談交渉の必要性
傷害罪のように被害者が存在する犯罪では、示談をすることにより被害者に許してもらうことが非常に重要です。
傷害の重さから、公判請求及び懲役刑を覚悟しなければならないような事件であっても、被害者と示談することによって、不起訴となり、刑務所に行かなくてすむということが考えられます。
また、被害者が他人であった場合、加害者が被害者の連絡先を知ろうとしても、警察や検察は、加害者に被害者の連絡先を教えるということは、通常無いでしょう。
被害者の連絡先が分からなければ、示談交渉すらできません。弁護士であれば、被害者の承諾を条件に被害者の連絡先を教えてもらえますので、示談交渉が可能となります。
傷害罪で有罪となった裁判例
外傷を伴う怪我をさせた場合でなくとも、人の生理機能を侵害したと評価される場合、傷害罪が成立する場合があります。
例えば、洋菓子に混入された睡眠薬等を被害者に摂取させ、被害者を数時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせ、被害者の健康状態を不良に変更し、被害者の生活機能の障害を惹起したことを理由に傷害罪の成立を肯定した判例があります(最高裁判所平成24年1月30日決定)。
傷害事件で逮捕された場合は、早期に弁護士にご相談ください
傷害罪で逮捕された場合、逮捕段階で釈放されれば、仕事や学校を休むことになっても2~3日で済みます。
逮捕されるだけでなく、勾留されてしまうと、10日、勾留延長された場合は20日、警察署で留置されてしまい、仕事や学校に与える影響は重大です。
弁護士は、被疑者に有利な証拠を収集し、勾留されることを防ぐための活動を行います。傷害事件で逮捕された場合、早急に当事務所ご相談ください。