インターネットの書き込みでも罪に問われる?信用毀損罪について


今回は、信用棄損罪の罰則や構成要件について解説します。
目次
信用毀損罪とは
信用棄損罪は、虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を棄損した場合に成立します。
信用棄損罪の被害者は、個人だけではく、法人、団体も対象となります。
人の信用を棄損するような虚偽の風説を流布するか、偽計を用いた場合、実際に信用を低下させていなくとも、既遂となります。
信用棄損罪は親告罪ではありませんので、被害者の告訴がなくとも、検察官は起訴することができます。
信用毀損罪の罰則
信用棄損罪の罰則は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となっています。
信用毀損罪の構成要件
虚偽の風説
虚偽の風説とは、客観的事実に反する噂や情報のことをいいます。
「虚偽の」風説となっていることから明らかなように、広めた情報が真実である場合は、信用棄損罪は成立しません。
例えば、飲食店でラーメンを食べたら、虫の死骸が混入していたとSNSで流布した場合、虚偽情報であれば、信用棄損罪が成立しえます。
反対に、事実であれば、虚偽の風説を流布したとはいえませんので、信用棄損罪は成立しません。
流布
流布とは、不特定または多数の人に伝播することをいいます。
偽計
偽計とは、人を欺罔し、または、錯誤に陥らせる手段のことをいいます。
信用を毀損
信用棄損罪における信用とは、経済的信用をさします。経済的信用は、支払い能力や資産に限定されず、商品やサービスの品質も含むものです。
例えば、スーパーAで購入した飲料水に異物が混入していたという虚偽の情報を流布した場合、スーパーAは異物が混入されている飲料水を販売しているということで、スーパーAの売上低下につながり、スーパーAの経済的信用を棄損したといえるでしょう。
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信用毀損罪にあたる虚偽情報の例
例えば、コンビニで購入した飲料に自ら洗剤を投入したにもかかわらず、警察に対して購入した飲料に異物が入っていたと虚偽申告し、それがニュース等で報道されてしまった事件があります。
裁判所は、信用棄損罪における信用には、人の支払い意思、支払い能力といった経済的信用のみならば、商品やサービスに係る信用も含まれると判断しました(最高裁平成15年3月11日判決)。
信用毀損罪と関連する犯罪
業務妨害罪
信用棄損罪は、他者の経済的信用を傷つけた際に成立する罪ですが、業務妨害罪は、他者の業務を妨害した際に成立する罪です。
業務妨害罪の罰則は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金刑であり、信用棄損罪と同じです。
信用毀損罪と業務妨害罪が両方成立する場合
一つの行為で、信用棄損罪と業務妨害罪が双方成立するケースも考えられます。
例えば、飲食店Aで飲食をしたら食中毒となったと虚偽の情報を流布し、飲食店Aの商品に関わる信用を棄損するとともに、飲食店Aにクレーム、嫌がらせの電話が殺到したりする等して、飲食店Aの正常な業務を阻害したような場合です。
名誉棄損罪
信用棄損罪は、人の経済的信用を損なう罪であるのに対し、名誉棄損罪は、公然と事実を適示して、人の社会的な評価を落とすことによって成立する罪です。
名誉棄損罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
信用毀損罪と名誉毀損罪が両方成立するケース
例えば、会社Aは詐欺会社である旨の虚偽の情報を流布した場合、会社Aの商品やサービスへの信用を損なうものとして、信用棄損罪が成立しうるとともに、詐欺会社というのは、会社Aの社会的評価も低下させると考えられますので、名誉棄損罪も成立しえます。
ネットの書き込みで信用毀損罪に問われた場合
上述のように、「飲食店Aで飲食したら、食中毒になった」といった虚偽の事実をインターネット上で流布した場合、信用棄損罪が成立する可能性があります。
そのため、被害店舗から刑事告発されたり、民事上の損害賠償請求をされる可能性があるでしょう。
そして、被害店舗がプロバイダに投稿者の情報の開示を求めることが考えられます。
その場合、プロバイダから投稿者に「発信者情報開示に係る意見照会書」が送付されてきます。
そのような書類が届いたということは、被害店舗は、刑事告発や損害賠償請求のために、投稿者の特定に動いているということを意味します。
ですので、「発信者情報開示に係る意見照会書」が送付されてきた場合、速やかに弁護士に相談し、示談等に向けて動いた方がよいでしょう。
刑事事件になった場合の対処法
信用棄損罪で逮捕された場合、48時間以内に検察官に送致され、検察官は24時間以内に被疑者を釈放するか、勾留請求するかを判断します。
検察官が勾留請求した場合、裁判官は勾留質問を実施し、被疑者を釈放するか、勾留決定をするかを判断します。
弁護士は、検察官や裁判官と交渉し、できる限り勾留されないように尽力します。
また、信用棄損罪の被害者と示談を試み、被疑者の最終処分が不起訴となる可能性を高めます。
信用毀損罪に問われたら、弁護士に相談を
信用棄損罪に問われた場合、刑事処罰を受けるリスクがあることはもちろんのこと、被害者から民事上の損害賠償請求を受ける可能性があります。
被害者と示談することにより、刑事上の問題も民事上の問題も一挙に解決できる可能性がありますので、信用棄損に問われたら、直ぐに弁護士にご相談ください。