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婚約破棄されたら|慰謝料・損害賠償など知るべき5つのコト

婚約破棄に対して慰謝料の請求が可能な理由とは?

「婚約破棄」とは、簡単に言えば「結婚するという約束を一方的に取り消す」ことです。

よく似た言葉に「婚約解消」がありますが、こちらは、「お互いの合意のもと、結婚するという約束を白紙に戻す」ことです。両者の違いは、お互いの合意の有無にあります。

一方的に婚約を破棄されてしまった場合、相手に対し「慰謝料を請求したい」と思うかもしれません。しかし、いかなる場合でも、婚約破棄による慰謝料は発生するのでしょうか?

本記事では、婚約破棄の慰謝料が発生する/しない場合の違いや、婚約破棄をする/された場合の注意点などについて、幅広く解説いたします。ぜひ最後までご覧ください。

婚約破棄とは

「結婚しようね」という2人の約束を「婚約」といい、相手の合意なしに一方的に婚約を取り消すことを「婚約破棄」といいます。

婚約自体は2人の口約束だけでも成立します。しかし、2人の間で交わした「結婚しようね」という口約束だけでは、第三者から見ると、その言葉の熱量や本気度の判断はつきにくいものです。そのため、婚約が、法的な保護に値するほど真正に成立しているというためには、2人が正式に婚約していることが客観的にわかる言動を伴うことが必要になります。

例えば、以下のような事情があれば、その婚約は、真正に成立していると判断されます。

  • 婚約(結婚)指輪を買った
  • 具体的な結婚式の準備をした(式場の下見・予約など)
  • お互いの親族に結婚の挨拶をした
  • 職場や友人に結婚する旨報告した

婚約破棄で慰謝料が発生する?

相手から一方的に婚約を破棄されてしまった場合、その理由が正当な理由でない不当な理由によるものであれば、婚約を破棄されたことに対する精神的苦痛として、慰謝料を請求することができます。

一方で、相手から婚約破棄をされた理由が、自分の浮気やDV、多額の借金などの正当な理由に基づくものであれば、婚約破棄をされたことに対する慰謝料は請求できません。それどころか、逆に、その理由(浮気やDVなど)に対して、婚約破棄をした相手から慰謝料を請求される可能性があります。

浮気(不貞行為)による慰謝料

婚約者の不貞行為(肉体関係を伴う浮気・不倫)は、婚約破棄の正当な理由となります。

浮気をされた側は、婚約破棄をすることはもちろん、浮気をした婚約者に対し、浮気をされたことにより被った精神的苦痛に対する慰謝料が請求できます。なお、婚約者に浮気の慰謝料を請求するためには、不貞行為の証拠が必要です。

さらに、浮気をされた側は、婚約者の浮気相手に対しても、同様に慰謝料を請求することができます。しかしこの場合には、浮気相手の故意(婚約していることを知っていた上で肉体関係を持ったこと)または過失(相当な不注意で婚約者がいることを見抜けなかったこと)を証明する必要があります。

不倫(肉体関係を伴う浮気)された場合の慰謝料請求についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

不貞慰謝料のお悩みは弁護士法人ALGへご相談ください

DVによる慰謝料

婚約者によるDV行為も、婚約破棄の正当な理由となります。

一言にDVといっても、いくつか種類があり、典型例として以下のものが挙げられます。

身体的DV 殴る、蹴る、物を投げつけるなど
精神的DV 罵倒する、侮辱する、無視するなど
経済的DV 仕事を辞めさせる、生活費を渡さず経済的に困窮させるなど
性的DV 中絶を強要する、性行為を強要するなど

いずれの場合も、第三者に対し婚約者のDV行為を証明できる客観的な証拠(写真、録音・録画データ、診断書、病院への通院履歴、警察や公的機関への相談記録など)が必要になります。

DVについての基礎知識や慰謝料を請求するための証拠については、以下の記事でも詳しく解説されています。ぜひ併せてご覧ください。

DVが原因で離婚をしたい方は弁護士へご相談ください

慰謝料の相場

一般的な婚約破棄の慰謝料の金額は、50万円~200万円が相場といわれています。

これらはあくまでも相場の金額であり、交際(婚約)期間の長さや婚約に伴う退職の有無、妊娠・出産・中絶の有無、精神疾患の発症の有無、お互いの経済力、相手の反省の度合い、結婚のために支出した費用などの要素によって、金額は増減します。

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婚約破棄の理由

正当な理由での婚約破棄

以下に挙げるものは、婚約破棄が認められる正当な理由となり得ます。これらの言動や事情が理由であれば、婚約を破棄された側は、基本的には慰謝料を請求することはできません

  • 不貞行為(肉体関係を伴う浮気)
  • DVやモラハラ、侮辱行為
  • 失業などの経済状況の極度の悪化
  • 社会常識を逸脱した言動
  • 健康状態の悪化(重度の精神疾患や身体障がいなど)
  • 過去の重大な犯罪歴の発覚
  • 性的機能の異常、欠陥、性的不能
  • 多額の借金の発覚

なお、自分から婚約破棄を申し入れることで、「相手から慰謝料を請求されるのではないか?」「慰謝料の請求が不利になるのでは?」と心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この点、たとえ自分から婚約破棄を申し入れたとしても、その理由が上で述べたような正当なものであれば、相手からの慰謝料の請求が認められたり、自分が不利になったりすることはありませんのでご安心下さい。

正当な理由で婚約の解消が認められた裁判例

①東京地判 平成15年2月27日

男性側の度重なる暴力を理由とする婚約破棄は正当な理由があるとし、暴力・脅迫による精神的苦痛に対する慰謝料の額として100万円が相当と認められた。

②東京地判 平成18年7月26日

入籍前に結婚式を挙げていた、2人で暮らすためのマンションを女性名義で購入していた、という事情があったにもかかわらず、男性が婚約者以外の女性と肉体関係を持った。

➡婚姻関係の破綻の原因は男性の不貞行為にあるとし、慰謝料300万円が相当と認められた。

③高松高判 昭和46年9月22日

男性側の身体に、女性と正常な性交ができない肉体的欠陥があった。

➡女性側の婚約破棄には正当な理由があり、女性は男性に対する慰謝料の支払義務を負わないと判断された。

不当な理由での婚約破棄

例えば、以下のような理由は婚約破棄の正当な理由とは認められません。

以下のような理由で婚約破棄をされた側は、婚約破棄を申し入れた側に対し、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することが可能です。

  • 性格の不一致
  • 価値観の相違
  • 単純な心変わり(結婚する意欲がなくなった、もう好きじゃなくなった、ほかに好きな人ができた など)
  • 国籍、民族、出身地、門地などによる差別
  • 親の反対や相手の親族との不和
  • 信仰をやめない

不当な理由による婚約破棄によって、慰謝料の請求が認められた裁判例

①大阪地判 昭和58年3月28日

女性が被差別部落出身であり、男性の両親から結婚を反対された。女性は婚約を機に仕事を退職していた。

➡被差別部落出身であることを理由とする婚約破棄は、正当な理由には該当しないとして、女性に対する慰謝料500万円の支払いを命じた。

②京都地判 昭和45年1月28日

女性が創価学会の信仰をやめないことを理由に、妊娠中の女性を家から追い出し、婚約を破棄した。

➡信仰をやめないことを理由とする婚約破棄には正当な理由があるとは認めがたいとして、男性に対し、女性に対する慰謝料100万円の支払いを命じた。

③東京地判 平成18年2月14日

女性が婚約者以外の男性と度重なる不貞行為を行っていたにもかかわらず、一方的に婚約を破棄し、かつ、自身の保身のために親族や友人を巻き込み男性を悪者に仕立て上げた。

➡女性に対し、男性への慰謝料300万円の支払いを命じた。

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慰謝料以外に婚約破棄で請求できる損害賠償

正当な理由で婚約を破棄した場合も、不当な理由で婚約を破棄された場合も、慰謝料の他に、婚約破棄のせいで生じた損害として、相手に請求できるお金が存在します。次項で詳細をみていきましょう。

婚約指輪

  • 結婚指輪を贈った男性側に婚約破棄の原因がある場合(男性の浮気など)

    信義的な観点から、女性に対し「指輪を返せ」という請求はできないとされています。

  • 男性から結婚指輪を贈られた女性側に婚約破棄の原因がある場合(女性の浮気など)

    男性は女性に対し、結婚指輪の返還を求めることができ得ます。仮に女性が指輪を処分している場合は、指輪の価格相当の損害賠償を請求できます。

結納金

結納金とは、一般的には、男性の家側から女性の家側に対して贈られる、結婚準備・婚約の確証・結婚後の両家の絆を深めるためのお金です。

結婚することを前提として贈られるお金であることから、女性側が原因で婚約破棄に至った場合はもちろん、両者の合意の元で結婚しないという結論に至った場合は、結納金をもらい受けた女性側は、男性側に対し、結納金を返さなければなりません。

しかし、結納金を贈った男性側が原因で婚約破棄に至った場合、自ら破談の原因を作っておきながら結納金の返還を求めることは、信義的に許されないとされています。

結婚式場や新婚旅行のキャンセル料

婚約破棄に伴う結婚式場や新婚旅行のキャンセル料は、基本的には、婚約破棄となった原因・責任がある側が全額負担します。どちらの名義で契約していたか、どちらがどれくらいの割合で予約金や前金を支払っていたか、という事情は関係ありません。

なお、これにかかわらず、二人で話し合い、お互いの合意の元でキャンセル料の負担割合を決めても差し支えありません。

妊娠していた場合の養育費

婚約期間中に婚約者の子供を妊娠したにもかかわらず婚約破棄となってしまった場合、子供を産み育てる母親は、子供の父親に対し、子供が産まれた月以降、養育費の支払いを請求できます。婚約破棄の理由は問いません。

ただし、養育費を請求するためには、父親に子供を認知してもらい、法律上の父子関係を発生させる必要があります。

婚約を解消したい場合、婚約破棄された場合の注意点

婚約を解消したい場合

「ほかに好きな人ができた」「同居したら嫌なところばかり目に付くようになった」など、自分の気持ちが変化したり、知らなかった相手の事実が発覚したりして、結婚を思い直してしまうことは、どんなカップルにでも起こり得ます。

しかし、正当な理由のない一方的な婚約破棄は、相手から慰謝料を請求されるリスクがあります。

まずは2人の話し合いで解決できるように努めましょう。婚約を解消したい理由を冷静に伝え、今後の改善の余地はないのか、しっかりと話し合いましょう。

なお、自分の意志が固い場合や、相手が婚約解消を拒否する可能性があるときは、事前に婚約破棄を正当化できるような証拠を揃えておきましょう。DVやモラハラの音声や動画、浮気現場の写真などは、婚約破棄が正当な理由だと認められるための客観的な証拠として、たいへん有用です。

話し合いの末、無事に婚約解消の合意に至った場合は、各種お金の面での精算(引っ越し費用、式場・新婚旅行のキャンセル料など)についても話し合いましょう。

婚約破棄された場合

自分が婚約者から婚約破棄を言い渡された場合は、どうしたらよいのでしょうか。その場合は、なによりもまず、その理由をきちんと聞き出して下さい。自分に非のない理由、不当な理由であれば、婚約者に対して慰謝料が請求できる可能性があります。

しかし、相手としても、慰謝料を請求されるリスクを避けるために理由を取り繕ったり、曖昧なことを言ったり、嘘をついたりする可能性があります。ときには、婚約破棄の原因を自分に責任転嫁してくるかもしれません。

相手の言い分に疑問を感じたり、納得できなかったり、慰謝料が請求できるのかどうか判断に迷ったりした場合は、家事事件に精通した弁護士に相談すると良いでしょう。

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婚約破棄についてよくある質問

婚約破棄されたことによる慰謝料請求に時効はありますか?

婚約破棄されたことに対する慰謝料の請求権には、10年または3年という時効があります。

具体的には、婚約破棄の理由が債務不履行に基づくものであれば婚約破棄されてから10年、不法行為に基づくものであれば婚約破棄されてから3年が時効となります。

どちらを請求の根拠とするかは、個別具体的な事情により見解が分かれるところです。法的な、複雑な判断が必要となるため、なるべく早めに法律の専門家である弁護士に確認した方が良いでしょう。

メールで「結婚しよう」とは話しましたが具体的な行動をしていなかった場合は婚約が成立していたことになりますか?

婚約は2人の合意だけで成立します。そのため、メールで「結婚しよう」という話をしただけでも、理論上は、婚約は成立しています。

しかし、実務上は、その婚約が法的な保護に値するほど真正に成立していたと判断されるためには、2人が婚約関係にあることを対外的に示す具体的な言動(結婚指輪の購入、結納、式場の下見や予約、親族や友人・職場への報告など)があったことが要求されます。

そのため、2人の間のメールのやり取り程度では、相手に「本気で言ったわけじゃない」などと争われた場合、法的な保護に値するほどの真正な婚約は成立していないと判断される可能性が高いと考えられます。

結婚に備えて退職した場合、婚約破棄に対しての損害賠償はどうなりますか?

婚約を機に仕事を辞めたにもかかわらず、退職後に婚約を破棄された場合は、慰謝料の額が相場よりも高額になる可能性があります。

職場の人に結婚することを周知したのに恥ずかしい、これまでのキャリアを失ってしまった、年齢のせいで再就職のハードルが上がった、退職前と同じような勤務条件の仕事が見つからない・・・

このように、退職後の婚約破棄によって受ける精神的なダメージはとても大きく、退職後の婚約破棄はより悪質性が高いと判断され、慰謝料の額に影響するにことがあります。

加えて、慰謝料とは別に、財産的損害として、損害賠償を請求できる可能性もゼロではありません。妊娠や転居など、婚約に伴って退職を余儀なくされた場合などは、退職しなかったら得られたであろうお金や減収分を、慰謝料とは別の財産的損害として請求できる可能性もあります。

婚約破棄に関する問題で悩んでいる場合は弁護士にご相談ください

婚約破棄の理由が不当なものであれば、相手に対し、慰謝料を請求することができます。逆に、正当な理由で婚約破棄をすれば、相手から慰謝料を請求されることはありません。

しかし、「正当な理由」に当たるかどうかは、個別具体的な事情、法律、過去の裁判例、学説など様々な要素が総合的に考慮されるため、一般の方が判断するのは難しい問題です。

婚約破棄をされた方も、婚約破棄をしたいと思っている方も、なるべく早い段階で弁護士に相談すると良いでしょう。家事事件に精通した弁護士に相談することで、婚約破棄の理由が正当かどうかの法的な見解を示してもらえるだけでなく、慰謝料を請求するために必要な証拠についてのアドバイス、相手との交渉など、心強いサポートが受けられます。

婚約破棄のトラブルに直面し、悩んでいる方は、弁護士法人ALGにご相談ください。経験豊富な弁護士が、全力でサポートいたします。

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 :弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、福岡、バンコクの11拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。