未成年と痴漢|加害者・被害者が未成年の場合をそれぞれ解説
異性に対する関心が芽生えた少年が、痴漢行為に及んでしまう場合があります。
突然、自分の子供が逮捕されたと聞いたら、とても驚くことでしょう。
また、電車で学校へ通うようになった学生が、痴漢に遭うケースは多いようです。
日本の司法において、加害者が未成年者である場合には、成人の場合とは異なる扱いを受けます。
また、被害者が未成年者だと量刑が重くなる傾向があり、示談は保護者が代理する等の特徴があります。
以下で、未成年者による痴漢と、未成年者への痴漢について詳しく説明します。
目次
【未成年が加害者の痴漢】生活への影響は?
未成年者が痴漢をしてしまった場合に、「学校を退学させられてしまうのではないか」ということが気になる場合も多いでしょう。
未成年者が痴漢で逮捕された場合であっても、必ず学校等へ連絡するという決まりがあるわけではありません。また、仮に学校に知られてしまっても、義務教育であれば退学処分を受けることはありません。
しかし、痴漢を行った未成年者が私立中学や高校、大学に通っている場合には、校則によって、退学処分を受けるリスクは否定できません。
学校から退学処分を受けないように取り組むことは、少年事件の場合には特に重要なことだと言えます。
生活へ影響が出る前にすぐ弁護士へ相談しましょう
痴漢を行ったことで、学校から退学処分を受けたり、会社から解雇されたりした場合には、今後の人生に大きな影響を及ぼします。
そのため、退学や解雇等の重い処分を下さないように働きかけるのは重要なことです。
たとえ痴漢で逮捕されても、退学処分や解雇処分が必ず有効なものであるとは限りません。
学校や会社からの処分を受けたものの納得がいかないときは、ぜひ弁護士にご相談ください。
未成年が痴漢で逮捕されたら
加害者が20歳未満の未成年者である場合には、成人とは異なり、少年事件として扱われます。
成人による事件では、加害者を罰することに主眼を置いて処分が下されますが、少年事件では、少年を更生させることに主眼を置いて処分が下されるため、多くの異なる点があります。
以下で、少年事件について解説します。
20歳未満の場合の痴漢事件について
少年事件のうち、14歳以上の少年による事件は、軽微な道路交通法違反事件を除き、その全てが家庭裁判所に送致されます。これを全件送致主義といいます。
なお、凶悪事件の場合には、まず検察官送致され、その後で家庭裁判所に送致されることがあります。
一方、14歳未満の少年による事件は、まず児童相談所に送致され、必要があると判断されれば家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所に送致されると、審判を行うか否かの決定が行われます。なお、14歳以上の少年による凶悪事件の場合には、検察官に逆送されることがあります。
審判不開始となれば、そこで手続きは終了しますが、審判を受ければ、保護観察処分や、児童自立支援施設・児童養護施設への送致、少年院送致といった処分が下されます。
20歳未満の痴漢の処分
加害者が20歳未満である場合には、年齢に基づいて児童相談所や家庭裁判所に送致され、少年審判において処分を決定されるケースが多いです。
ただし、悪い仲間と遊んでいる等の事情があると、少年審判を受ける前に観護措置を受け、少年鑑別所へ入れられる場合があります。
その期間は原則として2週間ですが、1回更新されると期間が4週間になるため、身柄の拘束が長期間に及ぶおそれがあります。
そして、少年鑑別所で得られた情報が少年審判に反映され、その結果として、保護観察処分等を受けることになります。
未成年が前科をつけないためには?
未成年者の犯罪については、基本的に前科がつくことはありません。
例外として、検察官送致をされてしまった場合にのみ、前科がつくことがあります。
前科をつけないためには、未成年者による犯罪が、検察官送致を行うべき重大な犯罪ではないと説明する必要があります。
示談を行う
未成年者の事件において、被害者との示談を成立させたとしても、不起訴処分になるようなことはありません。
少年事件の場合には、原則的に、全ての事件を家庭裁判所に送致する決まりになっているからです。
しかし、少年審判の際には、被害者の感情等が処分を決める重要な要素となっています。
そのため、被害者の処罰感情を和らげながら、深く反省していることを伝え、示談を成立させることによって、処分を軽くする効果が期待できると考えられます。
更生の見込みを示す
未成年者の場合には、検察官送致されるような例外を除くと、より重い罪を犯したから処分も重くなるとは限らないのが特徴です。
未成年者に処分を下す際には、更生の可能性、家庭や学校の状況、交友関係や本人の意思等が考慮されます。
仮に、加害者である少年自身が、「痴漢は軽い罪なので、重い処分を受けずに済む」と考えていれば、反省が深まらず、その結果として重い処分を受けることになりかねません。
少年に対して、罪を自覚するように促しながら、性犯罪のカウンセリングに通わせる等、身柄を拘束しなくても更生の見込みがあることを、具体的に説明できるようにする必要があります。
弁護士ができること
未成年者が逮捕された場合、警察の取り調べにおいて、事実に反する不利な供述をさせられてしまうことがあります。
そのような事態を防ぐために、すぐに弁護士を呼んでいただければ、取り調べを受ける際に注意すべき点について教えることができます。
また、少年事件に限らず、性犯罪の被害者は、加害者との接触を拒む場合が多いので、弁護士が間に入って示談交渉を行うケースが大半です。
弁護士は、少年に反省を促し、更生を手助けすることで、再犯を予防するように努めます。
20歳未満の未成年の場合、特に示談や更生の見込みが重要視されます
成人による痴漢行為であれば、触り方の悪質さ等が重視されますが、少年事件の場合には、更生の可能性等が重視されます。
そのため、痴漢の態様が悪質でなくても、少年院送致等の重い処分を受けるおそれがあります。
弁護士は、少年の更生を第一に活動し、その内容を裁判所や被害者に訴えて、社会の中で立ち直るためのお手伝いをします。
加害少年が更生しようとしていることを、被害者側に認めてもらえるように努め、示談の成立を目指します。
未成年が被害者となる痴漢
痴漢の加害者は、抵抗する能力が低い者を狙いがちなので、未成年者が被害に遭うケースは多いです。
特に、制服を着ている場合等、被害に遭いやすい状況が存在します。
痴漢については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
痴漢で逮捕されたら?被害者が20歳未満の場合
痴漢の被害者が20歳未満である場合には、示談交渉は保護者を相手に行うことになります。
保護者は、自分の子供が痴漢の被害に遭ったことについて、激しい怒りを覚えているのが通常です。
このような場合には、条件にかかわらず示談を拒否されることがあり、示談に応じてくれたとしても、相場よりも多額の示談金を請求されるおそれがあります。
被害者が13歳未満の場合
痴漢の被害者が13歳未満である場合には、特に被害が重大であると認定されることがあります。
幼い子供は抵抗する能力が低く、精神的なダメージが長期間に及び、将来の異性関係等への悪影響が懸念されるからです。
また、13歳未満の子供には性的同意能力が認められておらず、性的な被害に遭っても、自分が何をされているのかを理解できない場合もあり、法的に保護する必要性が高いと考えられています。
未成年への痴漢で逮捕されたら
加害者が成人である場合には、未成年者への痴漢で逮捕された後、48時間以内に検察に送致され、72時間以内に勾留すべきか否かを判断されます。
勾留期間は10日以内であり、勾留延長された場合には、さらに10日間勾留されます。
逮捕後の流れについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
逮捕された時の流れを解説不起訴になるには
痴漢で逮捕されても不起訴になるためには、被害者と示談をする必要があります。
現在では、強制わいせつ罪は親告罪ではなくなりましたが、被害者の感情は今でも重視されているため、被害者から許されたことを示すことが大切です。
不起訴処分については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
不起訴にしたい・前科つけたくない保護者を交えての示談
被害者が未成年者である場合、被害者の保護者を交えて示談交渉することになります。
被害者の保護者は、被害者自身と同等か、それを上回る処罰感情を有している場合があり、安易に示談を持ちかければ火に油を注ぐ結果となりかねません。
加害者やその身内から示談を求めることには特に慎重になった方が良いでしょう。
弁護士ができること
未成年者への痴漢で逮捕されてしまった場合には、弁護士が対応についてアドバイスします。
本人に代わって示談交渉を行い、被害者側の要望を聞き取って、被害者の通学経路を避けることや、二度と性犯罪に手を染めないように、医師のカウンセリングを受けること等の対応を行い、示談の成立を図ります。
起訴や実刑を回避して、社会生活を送りながら更生できるように尽力します。
未成年への痴漢はより罪が重くなります。早急に弁護士へご相談ください
被害者が未成年者であった場合には、悪質性が高いと認定されるおそれがあり、被害者やその家族の処罰感情が強いケースが多いです。
被害者と示談したいと思っても、加害者は被害者の連絡先を知ることができない場合が多く、仮に接触できたとしても、良い結果にはならないと考えられます。
そこで、未成年者への痴漢で逮捕されてしまった場合には、すぐに弁護士を呼ぶことをおすすめします。
示談のために活動するだけでなく、より良い更生の手段等についても検討します。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
未成年の痴漢でよくある質問
18歳の高校生ですが、痴漢以外の余罪があった場合少年院へ行くことになるのでしょうか?
余罪がある場合には、少年の非行が根深いものであると判断されるおそれがあります。
特に、痴漢以外に盗撮も行っていた等、性犯罪を繰り返していた場合には、性犯罪への抵抗感が乏しいと解釈され、更生の見込みに大きな影響を与えることが考えられます。
しかし、少年が心から反省し、保護者も少年を更生させるために協力することを誓っている等の、更生に良い影響を与える要素があれば、少年院に入れる必要は無いと判断される可能性があります。
高校生の息子が痴漢をしてしまいました。受験生なのですが、進学先から入学拒否されることはありますか?
基本的に、警察が逮捕した少年の進学先に、痴漢の事実を伝えることはありません。
しかし、何らかの理由で進学先に痴漢の事実を知られてしまった場合、進学先から入学拒否されるかは進学先の判断によります。
高校生ですが、痴漢をしたことで実名報道されてしまうことはあるのでしょうか?
少年法により、犯罪を行った未成年者の実名を報道することは禁止されています。
そのため、高校生が実名報道されてしまう確率は低いでしょう。
しかし、近年では、第三者によるインターネットへの投稿等により、情報が流出してしまう場合もあるため、実名が知られるリスクが無いとは言えません。
なぜ痴漢した相手が13歳未満の児童だと罪が重くなるのですか?
まず、痴漢の被害者が13歳未満である場合には、暴行や脅迫を用いなくても強制わいせつ罪が成立するため、迷惑防止条例違反で逮捕されるよりも量刑が重くなります。
さらに、同じ強制わいせつ罪であっても、相手が幼い児童である場合には、自分が被害を受けたことを自覚できないケースもある等、保護する必要性が重視されることや、今後の社会生活や異性関係への長期に及ぶ悪影響が懸念されることから、量刑が重くなる傾向があります。
13歳未満の未成年に痴漢したことを後から知りました。量刑には影響しないのでしょうか?
13歳未満の子供は幼く見える場合が多いこと等から、相手が13歳未満であると知らなかったという主張は、刑事裁判では簡単に認められないでしょう。
加えて、痴漢は一方的な行為であるため、相手の年齢を誤認していたとしても、特別な事情がなければ、量刑に大きな影響は与えないと考えられます。
ご家族が痴漢で逮捕された場合すぐ弁護士へご相談ください
未成年の子供が痴漢で逮捕されたら、なるべく早く弁護士へ相談することをおすすめします。
近年では、インターネット上で、性的な話題を扱ったコンテンツが数多く存在し、性に関する誤った情報が拡散されている等、情報の真偽を正しく認識できない未成年者が性犯罪に及んでしまうリスクは高まっていると言えるでしょう。
また、子供は親に反発する場合も多いことから、未成年者の将来への影響を抑えながら正しく更生できるようにするためにも、専門性を有した第三者の介入は不可欠です。
未成年の子供の痴漢についてお困りの際には、すぐに弁護士へご相談ください。
