盗撮事件で示談しないとどうなる?交渉の流れや示談金の相場など
盗撮事件は、被害者が存在する刑事事件であるため、被害者との示談が非常に重要となります。
しかし、「事件の当事者である被害者との和解を意味する示談の成立は、後の刑事処分に大きな影響を与える」、ということは想像できるものの、具体的にどのような影響を与えるのかはわからないという方も多いでしょう。
そこで本記事では、盗撮で示談するメリットや盗撮で示談しないとどうなるのかという点について、詳しく解説していきます。
盗撮で示談する場合の流れについても詳しく解説していきますので、ぜひご参考になさってください。
目次
盗撮で示談する3つのメリット
刑事事件における示談とは、事件の当事者である被害者と加害者が話し合いによって和解することを指します。
話し合いだけでは当然和解できないため、被害相当額を金銭で弁償することや深い謝罪を伝えることに加え、再犯防止に向けた取り組みなどを具体的に示すことによって、被害者から赦しを得ることになります。
示談が成立することで、後に判断される刑事処分が軽くなる可能性が高まります。
具体的には、次の3つのメリットを得ることができます。
- 不起訴の可能性が高まる
- 釈放の可能性が高まる
- 民事事件も解決できる
では、それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
①不起訴の可能性が高まる
被害者との示談成立の有無は、検察が被疑者の刑事処分を判断するうえでもっとも重要視するポイントといっても過言ではありません。
不起訴とは、検察が被疑者に対して「刑事裁判にかける必要はない」と判断することをいいます。刑事裁判にかけられないということは、処罰されないことを意味するため、前科がつくことはありません。
被害者が加害者である被疑者に対して、処罰を求める感情がないことを示す示談の成立は、不起訴の可能性を大きく高めます。
不起訴となれば、直ちに身柄拘束が解かれ、日常の生活に戻ることができます。
そのため、不起訴を獲得したい場合には、できるだけ早く被害者との示談交渉を進めることが重要です。
②釈放の可能性が高まる
被害者との示談成立は、釈放の可能性も大きく高めます。
盗撮で逮捕された場合、逮捕から3日間(72時間)は捜査機関の取り調べを受けることになるため、身柄を拘束されます。
その後、引き続き身柄を拘束する必要があると検察から判断された場合には、裁判所に対して勾留請求がなされ、裁判所が勾留の可否を判断します。
勾留請求が認められると、はじめに10日間勾留され、必要に応じてさらに10日間勾留されることになります。
つまり、逮捕から最大23日間身柄拘束が続く可能性があるため、出来るだけ早く被害者と示談して釈放の可能性を高めることが重要です。
③民事事件も解決できる
被害者との示談成立時に、清算条項を入れた示談書を取り交わすことで、民事事件も解決することができます。
盗撮行為は、刑事上の責任だけでなく、「不法行為に該当する」として民事上の責任にも問われます。
民事上の責任とは、盗撮行為で被害者が被った精神的苦痛に対する損害を賠償する責任のことをいいます。被害者が民事事件として損害賠償請求した場合には、これに応じ、慰謝料などを支払わなければなりません。
しかし、示談書に「この他の請求権は存在しない」などの清算条項を明記することで、民事事件となるのを阻止することができます。
盗撮で示談をしないとどうなる?
盗撮事件の被害者が誰なのか特定されている場合もあれば、特定されていない場合もあるでしょう。
被害者が盗撮されていることに気付かずその場を去ってしまえば、特定が困難となります。いずれにしても、盗撮事件の被害者と示談しなければ、起訴される可能性は十分にあります。
しかし、被害者が特定されていない場合は、被害者が誰なのかわからないため、示談しようがありません。そのような場合には、どのように対応して不起訴の獲得を目指せばよいのでしょうか。
次項では、盗撮事件で被害者が特定されている場合とそうでない場合にすべき対応について、解説いたします。
被害者が特定されている場合
被害者が特定されている場合は、早急に被害者との示談交渉を進めることが重要です。
初犯の場合は、示談しなければ略式起訴され、罰金刑を科せられる可能性があります。罰金刑が科せられれば、前科がつくため、社会復帰に大きな影響を及ぼすことになります。
既に前科がある場合は、起訴されて懲役刑を科せられる可能性が高いです。
また、執行猶予期間中であるにもかかわらず盗撮事件を起こした場合には、実刑判決を下される可能性が非常に高いため、いずれにしても被害者との示談交渉を早急に進める必要があります。
被害者が特定されていない場合
被害者が特定されていない場合でも、起訴されて有罪判決が下される可能性は十分にあります。
盗撮行為は、被害者からの被害届がなくても刑事事件として捜査が開始されるおそれのある犯罪行為です。
そのため、被害者が特定されていなくても、贖罪寄付や反省文の作成などで深い反省を示すことや、身柄を釈放された後、再犯防止に向けた家族の監督体制がきちんと整っていることなどを証明することが重要です。
このような活動を行うことで、被害者と示談しなくても、不起訴獲得の可能性を高めることができます。
贖罪寄付(しょくざいきふ)とは?
刑事事件を起こした被疑者・被告人が、贖罪のために弁護士会や被害者支援を行う団体などに寄付をすることをいいます。刑事事件では、贖罪寄付をすることによって刑事処分の判断が有利に働く傾向があります。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
盗撮事件の示談を成功させるには弁護士に相談・依頼する
被害者との示談を成功させるためには、弁護士に相談・依頼することがもっとも有効的です。
盗撮事件で逮捕された場合は、逮捕から72時間は身柄を拘束され、外部と連絡を取ることも許されません。その間は、たとえ家族であっても面会することはできませんが、弁護士であれば逮捕直後から被疑者と面会することができます。
また、被害者の大半は加害者側である被疑者・被告人との接触を拒み、示談の余地がほとんどない心情であることが多いです。
この点、弁護士であれば、被害者の心情に応じた丁寧な交渉を進めることができます。
盗撮の被害者は、「加害者側に自身の個人情報を知られたくない」という思いから、警察や検察に加害者側へ連絡先を教えないように要望することがほとんどでしょう。
しかし、弁護士であれば、そのような場合でも連絡先を教えてもらいやすい傾向にあります。
示談交渉が進めやすく早期解決が期待できる
弁護士に被害者との示談交渉を依頼すると、自分で交渉するよりも格段に早く解決できる可能性があります。
特に、刑事事件を得意とする弁護士に被害者との示談交渉を進めてもらうことで、より早期解決が実現しやすいです。
もちろん、弁護士でなくても被害者と示談交渉を行うことは可能です。
しかし、被害者の複雑な心情を考慮した話し合いを進められないことでトラブルが生じやすく、有効な手段とは言い難いです。
弁護士であれば、被害者だけでなく警察や検察とのやり取りについてもスムーズに行いやすいため、被害者との示談成立を目指す場合は、刑事事件に精通した弁護士にご相談されることをおすすめします。
適正な示談金で示談できる
弁護士に被害者との示談交渉を依頼すると、適切な示談金で示談することができます。
盗撮事件における示談金の相場は、約30万円程度であることが多いですが、被害の程度や犯行態様によって相場が変動します。
一般の方では適切な示談金額の判断ができないところ、弁護士であれば、過去の判例やこれまでの経験、豊富な法的知識を活かして適切な示談金額を被害者に提示することができます。
しかし、弁護士であれば誰でも適切な示談金で被害者と示談成立できるわけではありません。弁護士の力量に左右される部分といえるため、刑事事件に精通した弁護士を選択した方が有益です。
不備のない示談書を作成できる
弁護士に被害者との示談交渉を依頼すると、不備のない示談書を作成することができます。
被害者との間で示談が成立したことを証明するものとして、示談時は必ず示談書の取り交わしを行います。示談書は、法的な効力、すなわち、裁判で使用することができるものであるため、不備があると法的効力が損なわれてしまいます。
また、基本的に示談書は、一度取り交わしてしまうと不備があっても簡単に書き換えることができません。そのため、不備のない示談書を作成することが、示談書の効力を最大限に引き出すことにつながります。
なお、示談書で重要となる主なポイントは、刑事処罰を求めないことを意味する宥恕文言と、示談書に記載されている内容以外の責任を負わないことを意味する清算条項を示談書の内容に盛り込むことです。
盗撮の示談の流れ
盗撮事件の被害者と示談交渉を試みる際は、まず被害者の連絡先を入手するところからはじめます。
盗撮された被害者の多くは、加害者側に自分の個人情報を知られたくないと思っているため、「被害者の連絡先を入手できない・入手できても応じてもらえない」といった状況になりやすいです。
そのため、盗撮の示談を試みる際は、ほとんどの方が弁護士を通じて行っています。
弁護士は、次のような流れで被害者との示談交渉を進めていきます。
- 被害者の連絡先を入手する
- 被害者への連絡・示談交渉の開始
- 示談内容の確定
- 示談書の作成
- 示談書のコピーを提出
では、それぞれのステップについて、詳しく解説していきます。
被害者の連絡先を入手する
被害者との示談交渉のために弁護士が最初に行うことは、被害者の連絡先を入手することです。
示談に向けた話し合いを行うためには、まず被害者とやり取りする必要があります。
そこで弁護士は、最初に担当の警察官または検察官に被害者と示談したい旨を伝え、連絡先を開示するように求めます。
その後、警察官・検察官は被害者に連絡し、弁護士に連絡先を教えてもよいかどうかの意思確認を行います。ここで被害者が連絡先の開示を承諾した場合は、後日警察官・検察官から連絡先を教えてもらえます。
ただし、必ずしも連絡先が入手できるわけではなく、被害者から拒絶され、連絡先が入手できない場合もあります。
被害者の連絡先が入手できない場合
被害者の連絡先が入手できない場合には、弁護士にて上申書を作成し、検察官に提出します。
被害者が担当の警察官や検察官に、「加害者側に連絡先を開示しないでほしい」とお願いしている場合は、被害者の意思が尊重されるため、たとえ弁護士であっても連絡先を教えてもらえない可能性があります。
このような場合には、被害者に伝えたいことを上申書に記載し、被害者へ連絡先の開示を求めます。
たとえば、被害者の多くは、弁護士であっても加害者側に自分の個人情報が知られることを恐れます。
そのため、被害者の個人情報を弁護士以外には知らせないことを記載するなどして、連絡先を開示してもらえるように交渉します。
被害者への連絡・示談交渉の開始
被害者の連絡先を入手した後は、被害者へ連絡し、示談交渉を開始します。
話し合いの方法について、被害者が電話やメールなどの希望がある場合には、被害者の希望に沿うように柔軟に対応していきます。
話し合いが開始されたら、まずは弁護士が加害者の謝罪と反省の意思を被害者に伝えます。加害者が作成した謝罪文を用意している場合は、ここで渡すことが多いでしょう。
被害者と示談交渉を行う場合は、被害者にきちんと謝罪の意を伝えてから、示談に向けた話し合いを進めることが大切です。
あくまで謝罪が先だということを、念頭に置いておきましょう。
示談内容の確定
被害者と示談に向けた話し合いを行い、合意に至った場合は、示談書で示談内容の確定を行います。
両者が話し合いで合意した内容を示談書に記載し、両者が署名・捺印することによって、示談内容を確定させることができます。
一般的な示談内容は、加害者が被害者に対して示談金を支払い、その代わりに被害者が示談書に署名・捺印するというものです。
また、被害者が被害届を提出している場合には、被害届の取り下げ書にも署名・捺印してもらうことがあります。
示談書の作成
示談書の作成は弁護士が行い、主に次のような内容を記載します。
<示談書の記載内容>
- 事件内容の特定
- 謝罪の文言
- 示談金額と支払方法の明記
- 清算条項
- 接触禁止条項
- 宥恕条項
- 守秘義務条項 など
示談書に記載する内容として、特に重要となるのは清算条項と宥恕条項です。
清算条項(せいさんじょうこう)とは、「示談書に記載されている以上の支払いはしません」と約束するもので、示談成立後の追加請求や民事事件への発展を防止するための条項のことをいいます。
清算条項を示談書にきちんと明記することで、金銭的なトラブルを回避することができます。
次に、宥恕条項(ゆうじょじょうこう)とは、「被害者が加害者を許します」ということを意味する条項のことです。
宥恕条項が明記されていることで、不起訴処分を獲得できる可能性を高めることができます。また、起訴されたとしても、刑が減軽される可能性があります。
示談書のコピーを提出
被害者との示談が成立したら、被害者と加害者の署名・捺印の入った示談書のコピーを警察官・検察官または裁判官に提出します。
示談書のコピーを提出することで、被害者が加害者である被疑者・被告人に対して、処罰を求めていないことを主張できます。
これにより、被疑者・被告人にとって有利な刑事処分が下されやすくなります。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
盗撮の示談金の相場
盗撮事件における示談金の相場は、約10~50万円程度といわれています。
示談金の額は、被害態様によって変動するため、場合によっては相場よりも高額となることもあります。
たとえば、次のような場合には、示談金が高額となる可能性があります。
- 盗撮したデータをネットで拡散した場合
- 被写体が18歳未満の未成年者である場合
- 数ヶ月にも及んで更衣室やトイレで繰り返し盗撮した場合
- 性行為中に隠し撮りした場合
- 盗撮したデータを販売した場合 など
このような盗撮行為は、犯行態様に悪質性・常習性が認められるとして、示談金が相場よりも高くなりやすいです。
盗撮行為として撮影罪が該当するだけでなく、盗撮データの用途次第では、他の犯罪にも抵触するおそれがあります。
なお、自分が犯した盗撮行為の示談金の相場が知りたいという場合は、刑事事件に精通した弁護士に相談するとよいでしょう。
これまでの豊富な経験から、具体的な示談金の相場を教えてもらえます。
示談金の分割払いはできるのか?
被害者に対する示談金の支払いは、基本的に一括払いとなります。
分割払いが認められていないわけではありませんが、支払いの度に被害者の中にある嫌な記憶を呼び起こしてしまうおそれがあります。何より、被害回復の実現性が乏しいと判断されやすく、刑事処分に不利に働く可能性があります。
ただし、被害者が分割払いを認めており、支払いの見込みが持てる状況(定職に就いている・連帯保証人がついているなど)にあれば、刑事処分に不利に働く可能性を低くすることができるでしょう。
示談金を吊り上げられた場合の対処法
刑事事件の示談は、加害者である被疑者・被告人が被害者に対して許しを乞う行為であることから、被害者が優位となる交渉になってしまいます。
そのため、被害者から示談金を吊り上げられることも少なくありません。
被害者から示談金を吊り上げられた場合の対処法としては、次のようなことが挙げられます。
- 自分が支払える示談金の上限を明確に決めておくこと
- 被害者が希望する示談金を支払えず、示談不成立となっても「仕方ない」と覚悟を決めること
- これらの覚悟を弁護士にきちんと伝えておくこと
自分の中で、「被害者に対して支払える示談金がいくらまでなのか」覚悟をもって明確に決めておかなければ、被害者のペースに巻き込まれ、収拾がつかなくなっていまいます。
盗撮の示談交渉はなるべく早く弁護士法人ALGにご相談ください
被害者との示談交渉は、弁護士に依頼せずとも自分で行うことができます。
しかし、被害者が存在する盗撮事件では、逆に被害者側の感情を逆なでしてしまい、状況が悪化するおそれがあります。
この点、弁護士であれば、被害者側の感情に配慮した示談交渉を行うことができます。「被害者から連絡先を教えてもらえない」、「示談金を吊り上げられてしまう」といった状況も、弁護士によって断ち切ることができるでしょう。
特に刑事事件を得意とする弁護士に依頼することで、弁護士によって得られるメリットを最大限に引き出すことができます。
また、刑事事件は想像以上に早く手続きが進んでいくため、被害者との示談交渉はなるべく早めに取り掛かるのが好ましいです。
そのため、盗撮の示談交渉を試みる場合は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
