盗撮で逮捕される場合とは|撮影罪・迷惑防止条例違反など


駅構内や商業施設のエスカレーターで女性のスカートの中を撮影等することが典型的な盗撮です。
このような盗撮は、各都道府県で制定されている条例で取り締まられていましたが、2023年に性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下では、撮影罪とします)が制定、施行され、今後は、撮影罪で規律されていくことになります。
以下では、盗撮について解説していきます。
目次
盗撮で逮捕されるケースと該当する罪とは
東京都の条例においては「通常衣服で隠されている下着又は身体」を撮影することが犯罪となる盗撮と規定されています。
ですので、犯罪となる盗撮は、相手に無断で撮影した場合を全て含むわけではありません。
もっとも、相手の顔等の容貌を無断で撮影することは、犯罪にはならないにしても、相手とトラブルの元となるので、慎むべきであることは言うまでもありません(肖像権の侵害という問題発生しえます)。
撮影罪
前述のように、2023年の法改正により、撮影罪が制定されました。
電車内、駅構内、商業施設内、路上、会社の更衣室内等、場所を問わす、スカートの中や下着姿を盗撮する行為は、この撮影罪によって処罰されることになるでしょう。
ただし、撮影罪の施行は2023年7月13日からですので、それ以前の盗撮行為については、各都道府県が定める条例によって規律されます。
迷惑防止条例違反
撮影罪が制定される前、盗撮行為は、各都道府県が定めている条例の規制が及べば、条例違反として扱われていました。例えば、電車内、駅構内といった公共の場所での盗撮は、条例違反となりえます。
電車内や駅構内といった公共の場所ではない、会社内での盗撮は、かつては、条例の規制が及びませんでしたが、近年の改正により(例えば、東京都の条例では2018年の改正)、会社内での盗撮も条例の規制が及ぶようになりました。
その他の罪
盗撮目的で商業施設や役所の女子トイレに侵入した場合、例え、盗撮が成功していなくとも、女子トイレに侵入する行為自体が建造物侵入罪となるでしょう。
また、盗撮の対象が18歳未満の児童であった場合、児童が性交している姿であった場合等、盗撮内容によっては、児童ポルノ製造等の罪が成立する可能性があります。
盗撮で有罪となった場合の刑罰
撮影罪の刑罰は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金となっています。なお、従来、刑務所に行く刑罰は、懲役刑と禁固刑でしたが、拘禁刑に1本化される予定です。
東京都の条例での盗撮の刑罰は、(常習でない場合)1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金であり、撮影罪の方が刑が重くなっています。
また、建造物侵入罪の刑罰は、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金であり、児童ポルノ製造罪の刑罰は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
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盗撮で逮捕された場合に知っておくべきポイント
起訴される可能性
盗撮の場合、初犯だからといって、不起訴になるとは言い難く、被害者と示談が成立するなどして、被害者が許しているということで、不起訴となる可能性が高まります。
再犯の場合は、前回の犯行から今回の犯行までがどれくらいの期間が空いているか等にもよりますが、被害者と示談をしても、不起訴にならない場合があることは、覚悟しなければなりません。
刑罰における軽重の判断要素
刑罰の軽重を決めるのは、一般的には、犯情と呼ばれる、犯罪に直接係る事情です。
例えば、同じ盗撮でも、スカートの中を盗撮したのか、トイレで排泄中の姿を盗撮したのかによって、犯情は異なると思われます。計画性の有無や動機等も、犯情に係る事情として、重視されうる事情です。
また、犯罪後の事情であり、犯罪に直接係る事情ではないのですが、被害弁償や示談のように、被害を事後的に回復させた場合、刑罰を軽くする要素として考慮され、示談の有無が実刑と執行猶予を分けるといったことも、多々あります。
なお、反省しているといったことや監督者が存在するといったことは、犯罪後の事情であり、犯情に関係がなく、また、被害回復といった要素もありませんので、刑罰の軽重を決める要素としての重要性は、低いと考えられます。
逮捕された場合の前科
駅構内で女性のスカートを盗撮したとの疑いをかけられ、捜査機関による捜査の対象となった場合、検察官が起訴するか否かを決定します。
女性のスカートの中を盗撮したことを認めていることを前提とすると、例えば、初犯の場合、検察官に略式起訴され、罰金刑となることが考えられます。
罰金刑も刑罰ですので、前科となります。前科をつけたくないならば、不起訴処分を獲得する必要があります。
被害者との示談の重要性
犯罪となる盗撮行為をしたことに間違いないが、前科をつけたくない場合、不起訴処分を獲得すること必要があると述べました。
そして、不起訴処分を獲得できるか否かで決定的に重要なのは、被害者と示談できるか否かです。
もし、被害者が示談してくれないということであれば、不起訴処分の獲得は、困難となるでしょう。ですので、被害者と示談が成立するように、誠心誠意を尽くすことが重要です。
執行猶予中の犯行の場合
執行猶予中の前科が何かによりますが、ここでは盗撮の前科で執行猶予中であることを前提にします。
盗撮事件で裁判を受けて、執行猶予判決を受けたにも関わらず、執行猶予中に、再度盗撮をした場合、起訴されて、実刑となることが想定されます。
それでも、不起訴になることや再度の執行猶予となることに一縷の望みをかけて、被害者と示談することはもちろん、盗撮等、性犯罪を繰り返す者を対象とした治療プログラムを受け、再犯防止体制を確立することが考えられます。
盗撮の時効
民事の時効は、被害者が加害者に対して慰謝料の支払いを求めることができなくなるか否かという問題で、刑事の時効は、検察官が被疑者を起訴できなくなるか否かという問題です。
盗撮をしたことによる、不法行為を理由とした損害賠償請求権の時効は、盗撮されたことを知り、加害者を知った時点から3年、または、盗撮行為が行われてから20年です。
盗撮をして、撮影罪に問われる場合、撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金刑であり、公訴時効は3年です。
盗撮で逮捕された場合の流れと手続き
盗撮で逮捕された場合、逮捕から48時間以内に検察庁に送られます。そして、検察官は、24時間以内に、被疑者を勾留請求するか、釈放するかを判断します。
検察官が勾留差請求した場合、裁判官が勾留質問を実施し、被疑者に対して勾留決定するか、釈放するかを判断します。
逮捕後、検察官、裁判官により釈放されるチャンスがあります。そして、弁護士は、検察官、裁判官が釈放するように、交渉したり、被害者との示談、身元引受人の確保等、被疑者の釈放につながるような活動をします。
盗撮で逮捕された場合は出来るだけ早く弁護士にご相談ください
盗撮事件で逮捕された場合、勾留されずに釈放されること、最終的に不起訴処分となり前科が付かないこと、いずれも重要です。
早期の身柄釈放及び不起訴処分獲得のために、弁護士の活動が重要となってきます。逮捕から72時間が勝負という言われ方がされるように、逮捕されて勾留決定までは、2~3日しかなく、できるだけ早く弁護士に依頼することが大事になります。
盗撮事件で逮捕されたら、できるだけ早くご相談ください。