盗撮は撮影罪にあたる?構成要件や罰則、対処法などわかりやすく解説

盗撮は撮影罪にあたる?構成要件や罰則、対処法などわかりやすく解説

監修
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

被写体となる人の同意なしに密かに撮影を行う盗撮行為は、撮影罪に該当する可能性があります。

これまで、盗撮行為は各都道府県が定める迷惑防止条例に違反する犯罪行為として取り締まられてきました。
しかし、盗撮行為の厳罰化を目的として新たに撮影罪が導入された今、以前と比べて重い刑罰が科せられるため、注意が必要です。

そこで本記事では、撮影罪に着目し、撮影罪の構成要件や撮影罪にあたる行為をしてしまった場合の対処法などについて、詳しく解説していきます。

盗撮は「撮影罪」にあたる可能性がある

「被写体となる人から同意を得ずに、衣服で隠れている身体の一部や下着等を密かに撮影する行為」である盗撮行為は、撮影罪が成立する可能性があります。

撮影罪は、迷惑防止条例違反による刑罰と比較して、重い刑罰が設けられているため、注意しなければなりません。

では、次項にて、撮影罪についてもう少し掘り下げて解説していきましょう。

撮影罪(性的姿態等撮影罪)とは?

撮影罪は、“被写体となる人の性的姿態等を同意なく撮影することで成立する犯罪”であり、正式名称を性的姿態等撮影罪といいます。

性的姿態等とは、主に次のような姿態を指します。

  • 性器や肛門の周辺、臀部、胸部などの性的な体の部位
  • 性的な部位を隠すために着用している下着
  • わいせつ行為や性行為等をしている人の姿

たとえば、電車内やエスカレーターで相手のスカートの中を密かにスマートフォンで撮影したり、駅構内のトイレに隠しカメラを設置して隠し撮りをした場合などが撮影罪に該当する行為として挙げられます。

また、相手から同意を得ずに性行為の様子を隠し撮る行為も撮影罪に該当する可能性があります。

撮影罪はいつから導入された?

撮影罪は、性的姿態撮影等処罰法に規定されており、2023年6月23日に公布され、2023年7月13日に執行されたばかりの犯罪です。

盗撮行為は、従来は各都道府県が定める迷惑防止条例に違反するとして処罰されていましたが、迷惑防止条例違反で処罰できない事例なども多くあり、より盗撮行為を厳罰化するために新たに新設されました。

そのため、迷惑防止条例違反よりも重い刑罰内容となっています。

盗撮行為の増加や犯行態様の悪質化は、ペン型カメラなどの小型カメラの普及によると考えられています。
現在、小型カメラの所持や使用を禁止する法律はありませんが、小型カメラの用途次第では撮影罪に問われる可能性があるため、注意しなければなりません。

撮影罪と迷惑防止条例の違い

迷惑防止条例とは、「住民が安心して生活できるように、公衆に著しく迷惑をかける行為等を禁止する条例」のことをいい、都道府県ごとに定められています。

撮影罪と迷惑防止条例には、主に下表のような違いがあります。

  撮影罪 迷惑防止条例
適用される地域 全国共通 盗撮行為が行われた都道府県の条例が適用される
処罰される行為 違法な盗撮行為、盗撮したデータの提供や保管、送信等 下着や裸等の盗撮行為
(※条例によって対象範囲が異なります)
法定刑 最大5年以下の拘禁刑又は最大500万円以下の罰金 6ヶ月~1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(※条例によって異なります)
時効 3年
※不特定多数への提供・送信
→5年
3年

撮影罪が成立する4つの行為(構成要件)

性的姿態撮影等処罰法では、次の行為を「撮影罪が成立する構成要件」として規定しています。

  • 正当な理由なくひそかに性的姿態等を撮影する行為
  • 同意できない状態の被害者を撮影する行為
  • 被害者に誤信させて撮影する行為
  • 16歳未満の性的姿態等を撮影する行為

なお、これらの構成要件を満たしていない場合=未遂であっても、撮影罪は処罰されます。

では、それぞれの構成要件について、詳しく解説していきます。

①正当な理由なくひそかに性的姿態等を撮影する

撮影罪は、正当な理由なくひそかに性的姿態等を撮影する行為でなければ成立しません。

たとえば、エスカレーターで女性のスカートの中を盗撮する行為などが典型例として挙げられます。

一方で、緊急搬送された意識のない患者の裸を医師が職務上必要な行為として撮影する場合や、子供の成長を記録するために裸でプールを泳ぐ子供の様子を撮影する場合などは、“正当な理由である”として撮影罪に問われません。

ただし、いくら成長の記録とはいえ、親が子供の裸体を撮影したデータをSNS上にアップし、悪用された場合には、児童ポルノ禁止法やプライバシー侵害などに抵触する可能性があるため、注意が必要です。

②同意できない状態の被害者を撮影する

撮影罪は、同意できない状態の被害者を撮影する行為でなければ成立しません。

この「同意できない状態」とは、主に次のような行為や事由を用いた状態であると刑法176条1項で定められています。

  • 暴行、脅迫を用いること
  • 心身の障害を生じさせること
  • アルコールまたは薬物を摂取させること
  • 睡眠やその他の原因により意識が不明瞭な状態であることを利用すること
  • 同意しない意思を形成、表明する間を与えないこと
  • 予想と異なる事態に直面させて恐怖、驚愕させること
  • 虐待に起因する心理的反応を生じさせること
  • 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力を利用すること

③被害者に誤信させて撮影する

撮影罪は、被害者に誤信させて撮影する行為でなければ成立しません。

つまり、被写体である被害者に対して、特定の行為や恰好がわいせつなものではない自分以外には見せないと嘘を付き、信じ込ませて性的姿態等を撮影する行為であると、撮影罪が成立するということです。

④16歳未満の性的姿態等を撮影する

撮影罪は、16歳未満の性的姿態等を撮影する行為であると、同意の有無に関係なく成立します。

具体的には以下のとおりです。

  • 被害者が13歳以上16歳未満の場合:被害者の年齢から5歳以上の年齢差がある加害者が処罰の対象となる
  • 被害者が13歳未満である場合:年齢差に関係なく、撮影罪が成立する

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撮影罪の刑罰

撮影罪の基本となる刑罰は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。

ただし、盗撮したデータを保管したり、提供したりした場合についても処罰の対象となり、より重い刑罰が科せられる可能性があります。

なお、従来の迷惑防止条例では、都道府県によって条例の内容は多少異なるものの、「6ヶ月~1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が基本となる刑罰であるため、撮影罪の方がより重い刑罰内容となっています。

処罰される行為ごとの罰則は、下表のとおりです。
なかでも、不特定多数の人に盗撮データを提供・送信する「提供罪」「送信罪」が、特に重い刑罰とされています。

罪名 処罰される行為 罰則
撮影罪 盗撮行為などの違法な撮影行為 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
提供罪 盗撮などによって得られた画像や動画を第三者に提供する 第三者が特定・少数の場合:3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
第三者が不特定・多数の場合:5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金、又は併科
保管罪 盗撮などによって得られた画像や動画を他人に提供する目的で保管する 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金
送信罪 盗撮などによって得られた画像や動画を不特定多数の者に対して送信する 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金、又は併科
記録罪 盗撮などによって得られた画像や動画を違法に撮影されたと知りながら記録する 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金

撮影罪は初犯でも前科がつく?

撮影罪は、初犯であることが有利な情状として判断され、罰金刑となる可能性があります。ただし、罰金刑であっても有罪判決が下されたことに変わりないため、前科がつきます。

そのため、不起訴処分に向けた弁護活動に早期段階から着手することが重要です。

また、以前同じ種類の前科がついている場合は、不利な情状として判断され、拘禁刑を受ける可能性があります。もっとも、その他のさまざまな情状が考慮されたうえで量刑が判断されるため、必ず前科がつくというわけではありません。

撮影罪で逮捕された後の流れ

盗撮罪で逮捕されると、主に次のような流れで手続きが進んでいきます。
それぞれの手続きについて、詳しく解説していきます。

警察による取調べ

撮影罪の疑いで警察に逮捕された後は、警察による取り調べを受けます。

取り調べでは、被疑者本人の生い立ちや家族構成、職歴、趣味・嗜好をはじめ、事件当時の行動などについて、詳しく聴き取られます。

警察から聴き取られて話した内容は、すべて「供述調書」にまとめられ、法的に有効な証拠として扱われるため、慎重に取り調べを受ける必要があります。

取り調べの段階で、弁護士に相談している場合は、“取り調べをどのように受けるべきかのアドバイス”を事前に受けたうえで取り調べに臨めるため、不利益を受ける可能性を低くすることが期待できます。

検察による取調べ

警察の取り調べを受けている段階で身柄釈放されない限り、逮捕されてから48時間以内に検察へ送致されます。

検察が警察からの送致を受けた後は、検察による取り調べを受けることになります。
このとき検察は、法的な観点から警察とは別の供述調書を作成します。

そして、取り調べの結果をふまえ、送致を受けてから24時間以内に被疑者を勾留(被疑者の身柄を拘束する)するかどうか判断します。引き続き身柄の拘束が必要と判断された場合には、裁判所に対して「勾留請求」が行われます。

最長20日間の身柄拘束

検察からの勾留請求に対して、裁判所がこれを認めた場合には、まず10日間の勾留が行われます。

被疑者が勾留されている間も、引き続き捜査機関による捜査が継続されますが、捜査状況によってはさらに10日間勾留が延長されます。
そのため、被疑者の勾留は最大で20日間認められています。

なお、被疑者との面会について、逮捕から勾留請求されるまで(72時間)は認められていませんが、勾留期間中は面会することができます。
この段階でようやく家族や知人と面会することが可能となります。

起訴・不起訴の判断

最大で20日間の勾留期間中に、検察官は被疑者を起訴するかどうか判断します。
起訴するということは、被疑者を刑事裁判にかけることを意味します。

一方で、不起訴と判断されれば、刑事裁判にかけられることなく直ちに身柄の拘束が解かれます。

日本は、非常に有罪率が高く、「起訴され刑事裁判にかけられれば99.9%有罪判決が下される」とされています。そのため、不起訴処分を獲得するための弁護活動を行うことが、今後の人生に大きく影響してきます。

刑事裁判での判決

起訴された後は、1~2ヶ月程度後に第一回目の裁判が開かれます。
その後は、大体1ヶ月ごとに裁判が開かれ、刑事事件の審理が行われていきます。

刑事事件は、民事事件よりも早く判決が下される傾向にあり、争い等がなければ大体平均して3~4ヶ月程度で判決が下されます。

しかし、重大な刑事事件や被告人が罪を否認している場合などには、判決が下されるまで1年以上要することもあります。

こうして下された判決の結果に納得できない場合には、上級裁判所に新たな裁判を求める上訴を行うことができます。

撮影罪に関する判例

【令和5(わ)882号 ・ 令和5(わ)1019号/令和 6年 1月26日/神戸地方裁判所】

<事件の概要>

被告人は、正当な理由なく道路脇に設置された側溝口に、密かに動画撮影状態にしたスマートフォンを設置して、同スマートフォンで同側溝上を通行した12名の身に着けている下着の性的な部位を覆っている部分を撮影したとして、撮影罪で逮捕されました。

<裁判所の判断>

裁判所は、被告人が以前から道路脇に設置された側溝内に隠れてその上を通行する女性のスカート内をのぞき見したり、スマートフォンでこれを盗撮したりすることを繰り返し、3度も罰金刑に処せられてきたにもかかわらず、これらの行為を止めることができずに本件の犯行に及んだことから、いずれも「常習的犯行である」と認めました。

また、盗撮の点について、被告人は、女子学生が多く通行する場所を選び12名もの多数の被害者を撮影しており、それぞれの性的自由や性的自己決定権を大きく害していると判断されました。

そして、のぞき見の点も、道路脇の側溝上は多くの人が通行し、かつ、そこに人が潜んでのぞかれているとはおよそ想定できない場所であって、そのような場所からののぞき見を常習的に繰り返す行為が住民の生活の安全や秩序に与える悪影響は大きいと判断されました。

以上のことから裁判所は、「被告人の刑事責任は重いというべきであるが、被告人が事実をいずれも認め、保釈後に入院治療を進めるなどして更生の意欲を示していること、関係機関による支援が見込まれること、被告人には罰金前科しかないこと」などを踏まえ、被告人に懲役1年6月(執行猶予4年)を言い渡しました。

撮影罪の時効について

人を死亡させ、死刑となる犯罪以外の犯罪には、基本的に時効があります。
刑事事件における時効とは、公訴時効を指しており、検察官が被疑者を起訴することができる期間を意味します。

撮影罪の時効は、基本的に3年とされています。
しかし、盗撮データの用途次第では、時効が5年に延ばされています。

時効が3年のもの ・撮影罪
・不特定少数の者への提供罪
・保管罪
・記録罪
時効が5年のもの ・不特定多数の者への提供罪
・送信罪

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撮影罪にあたる行為をしてしまった場合の対処法

撮影罪に該当する盗撮行為をしてしまった場合には、後に判断される刑事処分で不利益を受けないように、適切な対処法を用いることが大切です。

対処法には、主に以下のようなことが挙げられます。

  • 被害者と示談を成立させること
  • 刑事事件に強い弁護士に依頼すること

では、それぞれの対処法について、詳しく解説していきます。

被害者と示談を成立させる

被害者と示談を成立させることは、刑事処分の判断をする際にもっとも有利な情状として考慮されます。

示談とは、事件の当事者が話し合いで和解することを意味し、被害者が存在する犯罪において非常に有効的な弁護活動といっても過言ではありません。

盗撮で示談するメリットには、次のようなことが挙げられます。

  • 早期釈放される可能性が高まる
  • 不起訴処分を獲得できる可能性が高まる
  • 起訴されても、量刑が減軽される可能性が高まる など

なお、被害者と示談交渉を目的とした話し合いができる場合は、まず謝罪の意思をきちんと示し、そして示談金についての交渉を進めます。

示談金の相場は、事件によって異なりますが、約10~50万円程度が多いでしょう。

刑事事件に強い弁護士に依頼する

被害者との示談交渉をはじめ、有効的な弁護活動を行うには、刑事事件に強い弁護士に依頼することが重要です。

すべての弁護士が刑事事件に強いわけではないため、刑事事件に精通した弁護士を選択することが大切です。
そうすることで、被害者との示談交渉や被疑者・被告人にとって有利となる情状の主張を円滑かつ適切に行ってもらえます。

こうした有効的な弁護活動の積み重ねで、逮捕や勾留を阻止できる可能性が高まります。たとえ起訴されたとしても、執行猶予付きの判決の獲得に期待でき、実名報道や仕事の解雇を回避できる可能性も高めることができるでしょう。

なお、逮捕前から逮捕後勾留されるまでは、国選弁護制度(国が弁護士費用を負担して、弁護士を選任してくれる)を利用することができないため、弁護士のサポートを受けたい場合は、自分で費用を負担して弁護士を選任する必要があります。

撮影罪に関するよくある質問

盗撮されたものだとわからずにダウンロードした場合は罪になりますか?

盗撮されたものだとわからずに盗撮画像や動画をダウンロードした場合、盗撮データの内容次第では児童ポルノ禁止法などに抵触する可能性があります。

なお、盗撮されたものと知りながら盗撮データをダウンロードする行為は、「記録罪」が成立します。

また、盗撮の被写体が18歳未満の未成年者であった場合には、「児童ポルノ所持罪」や「保管罪」、「記録罪」が成立する可能性がありますので、むやみにダウンロードする行為は控えた方が好ましいでしょう。

撮影罪の起訴率はどれくらいですか?

各犯罪の起訴率は、月によって変化しますが、大体約4割程度であることが多いです。

直近の検察統計調査によると、性的姿態撮影等処罰法に違反するとして検挙され、起訴された人数は以下のとおりとされています。

<2024年検察統計調査より>
  検挙数 起訴数
2024年6月 552 244
2024年7月 558 230

約6割程度は盗撮行為で不起訴処分とされていますが、性犯罪の厳罰化が進んでいる今、起訴率はさらに高まっていくことが十分に予想されます。

そのため、盗撮行為で逮捕された場合には、きちんと対処することが大切です。

撮影罪にあたる可能性がある場合はできるだけ早く弁護士法人ALGにご相談ください

盗撮行為で撮影罪に問われる可能性がある場合には、できるだけ早く弁護士に相談し、速やかに弁護活動を行うことが重要です。
そうすることで、早期釈放や不起訴処分となる可能性をより高めることができます。

逮捕・勾留を経て起訴されてしまえば、100%に近い確率で有罪判決が下されるおそれがあります。有罪判決を受けた場合は刑罰が科せられるだけでなく、前科が付くことになり、社会的信用を大きく失います。

逮捕・勾留を回避し、少しでも有利な刑事処分を判断してもらうためには、弁護士への相談がもっとも効果的です。

特に刑事事件を得意分野とする弁護士に依頼することで、より精度の高い弁護活動を行ってもらえます。

撮影罪の嫌疑をかけられてお困りの方は、弁護士法人ALGへご相談ください。

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