覚醒剤の再犯で逮捕されたら?刑罰や実刑の可能性、弁護活動など
覚醒剤は、繰り返し使用したくなる「依存性」の強い薬物であるため、再犯率の高さが特徴です。警察庁によれば、覚醒剤事犯の検挙人数は年々減少傾向にあるものの、令和6年は前年よりも増加しました。
また、再犯率は依然として高水準の状態が続いており、令和6年では66.6%でした。
依存性の強い覚醒剤事件を起こし、それが再犯だった場合は、初犯よりも重い刑罰や実刑判決が下されやすくなります。
本記事では、覚醒剤事件の再犯で逮捕されたらどうなるのか?に着目し、実刑判決の可能性や必要となる弁護活動などについて、詳しく解説していきます。
目次
覚醒剤取締法で規制される行為と刑罰
覚醒剤を取り締まる法律である「覚醒剤取締法」では、以下の行為を処罰の対象と定めています。
- 使用
- 所持
- 譲渡
- 譲受
- 輸出入
- 製造
なお、規定されている刑罰の内容は、行為別・営利目的の有無によって異なります。
-
使用
「10年以下の拘禁刑」 -
所持、譲渡、譲受
「10年以下の拘禁刑」
営利目的の場合:1年以上の有期拘禁刑又は情状により1年以上の有期拘禁刑及び500万円以下の罰金 -
輸出入、製造
「1年以上の有期拘禁刑」
営利目的の場合:無期もしくは3年以上の拘禁刑又は情状により3年以上の拘禁刑及び1000万円以下の罰金
営利目的である場合は、そうでない場合と比べて悪質性があると判断されるため、より重い刑罰が科せられます。
覚醒剤事件の再犯で逮捕されたら実刑になる?
覚醒剤事件の再犯で逮捕された場合は、再犯である点が不利に働き、実刑判決となる可能性が高いです。
実刑判決となれば、言い渡された刑罰が猶予されずに直ちに執行されます。
再犯の場合は、通常定められている刑罰よりもさらに重くする「再犯加重」が認められているため、事件次第では刑罰を加重される可能性があります。
また、再犯をしたのが執行猶予中か執行猶予後かによって刑期が異なる点にも注意が必要です。
刑罰の加重や執行猶予中・猶予後の再犯についてより理解を深めるためには、刑法上の再犯の定義をはじめに知っておく必要があります。
再犯とは
刑法上の再犯とは、刑法第56条にて以下のように定められています。
「拘禁刑に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期拘禁刑に処するときは、再犯とする」
再犯は、一般的には「罪を犯した者が再び罪を犯す」などの意味で認識されていますが、法律上では意味が限定されています。
そのため、以下のような場合には、再び罪を犯しても再犯には該当しません。
- 前回逮捕されたが、示談により不起訴処分となった場合
- 以前犯した罪で罰金刑に処された場合
- 以前犯した罪で執行猶予がついて服役を免れた場合
- 出所あるいは執行猶予の期間が満了してから5年以上経過している場合 など
刑罰が加重される刑法上の再犯は、拘禁刑に処せられた者であるのが前提で、一定の要件が加えられています。
刑罰の加重
刑法第56条に定められている「再犯」に該当すると、刑罰が重くなる(加重)可能性が高いです。
再犯の場合は、刑法第57条に基づき、拘禁刑の上限が2倍になります。
たとえば、覚醒剤の単純所持(非営利目的)で有罪判決が下された場合、初犯は10年以下の拘禁刑が上限ですが、再犯だと20年以下の拘禁刑に加重される可能性があります。
刑罰の内容は、犯行態様や動機、悪質性の有無などのさまざまな事情を考慮して総合的に判断するため、必ずしも上限まで刑罰が加重されるわけではありません。
しかし、再犯を理由に刑罰が加重されるケースは多くあります。
また、刑法上の「再犯」に該当しない場合でも、覚醒剤を断ち切れずに再び罪を犯した事実が厳しく評価され、より重い刑罰が科せられる可能性があります。
それほど再犯の事実は、重く受け止められます。
執行猶予中・猶予後の再犯
再犯の時期が、執行猶予中なのか執行猶予後なのかによっても、刑罰の重さが異なります。
執行猶予とは、裁判官から言い渡された刑罰の執行が一定期間猶予される制度で、刑務所に入らずに日常生活を送りながら更生を目指せます。
裁判官が犯行態様や被告人の資質などの事情を考慮した際に、直ちに刑務所に入るよりも日常生活を送りながら更生を目指した方が妥当と判断した場合に執行猶予付き判決が下されます。
<執行猶予中の再犯>
- 執行猶予が取り消され、前回言い渡された刑罰と今回の刑罰を合わせた刑期になる可能性がある
- 執行猶予が取り消され、実刑判決を受ける可能性がある
<執行猶予後の再犯>
- 執行猶予期間の満了後でも、5年以内の再犯だと実刑判決を受ける可能性が高い
- 執行猶予期間の満了後でも、回数を増すごとに刑期が長くなる可能性がある
再犯の場合は、執行猶予中・執行猶予後のいずれの場合も「再犯」という事実が厳しく評価され、実刑判決を受ける可能性が高まります。
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覚醒剤の再犯で執行猶予がつく可能性はある?
覚醒剤の再犯で執行猶予付き判決が下される可能性はかなり低いでしょう。
執行猶予中の再犯で、ある一定の要件を満たした場合に「再度の執行猶予」として再び執行猶予がつく場合もありますが、刑法第25条にて厳格な要件が定められています。
<再度の執行猶予の要件>
- 今回犯した罪の刑罰が2年以下の拘禁刑であること
- 今回犯した罪の裁判時に執行猶予中であること
- 情状に特に酌量すべきものがあること
- 再度の執行猶予期間中にさらに罪を犯していないこと
もっとも、再度の執行猶予の要件は、2025年の法改正によって以前よりも緩和されました。2025年6月1日から新たに執行されるため、今後は再度の執行猶予となる可能性が若干高くなると予想します。
しかしながら、依存性が強く再犯率の高い覚醒剤事件では、事件の性質上、再度の執行猶予となる可能性は低いと考えられます。
覚醒剤事件の再犯で逮捕された場合の弁護活動
覚醒剤の再犯で逮捕された場合は、初犯よりも厳しい判決が下されやすく、特に執行猶予中の再犯であれば、実刑判決を受ける可能性が高まります。
このような場合に、できる限り有利な条件で刑事処分を判断してもらうには、弁護士からのサポートを受ける必要があります。
刑事事件に精通した弁護士であれば、主に次のような弁護活動を行えます。
- 早急な接見と取り調べのアドバイス
- 減刑を目指した弁護方針の提示
上記の弁護活動については、次項で詳しく解説しますが、弁護士だからこそできる活動は他にもあります。
たとえば、被疑者や被告人に有利となる事情を検察官や裁判官に主張できます。
一人では難しいことも、弁護士がいれば有利となる事情をまとめて整理し、適切に主張してもらえます。
早急な接見と取り調べのアドバイス
弁護士であれば、逮捕直後から接見(面会)でき、取り調べのアドバイスを伝えられます。
捜査機関に逮捕された後すぐに接見できるのは、被疑者の弁護人のみです。
逮捕後は、すぐに警察から取り調べを受けますが、弁護士から適切な対応の仕方についてのアドバイスを受けていれば、不利な発言を避けられます。
その後は、検察からも取り調べを受けますが、弁護士がいれば不当な取り調べや不利になるような供述調書の作成を防げます。
捜査機関からの取り調べに対して誤った対応を取れば、被疑者にとって不利になる供述調書が作成されるおそれがあります。供述調書は裁判でも証拠として使用されるため、取り調べの対応には特に注意しなければなりません。
減刑を目指した弁護方針の提示
弁護士であれば、減刑を目指すうえで必要となる弁護活動の方針を適切に提示できます。
依存性が強く、再犯率の高い覚醒剤事件で減刑を目指すには、「再犯の可能性の低さ」を検察官や裁判官にアピールする必要があります。
そのためには、薬物依存症の治療プランや家族の協力体制が整っている点などを適切に主張し、再犯の可能性がないことを具体的に立証することが大切です。
また、再犯となれば、前回犯した罪に対する反省が足りていないと思われがちです。
初犯よりも検察官や裁判官の心証が悪くなるため、不利となる印象をよくするための訴えが重要となります。
この点、弁護士であれば、被疑者や被告人にとって有利となる事情を検察官や裁判官に主張できます。
覚醒剤の再犯で逮捕された・逮捕されそうな場合は弁護士法人ALGにご相談ください
覚醒剤の再犯と認められた場合は、高確率で刑罰が加重される可能性があります。再犯の時期が執行猶予中であれば、より厳しい刑罰が科せられるでしょう。
再犯の場合でも、執行猶予がつく可能性はゼロではありませんが、難しい要件を満たす必要があります。
刑事事件を得意とする弁護士であれば、有利な結果となるようなサポートが可能です。逮捕されて身動きがとれず、一人ではどうしようもない状況でも、代わりに弁護士が減刑を目指して動きます。
不安点があれば接見でいつでも弁護士に質問できるため、精神的負担も軽減されるはずです。
刑事事件は、弁護士への相談が早いほど可能となる弁護活動の幅が広がります。
覚醒剤の再犯で逮捕された・逮捕されそうな場合は、なるべく早めに弁護士にご相談ください。
