路上痴漢とは|逮捕される場合と対処法
痴漢という言葉から、その行為が行われる場所として、電車を連想する方も多いでしょう。
しかし、痴漢行為が行われる場所は、電車等の公共交通機関の中だけではありません。
強制わいせつ事件は、通勤・通学の時間帯を除けば夜に多く発生しており、その中には路上で発生した痴漢事件も多く含まれています。
ここでは、路上で行われる痴漢行為の概要や、逮捕されるケースおよび逮捕された際の対処法等について説明します。
路上痴漢について
痴漢には様々な定義が存在しますが、同意なく故意に身体に触れる行為、衣服をめくったり脱がそうとしたりする行為、性器等を押しつける行為等が該当します。
これらの痴漢行為は、公共交通機関の中で行われるケースが多いのですが、暗い夜道等の路上で行われる場合も多いです。
路上痴漢の特徴として、加害者が犯行現場から比較的近い場所に住んでいたり、加害者が酔っていたりするケースが多いことが挙げられます。
また、行為の態様としては、加害者が自転車に乗っていて、追い抜く際に犯行に及ぶケースもあります。
痴漢行為については、こちらで詳しく解説しています。
痴漢で逮捕されたら?路上痴漢となる行為
路上痴漢となる行為としては、
- すれ違いざまに胸やお尻を触る
- 後ろから抱きつく
- 押さえつけてキスをする
- スカートをめくる
- 自身の局部を露出する
等の行為が挙げられます。
路上痴漢の刑罰
路上痴漢を行うと、各都道府県の迷惑防止条例違反や、強制わいせつ罪等で処罰されます。それぞれについて、以下で解説します。
迷惑防止条例違反
迷惑防止条例は都道府県および一部市町村ごとに定められています。
痴漢行為の中で、強制わいせつ罪が成立しない行為について成立し、他にもダフ屋行為やスカウト行為等で成立します。
東京都の条例で定められている刑は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
迷惑防止条例違反にあたる路上痴漢行為
痴漢行為の中で、例えば衣服の上から身体を触るといった「強制わいせつ罪が成立しない行為」が、迷惑防止条例違反にあたる路上痴漢行為となります。
衣服の上から触れば強制わいせつに該当しないというわけではなく、接触の程度が軽いといったニュアンスであり、どの程度の行為が条例違反で処罰されるのかはケースバイケースです。
迷惑防止条例違反については、こちらで詳しく解説しています。
迷惑防止条例違反とは?強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は、衣服の中に手を入れて身体を触る等の行為について成立します。
衣服の上から触った場合であっても、悪質な場合には成立することがあります。
この罪を犯した者は、6ヶ月以上10年以下の懲役に処せられます。
強制わいせつ罪にあたる路上痴漢行為
例えば、引きずり倒して押さえつけながら触ったり、執拗に身体を触り続けたり、無理やりキスをしたり、衣服の中に手を入れて触ったり、衣服を脱がせて触ったりする等の悪質なケースでは、強制わいせつ罪が成立する場合が多いです。
どの程度触ったら強制わいせつに該当するのかは微妙な場合もあるのですが、胸を鷲掴みにするような悪質な触り方や、長時間触り続けるといった執拗な触り方の場合には、接触の度合いが強いことから、衣服の上から触ったケースであっても強制わいせつ罪が成立すると考えられています。
強制わいせつについては、こちらで詳しく解説しています。
不同意わいせつ罪(強制わいせつ罪)とは強制わいせつ致死傷罪
強制わいせつを行った際に、被害者を負傷させたり死なせたりした場合には、強制わいせつ致死傷罪が成立し、無期または3年以上の懲役に処せられます(刑法176条・181条)。
被害者がPTSDを発症した場合等にも、この罪が成立する場合があります。
強制わいせつ致死傷罪にあたる路上痴漢行為
強制わいせつを行うために被害者を押し倒す等して負傷させたり死亡させたりした場合には、強制わいせつ致死傷罪が成立します。
また、被害者が逃げようとした際に転んだり、階段から転落したりする等して負傷・死亡してしまった場合にも、強制わいせつ致死傷罪が成立するケースがあります。
PTSDといった精神的なダメージに由来する疾患等により成立することもあります。
なお、身体的な負傷については、重い傷を負ったことが要件とされているわけではないため、たとえ小さな傷であっても構成要件を満たすおそれがあります。
強制わいせつ致死傷罪は、加害者が目的としていた強制わいせつが未遂に終わったとしても、その結果として被害者が負傷・死亡してしまった場合には既遂となります。
路上痴漢の逮捕
路上痴漢の加害者が逮捕されるケースとしては、「現行犯逮捕」と、後で犯人であると特定されて逮捕される「後日逮捕」が考えられます。
これらについて、以下で解説します。
現行犯逮捕
路上痴漢の加害者が現行犯逮捕されるケースとしては、被害者や通行人に取り押さえられた場合等が考えられます。
犯行現場から逃走しても、追いかけてきた警察官等に逮捕された場合には、現行犯逮捕になるケースも多いです。
後日逮捕
近年になって、街に設置されている防犯カメラの数が増え、精度が向上したため、路上痴漢の犯人であると特定されて、後日逮捕される確率は上がっています。
後日逮捕の証拠となりやすいもの
路上痴漢を行って、後日逮捕の証拠になりやすいものとして、防犯カメラの映像だけでなく、被害者や通行人の目撃証言、被害者の身体や衣服等に残存した皮脂や唾液のDNA等が挙げられます。
特に、前科や前歴がある場合には、捜査機関によってDNA等が採取されており、データベースに残っていることが多いため、鑑定によって犯人であると特定される確率は高いと考えられます。
路上痴漢で逮捕された・されるおそれがある場合には弁護士へご相談ください
路上痴漢で逮捕された場合や、逮捕されるおそれがある場合には、弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、逮捕されていれば身柄の拘束を解くために活動し、まだ逮捕されていなければ、自首に付き添って身柄を拘束される事態を予防します。
逮捕されて長期間勾留されてしまうと、仕事を失うことにつながる等、社会生活に様々な悪影響を及ぼします。
弁護士にご相談いただければ、そのような事態を防ぎ、更生のためのお手伝いをさせていただきます。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
路上痴漢で逮捕されたら
逮捕後に勾留されず在宅事件となる場合
路上痴漢で逮捕されても、長期間の勾留は行われず、在宅事件となるケースも増えています。
痴漢事件では、迷惑防止条例違反で罰金刑となるケースも多いことから、長期間の勾留を行うことはバランスを欠いているためです。
ただし、路上痴漢の場合には、被害者が加害者の家の近くに住んでいるケースも多く、接触のおそれがあるとして勾留が認められてしまうこともありますので注意が必要です。
逮捕後勾留される場合
路上痴漢で逮捕された後、引き続き勾留が認められやすいケースがあります。
例えば、痴漢行為の際に被害者が負傷していると、強制わいせつ致傷罪が成立する場合があり、その場合には凶悪事件を起こしたと考えられます。
すると、加害者が実刑を受ける確率が高まり逮捕による不利益が大きくなるため、加害者にとっては逃亡する動機が強まると判断されることから、勾留が認められやすくなります。
また、痴漢行為を行った後で、制止や追跡を振り切って逃げた場合には、釈放すると逃亡されるおそれがあるとみなされて、長期間の勾留が行われるリスクが高まると考えられます。
逮捕後の流れについては、こちらで詳しく解説しています。
逮捕された時の流れ路上痴漢で逮捕された場合に弁護士ができること
弁護士であれば、捜査機関に対して勾留請求を行わないように働きかけることや、被害者との示談交渉を行うことができます。
性犯罪の被害者は、加害者との接触を望まない場合が多く、加害者本人は名前や連絡先等を教えてもらうことができません。
弁護士であれば、被害者が承諾した場合には名前や連絡先の入手することができます。
そして、被害者と交渉し、示談の成立に向けて活動することが可能です。
路上痴漢をした場合、前科がつかないよう弁護士へご相談ください
路上痴漢をしてしまった場合には、起訴されないようにすることが重要です。
仮に迷惑防止条例違反で起訴されて罰金刑で済んだとしても、前科がつくことに変わりはありません。
前科がつくことによって、懲戒解雇されるリスク等が生じるだけでなく、海外旅行が制限される等、様々な不利益を受けることになります。
そのような事態を防ぐためには、起訴される前に被害者との示談を成立させ、不起訴処分を獲得することが必要です。
そのために、ぜひ弁護士にご相談ください。
前科がつくことによるデメリットについては、こちらで詳しく解説しています。
前科がつくデメリット路上痴漢でよくあるケース
路上痴漢をして逃げる際掴まれた腕を振り切るために相手を殴ってしまいました。
まず、相手が負傷してしまった場合には、強制わいせつ致傷罪の成立が考えられます。
これは、加害者の逃走を阻止しようとした被害者が負傷したケースでも成立することがあり、非常に重い罪となります。
強制わいせつ致傷罪が成立しない場合であっても、被害者が負傷してしまった場合には、傷害罪が成立するおそれがあります。
殴られた被害者が負傷していない場合には、暴行罪が成立すると考えられます。
暴行罪については、こちらで詳しく解説しています。
暴行罪とは?過去に路上痴漢をして捕まらなかったのですが、新たに路上痴漢をして捕まってしまいました。
逮捕された場合には、同様の犯罪に関して余罪を追及されることがあります。
特に、犯行現場が近接しているケースや、手口が類似しているケース、目撃証言により犯人の顔が似ていると思われるケース等では、過去の事件も同一犯ではないかと疑われることは十分に考えられます。
余罪を自白してしまうことで、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを認めてもらえる場合もあるので、その必要性については弁護士に相談することをおすすめします。
路上痴漢をしたのですが、被害届を出される前に謝りに行きたいと思います。
加害者自身が、被害者に対して直接謝りに行くことはおすすめできません。
なぜなら、性犯罪の被害者は加害者と接触することを嫌がるのが通常であり、会いに行けば口封じを警戒されてしまったり、怒りを掻き立ててしまったりするおそれがあるからです。
そこで、被害者に謝罪したい場合には、弁護士にご依頼ください。
被害者に謝罪文を渡す等の方法で反省していることを伝え、示談を成立させるために活動します。
路上痴漢をして逃げてしまったのですが、自首したいと考えています。
路上痴漢を行って逃げた加害者が自首した場合には、被害者が被害届を出していないケースがあります。
また、被害者に面割り(被害者に複数の写真を見せて、その中から犯人を特定すること)ができない場合には、証拠不十分で起訴されないこともあります。
しかし、自首しておけば、後になって被害届が提出された場合にも、逮捕や勾留をされずに済む等のメリットが考えられるため、弁護士に付き添いを依頼して、自首しておくことは有益であると考えられます。
駅からつけて一人になったところを路上痴漢しました。
加害者が、特定の人物に対して繰り返しつきまとい、その後で路上痴漢を行った場合には、ストーカー規制法で禁止されているつきまとい行為をしたとみなされ、罪となるおそれがあります。
路上痴漢の特徴として、被害者と加害者の生活圏が近接していることが挙げられ、被害者と示談を成立させるにあたっては、特定のエリアに入らないことや、特定の鉄道路線を利用しないこと等が条件として盛り込まれるケースもあります。
路上痴漢の相手が中学生でした。
被害者が中学生だった場合には、特に13歳未満であったならば、暴行や脅迫を用いていなくても強制わいせつ罪が成立します。
そのため、迷惑防止条例違反で処罰されるよりも、罪が重くなります。
さらに、被害者が13歳以上でも、未成年者である場合には、被害者の将来への悪影響が懸念されることや、両親等の親族の処罰感情が強い場合が多いこと等から、量刑が重くなる傾向にあります。
路上痴漢で逮捕されたら、すぐに弁護士へご相談ください
路上痴漢を行ってしまい、逮捕されてしまった場合には、すぐに弁護士にご相談ください。
刑事事件への対応は、可能な限り早く行うことが重要です。
弁護士が対応することで、勾留されないようにする等、身柄の拘束が長期間に及ぶのを防ぐことができます。
また、被害者との示談交渉は、すぐに成立させれば起訴猶予処分等の獲得につながり、起訴されてしまったとしても執行猶予の獲得につながります。
まだ逮捕されておらず、自首を検討している場合にも、ぜひ弁護士にご相談ください。
