遺産分割調停が不成立になるケースとその後の審判手続きについて
遺産分割調停とは、家庭裁判所を通じて相続人同士が遺産の分け方について話し合う手続きです。
しかし、調停は相続人全員の同意がなければ成立せず、一人でも合意しない、または欠席し続ける相続人がいれば不成立となります。
その場合、手続きは自動的に遺産分割審判に移行し、裁判所が最終的な判断を下します。
この記事では、調停が不成立になるのはどんなケースなのか、そしてその後の審判手続きがどのように進むのかについて詳しく解説します。
目次
遺産分割調停が不成立になるケース
遺産分割調停は、家庭裁判所で相続人同士の合意を目指す手続きですが、必ずしも成立するとは限りません。
不成立となる代表的なケースとして、以下の2つが挙げられます。
- 遺産分割調停に合意しない相続人がいる
- 遺産分割調停に出頭しない相続人がいる
遺産分割調停に合意しない相続人がいる
遺産分割調停を成立させるためには、相続人全員の合意が不可欠です。たとえ一人でも調停案に合意しない相続人がいれば、調停は不成立となります。
不成立となる典型的なケースとして、不動産の分割方法をめぐる対立があります。
たとえば、実家の土地や建物を誰が取得するのか、現物分割にするのか、それとも売却して換価分割にするのかで意見が割れることは少なくありません。
また、寄与分や特別受益の評価をめぐる争いもよく見られます。
「親の介護をしてきたから取り分を増やすべき」「生前贈与を受けているから取り分を減らすべき」といった主張が対立することもあります。
裁判所から「これ以上話し合っても合意の見込みがない」と判断されると、調停は不成立として打ち切られます。
遺産分割調停に出頭しない相続人がいる
調停は相続人全員の参加が前提となっており、誰か一人でも出頭しない場合、調停を成立させることはできません。
複数回の調停を開催しても、特定の相続人が呼び出しに応じず欠席を続けると、話し合いによる解決は困難と判断され、調停は不成立として打ち切られます。
ただし、体調不良や仕事の都合などやむを得ない事情がある場合は、期日の変更を申し出ることで調停が継続されることがあります。
また、本人が出頭できなくても、弁護士が代理人として参加していれば欠席とはみなされません。
さらに、電話やオンラインでの参加、書面での同意提出が認められるケースもあり、こうした方法を活用すれば、出頭できない場合でも調停を成立させることが可能です。
遺産分割調停の呼び出しを無視したらどうなるか知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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遺産分割調停が不成立になった後の流れ
遺産分割調停が不成立になった後の流れは、以下のとおりです。
- 遺産分割審判へ移行する
- 裁判所に提出する証拠を準備する
- 審判期日が開かれる
- 審判が下される
①遺産分割審判へ移行する
遺産分割調停が不成立となった場合は、自動的に遺産分割審判に移行します。
遺産分割審判とは、相続人間の話し合いでは解決できない遺産分割について、裁判官が法律と証拠に基づいて最終的な判断を下す手続きです。
その決定には、裁判の判決と同様の強制力があります。
審判への移行にあたり、あらためて遺産分割審判の申し立てをする必要はなく、調停で提出した書面や証拠はそのまま引き継がれます。追加の手数料も必要ありません。
家庭裁判所から第1回審判期日が指定されるため、それまでにご自身の主張をまとめた書面や資料を裁判所へ提出します。
また、ここまでの調停の記録も審判における審理の対象となります。
②裁判所に提出する証拠を準備する
審判では、裁判所が当事者の主張と証拠をもとに、遺産の分け方を決定します。調停よりも証拠の重みが増すため、主張を支える資料はしっかり準備することが大切です。
たとえば、「自分が被相続人を長年介護してきた」という寄与分を認めてもらうには、介護日誌や医療記録、介護サービスの利用明細、交通費や介護用品の領収書などの証拠が有効です。
また、「相手が生前贈与を受けていた」という特別受益を立証するには、預金通帳の取引履歴、不動産の登記事項証明書、贈与に関する契約書や領収書、メールのやり取りなどが証拠となります。
証拠が不十分だと、主張が認められない可能性が高くなるため、審判に臨む前に必要な証拠を収集することが重要です。
③審判期日が開かれる
審判期日では、裁判官と当事者全員が同じ部屋に集まり、これまでの協議内容や提出された主張・証拠をもとに審理が進められます。追加の説明や意見を求められることもあります。
争点が整理された後、必要に応じて、事実の調査が行われます。
当事者が期日において裁判官に対して口頭で陳述する審問、家庭裁判所調査官による調査、調査嘱託などがあります。
審判の途中で裁判官が話し合いでの解決を提案することもあり、もし合意できれば、調停成立として調停調書が作成され、審判は終了します。
審判は複数回にわたって行われ、期日はおおよそ1〜1.5ヶ月間隔で設定されます。
多くの場合、5回程度で終わるため、トータルで6ヶ月から1年ほどかかるケースが一般的です。
④審判が下される
裁判所が必要な主張や証拠が十分に揃ったと判断すると、最終的に審判という形で結論が示されます。
審判が行われた数日後には、家庭裁判所から審判書が郵送されます。
この書面には、各相続人が取得する財産の内容や金額、代償金の額とその支払い方法などが明記されており、通常は法定相続分をもとに調整されます。
特別受益や寄与分について、当事者が十分な主張と証拠を提出している場合には、裁判官がそれらを認定し、具体的な相続分が計算されます。
審判書は、相続手続きを進めるうえで非常に重要な書類です。
不動産の相続登記や、預貯金・株式の名義変更などを行う際には、審判書の正本または謄本の提出が必要です。
審判に納得できない場合は即時抗告
審判の結果に納得できない場合は、審判書を受け取った日の翌日から14日以内に「即時抗告」を申し立てることができます。
即時抗告とは高等裁判所に改めて審理を求める手続きです。これにより、審判の内容が見直される可能性があります。
申立ては、審判を行った家庭裁判所に即時抗告申立書を提出して行い、その後14日以内に抗告理由書を提出します。
即時抗告では、審判のどの部分に不服があるのか、そしてその理由を明確に示さなければなりません。事実誤認や評価の不当性など、具体的な根拠を示す証拠資料を添付することが重要です。
高等裁判所での審理は書面が中心ですが、場合によっては出頭を求められることもあります。
審判に従わない場合は強制執行が可能
家庭裁判所で下された遺産分割審判は、審判書を受け取ってから14日間の不服申立て期間(即時抗告期間)が過ぎると確定します。
確定した審判には法的拘束力があり、相続人はその内容を守らなければなりません。
たとえば、審判で「相続人Aが実家を取得し、相続人Bに代償金500万円を支払う」と決定したにもかかわらず、Aが代償金を支払わない場合や、Bが不動産の明け渡しを拒否するケースがあります。
このような場合、審判書は「債務名義」として強制執行の根拠となり、違反者の銀行口座の差押えや不動産の明渡しを裁判所を通じて強制的に実行できます。
ただし、強制執行の手続きは複雑で、対象によって方法も異なります。強制執行を行うときは、弁護士に相談することをおすすめします。
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遺産分割調停と遺産分割審判の違いとは?
遺産分割調停は、調停委員を交えた話し合いの手続きです。相続人全員の合意を目指し、柔軟な解決が可能ですが、誰か一人でも同意しなければ成立しません。
一方、遺産分割審判は、調停で合意できなかった場合に移行する手続きで、裁判官が分割方法を決定します。
審判では、相続人全員の同意は不要で、相手が出頭しなくても審判は確定します。
ただし、希望通りの結果を得るには、寄与分や特別受益などを裏付ける証拠を揃え、法的に適切な主張を行わなければなりません。
調停や審判は専門的な知識が求められるため、弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士のサポートを受けることで、主張の整理や証拠の準備がスムーズになり、有利に手続きを進められます。
遺産分割調停・審判を弁護士に依頼するメリット
遺産分割調停や審判を弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。
専門的な知識で有利に進められる
遺産分割調停や審判では、法定相続分や寄与分、特別受益などの法律知識が必要です。弁護士に依頼することで、複雑な法律問題を正確に整理し、ご自身に有利な主張を展開することができます。
書類作成や手続きを任せられる
調停申立書や証拠資料の準備など、手続きには多くの書類が必要です。弁護士に依頼すれば、これらの作成や提出を任せられるため、手間やミスを防げます。
調停や審判での代理対応が可能
弁護士は調停や審判に代理人として出席できます。直接相手とやり取りする必要がなく、精神的な負担を減らせます。
遺産分割調停が不成立になった場合は、相続問題に詳しい弁護士にご相談ください
遺産分割調停が不成立となった場合、自動的に遺産分割審判へと移行します。
審判では、調停以上に自分の主張を整理し、証拠をしっかり準備することが重要です。
しかし、法律や手続きに不慣れなまま対応するのは大きな負担となり、予期せぬ不利益を受ける可能性もあります。
相続問題に詳しい弁護士であれば、複雑な法律関係を整理し、ご依頼者の立場を最大限に守るための戦略を立てることができます。
書類作成や証拠収集、審判での対応までトータルでサポートし、スムーズな解決を目指します。
調停が不成立になった時点で、早めに弁護士へ相談することが、納得できる結果につながる第一歩です。
相続でお困りの方は、ぜひ相続を得意とする弁護士法人ALGへご相談ください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)




