遺言書が無効になるケースと無効にしたい場合の2つの方法

遺言書が無効となるケースと納得できない場合無効にする対処法

遺言書があれば、そこに書かれた故人の遺志を優先することが原則です。しかし、その遺言書は本当に有効なものでしょうか。

遺言書には法律上、決められた形式があり、その要件を満たしていないものは無効となります。また、遺言書の形式は有効であっても、その作成にあたって故人の本意ではない、といった疑いがある場合、相続人は遺言書の無効を訴えることもできます。

今回は、遺言書が無効になるケースについて解説していきます。

遺言書に問題があり、無効になるケース

遺言が無効になるケースとしては、遺言書の形式不備や、遺言者の遺言能力の問題などが色んなパターンがあります。遺言書は一人で作成することもできますが、書き方が間違っていたり、作成時に必要な証人の選び方が不適当だと、有効な遺言書にはなりません。遺言書の作成には細かい要件が求められるので、作成に不安がある場合には専門家に相談しながら作成することをお勧めします。

日付がない、または日付が特定できない形式で書かれている

遺言書作成日の記載は必須事項ですので、作成日の記載が無ければただちに無効となります。

また、記載されていても具体的に日付が特定できない曖昧な表記(例えば、「●年●月吉日」など)は、作成日として認められず無効になります。ただし、具体的な日付でなくても、作成日を特定できる記載方法(例えば、「●年●月末日」など)は有効となります。

複数の遺言書がある場合には作成日の新旧によって有効性が判断されることもあるので、作成日の記載はとても重要な要素なのです。

遺言者の署名・押印がない

遺言者本人の署名・押印がないものについては原則無効とされています。署名については、通常、戸籍上の氏名を記載することになりますが、遺言者との同一性を示せる場合には、ペンネームや芸名での署名も有効とされています。

また、押印については実印の押印は必須とされていませんので、認印や拇印も可能です。ただし、認印の場合には、被相続人が作成した遺言書なのか、といったトラブルになる可能性もあるので、実印で押印しておく方がよいでしょう。

内容が不明確

遺言書では、「どの財産を誰に相続させる」という遺志が正確に記載されている必要があります。

例えば、「銀行預金を子供たちに相続させる。」といった内容では、どの銀行の資産なのか、どの子供に相続させるのかといった特定がされていない為、無効となってしまいます。

遺言内容については、「△△銀行△△支店 普通 口座番号△△△△ 名義人△△△△ の銀行預金を 子○○に相続させる」など、情報を明確にする必要があります。

訂正の仕方を間違えている

遺言書の訂正は民法で決められた方法があり、それ以外の方法では、訂正部分が無効となったり、場合によっては遺言書自体の無効に繋がる恐れがあります。

遺言書の修正(加入・削除・訂正)は、①変更場所を指定し、変更した旨を付記する②付記部分へ遺言者が署名する③変更箇所へ押印、の要素が必要とされます。

修正テープを使ったり塗りつぶしてしまうと、判別できなくなり遺言の意図をくみ取ることができないとして、その部分については無効になる可能性があります。ただし、明らかな誤記については遺言の効力に影響が無いとされた裁判例もあります。

 

共同で書かれている

夫婦で遺言書を作成する際、一つの書面にまとめておけば分かりやすいと思われるかもしれません。しかし、一つの遺言書に複数の遺言者がいると、各遺言者の遺言内容を特定できるのかといった問題や、一方の遺言内容が要件を満たさない場合、他方の遺言内容の有効性はどうなってしまうのか、など、遺言書の有効性が非常に不安定になってしまいます。

また、遺言書は遺言者の自由な意思で作成・撤回できるものである必要がありますが、共同で作成すると互いに自由に撤回することができない可能性もあるので、共同書面の遺言書作成は民法で禁止されています。

認知症などで、遺言能力がなかった

遺言者が認知症などで、遺言内容やその効力を理解できる能力を欠いていた場合には、「遺言能力無し」として遺言書が無効となります。ただし、認知症=遺言能力無し、ではありません。進行状況によっては医師の立会いのもと作成することで有効な遺言書になる可能性もあります。

また、遺言書の作成は15歳以上、と民法で定められています。相続発生時が15歳以上であっても作成時が15歳未満の遺言書は、遺言能力無しとして無効になります。

誰かに書かされた可能性がある

遺言者が生前に言っていたこととまったく違う内容であったり、重度の認知症であったにも関わらず遺言書が作成されているなど、遺言者本人の意思ではなく、第三者の意図で遺言書を書かされた可能性がある場合には弁護士へ相談しましょう。遺言者が脅迫されていた、そそのかされて遺言書を書いたといった事情があれば、その遺言は無効となる可能性があります。

証人不適格者が立ち会っていた

公正証書遺言もしくは秘密証書遺言を作成する場合には、作成には2名以上の証人が立ち会うことを要件としています。

ただし、未成年者もしくは推定相続人、また公証人の関係者などは、証人不適格者であり、証人として選ぶことができません。もし、遺言書の作成に証人不適格者が立ち会っていると、その遺言書は無効となってしまいます。立会人に専門家を選べば、このようなミスが無く安心できるでしょう。

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遺言書の内容に不満があり、無効にしたい場合

もし、遺言書の内容が「財産の全てをAに相続させる」といった内容の場合、A以外の相続人は何も相続できないのでしょうか。兄弟姉妹以外の法定相続人であれば、最低限の相続割合(遺留分)が認められているので、法定相続分の半分を請求することは可能です。

しかし、遺言書の内容や作成時の遺言能力に疑いがある場合はどうでしょうか。このような場合には遺言が無効と認められれば本来の法定相続分が受け取れるので、A以外の相続人は遺言の無効についても検討することになるでしょう。

遺言無効確認調停

相続人全員の合意があれば、遺言内容と異なる遺産分割が可能ですが、合意を得られない場合には、法的手続きによって遺言の無効を主張する事になります。

相続は家事事件にあたるので、通常、調停を行ってからでなければ訴訟はできないとされています(調停前置主義)。しかし、調停はあくまで話し合いによる解決であるため、調停での解決は難しいと予想される事件については調停を省略し、最初から訴訟を行うケースもあります。相続に関する調停は、相続人間で合意ができなかった事件の為、話し合いの解決が期待できないとして調停を省略することも多々あります。

遺言無効確認訴訟

遺言無効確認訴訟は、その遺言が有効なのか、もしくは無効なのかという点についてのみ判断することになります。この訴訟では、遺言能力の有無や遺言者の直筆かといった争点が多いでしょう。遺言無効確認訴訟では、無効を訴える相続人が原告となり、それ以外の利害関係者が被告となります。遺言能力については、当時の遺言者のカルテや診断書から遺言能力のレベルを証明することになるでしょう。また、遺言者の直筆であるかといった点は、筆跡鑑定などによって証拠を示していく必要があります。

遺言は無効であると判断されると、改めて遺産分割協議を行う必要がありますが、訴訟に至るまで紛争化した後では、協議は難しいでしょう。専門家に相談しながら遺産分割調停の申立も検討しましょう。

時効は無いけど申し立ては早いほうが良い

遺言無効確認訴訟には時効がありませんが、証拠となる資料は時間が経てば処分される可能性が高くなるため、訴訟時の立証に支障をきたす恐れがあります。

また、遺言は有効となった場合には、遺留分侵害額請求を検討することになるでしょう。遺留分の侵害額請求には事実を知った時から1年、という時効があるので、遺言無効確認訴訟の提起は早く行うのが良いでしょう。

遺言書を勝手に開けると無効になるというのは本当?

遺言書は家庭裁判所へ検認手続きを行い、開封することが法律で定められています。もし、正しい手続きをせずに開けてしまったとしても、ただちに遺言が無効になるという事はありません。開けてしまったあとでも家庭裁判所へその旨説明したうえで検認手続きを行うことが必要です。ただし、公正証書遺言、もしくは法務局に保管されている自筆証書遺言の遺言書情報証明書には検認は不要です。

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遺言書が無効になった裁判例

遺言者Xは、公正証書遺言作成時、肝性脳症等により意識障害を発症しており、自己判断、コミュニケーションが困難な状態となっていました。公証役場においてもXは「相続人Y1に全部」、「相続人Y2にも」と述べるのみでした。遺言案を公証人が読み上げ確認した際、Xは頷きましたが、発言はありませんでした。

公正証書遺言には、「遺言者が遺言の主旨を公証人に口授する」というのが1つの要件となっています。本事案では、「口授」について、「遺言者が発した言葉自体によって、遺言者の遺言の趣旨を理解することができるもの」とされており、遺言者Xの発言からは具体的な趣旨を理解することができず、口授とは認められませんでした。また、公証人の遺言案読み上げに対して頷くといった肯定的な挙動についても、自らの言葉で語ること無く、受動的な挙動だけでは口授として認められないとされました。そして、本事案における遺言者Xの病状は、二日前から呂律が回らず病院を受診している等、意識状態、身体状況は非常に不安定であり具体的な応答は難しかったとされ、本公正証書遺言については無効として判断されました。
(東京高裁平成27年8月27日判決)

遺言書が無効かどうか、不安な方は弁護士にご相談ください

遺言書があると、その内容にばかり目がいってしまうかもしれませんが、まずはその遺言書が本当に有効なのかを確認することが大切です。遺言書として不適格であればその内容は無効になってしまうので慎重に判断する必要があります。しかし、遺言書が無効になるケースは様々ですので、判断するのは簡単ではありません。

弁護士であれば形式の不備を確認することはもちろん、遺言当時の意思能力の確認方法など専門的な内容についてもアドバイスが可能です。遺言書が無効かどうか不安をもたれたら、まず弁護士へご相談ください。

 

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 :弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、福岡、バンコクの11拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。