遺留分侵害額の請求調停とは?申立ての流れや注意点などを解説
遺言書や生前贈与の内容によって、本来受け取れるはずの相続財産を確保できないケースもあります。
その場合、「遺留分侵害額の請求調停」を利用することで、話し合いで解決できなくても最低限の取り分を取り戻せる可能性があります。
この記事では、遺留分侵害額の請求調停に着目して、申立ての流れや注意点をわかりやすく解説します。
遺留分を請求する側・請求された側の双方に役立つ内容になっているので、ぜひ参考になさってください。
目次
遺留分侵害額の請求調停とは
遺留分侵害額の請求調停とは、侵害された遺留分を請求するため、裁判所の調停手続きによって話し合う方法です。
そもそも遺留分とは
遺留分とは、法律で保障された相続財産の最低限の取り分のことです。
遺留分を請求できる権利を持つ“遺留分権利者”は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。
遺留分権利者の範囲
- 被相続人の配偶者
- 被相続人の子や孫などの直系卑属
- 被相続人の父母や祖父母などの直系尊属
守られる遺留分の割合は通常法定相続分の1/2で、父母だけの場合は1/3になります。
遺言や生前贈与で取り分が減ったときは、“遺留分侵害額請求”で不足分を金銭として取り戻せる可能性があります。
話し合いが難しい場合は、家庭裁判所の調停も利用可能です。
遺留分の割合や計算方法を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺留分侵害額請求は「調停前置主義」
遺留分侵害額請求は、「調停前置主義」が採用されます。
調停前置主義とは、いきなり裁判を起こすのではなく、まずは調停での話し合いを経なければならないというルールです。
調停前置主義が採用される理由としては、家庭内の問題はなるべく家庭内で解決するのが望ましいことや、プライバシーの流出をできるだけ抑える必要があることなどが挙げられます。
遺留分侵害額請求の一般的な流れは、「当事者同士の協議➡調停➡訴訟(裁判)」となります。
最初に当事者間で協議し、まとまらない場合には調停を申し立て、それでも決裂してしまったときは訴訟手続きに移行するのが通常です。
遺留分侵害額の請求調停を行うメリット
遺留分侵害額の請求調停を行うメリットは、以下の2つです。
- 調停委員が間に入るため冷静に話し合える
- 解決案を提案してもらえる
調停委員が間に入るため冷静に話し合える
遺留分侵害額の請求調停では“調停委員”に仲介してもらえるため、当事者だけで行うよりも冷静に話し合える可能性があります。
親族間で意見が対立するなど、双方が感情的になっている場合、当事者だけで協議を成立させるのは困難です。
調停の申立てによって、よりスムーズに解決できると考えられます。
解決案を提案してもらえる
調停委員は、当事者双方から意見を聴取して、解決のための助言を行います。
調停はあくまでも話し合いの場であり、調停委員の提案を受け入れる義務はありませんが、双方が合意すれば訴訟よりも柔軟な解決が可能となります。
遺留分侵害額の請求調停の流れ
遺留分侵害額の請求調停は、主に以下のような流れで進みます。
- 調停を申し立てる
- 調停期日に家庭裁判所へ出向き、調停委員に仲介してもらいながら協議する
- 調停が成立すれば調停調書が作成される
- 調停が不成立になれば、改めて遺留分侵害額請求訴訟を提起する
調停を申し立てるときは、管轄の家庭裁判所に申立書やその写し、戸籍謄本などの必要書類を提出します。
調停申立て後の流れや申立て方法などについて、次項より解説します。

①調停の申立て
遺留分侵害額の請求調停は、必要な書類を揃えて家庭裁判所に提出することで申立てができます。
申立先や必要書類・費用は、以下のとおりです。
| 申立人 |
|
|---|---|
| 申立先 |
|
| 必要な費用 |
|
| 必要な書類 |
|
被相続人よりも先に亡くなっている相続人がいる場合は、その方の戸籍謄本も必要になるなど、追加で書類提出を求められることもあります。
申立書は、裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードできます。
「申立ての趣旨」と「申立ての理由」の欄は、相手方に写しが送付されることを意識して、感情的な表現を避けて事実関係のみを丁寧に記載することが重要です。
申立ての趣旨
申立ての趣旨には、遺留分に相当する金銭の支払いを求める旨を簡潔に記載します。
具体的な金額は話し合って決めるので、記載しなくても問題ありません。
申立ての理由
申立ての理由には、被相続人の情報、相続人の関係、相続財産、遺言や贈与の内容、これまでの経緯を正確にまとめて記載します。
②期日の決定
管轄の家庭裁判所に「遺留分侵害額の請求調停」の申立てが受理されると、裁判所の書記官から連絡が入り、第1回調停期日の日程調整(目安は1~2ヶ月後)が行われます。
第1回調停期日が決まると、相手方に申立書の写しや呼出状などが送付されます。
③第1回調停期日
第1回調停期日では、調停委員2名と裁判官がいる状態で始まり、裁判官から調停手続きについて説明を受けるケースが多いです。
裁判官からの説明は、申立人と相手方が同時に受けることが多いですが、双方が激しく対立しているケースなどでは個別に説明してもらえる可能性もあります。
裁判官からの説明が終わると、基本的に調停委員だけが立ち合い、双方から交互に意見を聴いて裁判官に伝えます。
第1回の期日が終わると、必要に応じて次回の調停期日の調整が行われます。
④第2回以降の調停期日
第2回以降の調停期日でも、第1回と同じように双方が交互に意見を調停委員に伝えます。各期日は1~2ヶ月程度の間隔で実施されるのが一般的です。
⑤調停の成立
調停が成立すると、合意内容を記載した「調停調書」が作成されます。調停調書の内容通りに金銭が支払われない場合は、執行文の付与を受けることで強制執行が可能となります。
執行文の付与を受けるには、300円分の収入印紙が必要です。
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遺留分侵害額の請求調停が不成立の場合は訴訟へ
遺留分侵害額の請求調停が不成立となった場合、遺留分侵害額請求訴訟(裁判)へ進みます。
相手方が交渉を拒否しているケースや、裁判所が合意は難しいと判断したケースでは、調停が不成立となります。引き続き遺留分侵害額請求を行うには、地方裁判所か簡易裁判所で裁判を起こさなければなりません。
なお、調停不成立となった後は、最短6ヶ月で時効が完成するおそれがあります。
遺留分侵害額請求を続けるのであれば、早めに裁判の準備を進めることが大切です。
遺留分侵害額請求訴訟の提起
遺留分侵害額請求訴訟は、請求額が140万円を超える場合は「地方裁判所」に、140万円以下である場合は「簡易裁判所」に提起します。
訴訟の提起は、以下のいずれかの裁判所に行います。
- 相手方の住所地を管轄する裁判所
- 自身の住所地を管轄する裁判所
- 当事者の合意により定められた裁判所
遺留分侵害額請求訴訟の流れ
遺留分侵害額請求訴訟は、主に以下のような流れで行われます。
- 管轄の裁判所に訴状を提出する
- 裁判所が第1回口頭弁論期日を指定して、訴状などを相手方に送達する
- 相手方が答弁書を提出する
- 第1回口頭弁論が行われ、引き続き第2回以降の口頭弁論が行われる
- 判決が下される
遺留分侵害額の請求調停を申し立てる際の注意点
遺留分侵害額の請求調停を申し立てる際の注意点は、主に次の3つです。
- 相手方の住所を特定しなければ調停はできない
- 相手方が出席しなければ調停は不成立になる
- 遺留分侵害額請求権には消滅時効がある
①相手方の住所を特定しなければ調停はできない
遺留分侵害額の請求調停では、相手方の住所を特定する必要があります。
調停の申立書には相手方の住所を記入する欄があり、住所不明のままでは手続きが進められないためです。
住所が分からない場合は、住民票の附票などをたどって調べますが、一般の方には難しいこともあります。
弁護士であれば、職務上請求で相手方の住民票を取得でき、スムーズに住所を確認しやすいため、自力での調査に不安があるときは弁護士への相談を検討しましょう。
②相手方が出席しなければ調停は不成立になる
相手方が調停期日に出席しないと、話し合いによる解決はできず、遺留分侵害額の請求調停は不成立となります。
実際、相手方が調停を欠席するケースは珍しくありません。調停不成立となった後に遺留分侵害額請求を続けるには、訴訟(裁判)を起こす必要があります。
訴訟では、「遺留分がどの程度侵害されているのか」を法律に基づいて計算したうえで、客観的な証拠をもって遺留分権利者自らが主張・証明しなければなりません。
主張の組み立て方によって裁判官の判断が大きく変わることもあるので、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
弁護士から必要な証拠集めや法的主張のポイントをサポートしてもらうことで、安心につながるでしょう。
③遺留分侵害額請求権には消滅時効がある
侵害された遺留分を請求できる権利=“遺留分侵害額請求権”には、時効があります。
遺留分は法律で定められた最低限の取り分ですが、侵害されているからといって自動的に取得できるわけではありません。
請求権を行使しないまま放置すると、次のいずれか早い時点で時効により権利が失われます。
遺留分侵害額請求権の時効
- 遺留分の侵害を知ったときから1年(消滅時効)
- 相続開始のときから10年(除斥期間)
「遺留分を侵害されているかもしれない」と気付いた段階で、早めの確認と請求が重要です。
なお、相手に遺留分侵害額請求する旨の通知を“配達証明付き内容証明郵便”で送る、または裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てると、消滅時効の進行を止めることができます。
遺留分侵害額の請求調停は自分でできる?
遺留分侵害額の請求調停は、自分でも手続きが可能です。
ただし、遺留分侵害額の正確な計算は難しく、証拠を集めるのも専門的な知識が欠かせません。
書類を作成したり、裁判所で手続きを進めたりするのは負担が大きいため、弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士に依頼するメリット
遺留分侵害額の請求調停を弁護士に相談・依頼するメリットは、以下のとおりです。
- 遺留分侵害額を正確に計算してもらえる
- 証拠集めのサポートが受けられる
- 相手方とのやりとりも任せられる
- 書類作成から裁判所での手続きまですべて任せられる
- 調停委員を味方につけ、当事者にとって有利な提案をしてもらえる可能性がある
- 過度な譲歩を求められたとき、適切な判断をしてもらえる
- 時効が過ぎることを防げる
- 調停が不成立となった場合も、スムーズに訴訟(裁判)へ進める
遺留分侵害額を請求された場合の対処法
遺留分侵害額請求をされたら、以下の点をすぐに確認しましょう。
- 請求した人が、被相続人の配偶者や子、両親など、遺留分を有する可能性のある人か
- 遺留分侵害額請求権について消滅時効を援用できないか
- 遺留分権利者が相続した財産が遺留分を上回っていないか
請求した人に遺留分がある場合、まずは当事者による交渉で解決を図るのが基本です。請求者が勘違いしている場合や、過大な金額を請求している場合は、その旨を交渉で伝えます。
請求者の主張が正しい場合、支払いを拒否するのは難しいため、速やかに支払うべきでしょう。
相続財産を現金に換える時間が必要なときは、分割払いなど支払い方法について交渉する必要があります。
交渉がまとまらなければ、調停や訴訟(裁判)も視野に入れなければなりません。
遺留分を請求されたときの対処法や注意点を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺留分侵害額の請求調停についてのお悩みは弁護士へご相談ください
「遺留分侵害額の請求調停を申し立てたい」「他の相続人から調停を申し立てられた」という方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、調停で主張すべきことや集めるべき証拠などについてアドバイスできます。
また、調停で合意できなければ、訴訟(裁判)で争うことになるでしょう。
訴訟になれば、解決までに時間がかかるため、金銭的な負担や心身への負担が重くなりがちです。
こだわるべきポイントや、調停で譲歩すべき点などは、ご自分で判断するのが難しいことも多いです。
考えを整理するためにも、まずはお気軽に弁護士法人ALGにご相談ください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)





