遺言書の効力とは?指定できる10の内容と知っておくべきポイント

遺言書で効力がある10の内容

故人の希望が書かれた遺言書。正しい形式で書かれた遺言書であれば法的な効力をもち、故人の希望を実現させることができます。

では、相続人は遺言書に書かれているすべての内容を必ず実行しないといけないのでしょうか。なかには現実的でない内容も含まれているかもしれません。そうなると、相続人は遺言書通りにしたいと思ってもできずに悩むことでしょう。実は、実行しなければいけない遺言事項は法律で限定されています。それ以外の内容については遺言書に書かれていても法的な効力を持たないのです。

本稿では、遺言書の効力について解説していきます。

遺言書の効力で指定できること

遺言書に記載することで、法的拘束力を発揮する項目について確認しましょう。基本的にはこれらの内容以外については、遺言書に記載したとしても、実行するのかは相続人らの判断となります。また、遺言書としての効力をもつには、正しい形式で記載された遺言書であることが前提条件となります。

遺言執行者の指定

遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実行するために、必要な手続きをする権限を持った人物を指します。

遺言執行者が行う具体的な手続きとしては、財産目録の作成や、預貯金の解約手続き、不動産名義の変更などがあります。遺言執行者が指定されている場合には、相続人であっても相続財産の処分を勝手に行うことは出来ません。ただし、遺言内容によって遺言執行者が常に必要というわけではないので、遺言執行者の指定を行うべきなのかという点は専門家のアドバイスを受けましょう。

誰にいくら相続させるか

遺言書では、各相続人の遺産の取り分についても指定することができます。法律で法定相続分は定められていますが、これはあくまで原則のものです。遺言書で取り分の指定をする際には、法定の相続割合にこだわる必要はありません。法定割合を上回る、もしくは下回る取得割合を指定することが可能です。その場合には、法定の相続割合よりも遺言書の内容を優先して実行することになります。

誰に何を相続させるか

遺言書で指定できるのは、遺産の取り分だけではありません。もっと具体的に、どの遺産を誰に相続させるといった特定をすることも可能です。つまり、配偶者へ遺産の1/2と割合を示すのではなく、自宅は配偶者に相続させる、といった具体的な指定ができます。

例えば、相続財産に不動産が含まれていると、遺産の取り分の指定では、相続を実行する為に売却が必要になるケースもあります。相続財産の内容を踏まえて遺産分割の指定を検討したほうが良いでしょう。

遺産分割の禁止

相続人らで行う、遺産分割協議を遺言書で禁止することができます。これは、相続開始時のトラブルを避けるための冷却期間が欲しい、相続時点では相続人のなかに未成年者がいるから、といった理由で記載することがあります。

ただし、永久に禁止させることはできません。最大でも5年を超えない期間で指定することになります。もし、遺言書に遺産分割の禁止条項があっても、期間が指定されていない場合には、5年間の禁止として効力をもつことになります。

遺産に問題があった時の処理方法

指定された相続財産に問題がある場合はどうなるでしょうか。その財産を既に他人が所有しているなど、財産に欠陥があるケースです。このような問題のある遺産を相続した相続人は、他の相続人と比べて一人だけ損をすることになってしまいます。この遺産相続による損害を他の相続人らも負担しなければ公平な相続とはいえません。そのため、遺産に問題があった際には、他の相続人が、不当に損をしてしまった相続人に対して、その程度に応じた損害を賠償することになります(担保責任)。

生前贈与していた場合の遺産の処理方法

相続人の中には、遺言者の生前に援助を受けていることがあります。マイホーム購入資金などが一般的でしょう。このように、遺言者から生前に贈与を受けた利益を特別受益と言います。通常、特別受益は遺産の前渡しと考え、相続の際にその相続分から特別受益を差し引くことになります(特別受益の持戻し)。つまり、生前に300万円の特別受益があれば、本来の相続分である1000万円から300万円を控除して、残りの700万円を相続するという事です。

しかし、遺言書で特別受益の持戻し免除を記載することで、本来の1000万円で相続させることも可能です。持戻し免除を指定するのは、遺言者が事業承継のために、後継者に対して生前に事業資金を贈与していた場合などが典型例です。

生命保険の受取人の変更

保険金の受取人の変更は本来、契約変更の手続きが必要ですが、平成22年4月の保険法の改正によって、遺言書による変更が可能となりました。ただし、この法改正日以前の保険契約については原則として適用が無いので、適用の有無については契約した保険会社への確認が必要です。ただし、遺言書による受取人の変更は、その遺言内容を保険会社へ通知する必要があります。この通知が遅れてしまい、遺言書の指定受取人ではなく、元の受取人に保険金が支払われてしまったとしても、保険者へ再度請求することができませんので、注意が必要です。

非嫡出子の認知

内縁関係など、結婚をしていない相手方とのあいだの子供を法律上、非嫡出子といいます。非嫡出子であっても父親に認知されれば、相続においてはその他の子どもと同じ権利が発生することになります。つまり、遺産の取り分が減ることになるので、相続人としては非嫡出子の認知が書かれた遺言書については破棄してしまいたいと思うかもしれません。しかし、遺言書を破棄したり、隠匿するなどの行為を行った相続人は、相続の資格を失ってしまいますので、絶対にやめましょう。

相続人の廃除

特定の相続人から相続人としての地位を無くし権利を奪う、相続人の廃除を遺言書で行うことができます。これは、遺言者が生前にその相続人から虐待や、重大な侮辱を受けるなど、絶対に相続させたくないと思わざるを得ないような事情が発生した場合にその相続人から相続権をはく奪することが可能になります。相続人の廃除は遺言者が生前に家庭裁判所へ申立てて行うこともできますが、遺言による実行も可能です。ただし、廃除を遺言書で実現させるためには、遺言執行者の選任が必要になります。

未成年後見人の指定

遺言者に未成年の子供がいるケースを考えてみましょう。未成年者の親権者が遺言者だけだった場合には、遺言者が亡くなると、この未成年者の親権者がいなくなることになります。このような未成年者に対しては、遺言書で後見人の指定をしておくと良いでしょう。

未成年後見人は、未成年者が成人するまでの財産の管理だけでなく、監護・教育に対しても責任を負うので、人選は十分に考慮することが大切です。そして遺言書で未成年後見人の指定を行う際には、一緒に未成年後見人を監督する未成年後見監督人も指定するのが一般的です。

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遺言書が複数ある場合、効力を発揮するのはどれ?

遺言書が複数発見された場合には、原則としては日付が最も新しいものが効力を持つことになります。遺言書の種類による優劣はありませんので、それぞれ記載された日付を確認しましょう。

もし、日付のない遺言書があった場合はどうでしょうか。遺言書に最近入手した財産が記載されている等、推測で最新のものと判断できたとしても、日付の記載は遺言書が法的効力を備えるための必須項目です。日付が無い時点で、その遺言書には効力がありません。

遺言書の効力は絶対か

遺言書は、相続においては故人の意向という点で尊重され、最優先事項となります。しかし、遺言書が絶対というわけではありません。遺言書が効力を持つためには、法的に定められた様式で記載されていることが必要です。

具体的には、前述の日付や署名、押印が抜けているとその遺言書は無効となり効力を持ちません。特に自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には作成するのが遺言者本人の為、要件を満たせていないケースが多々あります。公正証書遺言の場合には専門家である公証人が作成するので、様式の不備による無効は稀でしょう。

遺言書の内容に納得できない場合

遺言内容は遺言者にとっては合理的かもしれませんが、相続人にとっては必ずしもそうではありません。遺言書の内容に納得がいかない相続人もいるでしょう。それでも遺言書が基本的には優先されますが、納得いかないのが相続人全員となると話は別です。相続人全員の総意で遺言書と異なる分割方法に合意する場合には、その合意した分割内容で相続を実行することができます。

勝手に遺言書を開けると効力がなくなるって本当?

遺言書は本来、開封せずに家庭裁判所で検認の手続きを行い、検認期日に裁判官が開封してその内容を確認することが必要です。しかし、検認前に遺言書を開封したとしても遺言書としての効力には影響はありません。開封されても正式な遺言書であれば有効です。

もし、開封してしまったとしても、開封したことを正直に申告したうえで検認の手続きを行いましょう。ただし、遺言書を相続人が勝手に開封することは法律違反に該当するので、行政罰として5万円以下の罰金となる可能性があります。

効力が発生する期間は?

遺言書の効力は、遺言者が亡くなった時から発生します。そして、その効力に期限はありませんのでずっと有効です。そして、遺言者が亡くなる何十年も前に書いた、古い遺言書であっても効力には何ら問題ありません。ただし、遺言者が一度作成した遺言書を撤回した場合には、撤回された遺言書の効力は無くなります。

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認知症の親が作成した遺言書の効力は?

認知症=遺言書に効力無し、というわけではありません。遺言書が無効となるのは、遺言内容や意義を理解できる程度の意思能力が無かった場合です。そのため、認知症であっても症状が軽度であるなど、意思能力有りと認められるならば、その遺言書は有効です。しかし、遺言者が認知症の場合には、遺言書の効力について争いになることがあります。遺言書の内容に納得できない相続人は、認知症による遺言書の無効を主張することが多いからです。そうなると、作成当時の医療記録や動画などで、遺言能力の証明が必要となります。

認知症を患っている場合には公正証書遺言を検討しても良いでしょう。遺言者の遺言内容を説明する態度などで、公証人が意思能力の有無を確認するので、公証人によって遺言能力が担保される仕組みとなっています。ただし、意思能力の判断は公証人ごとで差があり、公正証書遺言であれば必ずしも有効と断言できるわけではありません。

記載されていた相続人が亡くなっている場合でも効力を発揮するの?

遺言書で特定の財産をある相続人へ遺贈すると定めていても、この相続人が遺言者より先に亡くなってしまうことがあります。このようなケースの場合には、この相続人に関する遺言書の記載部分は無効となってしまいます。そして、この相続人が相続する予定であった財産については、相続人間で遺産分割協議を行うことになります。

遺留分を侵害している場合は遺言書の効力がなくなるの?

兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分という最低限の相続の権利が保障されています。つまり、遺言書に指定された内容であっても、この遺留分についてまで侵害することはできません。しかし、遺留分を侵害した遺言書が無効となるわけではありません。なぜなら、遺留分については自動的に確保され処理されるものではなく、遺留分を希望する相続人が自ら主張して初めて考慮されるものだからです。遺留分を主張するかは、その侵害された相続人の意思次第ですが、遺留分侵害額の請求がされた場合には、その範囲において金銭を支払うことになります。

なお、遺留分については、相続法の改正があり、遺留分を侵害していたとしても遺言書の効力には影響しないこととなりました。

遺言書の効力についての疑問点は弁護士まで

遺言書を作るのは簡単ではありません。遺言書は遺言者の死亡後にその意思を実現させる重要な書類です。有効な遺言書にするためには専門家の目を通すのが最適でしょう。また、相続人においても遺言書を発見したときにはその遺言書が最新のものなのか、書かれている内容は有効なものなのか、など確認事項は多々あります。

遺言書に関して疑問を持たれたら、まずは専門家である弁護士へご相談ください。

 

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 :弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、福岡、バンコクの11拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。