遺産分割協議書の書き方をひな形付きで解説!ポイントや注意点など

遺産分割協議書の書き方をひな形付きで解説!ポイントや注意点など

相続人全員で話し合って相続財産の分配方法を決めたら、遺産分割協議書を作成する必要があります。遺産分割協議書は、弁護士などの専門家のほか、相続人が自分で作ることも可能です。

ただし、自分で遺産分割協議書を作成する場合は、相続トラブルを避けつつ、相続手続きに支障が出ないように注意しなければなりません。

この記事では、遺産分割協議書の書き方や、自分で遺産分割協議書を作成するときの注意点などについて解説します。

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、遺産分割協議による合意内容をまとめた書類です。

作成する義務はなく、書式の指定もありませんが、作成することで相続トラブルの防止に役立ち、相続手続きでも提出書類として利用できます。

ただし、手続き上の添付書類として用いるには、誰がどの財産を相続したのかについて正確に記載する必要があります。

遺産分割協議書が必要なケース

相続人が複数いる場合、トラブル防止のためにも遺産分割協議書を作成するのが望ましいです。

ただし、遺言書があれば協議書の作成が不要となるケースもあります。

遺産分割協議書が必要なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 有効な遺言書が作成されていないケース
  • 遺言書の指定と異なる遺産分割協議を行ったケース
  • 相続人が二人以上であるケース
  • 相続財産に不動産などが含まれているケース

遺産分割協議書が不要なケース

相続人同士で「相続財産をどう分けるか」について話し合う必要がない場合、遺産分割協議書を作成しなくても手続きを進められることがあります。

遺産分割協議書が不要なケースとして、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 遺言書で指定された遺産分割の方法に従うケース
  • 法定相続人が一人しかいないケース
  • 法定相続分のとおりに遺産分割するケース

遺産分割協議書はいつまでに作成する?

法律上、遺産分割協議書の作成期限は設けられていません。

ただし、相続税の申告が必要な場合は遅くとも10ヶ月以内、可能であれば6ヶ月以内に作成するのが望ましいでしょう。

相続税の申告が遅れると、以下のようなリスクが生じます。

  • 無申告加算税や延滞税などがかかり、税額が増えてしまう
  • 課税価額を下げるための「小規模宅地等の特例」が使えなくなる
  • 税額を控除する「配偶者控除」などが使えなくなる

遺産分割協議書の作成が間に合わない場合は、一旦期限内に法定相続分によって相続税を申告し、3年以内に更正することも可能です。

もっとも、更正手続きには手間がかかるため、早めに対応するのが基本です。

遺産分割協議書の書き方・ひな形

遺産分割協議書のサンプル

遺産分割協議書の書き方に決まりはありません。

手書きだけでなくパソコンでも作成可能ですが、相続人全員の署名は自筆で行いましょう。

また、不備があると相続手続きに支障が生じるおそれがあるので、「被相続人の情報」や「誰が何をどのように相続するのか」は正確に記載することが重要です。

遺産分割協議書の主な記載内容は、以下のとおりです。

  • タイトル(遺産分割協議書)
  • 被相続人の情報(氏名、死亡日、住所、生年月日など)
  • 遺産分割協議書が成立した事実
  • 遺産の内容と分割方法
  • 日付(遺産分割協議の成立日または遺産分割協議書の作成日)
  • 相続人の情報(氏名、住所)
  • 相続人全員の署名、実印の押印

遺産分割協議書のひな形は、国税庁や法務局のウェブサイトでも確認できるため、書式に不安がある方は参考になさってください。

預貯金の書き方

預貯金の項目は、金融機関の名称や支店名、口座番号、誰が相続するのかなどを明記します。預金額は利息などで変動するため、記載しないのが一般的です。

遺産分割の対象となるのは被相続人の死亡時の預金残高なので、金融機関から残高証明書を発行してもらい、遺産分割協議書に添付すると良いでしょう。

また、被相続人が保有していた現金についても忘れずに記載しましょう。

いわゆる「タンス預金」が高額な場合は争いになるリスクがあるため、記載しておくとトラブル防止につながります。

遺産分割協議書 現預金記載例

自動車の書き方

遺産分割協議書に「自動車の遺産分割」について記載するときは、自動車登録番号や車体番号などを明記します。

遺産分割協議書 車記載例

不動産の書き方

不動産は、遺産分割協議書を相続登記で使えるようにするため、登記事項証明書(登記簿謄本)のとおりに記載します。

なお、金融機関などの第三者に不動産の情報を知られたくない場合は、不動産だけをまとめた遺産分割協議書を作成し、そのまま相続登記に使うことも可能です。

不動産の種類ごとに記載のポイントが異なるため、以下の3つに分けて詳しくみていきましょう。

  • 一戸建ての場合
  • マンションの場合
  • 共有持分がある場合
遺産分割協議書 不動産記載例

一戸建ての場合

一戸建ての場合、「土地」と「建物」に分けて、それぞれの情報を正しく記載する必要があります。

具体的には、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、「表題部」に記載されている所在などの情報をそのまま正確に書き写します。

  • 土地:所在、地番、地目、地積
  • 建物:所在、家屋番号、種類、構造、床面積
遺産分割協議書 一戸建て記載例

マンションの場合

マンションの場合、「一棟の建物(建物の全体)」「専有部分の建物」「敷地権」に分けて、それぞれの情報を正しく記載します。

具体的には、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、「表題部」に記載されている情報をそのまま書き写します。

  • 一棟の建物:所在、建物の名称
  • 専有部分の建物:家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積
  • 敷地権:所在及び番地、地目、地積、敷地権の種類、敷地権の割合
遺産分割協議書 マンション記載例

共有持分がある場合

被相続人が、他の人と不動産を共有していた場合は、被相続人の持分も遺産分割協議書に記載しておく必要があります。

例えば、被相続人が土地の2分の1を所有していた場合、土地の項目の最後に「持分:二分の一」などと明記するのが一般的です。

遺産分割協議書 共有持分記載例

有価証券や株式の書き方

遺産分割協議書に「株式の遺産分割」について記載するときは、証券会社の名前や口座番号、株式を発行している会社名、株式の種類、株式数などを記載します。

遺産分割協議書 有価証券記載例

債務や負債の書き方

債務や負債も、相続人全員の同意があれば遺産分割の対象にできます。

相続人間で負担割合を決めた場合は、遺産分割協議書に契約内容や残高、債権者名、誰がどの割合で負担するのかなどを明記します。

遺産分割協議書 負債記載例

ただし、取り決めた負担割合が有効なのは“相続人間”だけで、債権者には効力がないため、基本的には法定相続分で請求されます。

本来の負担割合よりも多く支払った分は、実際に負担すべき相続人へ求償して取り戻すことが可能です。

なお、遺産分割後に大きな借金が見つかった場合は「財産を処分した」とみなされ、相続開始から3ヶ月以内であっても相続放棄できない可能性が高いです。

思わぬ借金を背負わないためにも、協議書を作成する前は債務や負債がないか慎重に調査しましょう。

相続放棄できる期間については、以下の記事をご覧ください。

後日判明した財産の書き方

遺産分割協議書には、後日判明した財産をどう扱うかも明記しておきましょう。

どれだけ丁寧に財産調査を行っても、税務調査などで後から新しい相続財産が見つかることは少なくありません。

後日財産が判明したときに備えて、再度協議するのか、あらかじめ取得者を指定しておくのか、あるいは法定相続分で分けるのか、事前に決めて協議書に示しておくと安心です。

遺産分割協議書 後日判明した財産

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遺産分割協議書の書き方に関するポイントや注意点

遺産分割協議書の内容に不備があると、相続手続きで使えなくなってしまうので、書き方のポイントを押さえておくことが大切です。

以下、協議書の書き方のポイントや注意点を詳しくみていきましょう。

  • 記入漏れがないよう慎重に作成する
  • 相続人全員が署名押印する
  • 被相続人や相続人の情報は正確に記載する
  • 誰がどの財産を相続するか明確に記載する
  • 複数枚になる場合は契印や割印が必要
  • パソコンで作成することも可能
  • 死亡保険金や死亡退職金の記載は不要

記入漏れがないよう慎重に作成する

遺産分割協議書に記載漏れや誤りがあると、適切な遺産分割ができない可能性があるため、慎重に作成しましょう。

遺産分割協議書を作り直す場合は「相続人全員の合意」が必要なので、余計な手間もかかります。

また、自己都合で遺産分割協議をやり直しても、基本的に相続税は返還されません。

相続財産の移動がある場合、当初の相続人から新たな相続人への贈与と捉えられ、新たに贈与税を課税されるおそれもあります。

労力的にも金銭的にも大きな負担となるため、リスクを減らすためにも事前に弁護士などの専門家に依頼しておくことをおすすめします。

相続人全員が署名押印する

遺産分割協議書を相続人全員で作成したことを証明するため、全員による署名押印が必要です。

相続人全員がそろって署名押印することで有効になる大切な書類なので、一人でも欠けると協議書自体が無効になってしまいます。

署名欄の住所・氏名の書き方や押印に使う印鑑について、法律上のルールはありません。

ですが、後で「自分は合意していない」といったトラブルを避けるためにも、各相続人が自筆で住所・氏名を書き、押印する印鑑は実印を使うのが望ましいです。

被相続人や相続人の情報は正確に記載する

遺産分割協議書には、被相続人や相続人の情報を正確に記載しましょう。

被相続人の氏名・住所・本籍地・死亡日などは、戸籍のとおりに記載し、「誰の相続か」を明確にします。

また、相続人については、氏名・住所を印鑑証明書と一致させることで、手続きのトラブル防止につながります。

誰がどの財産を相続するか明確に記載する

遺産分割協議書を作成するときは、「誰がどの財産を相続するのか」を明確に記載する必要があります。

財産が特定できないと、協議書が無効になったり、後でトラブルになったりする可能性があります。

例えば、預貯金であれば「金融機関名・口座番号」、不動産であれば「登記簿の記載内容と一致する情報」というように、財産が特定できるよう具体的に明記しましょう。

誤解を招きかねないあいまいな表現は避けて、第三者が見ても理解できるように記載することが重要です。

複数枚になる場合は契印や割印が必要

遺産分割協議書に複数のページがある場合や、人数分の遺産分割協議書を作成した場合は、契印や割印をしなければなりません。

法律上、契印や割印は必須ではありませんが、改ざんされていないことを証明するためにも重要です。

契印は、ページとページの間に押印します。製本テープによってまとめた場合は、テープと表紙にまたがるように押印しましょう。

また、割印は全員分の遺産分割協議書にまたがるように押印します。

相続人や協議書の枚数が多いと、全員へ周知するのに手間取ったり、うまく押印できなかったりとミスが生じやすくなります。

実際の押印方法については、以下の図を参考に間違いのないようご注意ください。

遺産分割協議書 ダミー 遺産分割協議書 ダミー 遺産分割協議書 ダミー

パソコンで作成することも可能

遺産分割協議書は、手書きのほかにパソコンで作成することも可能です。

パソコンで作成すると、誤字・脱字を防ぎやすく、手書きに比べて修正もスムーズにできます。効率よく正確に協議書を作りたい場合は、パソコンで作成することをおすすめします。

ただし、トラブルを防ぐためにも、署名欄の住所と氏名は相続人それぞれが自筆で手書きしましょう。

死亡保険金や死亡退職金の記載は不要

基本的に、「生命保険の死亡保険金」や「死亡退職金」は遺産分割協議書に記載する必要がありません。

受取人が指定されている死亡保険金や死亡退職金は「受取人固有の財産」であり、遺産分割の対象に含まれないためです。

受取人が指定されている死亡保険金や死亡退職金を受け取った場合は、協議書に記載する必要も、他の相続人と分け合う必要もありません。

※受取人が被相続人となっている場合や、具体的な受取人が指定されていない場合を除く

遺産分割協議書は自分で作成できる?弁護士に依頼するメリット

遺産分割協議書は、専門家に依頼せずに自分で作成することも可能です。

ただし、不備があると相続手続きがスムーズに進まなくなるなどリスクや注意点があるため、相続問題に詳しい弁護士に相談・依頼すると安心です。

協議書の作成を弁護士に依頼するメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 法的に有効な遺産分割協議書を作成できるので、相続手続きがスムーズに進められる
  • 調査や作成にかかる手間や時間を大きく減らせる
  • 相続人同士の争いや将来のトラブルを防止するためにも役立つ
  • 他の相続人との連絡や交渉も任せられて、感情的な対立を避けられる
  • 不動産や株式など、複雑な相続財産が含まれるケースも適切に対応してもらえる
  • 後日新たな財産が判明した場合や、トラブルが発生した際も継続的なサポートが可能

遺産分割協議書の書き方でよくある質問

相続財産の全てを一人の人が相続した場合の書き方を教えてください

相続財産の全てを一人で相続する場合、相続人全員が合意したと分かる遺産分割協議書を作成します。

例えば、相続人が配偶者と子供の2名で、話し合いにより配偶者一人で全て相続することになった場合のポイントは以下のとおりです。

  • 相続人全員の合意で配偶者一人が全ての財産を相続することを明記する
  • 預貯金や不動産など、財産の内容を特定できる形で記載する
  • 財産を一切受け取らない子供を含め、相続人全員が署名押印する

トラブル防止のため、必ず相続人全員で協議書を作成しましょう。

借金がある場合は、「債務も含めて全てを一人が相続する」と書いておくと、債権者に対する効力はありませんが、相続人間では有効な取り決めとなります。

相続させたくない人がいる場合の遺産分割協議書の書き方を教えてください

相続させたくない人がいる場合、遺産分割協議書には「相続人〇〇は本遺産分割協議により、相続財産を一切取得しない」などと明記します。

相続人全員が署名押印すれば、その人の取り分をゼロにすることができます。

相続放棄とは異なり、その人の相続権はそのまま=相続人の範囲を変えずに、「相続割合だけ」を調整できる方法です。

相続人同士の話し合いで柔軟に決められるのは大きなメリットですが、被相続人に借金がある場合、債権者には「取り分ゼロ」の効力が及ばないため注意しましょう。

遺産分割協議書は手書きでも大丈夫ですか?

遺産分割協議書は手書きで作成しても有効です。

重要なのは、協議書の内容から相続人全員が合意していると明確に確認できることです。

ただし、手書きの場合は次のような注意点・リスクも理解しておく必要があります。

  • 偽造・改ざんといったトラブルを防止するため、消せないボールペンや万年筆で書く
  • 誤字・脱字がある、読みにくいといった理由で差し戻される可能性がある
  • 修正する場合は二重線を引いて実印で訂正し、相続人全員の確認が必要になる
  • 原本を複数作成する場合、コピーでも問題ないが、署名は各相続人が手書きして実印で押印する

遺産分割協議書の書き方・自分で作成するのが不安な場合は弁護士にご相談ください

遺産分割協議書は、相続人同士のトラブルを防ぎ、相続手続きをスムーズに進めるためにも、正確さと漏れのない記載が欠かせません。

自分で遺産分割協議書を作成するのが不安な方は、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士に相談・依頼すると、相続財産調査の結果と照らし合わせながら、記載漏れや内容に誤りがないかチェックしてもらえます。

さらに、遺産分割協議の前提となる「財産調査」や「相続人調査」も任せられるため、安心して手続きが進められるでしょう。

弁護士法人ALGでは、豊富な相続案件の経験・実績をもとに、複雑なケースでも適切な遺産分割協議書の作成をサポートできます。まずはお気軽にご相談ください。

 

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監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

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