遺留分の計算方法は?割合や計算例をわかりやすくシミュレーション
この記事でわかること
兄弟姉妹以外の相続人には、民法で「最低限の遺産の取り分(遺留分)」が保障されています。
遺言書や贈与によって取り分が減っても、遺留分に足りなければ遺留分侵害額請求によって取り戻すことが可能です。
ただし、遺留分を取り戻すには、ご自身で具体的な金額を計算して他の相続人等へ請求しなければなりません。
本記事では、【遺留分の計算方法】について、ケース別にシミュレーションしながらわかりやすく解説していきます。
目次
遺留分の計算方法
遺留分の金額は、「遺留分の計算式」を用いて算出します。
遺留分の計算式
遺留分額 = (相続財産 + 生前贈与 − 債務) × 遺留分割合 × 法定相続分
実際に請求できる遺留分額を算出する際は、以下のステップに沿って計算していきます。
- 遺産額を計算する
- 遺留分の割合を確認する
- 遺産額に遺留分の割合を掛ける
- 実際に請求できる遺留分額を計算する

①遺産額を計算する
最初に、遺留分計算の基礎となる遺産額を確定させます。
遺産額の計算式
遺産額 = 相続財産 + 生前贈与 − 債務
対象となる財産を確認し、相続財産に生前贈与を加えた額から、債務を差し引きます。
相続開始時に被相続人が所有していた財産以外に、過去の贈与等も含めて計算するので、「遺留分の対象となる財産」になにが含まれるのかをしっかり確認しておきましょう。
遺留分の対象となる財産
遺留分の対象となる財産は、大きく分けて「相続財産」「生前贈与」「債務」の3種類があります。
-
相続財産
相続開始時点で被相続人が所有していたプラスの財産(現金、預貯金、不動産、株式、有価証券等)のことです。
遺言や死因贈与によって特定の人に移転された財産も含まれます。 -
生前贈与
生前贈与はすべてが対象になるわけではありません。
生前贈与のうち、以下に該当するものが遺留分の対象財産に含まれます。- 相続開始前1年以内に行われた生前贈与
- 相続開始前10年以内に行われた特別受益にあたる生前贈与
- 当事者が遺留分を侵害することを認識して行われた生前贈与
※重複する部分を除く
-
債務
相続開始時点で被相続人が抱えていた、借金や未払い金等のマイナスの財産のことです。
②遺留分の割合を確認する
遺産額が確定したら、「遺留分の割合」を確認しましょう。
相続人全体で保障される「総体的遺留分」をもとに、相続人ごとに保障される「個別的遺留分」を求めていきます。
総体的遺留分の割合は、法定相続分の1/2が基本です。
ただし、被相続人の親や祖父母等の直系尊属のみが相続人となる場合は、例外的に法定相続分の1/3となります。
総体的遺留分に各相続人の法定相続分を掛けて、個別的遺留分を算出します。
相続人の組み合わせごとの遺留分割合
| 相続人 | 全体の遺留分 (総体的遺留分) | 個人の割合 (個別的遺留分) |
|---|---|---|
| 配偶者 | 1/2 | すべて配偶者が請求できる |
| 配偶者と子 | 1/2 | |
| 配偶者 1/2(全体の1/4) | 子 1/2(全体の1/4) | (子が複数人いるときは、子の取り分を等分する) |
| 配偶者と親 | 1/2 | |
| 配偶者 2/3(全体の2/6) | 親 1/3(全体の1/6) | (両親がいる場合には、親の取り分を等分する) |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | |
| すべて配偶者が請求できる | 兄弟姉妹は請求できない | |
| 子 | 1/2 | 人数で等分する |
| 両親 | 1/3 | 人数で等分する |
| 兄弟姉妹 | なし | なし |
※被相続人の兄弟姉妹や甥・姪には遺留分が認められていません。
例えば、被相続人に配偶者と2人の子(A、B)がいた場合、総体的遺留分は1/2で、個別的遺留分は以下のようになります。
個別的遺留分
- 配偶者:1/4(総体的遺留分1/2×法定相続分1/2)
- 子A:1/8(総体的遺留分1/2×法定相続分1/2÷子2人)
- 子B:1/8(総体的遺留分1/2×法定相続分1/2÷子2人)
③遺産額に遺留分の割合を掛ける
遺留分の対象となる金額に、個別的遺留分の割合を掛ければ、それぞれの遺留分の金額がわかります。
〈例〉被相続人に配偶者と2人の子(A、B)がいた場合
遺留分の対象となる財産
- 被相続人の財産:7000万円
- 被相続人の債務:3000万円
- 相続開始前1年以内に行われた第三者への生前贈与額:1000万円
- 相続開始前10年以内の特別受益:3000万円
- 当事者が遺留分を侵害することを認識して行われた生前贈与額:0円
対象となる財産=(7000万円−3000万円)+1000万円+3000万円+0円=8000万円
個別的遺留分の割合
- 配偶者:1/4
- 子A:1/8
- 子B:1/8
各相続人の遺留分の金額
- 配偶者:8000万円×1/4=2000万円
- 子A:8000万円×1/8=1000万円
- 子B:8000万円×1/8=1000万円
④実際に請求できる遺留分額を計算する
遺産額と遺留分の割合が確定したら、実際に請求できる遺留分侵害額を算出しましょう。
実際に請求できる遺留分侵害額の計算式
遺留分侵害額=遺留分の金額−相続した財産の金額−10年以内の特別受益の金額+相続した借金等
財産をまったく相続できなかった場合とは異なり、少しでも相続したのであれば、その財産に相当する金額については請求できる遺留分から差し引かれます。
また、相続開始前10年以内に生前贈与等を受けていた場合には、特別受益として遺留分から差し引かれます。
一方、借金の相続分については、遺留分の金額に上乗せ可能です。
【ケース別】遺留分侵害額の計算シミュレーション
具体的な例を用いて、遺留分侵害額の計算をシミュレーションしていきましょう。
ご紹介するのは、以下5つのケースです。
- 相続人が配偶者のみの場合
- 相続人が配偶者と子供の場合
- 相続人が配偶者と親の場合
- 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合
- 相続人が親のみの場合
相続人が配偶者のみの場合
相続人が配偶者のみの場合、遺留分割合は1/2です。
遺産額が1000万円だと、遺留分は500万円になります。
遺留分侵害の具体例と遺留分侵害額の計算方法
被相続人が生前贈与や遺言によって700万円を配偶者以外の第三者に渡した結果、配偶者の相続分は300万円のみとなり、遺留分500万円のうち200万円が侵害されることとなりました。
- 遺産額:相続財産300万円+生前贈与等700万円-負債0円=1000万円
- 遺留分割合:総体的割合1/2、個別的割合1/2
- 遺留分:1000万円×1/2=500万円
- 遺留分侵害額:遺留分500万円-相続分300万円=200万円
したがって、このケースで配偶者は200万円の遺留分侵害額請求が可能です。
相続人が配偶者と子供の場合
相続人が配偶者と子供の場合、遺留分割合は1/4です。
遺産額が3000万円だと、遺留分は750万円になります。
相続人である子供が2人だと、配偶者の遺留分は750万円、各子供の遺留分は375万円です。
遺留分侵害の具体例と遺留分侵害額の計算方法
相続人が配偶者と子供2人のケースで、被相続人が遺言によって配偶者と子Aに1500万円ずつ渡したため、子Bは遺産を一切相続できず、遺留分375万円の全額が侵害されることとなりました。
- 遺産額:相続財産3000万円+生前贈与等0円-負債0円=3000万円
- 子Bの遺留分割合:総体的割合1/2、個別的割合1/8(1/4÷2人)
- 子Bの遺留分:3000万円×1/8=375万円
- 子Bの遺留分侵害額:遺留分375万円-相続分0円=375万円
したがって、このケースで子Bは375万円の遺留分侵害額請求が可能です。
相続人が配偶者と親の場合
相続人が配偶者と親の場合、配偶者の遺留分割合は1/3、親の遺留分割合は1/6です。
遺産額が3000万円だと、配偶者の遺留分は1000万円、親の遺留分は500万円(父母2人なら250万円ずつ)です。
遺留分侵害の具体例と遺留分侵害額の計算方法
相続人が配偶者と母親で、被相続人が生前贈与等によって母親に2500万円を渡した結果、配偶者の相続分は500万円のみとなり、遺留分1000万円のうち500万円が侵害されることになりました。
- 遺産額:相続財産500万円+生前贈与等2500万円-負債0円=3000万円
- 配偶者の遺留分割合:総体的割合1/2、個別的割合1/3
- 配偶者の遺留分:3000万円×1/3=1000万円
- 配偶者の遺留分侵害額:遺留分1000万円-相続分500万円=500万円
したがって、このケースで配偶者は500万円の遺留分侵害額請求が可能です。
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、兄弟姉妹には遺留分がないので、配偶者だけが1/2の遺留分割合を有します。
遺産額が1000万円だと、配偶者の遺留分は500万円になります。
遺留分侵害の具体例と遺留分侵害額の計算方法
相続人が配偶者と兄で、被相続人が生前贈与等によって兄に800万円を渡した結果、配偶者の相続分は200万円のみとなり、遺留分500万円のうち300万円が侵害されることとなりました。
- 遺産額:相続財産200万円+生前贈与等800万円-負債0円=1000万円
- 配偶者の遺留分割合:総体的割合1/2、個別的割合1/2
- 配偶者の遺留分:1000万円×1/2=500万円
- 配偶者の遺留分侵害額:遺留分500万円-相続分200万円=300万円
したがって、このケースで配偶者は300万円の遺留分侵害額請求が可能です。
相続人である兄が、被相続人の遺言や生前贈与等によって遺産を一切相続できなかった場合でも、兄には遺留分が認められていないため、遺留分侵害額請求はできません。
相続人が親のみの場合
相続人が親のみの場合、遺留分割合は1/3です。
遺産額が900万円だと、遺留分は300万円になります。
遺留分侵害の具体例と遺留分侵害額の計算方法
相続人が母親のみで、被相続人が生前贈与等によって700万円を第三者に渡した結果、母親の相続分は200万円のみとなり、遺留分300万円のうち100万円が侵害されることとなりました。
- 遺産額:相続財産200万円+生前贈与等700万円-負債0円=900万円
- 遺留分割合:総体的割合1/3、個別的割合1/3
- 遺留分:900万円×1/3=300万円
- 遺留分侵害額:遺留分300万円-相続分200万円=100万円
したがって、このケースで母親は100万円の遺留分侵害額請求が可能です。
※父親と母親の2人が相続人だった場合は、遺留分侵害額100万円を2人で均等割します。
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遺留分の計算や請求が難しいケース
遺留分の計算や請求が難しい代表的なケースが、遺産に不動産や株式等の評価が難しい財産が含まれている場合です。
特に、不動産や株式の生前贈与が行われていた場合には、「今の価値と贈与時の価値のどちらで請求するか」で争いになるケースも少なくありません。
実務上は、贈与時の価額を相続開始時の価値に引き直して計算する方法がとられますが、価値の評価方法でもめる可能性もあります。
他にも、生前贈与の内容や相続人間の関係が複雑だと、相手が遺留分侵害額請求に応じず、協議が難航する傾向があります。
遺留分の計算や請求が難しいケースでは、弁護士や税理士といった専門家にサポートしてもらうことをおすすめします。
遺留分が侵害されていた場合の対処法
遺言や贈与等によって遺留分が侵害されていた場合、遺留分侵害額請求をして不足分を取り戻すことができます。
ただし、遺留分を取り戻すには以下の条件を満たさなければなりません。
- 遺留分を請求する権利を持つ「遺留分権利者」であること
遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子供・親)です。 - 時効が成立していないこと
請求期限(時効)までに、相手方へ遺留分侵害額請求をする必要があります。 - 相続放棄をしておらず、相続欠格や相続廃除に該当しないこと
相続放棄等により相続権を失うと、遺留分も認められません。
遺留分侵害額請求の方法
遺留分侵害額請求の方法は、まず当事者同士で話し合い、解決しない場合は調停や裁判へ進む流れになります。
具体的な流れは以下のとおりです。
遺留分侵害額請求の流れ
- 内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思を伝える
内容証明郵便で意思表示することにより、時効の進行を止めるための証拠が残せます。 - 遺言や贈与によって被相続人の財産を承継した相手方と話し合いで交渉する
相手方と直接交渉して、合意できれば解決となります。 - 家庭裁判所へ遺留分侵害額請求調停を申し立てる
当事者同士の話し合いで解決しない場合は、調停の場で遺留分を請求します。 - 地方裁判所または簡易裁判所へ遺留分侵害額訴訟を提起する
調停が不成立となった場合は裁判を起こし、最終的に裁判官が決定を下します。
遺留分侵害額請求には請求期限がある
遺留分侵害額請求には請求期限=「時効」があります。
- 「被相続人が死亡して、自分が相続人となり相続が開始されたこと」と「遺留分を侵害する贈与等があったこと」を知ったときから1年(消滅時効)
→ 相手方が時効成立を主張すると請求権が消滅します。 - 被相続人が死亡して相続が開始されたときから10年(除斥期間)
→ 自動的に請求権が消滅します。
遺留分侵害額請求を行うと「金銭債権」が発生しますが、意思表示しただけで、実際に回収を怠ったまま5年が経過すると権利が消滅してしまうので注意が必要です。
遺留分の計算についてのお悩みは弁護士へご相談ください
遺留分を請求したくても、対象となる財産の種類が多い場合や、不動産や株式等が含まれている場合、正確な金額を把握するのは難しいでしょう。
遺言により、相続財産を多く受け取った相続人が遺留分の存在を認めないケース等では、長期間にわたって争うことを念頭に置かなければなりません。
遺留分を請求したい場合は、事前に弁護士へご相談ください。
弁護士であれば、相続財産の評価や、他の相続人と争いになったときの対処等についてアドバイスできます。
また、そもそも遺言書に疑わしい点がある、確認できる相続財産が不自然に少ないといったご不安がある方も、遠慮なくご相談ください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)



