家督相続とは?現代で適用されるケースや主張された場合の対処法
この記事でわかること
家督相続(かとくそうぞく)とは、簡単にいうと「被相続人の財産を長男がすべて相続する」という旧民法のルールです。
現在は廃止されており、配偶者や長女・二男なども財産を相続できるようになっています。
とはいえ、現在も家督相続の考え方に基づき、相続人の間で遺産の分け方が問題になることも少なくありません。
この記事では、家督相続の概要や遺産相続との違い、長男に全財産を相続させる方法、家督相続を主張されたときの対応などについて解説します。
家督相続とは
家督相続とは、家の代表者(戸主)が亡くなったり隠居したりしたときに、長男が家督相続人となって家の財産や権利をまとめて受け継ぐ制度です。
戦後直後までは、「家は長男が継ぐもの」という考え方がとても強く、配偶者がいたり、長男より年上の長女がいたりしても、家督相続の順位は長男が最優先とされていました。
そのため、長男以外の家族が遺産を相続することは基本的にありませんでした。
長男は家督相続人として財産・権利を相続すると、新しい戸主として家族を扶養する義務を負うことになります。
こうした仕組みによって、家督相続が「家」の承継と維持の役割を果たしていました。
家督相続が開始される事由
家督相続が開始するのは、主に以下の2つのケースです。
- 戸主の死亡による相続
- 生前に発生する相続(隠居、国籍の喪失など)
戸主が死亡していなくても、隠居などにより家を離れた場合は家督相続が開始されます。
これは、被相続人が亡くなるまで相続が発生しない現在の制度との大きな違いです。
長男がいない場合の家督相続人
戸主が死亡した際に長男がいない場合は、その弟が年長順に家督を相続し、男子がいない場合に限り、女子が家督相続人となりました。
※実子や養子がいないときは、戸主が生前に家督相続人を指定し、指定がなければ戸主の父母や親族が選定します。
また、家を存続させるため、婚姻や養子縁組によって他の家から新しい戸主を迎えることもありました。
家督相続と遺産相続の違い
家督相続と現在の遺産相続には、相続権などさまざまな違いがあります。
相続人と相続順位
- 遺産相続では、配偶者は常に相続人となり、子供も性別や年齢を問わず平等に相続人となります。子供がいない場合は父母へ、父母もいない場合は兄弟姉妹に相続権が移ります。
法定相続分
- 遺産相続では、各相続人が相続できる財産の取り分が民法で定められています。
相続放棄
- 家督相続では、家を存続させるため現在のような相続放棄は認められていませんでした。一方、遺産相続では、相続放棄によって財産を受け取らない選択も可能です。
相続が発生するタイミング
- 遺産相続では、被相続人が死亡したときにのみ相続が発生します。
法定相続人について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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家督相続はいつまで続いていた?廃止された理由
家督相続は、明治31年に明治民法で制度的に整備され、その後終戦を経て、昭和22年の民法改正で廃止されました。
廃止の背景には、個人の尊厳と両性の本質的平等の重視が進み、「家」という単位を前提とする家督相続が時代にそぐわなくなったことがあります。
現代でも家督相続が適用されるケース
過去の相続については、発生時期によっては家督相続が適用されるケースもあります。
また、相続財産のなかに登記が行われていない不動産がある場合は要注意です。
何代にも渡って相続登記がされていないケース
以前は相続登記が義務ではなかったため、相続財産の中に、家督相続の時代から相続登記が行われていない不動産がある可能性があります。
昭和22年5月2日までに開始された相続については家督相続が適用されるため、不動産も家督相続人が単独で相続することになります。
遺産分割協議を行う必要はありませんが、登記手続きを行うには、何代も家系を遡って確認し、相続開始から現在の所有者に至るまで順番に手続きをしなければなりません。
複雑な作業になるため、何代にも渡り相続登記が行われず放置されていた不動産がある場合は、弁護士に依頼してサポートを受けるのがおすすめです。
家督相続に近い相続をするケース
家督相続とは異なりますが、現在でも、長男など特定の相続人が単独で遺産を相続できるよう調整するケースがあります。
これは、「事業の継続を目的に、事業用資産や土地を事業承継者だけに取得させたい」「代々受け継がれてきた土地を長男だけに取得させたい」といった理由によるものです。
家督相続のように長男1人に全財産を相続させる方法
家督相続のように、長男1人に全財産を相続させるには
- 遺言書を作成する
- 遺産分割協議を行う
- 家族信託を活用する
という3種類の選択肢があります。
状況によってご家庭に合う選択肢が変わるため、次項で詳しくみていきましょう。
①遺言書を作成する
遺言書を作成し、相続人を指定することで、特定の人に相続財産を集中させることができます。
長男に全財産を相続させたい場合、遺言書には次のように記載します。
- 遺言者●●●●は、全財産を長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
遺言書は法定相続分よりも優先されますが、遺留分に注意しなければなりません。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された、相続財産の最低限の取り分です。
遺言書の内容が遺留分を侵害していると、ほかの相続人から遺留分侵害額請求を受け、金銭の支払いを求められる可能性があります。
せっかく集中させた相続財産が流出するおそれもあるため、事前にほかの相続人の理解を得ておくなどの対策が重要です。
遺言書がある場合の遺留分について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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②遺産分割協議を行う
遺産分割協議とは、相続人全員で話し合い、相続財産の分配方法を決める手続きです。
合意内容は法定相続分よりも優先されるので、相続人全員が「長男がすべての相続財産を受け継ぐこと」に同意すれば、長男が単独で被相続人の財産を相続できます。
ただし、1人でも反対すれば合意は成立しません。反対した相続人には、法定相続分の財産を分配するなど対策が求められます。
遺産分割協議について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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③家族信託を活用する
家族信託では、被相続人が生前に特定の財産について、財産を引き継がせたい相手を「受託者」として財産の管理を任せ、被相続人が「委託者」兼「受益者」となる契約を結びます。
信託契約を結ぶ際は、被相続人が死亡した際の信託財産の承継先を決めることができるため、遺言と同じく、自身が望んだ相手に財産を渡すことができます。
さらに、最初に財産を承継させる人だけでなく、その人の死後に財産を承継する人も指定することが可能です。
ただし、農地を家族信託する場合、基本的に農業委員会の許可が必要といった規制があるため注意しましょう。
家族信託を利用したい場合は、専門的なサポートが必要となるため、弁護士に相談されることをおすすめします。
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家督相続を主張された場合の対処法
現代でも、かつての家督相続のような考え方に基づき、「長男が全財産を相続する」といった主張が行われるケースもあります。
相続人全員が納得していれば問題ありませんが、反対する人がいる場合、まずは遺言書の有無を確認する必要があります。遺言書の有無により、相続争いの解決方法が異なるためです。
遺言書を確認して話し合う
遺言書があれば、その有効性などに争いがない限り、基本的に遺言書の内容に従って相続します。
一方、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分け方を話し合いましょう。
現代の遺産相続では、配偶者や子供にも相続権が認められているため、「なぜ家督相続を主張しているのか」を確認し、全員が納得できる形を探すことが大切です。
例えば、「生前の介護で被相続人に貢献してきたから、財産を多く受け取りたい」といった意見があれば、寄与分として相続財産を上乗せする方法もあります。
介護による寄与分について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺留分侵害額請求を行う
遺言書によって家督相続に近い相続が行われた場合でも、ほかの相続人は遺留分侵害額請求を行うことが可能です。
遺留分侵害額請求とは、遺言書によって最低限の取り分を侵害された相続人が、多く財産を取得した人に対して、侵害額相当の金銭を請求することです。
民法上、遺留分侵害額請求権は兄弟姉妹以外の法定相続人に認められています。
そのため、兄弟姉妹以外の法定相続人であれば、遺留分侵害額請求で不足分を取り戻せる可能性があります。
遺留分侵害額請求をする場合、当事者同士の協議から始め、まとまらなければ家庭裁判所の「遺留分侵害額の請求調停」を利用して解決を図るのが一般的です。
遺留分侵害額の請求調停について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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話し合いでまとまらなければ遺産分割調停を申し立てる
遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。遺産分割調停は、調停委員に仲介してもらいながら話し合いを行う手続きです。
調停がまとまらず不成立になると、自動的に「遺産分割審判」に移行します。
遺産分割審判では、裁判官が相続財産の分配を決定し、審判が確定すると遺産についての帰属が確定する流れです。
家督相続に関して弁護士に相談するメリット
相手との交渉を任せられる
家督相続について相続人同士の話し合いがまとまらない場合、弁護士に相手との交渉を任せることができます。
弁護士であれば、家督相続の制度がすでに廃止されていることを法的な根拠に基づいて説明できるほか、寄与分や遺留分といった制度についてアドバイスも可能です。
相続に関する問題は、当事者同士だけで話し合うと感情的な対立が深まりやすい一方、弁護士が介入することで冷静な話し合いが可能になります。
現在の遺産相続の仕組みが理解できれば、お互い折り合いもつけやすくなるでしょう。
遺留分侵害額請求のサポートをしてもらえる
家督相続に近い形で相続が行われた場合でも、弁護士に相談・依頼すると遺留分侵害額請求のサポートが受けられます。
弁護士には財産調査や証拠収集も任せられるので、法的に正確な金額で請求が可能になります。
相手との交渉も任せられるので、不安やストレスを抱えずに済むのも大きなメリットです。
調停や裁判になった場合も対応してもらえる
相続人同士の話し合いがまとまらず、調停や裁判に進むことになっても、弁護士に対応してもらえます。
相続に関する調停や裁判では、たくさんの書類を揃える必要があり、ひとつでも抜けてしまうと手続きが進まないことがあります。
調停・裁判の必要書類の収集も弁護士に任せられるので、自分で役所に出向いたり、期限に追われて慌てたりする心配がありません。
また、弁護士が調停期日に出席し、調停委員に対して法的な根拠に基づいた主張・立証ができるため、有利に進められる可能性も高まります。
家督相続に関するQ&A
家督相続の有無は、戸籍を調べれば確認できますか?
家督相続が行われたことは戸籍に記載されるので、調べれば確認できます。
ただし、古い戸籍は文字が読みづらい場合が多いため注意が必要です。
また、戦争や災害によって滅失している可能性もあるので、戸籍の収集は専門家に依頼することをおすすめします。
家督相続がある場合、相続関係説明図にはどのように記載すればよいですか?
家督相続があったことを説明しなければならない場合、相続関係説明図には「死亡時期」と「家督相続人である旨」の記載を行いましょう。
相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を図で示した家系図のような書類です。主に、相続登記手続きで戸籍謄本の原本還付を受けたい場合などに用いられます。
戸籍謄本は、相続手続きのさまざまな場面で用いるため、還付を受けると手間や費用を抑えることができます。
家督相続でお困りの際は、相続問題に強い弁護士にご相談ください。
家督相続はすでに廃止された制度ですが、相続登記を行わずに放置している不動産があるような場合は注意が必要です。
また、代々受け継いできた不動産や事業があり、親族が家督相続に近い形での相続を検討している場合、主張が対立してしまうおそれがあります。
弁護士にご相談いただければ、家督相続を主張された場合の対処法に関するアドバイスや、相続登記についてのサポートを行うことができます。
家督相続が廃止されたのは約80年も前のことなので、分かりづらいことが多いでしょう。困ったときは、弁護士法人ALGへお気軽にご相談ください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)








