土地の相続税はいくらかかる?計算方法や利用できる控除・特例など

土地の相続税はいくらかかる?計算方法や利用できる控除・特例など

相続税は、土地を含む相続財産の全体の評価額が基礎控除を超えなければ、課税されることはありません。ただし、相続財産の評価額は自分で計算するため、土地の評価額を間違えると、必要な申告を行えなくなってしまいます。

この記事では、土地を相続したときの相続税について、税額の計算方法や土地の評価額の計算方法、利用できる控除と特例、申告手続き等について解説します。

土地を相続したら相続税がかかる?

土地を相続すると、相続税がかかるおそれがあります。相続税とは、亡くなった方が遺した財産を受け取ったときにかかる税金です。

ただし、土地を相続しても、必ずしも相続税がかかるとは限りません。この点について、次項で解説します。

土地がいくらまでなら相続税はかからない?

相続財産の評価額が基礎控除額の範囲内であれば、土地を受け取った者に相続税がかかることはありません。
基礎控除額は、以下のような式で計算します。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

ここで、以下のような事例について考えます。

  • 法定相続人:被相続人の配偶者と子3人(合計4人)
  • 相続財産:2500万円の土地、1000万円の預貯金、1500万円の有価証券
  • 基礎控除額:3000万円+(600万円×4)=5400万円

土地を含めても相続財産は5000万円であり、基礎控除額5400万円以下のため、相続税は発生しません。

相続税の計算方法

相続税の計算は、主に次のような流れで行います。

  1. 遺産の総額を計算する
  2. 相続税の税額を計算する
  3. 実際に取得した財産割合に応じて相続税額を計算する

相続税の計算方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

①遺産の総額を計算する

遺産の総額は、相続財産に含まれる土地や建物といった不動産、現金、預貯金、有価証券、自動車等の評価額から、借金や葬儀費用などを差し引いて計算します
なお、死亡保険金や死亡退職金といったみなし相続財産などがあれば、相続財産に加えて計算します。

②相続税の税額を計算する

相続税の税額を計算するときには、相続財産の評価額から基礎控除額を差し引いて、法定相続人に法定相続分で分配した金額に対する相続税額を計算します。このとき、実際の相続分を用いないのは、相続税額が相続人による分配で左右されてしまうのは望ましくないからです。

相続税額は、基本的には相続財産の金額が高いほど高額になります。

③実際に取得した財産割合に応じて相続税額を計算する

算出した相続税の総額を、実際に相続した金額に応じて負担します。例えば、法定相続分が1/2であっても、実際の相続分が1/3であれば、総額の1/3を納税しなければなりません。

このとき、相続人が被相続人の配偶者や子、両親等ではなかった場合には、相続税が2割加算されます。法定相続人が被相続人の弟1人だけであるケースでは、弟が相続財産をすべて相続して、算出した相続税の総額に2割上乗せした金額を納税しなければなりません。

土地の相続税評価額の計算方法

土地の相続税は、その土地が実際に売買される金額ではなく、相続税評価額に対して課税されます。相続税評価額とは、土地に相続税などを課税するときに用いられる金額であり、「路線価方式」または「倍率方式」で計算します。

路線価方式とは、道路ごとに定められた相続税路線価によって、その道路に面している土地の評価額を算出する方式です。
倍率方式とは、路線価が定められていない場合に、市区町村の評価倍率によって、その市区町村にある土地の評価額を算出する方式です。
いずれの方式を用いても、実際に売買される金額よりは安く算出されるケースが多くなっています。

土地に相続税がかかるときの評価額について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

路線価方式

路線価方式とは、路線価を基準に土地の相続税評価額を算出する方式です。路線価は、主要な道路について定められており、1㎡あたりの金額が国税庁のサイトに掲載されています。
この方式による評価額は、次のような式によって算出します。

相続税評価額=路線価×土地面積×補正率

この式で、補正率とは、使いにくい土地の評価額を抑えるための数字です。いびつな土地や細長い土地等は、そのような事情のない土地よりも価値が低いので、補正率によって修正します。
ここで、以下のような事例について考えます。

  • 路線価:25万円
  • 土地面積:200㎡
  • 補正率:0.9

相続税評価額=25万円×200×0.9=4500万円

よって、この土地の相続税評価額は4500万円となります。

倍率方式

倍率方式とは、路線価が定められていない場合に、土地の相続税評価額を算出する方式です。計算で用いる評価倍率は、国税庁が地域ごとに定めています。
この方式による評価額は、次のような式によって算出します。

相続税評価額=土地の固定資産税評価額×評価倍率

ここで、以下のような事例について考えます。

  • 土地の固定資産税評価額:3000万円
  • 評価倍率:1.2

相続税評価額=3000万円×1.2=3600万円

よって、この土地の相続税評価額は3600万円となります。

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土地の相続税対策に利用できる控除と特例

基礎控除を差し引いても相続税が発生してしまう場合であっても、控除や特例を適用することによって、税額を軽減することができます
主な控除と特例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 配偶者の税額軽減
  • 小規模宅地等の特例
  • 未成年者控除
  • 相次相続控除
  • 贈与税額控除
  • 障害者控除

相続税の控除や特例について、次項より解説します。

なお、相続税の税額控除について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

配偶者の税額軽減

被相続人の配偶者は、相続税の配偶者控除によって税額が軽減されます。具体的に、次のような金額までは相続税が免除されます。

  • 1億6000万円
  • 配偶者の法定相続分

例えば、相続財産が10億円で、配偶者の法定相続分が1/2であれば、5億円を相続しても相続税はかかりません。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅が建っている土地等の評価額を最大で80%減額できる制度です。ただし、制度が適用されるのは、被相続人の配偶者か同居していた親族等に限定されます。

評価額を減額できる土地の面積は330㎡までなので、それより大きな土地については、330㎡までの部分を減額し、残る部分は元の金額で評価します。
また、減額されるのは土地の評価額だけなので、建物の評価額は減額されません。

未成年者控除

相続税の未成年者控除とは、相続が開始したときに未成年者であった相続人等について、相続税の金額から控除できる制度です。控除できるのは、18歳になるまでの1年ごとに10万円です。
年齢は端数を切り捨てるので、17歳11ヶ月でも1年分を控除できます。

相次相続控除

相次相続控除とは、一時相続から10年以内に二次相続が発生した場合に、二次相続の相続税から一時相続の相続税を差し引いてもらえる制度です。

短期間で2回も相続税を納めると負担が大きくなるため、負担を軽減するために控除が設けられています。

贈与税額控除

贈与税額控除とは、生前贈与に対してかけられた贈与税について、相続税から差し引いて二重課税を防止する制度です。
被相続人が行った生前贈与は、相続から3年以内のものについては相続財産に加えられて、相続税の課税対象となります。また、3年を超えて7年以内のものについては、100万円を差し引いた金額が相続財産に加えられます。

そのため、これらの期間の生前贈与にかけられた贈与税の金額について、相続税の金額から差し引く制度が設けられたのです。

障害者控除

相続税の障害者控除とは、相続人が障害者である場合に、相続税額を抑えるための制度です。控除できる金額は、障害の重さによって異なり、85歳になるまでの1年につき10万円または20万円です。

土地の相続税を申告する手続き

相続税は、被相続人が亡くなったことを知ってから10ヶ月以内に申告して納税します。申告するのは相続財産を相続する等した者であり、被相続人が亡くなったときの住所地を管轄する税務署へ申告しなければなりません。

相続税の申告は、専門家に依頼することができます。弁護士は、税理士登録していれば相続税についても扱うことができます。

相続税の申告に期限はある?

相続税は、被相続人が亡くなったことを知ってから10ヶ月以内に申告して納税しなければなりません。納税の期限を1日でも過ぎてしまうと、ペナルティとして無申告加算税や延滞税などがかかってしまいます。

遺言書が発見された場合や、相続人の数が変わった場合等では、最大で2ヶ月の延納が認められることがあります。しかし、延納の要件は厳しく、認められても利子税がかかってしまいます。

土地の相続税が払えないとどうなる?

相続税の支払いは、基本的に現金の一括払いとされています。高額な土地の所有者が亡くなると、小規模宅地等の特例を適用しても、相続財産が高額になってしまい、相続税が払えなくなってしまうおそれがあります。

相続税を支払えないと、最終的には土地等の財産を差し押さえられてしまいます。そのため、主に以下のような方法で対処することが考えられます。

  • 延納制度を利用する
  • 物納制度を利用する
  • 土地を売却する
  • 土地を担保にしてお金を借りる

ただし、延納や物納は簡単には認められません。また、相続税の期限までに土地を売却しようとすると、買い叩かれるおそれがあります。お金を借りると金利の負担が生じます。
そのため、被相続人が生きているうちに、相続税を支払うための預貯金等を用意しておくことが望ましいでしょう。

【まとめ】土地の相続税でご不明な点は弁護士にご相談ください

土地の相続では、評価額が高額になると相続税がかかるおそれがあります。しかし、土地の評価額は売買価格よりも安くなることが多く、小規模宅地等の特例を適用すれば評価額を抑えることも可能です。

評価額や制度の詳細について把握し、それでも相続税がかかる見込みであれば、相応の預貯金等を遺す必要があります。
土地の相続税について不安のある方は、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、土地の相続税について詳しくアドバイスすることができます。また、相続税をなるべく抑えるための対策についても相談できます。

相続人になるべく迷惑をかけず、土地をスムーズに相続するために、ぜひ弁護士の力をご活用ください。

 

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弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名を擁し()、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。