認知症の人が書いた遺言書は有効?判断基準や対処法などを解説
遺言書を作成した被相続人が認知症であった場合には、不満のある相続人等から、遺言書は無効だと主張されるおそれがあります。
被相続人が認知症であったとしても、必ずしも遺言書が無効となってしまうわけではありません。
この記事では、認知症の者が書いた遺言書が有効であるかについて、遺言能力の判断基準や遺言書を作成するときのポイント、遺言書が無効になった場合の対処法等について解説します。
目次
認知症の人が書いた遺言書は有効か?
認知症によって遺言能力を失っていれば、遺言書は無効となります。しかし、認知症だからといって、必ずしも遺言能力が失われるわけではありません。
作成時に、被相続人に遺言能力があったと認められれば、遺言書は有効となります。
遺言能力とは、自分が作成した遺言書の内容を理解して、その遺言書によって生じる結果について理解する能力です。
認知症が重度であり、遺言書の内容や生じる結果を理解できないのであれば、作成した遺言書は無効となります。
相続人や被相続人が認知症である場合に生じる問題や対策について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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遺言能力の判断基準
遺言能力の有無は、主に以下のような点を基準として判断されます。
- 遺言書の内容の複雑性
- 医療記録や介護記録
- その他の考慮される事情
これらの判断基準について、次項より解説します。
遺言書の内容の複雑性
遺言書の内容が単純なものであれば、軽度の認知症であっても有効に作成できます。
そのため、「長男に全財産を相続させる」等の単純な遺言書は、有効になる可能性が高いです。
一方で、複数の相続人の取り分を指定して、第三者への遺贈を行い、特定の財産は売却して金銭に換える等、複雑で遺言書の効果を理解しにくい内容であれば、無効となる確率が高まります。
医療記録や介護記録
被相続人の認知症の程度の判断については、医師の診断書や医療記録、介護記録などの記載が考慮されます。
特に、遺言書を作成する直前の様子について、意思疎通や金銭管理などができていたかを確認できれば、遺言能力の有無を判断できる可能性があります。
長谷川式認知症スケールの点数が一時的に20点以上となっていた場合や、安定的に15点以上であった場合等では、遺言書が有効と認められる可能性が高まります。
その他の考慮される事情
その他にも、遺言書を作成した動機は合理的か、受遺者の選び方は妥当か、遺言書に記載されている内容が客観的な事実と合っているか、遺言書を作成したときやその前後に意思疎通ができていたか、本人の筆跡に乱れがないか等を考慮して判断されます。
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認知症の人が遺言書を作成する際のポイント
認知症の人が遺言書を作成するときには、以下のようなポイントがあります。
- 意思能力があるうちに遺言書を作成する
- 公正証書遺言にする
- 調停や訴訟に備えて証拠を残しておく
これらのポイントについて、次項より解説します。
意思能力があるうちに遺言書を作成する
遺言書は、意思能力があるうちに作成しましょう。
認知症が進んで、物事がよく分からない状態になってからでは、遺言書を作成しても無効となるリスクが高くなってしまいます。
早い時点で遺言書を作成する場合には、自身の生活や介護等でかかる費用も考慮して、相続財産の一部を消費した場合の扱いを含めて作成する必要があります。
また、相続対策として生命保険の活用を検討する等、早い段階でできる準備を行うことが望ましいでしょう。
遺言書の書き方について最初から知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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公正証書遺言にする
認知症の症状がある場合には、公正証書遺言を作成しましょう。公正証書遺言とは、公証人によって作成される遺言書です。
公正証書遺言を作成するときには、公証人とのやり取りが必要であり、2人以上の証人が立ち会います。
そのため、遺言書を作成したときに正常な受け答えができていた等と被相続人の様子を証言してもらうことができれば、遺言書が有効となる可能性は高まります。
ただし、公正証書遺言であっても、遺言能力がない者の遺言書を有効にするような効力はありません。
過去の裁判例では、認知症と診断された被相続人が作成していた公正証書遺言について、無効とされたケースもあります。
調停や訴訟に備えて証拠を残しておく
遺言書に納得できない相続人がいると、認知症を理由として遺言書の無効を主張し、トラブルになるおそれがあります。
遺言書が有効だと考えるのであれば、遺言書無効調停や遺言無効確認訴訟で争うことになるため、有効である証拠が必要となります。
そのため、遺言書を作成する前に医師の診断書を出してもらうことや、作成時に動画を撮影しておくこと等、法的な争いを念頭に置いて対策しましょう。
認知症の人が作成した遺言書が無効になった場合の対処法
認知症であった被相続人が、自分の名前や住所、生年月日、子の名前等について答えられない場合には、遺言能力が否定されるリスクが高いでしょう。
被相続人が作成した遺言書が無効となってしまった場合、遺産分割協議で主に以下のような主張をすると相続分を増やすことができる可能性があります。
- 遺留分侵害額請求をする
- 特別受益の持ち戻しを主張する
- 寄与分を主張する
これらの対処法について、次項より解説します。
遺留分侵害額請求をする
被相続人が認知症になった後に作成した遺言書が無効となった結果として、古い遺言書の効力が復活し、相続財産をほとんど受け取れなくなってしまった場合には、遺留分侵害額請求を行いましょう。
遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分に相当する金銭を請求することです。遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、相続財産の最低限の取り分です。
相続人が被相続人の子2人であれば、各相続人の法定相続分は1/2であり、遺留分は1/4となります。
全財産を子の一方に相続させるという遺言書があったとしても、請求すれば、1/4に相当する金銭等を取り戻すことが可能です。
なお、遺留分を請求する義務はないので、請求しなければ遺言書のとおりに相続が行われます。
特別受益の持ち戻しを主張する
認知症により遺言書が無効となったら、遺産分割協議において特別受益の持ち戻しを主張して、相続財産の取り分を増やせる可能性があります。
特別受益の持ち戻しとは、特定の相続人が受けていた生前贈与等が特別受益と認められる場合には、相続財産に加算して、具体的な相続分を計算することです。
なお、被相続人の生前の意思により、特別受益の持ち戻しが免除されることもあります。
この意思表示は口頭でも可能であるものの、トラブルの原因となるため書面に残すべきでしょう。
寄与分を主張する
認知症により遺言書が無効となっても、遺産分割協議において寄与分を主張することにより、相続財産の取り分を増やせる可能性があります。
寄与分とは、被相続人の介護等を行うことにより、相続財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人について、相続財産の取り分を上乗せするものです。
寄与分を認めてもらえれば、相続財産の取り分を数百万円程度上乗せできる可能性があります。
ただし、寄与分を認めてもらうためには、一般的な介護等ではなく、特別な貢献と認められるような介護等を行う必要があるのでハードルは高いです。
また、遺産分割協議で他の相続人が認めてくれないと、遺産分割調停や遺産分割審判で主張する必要があります。
認知症の方の遺言書の効力や作成については相続に詳しい弁護士にご相談ください。
認知症になり、遺言書を作成しようと考えている場合には、自身の死後にトラブルが発生することを防がなければなりません。
そのため、なるべく無効にならないように、医師や証人の協力が必要となります。
有効な遺言書を作成したい方は、弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、過去の事例を参考にしながら、なるべく有効だと認められるように遺言書を作成する方法についてアドバイスできます。
また、相続税をなるべく抑えるための工夫や、自身が意思能力を失った後の財産管理なども含めて依頼したい場合には、任意後見人への就任等についても併せてご相談ください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)





