保護観察と前科の関係


犯罪者を刑務所に収監せず、社会の中で更生させる制度として、「保護観察」という制度があります。
保護観察処分を受けている期間は、制約を受けるとはいえ身柄を拘束されないために、早期に就職する等して更生しやすくなると期待されています。
ここでは、保護観察について、前科との関係を交えながら解説します。
目次
保護観察は前科になるのか
未成年者が保護観察処分を受けた場合には、前科はつきません。
また、少年院を仮退院したときにも保護観察がつけられますが、これについても前科がつくものではありません。
なお、どちらの場合にも前歴はつくこととなります。
一方、成人している者に保護観察がつくのは、保護観察付執行猶予を受けたときや仮釈放されたときです。
これらの場合には、有罪判決の確定時に前科がつきますが、保護観察がついたことにより新たな前科がつくわけではありません。
保護観察とは
保護観察とは、犯罪者に、社会の中で更生する機会を与えるための制度です。
犯罪者は、刑務所に収監されると自由を奪われますが、保護観察処分を受けた状態であれば自宅で生活することが可能です。
保護観察処分を受けると、担当の保護観察官と保護司が選任されて、保護観察所の指導や監督を受けながら更生に向けて活動することになります。
施設内ではなく施設外、つまり、社会のなかで処遇を行うことが大きな特徴としてあげられます。
保護観察を受けるのはどんな時?
保護観察を受ける犯罪者は、大きく未成年者と成人の者に分けられます。2者のちがいは、「保護観察を受けるまでの経緯」です。
未成年者の場合には、家庭裁判所で少年審判により保護観察処分が下されます。
また、少年院の仮退院時には、必ず保護観察処分を受けます。
成人の場合には、懲役刑や禁固刑を受けた受刑者が仮釈放されたときには、例外なく保護観察処分を受けます。
また、保護観察付執行猶予判決を受けたときに適用されます。
執行猶予判決の中でも、薬物事件の判決に多い一部執行猶予判決については、保護観察付執行猶予であるケースがほとんどであり、仮釈放のケースよりも長期間に及ぶ保護観察を行うことによって再犯を防止する効果が期待されています。
未成年の場合
未成年者については、少年審判が行われて保護観察処分を受けたとき、または少年院を仮退院したときに適用されます。
なお、保護観察処分にするか少年院送致するかが判断できない場合には、様子を見るために試験観察処分を受ける場合もあります。
成人の場合
成人している者には、懲役刑や禁固刑を受けた受刑者が仮釈放された時、または保護観察付執行猶予判決を受けた時に適用されます。
仮釈放の場合には、全員が保護観察処分を受けますが、保護観察付執行猶予の執行猶予の場合に必ず行われるものではありません。
保護観察中の生活のルール
保護観察中は、基本的に普通の生活を送ることが可能です。
しかし、完全に自由であるわけではなく、守らなければならない事項がある等、一定の制約が設けられます。
守らなければならない事項としては、全員が守らなければならないルール(一般遵守事項)と個別に守るように言われるルール(特別遵守事項)があります。
一般遵守事項としては、以下のようなものが定められています。
- 再犯・再非行をしないように、健全な生活態度を保持すること
- 保護観察官及び保護司による指導監督を誠実に受けること
- 住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長にその届出をすること
- 3で届け出た住居に居住すること
- 転居や7日以上の旅行をするときには、事前に保護観察所の長の許可を受けること
また、特別遵守事項は、各々の事情によって定められます。
例えば、事件を起こしたときの共犯者等と縁を切ることや、夜間に外出しないこと等です。
保護観察中のルールを破ったら前科がつくのか
保護観察中のルールを破ると、少年院や刑務所に収容される場合がありますが、それによって前科がつくことは基本的にありません。
ただし、保護観察を取りやめるほどの非行は、それ自体が犯罪に該当しているケースもあります。
そのため、その行為によって有罪判決を受け、確定すれば前科がついてしまいます。
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保護観察処分は解除できる?
保護観察処分は、原則として定められた期限まで継続されます。
未成年者のうち、18歳未満であれば20歳になる前日まで、18歳以上であれば家庭裁判所の審判から2年間が期限です。
また、成人している者については、保護観察付執行猶予であれば執行猶予期間が終わるまで、仮釈放であれば刑期が終わるまでが期限です。
しかし、未成年者であれば、保護観察中のルールをしっかりと守れば、定められた期限よりも早く保護観察処分が終わることがあります。
また、成人であっても、保護観察付執行猶予については、面接回数が減らされる等、負担が軽くなる措置が取られることがあります。
保護観察中に再犯したら前科がつく?
少年審判によって保護観察処分を受けた未成年者が保護観察中に再犯した場合、家庭裁判所の判断は、これまでの態度や再犯の内容等によって左右されます。
しかし、保護観察処分によって未成年者を更生させることができなかったことから、厳しい目で見られることは避けられないでしょう。
その結果、少年院送致等の処分を受けるおそれは否定できません。
また、成人している者が保護観察中に再犯した場合、刑の執行を猶予してもらうことはできません。そのため、懲役刑や禁固刑であれば、実刑判決を受けることになります。
前科がある人に保護観察処分が下されることはあるのか
罪を犯して執行猶予付きの判決を受け、その執行猶予期間中にもう一度罪を犯してしまった場合、1年以下の懲役刑や禁固刑で特に酌量するべき事情があれば、再度の執行猶予を受けることができるケースがあります。
そのときは、必ず保護観察付執行猶予となります。
また、懲役刑や禁固刑を受けて、仮釈放されるときには保護観察がつきます。
しかし、仮釈放を受けるためには、改善更生の意欲があることや再犯のおそれがないこと等、厳しい条件が定められています。
また、受刑者が仮釈放されるまでに服役する期間は延びる傾向にあるため、容易には仮釈放されないでしょう。
お困りの方は弁護士にご相談ください
自身の子供が少年院送致されるおそれがあるときや、家族が実刑判決を受けて刑務所に収監されるおそれがあるときには、弁護士にご相談ください。
少年院や刑務所に入れられてしまうと、社会から切り離された生活を送ることになってしまいます。
不自由な生活によって苦痛を受けるだけでなく、学校を退学させられたり、会社から解雇されたりするおそれがあります。
今後の人生についても、履歴書に空白期間が生じることによって、就職活動等に影響が出る懸念もあります。
弁護士は、なるべく社会の中で更生できるように活動しますので、ぜひご相談ください。