微罪処分とは?要件や対象事件・流れ・獲得するためにできること
微罪処分とは、一定の軽微な犯罪について、事件を検察に引き継がず警察だけで終了させる処分です。
微罪処分になると、「早期に釈放される」「前科が付かない」などのメリットを得ることができます。
ただし、微罪処分となるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
この記事では、微罪処分の要件や手続きの流れ、メリットとデメリットなどについて、詳しく解説していきます。
目次
微罪処分とは?
微罪処分とは、一定の軽微な犯罪に限り、事件を検察に送致(送検)せず、警察だけで事件を終了できる手続きをいいます。
簡単にいうと、「検察に引き継がれることなく、警察からの注意・指導を受けて事件が終了する」ということです。
刑事訴訟法第246条では、司法警察員が捜査を行った事件については、原則としてすべて検察官に送致しなければならないと定められています。
一方、同条但し書きでは、検察官があらかじめ指定した軽微な事件については、送致しなくてもよいと認められています。これがいわゆる「微罪処分」です。
微罪処分とするかどうかは、事案の内容や被疑者の状況などを踏まえて、担当警察官が判断します。
微罪処分となる要件
微罪処分となる要件については、法律上、明確な基準が定められているわけではありません。
しかし、実務上では、一般的に次のような事情があれば微罪処分となる可能性があるとされています。
- 初犯である
- 監督者がいる
- 犯罪が軽微である
- 示談や被害弁償が済んでいる
- 被害者が処罰を望んでいない
これらの事情が総合的に考慮され、警察官の裁量で微罪処分とするかどうかが決定します。
初犯である
微罪処分と判断されるためには、初犯であることが前提条件といわれています。
法律の条文には明記されていませんが、前科や前歴があると、「反省しておらず再犯のおそれがある」と判断されやすいためです。
初犯であることは、刑事処分の判断で被疑者・被告人にとって有利な事情として扱われます。
一方、万引きを繰り返しているようなケースでは、犯罪自体は軽微でも、常習性が認められるため、微罪処分となる可能性は低いでしょう。
監督者がいる
監督者(身元引受人)がいる場合、再犯防止が期待できるとして、微罪処分になりやすい傾向があります。
身元引受人になれるのは、家族や上司など、日常的に本人を監督・指導できる立場にある人です。場合によっては、その他の近親者でも認められることがあります。
身元引受人は、釈放の際に警察署などから被疑者の身柄を引き取り、再犯を起こさないように監督・指導する役割を担います。
犯罪が軽微である
犯罪の内容が比較的軽微であることは、微罪処分の判断において重要です。
軽微かどうかは、罪名だけでなく、犯行態様や被害程度などを踏まえて総合的に判断されます。
例えば、「被害額が2万円以下」「被害者の怪我の治療期間が短い」などの場合は、軽微な犯罪として扱われる可能性が高く、微罪処分となりやすい傾向にあります。
反対に、性犯罪や殺人罪といった明らかに重大な犯罪は、微罪処分の対象にはなりません。
示談や被害弁償が済んでいる
微罪処分と判断されるためには、「被害者と示談が済んでいる」「被害弁償が行われている」ことも重要です。
これらの事情は、反省や責任の意思を示すものであり、被疑者・被告人にとって有利な事情として扱われます。
被害弁償は、万引きや窃盗であれば「商品の代金」、暴行や傷害であれば「治療費」などが考えられます。
被害者のいる刑事事件では、示談交渉や被害弁償を優先的に行うことが、微罪処分を獲得するうえで重要なポイントです。
被害者が処罰を望んでいない
示談が成立するなど、被害者が処罰を望んでいない場合は、微罪処分となる可能性が高いです。
被害者の処罰感情は、刑事処分の判断に大きく影響するため、厳しい処罰を求めるほど処分も重くなる可能性があります。
被害者の感情が量刑判断の決定打になるわけではありませんが、不利な評価につながるおそれがあるため注意が必要です。
また、被害届の取り下げを条件に示談できれば、処罰感情が和らいだと判断され、微罪処分となる可能性が高まるでしょう。
被害届の取り下げなどについては、以下のページをご覧ください。
微罪処分の対象となる事件は?
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微罪処分の手続きの流れ
微罪処分の手続きの流れは、主に以下のとおりです。
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① 警察署で取り調べを受ける
警察官から、犯罪の事実や動機などを詳しく聞かれます。
逮捕が伴う場合は身柄事件、伴わない場合は在宅事件として手続きが進み、事情聴取の内容などを踏まえ、警察官が微罪処分の判断を下します。 -
② 身元引受人に身元引受書を書いてもらう
身元引受人が呼び出され、身元引受書の作成を行うと、身元が保証されます。 -
③ 釈放される
手続きが終了し、その日のうちに釈放されます。
逮捕されても”釈放”となれば前科は付きませんが、「前歴」は残ります。
前歴とは、過去に捜査機関の捜査対象になった履歴のことです。
内部記録として残すのが主な目的なので、前科のような「職業制限」や「資格の取得制限」といったデメリットは基本的にありません。
また、前科と比べて、日常生活への影響も比較的少なく済むのが特徴です。
微罪処分で指紋採取されることはある?
微罪処分であっても、指紋採取や顔写真の撮影は行われるのが通常です。
採取された情報は、「前歴」として捜査機関のデータベースに記録され、将来の捜査などで資料として利用される可能性があります。
指紋が登録された場合、一部の国への入国審査で影響が出る可能性があります。
例えば、アメリカは審査が厳しいため、過去に微罪処分を受けて指紋を取られていれば、事情聴取されるおそれがあるでしょう。
ただし、一般的に入国審査で問題となるのは「前科」や「重大犯罪歴」なので、過度な心配は不要です。
また、前歴が日本での日常生活に悪影響を及ぼすこともほとんどありません。
微罪処分後に警察からの呼び出しはある?
微罪処分が確定した後に、再度警察から呼び出されることは原則ありません。
ただし、「取り調べで嘘をついた」「余罪が新たに発覚した」「被害者の容態が急変した」などの場合は、例外的に呼び出しを受ける可能性があります。
呼び出しを受けても、直ちに不利益が生じる可能性は低いですが、不安な場合はあらかじめ警察に理由を確認しておくとよいでしょう。
理由によっては、弁護士に弁護を依頼するのも得策です。
警察から呼び出しが来た際の対処法などについては、以下のページをご覧ください。
警察から呼び出しを受けたら?
微罪処分となった場合のメリット
微罪処分となった場合に得られるメリットは、以下のような点が挙げられます。
- 前科が付かない
- 早期に釈放される可能性が高い
- 刑罰を受けずに済む
前科が付かない
微罪処分の場合は、起訴される前に手続きが終了するため、前科が付くことはありません。
前科は、有罪判決が確定した時点で付くものなので、微罪処分では「前歴」が残るに留まります。
前科が付くと、就職や社会生活に影響を及ぼすなど様々なデメリットがあります。
就職活動や資格取得、場合によっては海外渡航などでも不利益が生じるおそれがあるでしょう。不利益を最小限に抑えるためには、前科を回避することが大切です。
前科と前歴の違いや生活への影響については、以下のページをご覧ください。
前科とは?
早期に釈放される可能性が高い
微罪処分となった場合、警察で手続きが終了するため、早期の釈放が期待できます。
逮捕されると、検察官が起訴・不起訴の判断を下すまで、最長で23日間に渡る身柄拘束を受ける可能性があります。
身柄拘束が長期に渡れば、仕事や学校に行けず、社会生活に大きな支障を来すおそれがあるでしょう。
微罪処分となれば、事件が検察に引き継がれないため、身柄拘束を受けている場合でも拘束期間は1~2日で済む可能性があります。
社会生活に大きなダメージを与えず、元の生活に戻りやすくなるでしょう。
刑罰を受けずに済む
微罪処分は、検察官に送致(送検)されずに警察で手続きが終了するため、刑罰を受けずに済みます。
刑罰が科されるのは、検察官によって起訴され、裁判官が有罪判決を下した場合です。
また、公開の刑事裁判ではなく、書面審理によって罰金刑が科される「略式手続」も同じです。
微罪処分では刑事裁判が開かれないため、罰金刑や拘禁刑などの刑罰が科されることはなく、警察官による注意や指導に留まります。
微罪処分のデメリットと注意点
微罪処分のデメリットと注意点には、主に以下のような点が挙げられます。
- 前歴は消えない
- 身元引受人が必要
- 民事責任が残る
前歴は消えない
微罪処分となり、有罪判決を受けずに済んでも、警察に検挙された記録である「前歴」は残り続けます。
一度付いた前歴は、捜査機関のデータベースに記録が残り続け、一生消えることはありません。
「微罪処分だから何も問題ない」というわけではないため注意が必要です。
また、再度同じ種類の事件を起こした場合、つまり再犯時には、前歴を理由に不利に扱われる可能性もあります。
ただし、前歴の情報はプライバシーに関わるため、捜査機関のデータベースのみに記録され、一般公開されることはありません。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
前歴とは?
身元引受人が必要
微罪処分にしてもらうには、監督してくれる身元引受人の存在が必要です。
身元引受人は、同居している家族(配偶者など)になるのが一般的ですが、弁護士がなることもできます。
警察官が「監督・指導できる能力がある」と判断すれば、友人や職場関係者でも身元引受人になることが可能です。
ただし、身元引受人になった人には事件の経緯や内容を知られることになります。
どうしても身内に知られたくない場合は、弁護士に依頼するのがよいでしょう。
民事責任が残る
微罪処分となった場合、刑事責任は問われませんが、民事責任は残ります。
被害者のいる刑事事件では、刑事責任とは別に、民事上の損害賠償責任を負うのが原則です。
微罪処分で手続きが終了するのは、あくまで刑事責任についてであり、被害者に対する損害賠償義務が消えるわけではありません。
そのため、被害者からは、不法行為に基づく損害賠償請求として被害弁償や賠償金を請求される可能性がある点に注意が必要です。
微罪処分となるためにできること
弁護士に依頼する
微罪処分を目指すには、弁護士に依頼し、適切かつ円滑な弁護活動を行うことが重要です。
弁護士であれば、逮捕後でも速やかに面会(接見)ができ、早い段階で弁護方針を構築できます。
逮捕の必要性が低い場合は、捜査機関に対して意見書を提出するなどして、早期釈放に向けた働きかけを行うことも可能です。
被害者のいる刑事事件では、示談交渉を弁護士に一任できる点も大きなメリットです。弁護士は、被害者の心情に配慮しながら示談交渉を進められるため、円滑に解決できる可能性があります。
被害者と示談成立できれば、被疑者にとって有利な事情として扱われ、微罪処分となる可能性が高まるでしょう。
特に、刑事事件に精通した弁護士であれば、豊富な知識と経験を兼ね備えているため、より充実した法的サポートを受けることができます。
示談交渉や被害弁償を行う
被害者がいる刑事事件では、示談交渉や被害弁償を優先的に行うことが、微罪処分を獲得するための重要なポイントです。
示談成立や被害弁償が済んでいれば、被疑者にとってプラスの評価につながる可能性があります。
例えば、万引きをした場合は、盗んだ商品を買い取るのが望ましいです。
食い逃げをした場合も、商品の代金はしっかり支払いましょう。
お金を払っても罪を犯した事実が消えるわけではありませんが、微罪処分を受けられる可能性は高まります。
ただし、被害者との示談交渉は難航するケースが多いため、円滑かつ適切に進めたい場合は、専門家の力を借りるのが有効です。
示談成立までの流れやタイミングなどについては、以下のページをご覧ください。
反省の意を示す
反省の意を示すことは、微罪処分の判断において重要な要素の一つです。
警察が微罪処分を判断する際は、犯行の軽微性や被害弁償の有無などが総合的に考慮されますが、その一要素として、反省の有無や対応の誠実さも確認されます。
単に「反省しています」「もうしません」と述べるだけでは、評価は限定的です。
「事実関係を認めている」「取り調べや呼び出しに協力的である」など、具体的な行動を伴うことで、微罪処分となる可能性が高まります。
ただし、常習性が認められる場合や、被害程度が大きい場合は、反省の意を示しても「重大事件」と判断され、微罪処分とならない可能性があります。
微罪処分でよくある質問
万引きは微罪処分になりますか?
万引きは、微罪処分の対象になり得ます。
ただし、盗んだ商品の金額が高くなく、前科・前歴がない初犯であることが条件です。
また、被害店舗に謝罪して被害弁償を行っている場合や、反省の姿勢がみられる場合も、微罪処分となる可能性が高いでしょう。
微罪処分とならなくても、被疑者・被告人にとっては有利な事情になるため、不起訴処分となる可能性があります。
一方、万引きのなかでも「被害額が高額である」「悪質性がある(転売目的)」などの場合は、微罪処分を獲得するのは難しいでしょう。
微罪処分と厳重注意の違いはなんですか?
微罪処分と厳重注意は、いずれも軽微な犯罪について警察段階で行われる対応ですが、性質が異なります。
微罪処分は「手続上の処分」であるのに対し、厳重注意は「具体的な措置」といえます。
つまり、微罪処分は、警察が事件を検察に送致せずに終了させる”手続き”であり、厳重注意は、その際に行われる被疑者への”訓戒・注意行為”です。
実務上は、「微罪処分の判断がなされた後に、警察官から厳重注意を受ける」ことになります。
2回目の微罪処分を受けることはできますか?
過去に微罪処分を受けたことがある場合、再び微罪処分を獲得するのは難しいのが実情です。
再犯時は、過去の記録(前歴)が参照され、警察の判断で不利に働く可能性があるためです。
そのため、「基本的に微罪処分を受けられるのは1回のみ」と考えておきましょう。
ただし、微罪処分を受けたのが何十年も前といったケースでは、2回目の微罪処分を受けられる可能性も考えられます。
微罪処分になると会社や学校に連絡されてバレることはありますか?
微罪処分となった場合、警察や検察から会社・学校に連絡がいくことは原則としてありません。
微罪処分は、起訴する必要のない軽微な事件に対して下される処分であり、外部に通知する制度や義務はないためです。
ただし、逮捕時に連絡先として勤務先や学校を伝えている場合や、事件の内容が業務や校内活動に関係している場合は、間接的に知られる可能性があります。
また、軽微な事件でも、報道やSNS、気付いた周囲が不特定多数に拡散することで、事件が知られるケースもあります。
微罪処分となれば、周囲に知られずに済む=「完全にバレない」というわけではないため、注意が必要です。
微罪処分を受けられない場合はどうなるのでしょうか?
検挙されて微罪処分を受けられなかった場合、事件が検察官に送致されることになります。送致後は再度取り調べを受け、検察官が起訴・不起訴の決定を下します。
ここで不起訴処分となれば、刑事裁判は開かれず前科も付きません。
一方、起訴されると極めて高い確率で有罪判決を受け、前科が付くため注意が必要です。
なお、刑罰が100万円以下の罰金または科料となるケースでは、被疑者が同意すれば略式起訴となる場合もあります。
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突発的な事情により犯罪行為をしてしまっても、すぐに諦める必要はありません。
警察から微罪処分と判断されれば、社会生活への影響を最低限に抑えることができます。
ただし、刑事事件の手続きは想像以上に早いスピードで進んでいくため、微罪処分となるためには、刑事事件に強い弁護士のサポートが不可欠です。
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