前科がつくとどうなる?前科をつけたくない場合の対処法とは
ニュースやドラマなどで、「前科」という言葉を見聞きしたことがある方も多いでしょう。
しかし、前科について漠然としたイメージを持っていても、誤解をしている方は少なくありません。
そのため、逮捕されてしまった経験のある方が、自分には前科が付いてしまったと勘違いしてしまったり、罰金刑を受けてしまった方が、自分には前科が付いていないと勘違いしてしまったりすることがあります。
ここでは、前科の意味や影響、前科を付けないためにはどうするべきか等について解説します。
目次
前科とは
前科は法律上の用語ではありませんが、刑事裁判で有罪判決を受けて、その判決が確定した履歴のことを意味しています。
勘違いをされることも多いのですが、逮捕されたときに前科が付くわけではありません。もし逮捕されたとしても、冤罪であり有罪判決を受けなければ前科は付かないのです。
一方、逮捕されずに在宅起訴された場合であっても、有罪判決を受ければ前科が付いてしまいます。
前歴とは
前科と似た言葉で、「前歴」があります。言葉は似ていますが、前歴は前科とは異なり、警察等の捜査機関から捜査対象にされた履歴です。
これは、誤認逮捕された場合等であっても付いてしまうため、前歴があっても犯罪者であるとは限りません。
なお、前歴について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
前歴とは?前歴は消せるのか、回避するには前科が付くのはどんな時か
前科は、刑事裁判で有罪判決を受けて確定したときに付きます。初めて前科が付くと前科一犯となります。
そして、もう一度罪を犯して有罪判決が確定すると前科二犯となり、さらにもう一度罪を犯して有罪判決が確定すると前科三犯となります。
罰金刑でも前科が付く
前科が付くのは刑務所に入ったらと思われるかもしれませんが、罰金刑でも前科は付きます。なぜなら、罰金刑であっても、有罪であったことに変わりはないからです。
また、正式な裁判が開かれず、略式手続という書面による手続きによって罰金刑を受けることもありますが、それでも前科が付くこととなります。
交通違反は前科が付くものと付かないものがある
交通違反の中でも、軽微なものに対しては青切符が交付されます。青切符を交付されてサインすると反則金の納付義務が生じますが、反則金は罰金とは性質の異なるものであり、納付すれば罰金刑等の刑事罰が免除されるため、前科が付くことはありません。
しかし、一般道で時速30km以上の速度超過をしたり、無免許運転や酒気帯び運転をしたりする等の悪質な交通違反を行った場合には、赤切符が交付されてしまいます。
赤切符が交付されると、免停や免許取消になるだけでなく、罰金刑等の刑事罰を受けて前科が付いてしまうおそれがあります。
書類送検されると前科が付くのか
ニュース等で「書類送検」という言葉を目にしたことのある方もいらっしゃると思いますが、書類送検をされても前科が付くとは限りません。
書類送検とは、身柄を拘束していない状態で行う検察官送致であり、一部の例外を除いて、警察が捜査した全ての事件を検察官送致することになっています。
検察官送致されても不起訴処分となる可能性がありますので、その場合には前科は付きません。
前科が付いた場合の影響
前科が付くと、一定の期間は、履歴書の賞罰欄に前科を記載する義務が生じます。
また、アメリカ等のテロ対策に厳しい国に入国するときには、パスポートだけで入国することができず、ビザの取得を求められることがあります。
他にも、国家資格の中には、前科があると取得を制限される等の影響が生じるものがあります。
前科を付けたくない場合
前科が付くと、今後の人生に影響を及ぼしかねません。そのため、なるべく前科が付かないようにすることが重要ですが、日本では起訴されてしまうと有罪判決を受けてしまう可能性が高いのが実情です。
前科が付かないようにするには、起訴されてしまってから無罪を争うのではなく、不起訴処分を獲得する必要があります。
前科を付けたくないなら不起訴獲得が必須!起訴された場合は99%前科者に
日本では、起訴されてしまうと、極めて高い確率で有罪判決を受けることになります。
それを裏付けるデータの1つとして、令和元年の司法統計によれば、地方裁判所において有罪判決を受けたのが4万7444人であるのに対して、無罪判決を受けたのは104人にすぎません。
これにより、起訴されて無罪判決を獲得することは困難だと考えられます。このことからも、前科を付けないためには、不起訴処分を獲得することが重要といえます。
起訴まで最短3日間、与えられた時間はごくわずか
逮捕されてしまった場合、48時間以内に検察官送致されます。そして、検察官送致から24時間以内に勾留請求をするか否かが決められますが、勾留されずに起訴されてしまうケースもあります。
その場合、逮捕から起訴まで3日間程度の時間しかありません。
また、勾留されてしまうと、基本的に10日間は継続して身体拘束されてしまいます。
そのような事情もあって、刑事事件はスピードが重要とされています。
逮捕されてしまったら、まず弁護士にご相談ください
逮捕されてしまい、勾留されずに起訴されてしまった場合には、起訴されるまでの時間が3日間もないことになります。
また、勾留されてしまうと、身柄の拘束が10日間延長され、勾留延長されるとさらに10日間延長されます。
逮捕からの期間は23日間にも及び、会社や学校に行くことができないため、逮捕されたことを知られてしまうリスクは高いでしょう。
最悪の場合には、解雇や退学といった事態が生じるおそれも否定できません。
逮捕されてしまうと影響が大きいため、なるべく早い段階で弁護士に相談・依頼することで、身柄の拘束を解くための活動をしながら、前科を付けないように活動する必要があります。
すでに前科が付いてしまった場合
前科についてよく知らないまま、略式手続で罰金刑を受け入れる等した方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方の中には、前科を消す方法がないかと考える方もいらっしゃるでしょう。これについて、以下で解説します。
前科が付いた事実は消せない
残念ながら、前科は一生消すことができません。警察と検察庁には前科についての記録が残り続けるので、再び罪を犯したときには、たとえ数十年が経過していたとしても、前科があることについて、捜査機関の人間や裁判官から指摘を受けることになるでしょう。
刑の言い渡しが失効することはある
前科は消えませんが、刑の言い渡しの効力が消滅することにより、前科がない者のように扱われることになります。
刑の言い渡しの効力は、禁錮以上の刑については10年、罰金以下の刑については5年で消滅します。
これは、その期間内に罰金刑以上の刑に処せられなかったことが条件です。
また、執行猶予付きの懲役刑や禁錮刑を受けた場合には、執行猶予期間の満了の翌日に刑の言い渡しの効力が消滅します。
刑の言い渡しの効力が消滅すると、警察から無犯罪証明書を発行してもらえるようになります。
また、履歴書の賞罰欄への記載を行う必要がなくなり、前科によって取得が制限されていた資格を取得する権利が復活します。
ただし、刑の言い渡しの効力が消滅しても、警察や検察庁には前科の記録が残っており、新たに犯罪を行った場合には不利に扱われることになります。
前科が付く前の対処が重要
刑事事件の捜査対象になってしまった場合には、すぐに弁護士にご相談ください。刑事事件の手続きは、逮捕されてしまうと、48時間や72時間といった制限に間に合わせるように捜査がどんどん進められていきます。
そのような状況において、身柄を拘束されており家族との面会すらできないため、味方になれるのは弁護士しかいません。
弁護士であれば、勾留請求をしないように働きかける等、依頼人の社会生活への影響を抑えるための活動を行うことができます。
そして、被害者との示談交渉等により、可能な限り不起訴処分を獲得するための活動を行いますので、なるべく早い段階で弁護士にご相談・ご依頼ください。