書類送検されたら前科がつく?前科と書類送検の関係


ニュースやインターネットで「書類送検」という言葉を目にすることがあると思います。
しかし、書類送検がどのようなものなのか、詳細をご存知でしょうか?
ここでは、書類送検と逮捕はどう違うのか、書類送検されると前科がつくのか、といった疑問を解決すべく、「書類送検」について、逮捕や前科との関係も併せて解説していきます。
目次
書類送検とは
書類送検とは、警察から検察官へ事件を引き継ぐ際に、捜査資料のみを引き継ぐことを指した用語です。
警察は、捜査のあと、基本的に検察官へと事件を引き継ぎます(検察官送致)。
警察は、被疑者を逮捕して身柄を押さえたまま捜査することもあれば、逮捕せずに捜査したり、逮捕した後いったん釈放して捜査したりすることもあります。
そして、後者の被疑身柄を押さえずに捜査し、その捜査資料のみを検察官へと引き継ぐことを「書類送検」といい、書類送検となった事件を「在宅事件」といいます。
在宅事件について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
書類送検されたら前科がつくのか
書類送検されたとしても、それだけで前科はつきません。
なぜなら、書類送検とは、警察から事件に関する書類や証拠が検察官に引き継がれる手続きにすぎず、まだこの段階では検察官により起訴するか否かの決定もされていないため、有罪が確定していないからです。
検察官送致された結果として起訴され、有罪判決を受けて確定してしまうと、そのときに前科がつくことになります。
書類送検されるのはどんな時か
書類送検は、被疑者の身柄が拘束されていないときに行われます。
逮捕が行われるのは、被疑者が罪を犯したことを疑う相当な理由があり、逃亡あるいは証拠隠滅をするおそれがあるときなので、それらのおそれがないときには逮捕は行われません。
また、いったん逮捕しても、身柄を押さえておく必要がなければ釈放されます。
逮捕のリスクを下げる手段としては、自首することや示談を成立させることが考えられます。
既に罪を認めている状況では、逃亡等をすることは考えにくいからです。
また、極めて軽微な事件については、逃亡する必要性が低いため、逮捕されない可能性が高いです。
書類送検後の捜査で起訴されて有罪判決を受けると前科がつく
書類送検された後で起訴されてしまうと、非常に高い確率で有罪になり前科がついてしまいます。
起訴されてしまったときに有罪となる確率は99%以上であるといわれているため、前科をつけたくなければ起訴されないようにする必要があります。
不起訴になっても前歴は残る
書類送検されたとしても、不起訴になれば前科はつきませんが前歴は残ります。
前歴は、捜査機関による捜査の対象になったということであり、有罪になったことを意味しませんが、捜査機関には情報が残り続けることになります。
逮捕も書類送検もされなければ前科はつかない
警察は、基本的には捜査を行った全ての事件を検察官送致することになっています。これを「全件送致主義」といいます。
しかし、「微罪処分」という、検察官が指定する一定の軽微な事件については例外とされており、警察が事件を終了させることができる手続きもあります。
微罪処分なら、書類送検や起訴されることもありませんので、処罰を受けることもありません。
書類送検を免れるケース
微罪処分を受けるためには、検察官が指定した軽微な事件に該当する必要があります。
しかし、対象となる事件が都道府県ごとに異なることや、悪用を防ぐ必要があること等から公表されておらず、どのような犯罪が微罪処分の対象として指定されているかを一般人が知ることはできません。
ただ、前例などから、窃盗や暴行、賭博等が対象になっていると考えられています。
微罪処分を受けることができる条件としては、検察官の指定を受けている事件に該当するだけでなく、被疑者に前科・前歴がないことや被害額がわずかであること、被害者が処罰を望んでいないこと等が必要だと考えられます。
書類送検を免れるには被害者との示談が必須
事件を微罪処分で終わらせるためには、被害の回復や被害者の処罰感情が大きな要素となるため、被害者との示談を成立させることは特に重要だと考えられます。
被害者と示談を成立させるためには、窃盗であれば、盗んだ物の返却や被害品の買取りによって被害者の経済的損失を補償することは当然ですが、被害者の精神的損害を補償するという意味で、迷惑料等を支払う必要がある場合もあります。
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書類送検されてしまった場合の対処
既に書類送検されてしまった場合には、不起訴処分を獲得することが重要です。
起訴されてしまうと、極めて高い確率で有罪となり、そうなれば前科がついてしまうからです。
そこで重要になるのが、被害者の被害を回復して処罰感情を和らげることであり、そのために最も有効な手段が示談を成立させることです。
しかし、加害者が被害者との示談交渉を直接行うことは、なるべく避けた方が良いでしょう。
被害者は加害者と接触することをためらうケースがあるだけでなく、交渉の場でお互いに感情的になってしまい、被害者の処罰感情が高まってしまうことがあるからです。
被害者との示談交渉を検討するときには、弁護士への依頼を念頭に置くべきでしょう。
前科がついてしまうと仕事や生活への影響が大きい
前科がついても、そのことを他の人に知られるリスクが高いわけではありません。
しかし、事件が報道されると前科があることが知れ渡ってしまうおそれがあり、噂が広まってしまうと生活しにくくなるでしょう。
海外旅行の際に、渡航先によってはビザを要求される等の影響が生じるおそれもあります。
公務員や一部の国家資格については、一定以上の罪について欠格事由であると定められています。
書類送検された際に弁護士に依頼するメリット
書類送検されてしまったら、すぐに弁護士にご相談ください。
被疑者が逮捕されていないことから、捜査機関から比較的軽微な罪だと考えられている可能性があるものの、安心して放っておくと手続きが進み、前科がつくことになってしまうおそれがあります。
その前に弁護士に相談しておくことで、今後の見通しを立ててもらい、被害者との示談交渉が行える場合もありますので、ぜひ刑事弁護に精通した弊所への相談をご検討ください。