起訴と不起訴、それぞれの違いや生活への影響について


テレビやインターネットで「起訴」や「不起訴」といった言葉を見聞きすることも多いでしょう。
しかし、多くの人にとって刑事事件は縁遠いものであるため、起訴や不起訴について、誰が何をすることなのかがわからない方も多いのではないでしょうか。
そのため、思いがけず刑事事件に巻き込まれたときには、何が起こっているのか理解できないかもしれません。
ここでは、起訴・不起訴とはどのような手続きなのか、それぞれがどのような影響を及ぼすのか、より有利な結果を獲得する方法等について解説します。
目次
起訴と不起訴の違いについて
起訴と不起訴とは、それぞれどのような手続きであるかについて、以下で解説します。
起訴とは
起訴とは、刑事事件における処分をいいます。
検察官が裁判所に対して、被疑者を裁判にかけるように求める手続きです。
誰でも訴えることができる民事裁判とは異なり、刑事事件で被疑者を起訴できるのは、検察官だけです。
被疑者は起訴されると被告人となり、その大半が有罪判決を受けてしまいます。
有罪判決が確定すると、被告人には前科が付き、それは一生消えることがありません。
不起訴とは
不起訴とは刑事事件における処分であり、検察官が裁判所に対して被疑者を裁判にかけることを求めない手続きです。
検察官が被疑者を不起訴処分にする理由としては、以下のようなものがあげられます。
- 被疑者が犯人ではない可能性が高いことがわかった場合
- 被疑者が犯人である証拠が集まらなかった場合
- 被疑者が犯人であるという証拠があるものの軽い罪であるため刑事罰を科す必要がない場合 等
生活への影響の違い
起訴されてしまった場合と、不起訴となった場合とでは、その後の生活への影響がまったく異なります。
これについて、以下で詳しく解説します。
起訴となった場合
勾留されていた被疑者が起訴されてしまった場合には、被告人となって引き続き勾留されます。これを「起訴後勾留」といいます。
起訴後勾留の期間は2ヶ月ですが、1ヶ月ずつ何回でも更新することが可能であり、その回数に制限はありません。
起訴される前には、逮捕されてから勾留・勾留延長によって最大で23日間も身体を拘束される可能性があります。
その23日間だけでも社会生活への影響は甚大ですが、起訴後勾留によって引き続き身体拘束されてしまうと、元の生活に戻ることは不可能もしくは困難になってしまいます。
さらに、裁判によって有罪判決を受けてしまった場合には前科が付いてしまいます。
不起訴となった場合
不起訴となった場合には、その処分が罪を犯したことを前提とする起訴猶予であったとしても、それによる生活への影響はほとんどありません。
不起訴処分を受けたとしても、捜査対象になった事実は変わらないため前歴は付きますが、それが日常生活において問題となる場面はほとんどないと言って良いでしょう。
ただし、新たに何らかの罪を犯してしまったときには、前歴があることによって不利益な扱いを受けるおそれがあります。
起訴された場合生活も大きく変わります。そうなる前に弁護士へご相談ください
起訴されてしまえば、起訴後勾留によって身体を拘束される危険性が非常に高いといえます。
そのため、まずは、勾留する必要性がないことなどの資料を速やかに収集し、身体拘束からの解放を目指す必要があります。
また、有罪判決を受ければ判決の内容によっては懲役刑を科されることにもなりますし、執行猶予となったとしても前科が付いてしまいます。
今までの生活を守り、適切な判決を受けるために、少しでも早い段階から、弁護士に相談することをおすすめします。
起訴・不起訴の判断は誰が決めるのか
被疑者に対して起訴・不起訴の処分をする判断ができるのは、検察官だけです。
そのため、警察が集めた証拠だけでは起訴したとしても被疑者を有罪にできないと考えられるときには、検察官は警察に対して、再度の捜査を行うように依頼します。
また、検察官が自ら被疑者や参考人に話を聞くなどして証拠を収集することもあります。
不起訴処分となった事件について、被害者等からの審査申立によって検察審査会という組織により審査される場合がありますが、それによって起訴されることは多くありません。
判断基準はあるか
検察官は、被疑者が犯人であるという証拠がないと考える場合には「嫌疑なし」として、犯人だと証明するには証拠が不十分だと考える場合には「嫌疑不十分」として不起訴処分を下します。
また、被疑者が犯人であることを証明できる場合であっても、事情を考慮して「起訴猶予」として不起訴処分を下すことがあります。
他にも不起訴処分には種類がありますが、実際には不起訴処分の多くが起訴猶予です。
被疑者を起訴猶予とする事情とは、犯行が悪質ではないことや被疑者が深く反省しており再犯のおそれがないこと、被害者との間で示談が成立していること等です。
不起訴処分になれば、基本的に裁判を受けることはなくなるため、有罪判決を受けて前科が付いてしまうおそれはほとんどなくなります。
起訴か不起訴か確認する方法
被疑者にとって、自身が起訴されるか不起訴になるかは人生を左右するもので重大な関心事です。
勾留されている被疑者は、国選弁護人が選任されているか私選弁護人を選任しているため、その弁護人に検察官に処分の見通しを確認してもらうことが可能であり、勾留期間が終わる前に起訴か不起訴かがわかることが多いです。
在宅事件の場合であっても、検察官に確認してもらうことが可能です。
処分保留とは
処分保留とは、起訴するか不起訴にするかを決めないことです。
逮捕・勾留されて、勾留満期を迎える段階で十分な証拠がなければ、処分保留により釈放されます。
釈放された後で新たな証拠が見つかった場合には起訴されることになります。
しかし、既に逮捕したのと同じ事件について、被疑者を再度逮捕することはあまりありません。
また、被疑者を逮捕した事件では、勾留期間が勾留延長期間も含めて満期になるまでに可能な限り証拠を集めているため、身体を拘束している期間内に証拠が集まらなかった場合には、最終的に不起訴となる可能性が高いといえます。
不起訴理由の通知について
検察官は被疑者に対して、不起訴処分にしたことを伝える義務はありません。
そのため、被疑者が問い合わせなければ、検察官から「貴方を不起訴処分にしました」と言ってもらえることは基本的にありません。
被疑者が請求した場合には、検察官は不起訴処分にしたことを伝える義務があります。
また、被疑者が不起訴処分になったことを勤めている会社等に証明したい場合には、必要事項を記載した書面を送って請求するか、検察庁を訪れて口頭で請求することにより、不起訴処分告知書を検察庁に無料で発行してもらうことが可能です。
ただし、不起訴処分告知書には、不起訴処分にした理由(「嫌疑不十分」や「起訴猶予」等)は記載されていない場合があるようです。
不起訴処分で留めるためには
実際に犯罪を行ったのに不起訴処分を受けるためには、起訴する必要がないことを検察官に説明しなければなりません。
そのためには、被害者がいる事件では示談をすることが最も重要であり、示談の際には必ず示談書を作成すべきです。
特に、示談書に被疑者を許す旨の記載を入れることができれば効果が高いでしょう。
また、再犯をしないことを示すために、深く反省していることや、専門家によるカウンセリングを受けていること、家族などによる監督を受けることをアピールできることが望ましいと考えられます。
なお、不起訴処分の獲得について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
不起訴獲得のために弁護士ができること
不起訴処分を獲得するためにするべきことの中で、弁護士でなければ難しいのが「示談交渉」です。
被疑者が身体を拘束されているケースはもちろんですが、身体を拘束されていなかったとしても、被疑者が自ら示談交渉を行うことはおすすめできません。
被害者は、被疑者との接触を望まないケースが多く、もし会ったら感情的な対立によりトラブルが悪化するおそれがあるからです。
示談交渉は、専門家である弁護士に任せるべきでしょう。
また、弁護士は、個々の犯罪において再犯に及ばないためにどのような手法が考えられるか、その手法を実践していることの証拠としてどのようなものがあるのかの知見を活かし、適切な弁護活動を行うことが可能です。
不起訴の獲得は弁護士抜きでの対応は難しい場合も多いです。ぜひ依頼を検討しましょう
自分が起こした事件は、あまり重大な事件ではないと思っていても、起訴されて有罪判決を受けてしまうおそれがあります。
当該事件に応じた最善の活動を行い、不起訴処分を受けて日常生活への支障を最小化するためには刑事事件に精通した弁護士への依頼をご検討ください。
逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
刑事弁護に強い弁護士が迅速に対応いたします。
逮捕直後から勾留決定までは弁護士のみが面会・接見できます。ご家族でも面会できません。
起訴されることが濃厚な場合
犯した罪が重い等の事情により、不起訴処分になる可能性が低く、起訴されて懲役刑や禁錮刑を受けることが避けられない状況はあり得ます。
そのようなときには、なるべく早く身体の拘束を解き、判決には執行猶予を付けてもらえるようにする必要があります。
勾留されてしまった場合には、身体の拘束を続ける必要がないことを訴え、起訴後には保釈申請を行って、なるべく早く日常に近い生活を送ることができるようにします。
判決に執行猶予が付けば、もう一度罪を犯すようなことがなければ刑務所に収監されずに済むため、今後の人生への影響を最低限に抑えることができます。
起訴された場合に弁護士ができること
起訴されてしまった場合には、弁護士は被告人が身体拘束されている場合には保釈を申請しながら、罪をなるべく軽くするように活動します。
身体の拘束が長引くことによる影響は大きいため、起訴されたらすぐに保釈を請求する必要があります。
罪を軽くするための活動としては、被害者との示談の成立を目指すことや贖罪寄付を行うことを中心に、事件の性質によっては専門家によるカウンセリングを受けること、ボランティア活動を行うこと、情状証人を集めること等についてのサポートが考えられます。
起訴後も、弁護士ができることは多岐に渡ります。すぐにお電話ください
起訴されてしまったとしても、自暴自棄になる必要はありません。
ご自身の状況に応じた適切な判決内容となるよう、弁護士が状況に応じた最善活動を迅速に行いますので、すぐにご連絡ください。
起訴と不起訴の違いでよくある質問
起訴と不起訴の違いに関してよくある質問について、以下で解説します。
不起訴処分とは実質、無罪ということになりますか?
不起訴処分を受けることができても、必ず無罪になると断言することはできません。
というのも、不起訴処分を受けた事件について、改めて起訴することを禁止する規定が存在しないからです。そのため、不起訴処分を受けた事件で起訴されるおそれは、公訴時効を迎えるまでは消滅しません。
特に、不起訴処分の中で最も割合が高い起訴猶予は、犯罪の事実はあったと認定し、被害が軽微であることや被疑者が深く反省していること、被害者との間で示談が成立していること等を考慮して不起訴とするものです。
このことから、当初は判明していなかった多数の余罪が判明した等の事情により、起訴されてしまうおそれは否定できません。
逮捕後、起訴・不起訴が決まる前に釈放されることはありますか?
逮捕されても、起訴処分や不起訴処分を受ける前に釈放されることはあり得ます。
まず、警察が微罪処分によって事件を終了させた場合には検察官に事件が送致されないため、起訴処分や不起訴処分を受けることはありません。
また、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕された被疑者について、身体を拘束する必要がなくなった場合には、勾留請求されなかったり、勾留が取り消されたりすることがあります。
満期まで勾留されてしまっても、処分保留で釈放されることがあります。なお、親告罪について告訴されていたケースであれば、起訴される前に告訴が取り下げられれば、起訴されることがなくなるために釈放されることになります。
処分保留だった場合、再逮捕されることはありますか?
処分保留で釈放された場合には、再逮捕されることがあり得ます。
逮捕後の刑事手続は、勾留・勾留延長しても最大で23日間という時間制限があります。
そのため、その時間内に起訴できるだけの証拠が集まらなかったときには、処分保留で釈放されることがあるのですが、その後の捜査で証拠が集まれば再逮捕されて起訴されることはあり得ます。
しかし、最大で23日間の捜査によっても有罪の証拠が集まらなかった事件について、その後の捜査によって起訴されることは少ないようです。
再逮捕されるケースとして、特殊詐欺のような組織犯罪や薬物事件等において、他の事件と併せて捜査された結果として証拠が集まり、再逮捕されて共に起訴されるケースはあるようです。
刑事事件では、起訴される前の弁護活動が非常に重要ですので、早急に弁護士へご連絡ください
思いがけず刑事事件を起こしてしまった場合には、今後の人生への影響をなるべく抑えることが大切です。
逮捕されてしまったとしても、なるべく早く身体を解放することができれば、影響は小さくなります。
そして、起訴されなければ前科も付かず、会社からの懲戒処分も軽く済む可能性が高いです。
刑事事件はスピードが重要であり、事件からご依頼まで早ければ早いほど、可能な弁護活動の選択肢が増えます。刑事事件を起こしてしまったら、すぐに弁護士にご相談ください。