書類送検と逮捕の違いは?前科やその後の流れ、対処法を解説
刑事事件に関与すると、「書類送検」や「逮捕」といった言葉を耳にしますが、その違いや意味を正確に理解している方は多くありません。
いずれも刑事事件における手続きですが、身柄拘束の有無やその後の流れに大きな違いがあります。
刑事事件の手続きは、想像以上に早く進みます。書類送検や逮捕されたからといって、直ちに前科が確定したり、事件が終了したりするわけではありませんが、早い段階で適切な対応を取ることが大切です。
この記事では、書類送検と逮捕の違いや書類送検・逮捕後の流れなどについて、詳しく解説していきます。
目次
書類送検と逮捕の違いは?
書類送検と逮捕の違いは、簡単にいうと身柄拘束の有無や手続きのタイミングです。
身柄拘束が伴うのが「逮捕」、伴わないのが「書類送検」と覚えておくとよいでしょう。
書類送検 警察が捜査後、被疑者の身柄を拘束せずに事件に関する書類や証拠を検察に送る手続き
逮捕 逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に、被疑者の身柄を拘束する手続き
身柄拘束は身体の自由を制限する重大な手続きなので、その有無によって私生活や仕事への影響が大きく変わります。いずれも早期に弁護士へ相談して適切な対応を取ることが重要です。
書類送検とは
書類送検とは、警察の捜査終了後、被疑者の身柄を拘束することなく資料や証拠を検察に送る手続きで、在宅事件とも呼ばれます。
※警察から検察へ事件が引き継がれることは「送検(検察官送致)」といいます。
書類送検となるのは、ある程度軽微な犯罪や逃亡・証拠隠滅のリスクが低いと判断された場合です。たとえば、万引きや被害が小さい暴行事件などは、書類送検される可能性が高いでしょう。
書類送検は、被疑者となっても身柄が拘束されないため、自宅で通常どおりの生活を送れるのが大きな特徴です。
逮捕とは
逮捕とは、犯罪の嫌疑がある人物(被疑者または容疑者)の身柄を拘束する手続きで、身柄事件とも呼ばれます。
主に被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に、警察が逮捕状を取得したうえで行う手続きです。
逮捕は、被疑者の身体の自由を一時的に奪う重大な手続きです。また、逮捕後に勾留請求がなされれば、最大で23日間の身柄拘束(勾留)を受ける可能性があります。
不当な逮捕や勾留を回避するには、早急に弁護士へ相談して対処する必要があります。
逮捕の要件や流れなどについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
逮捕にはどんな種類がある?書類送検と逮捕の判断基準
書類送検と逮捕の判断基準には、犯罪の種類や被疑者の状況、逃亡や証拠隠滅のおそれの有無などが挙げられます。
なかでも、逮捕の必要性と犯罪の種類は、特に重視される基準です。
逮捕の必要性
逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなど、逮捕の必要性が認められる場合は、書類送検ではなく「逮捕」の手続きが取られやすいです。
“住所不定”や“常習性”がある場合も、逮捕の必要性が認められる可能性が高いです。
一方、それらの心配がなければ基本的に「書類送検」となります。罪を認め、反省の態度がみられる場合は、書類送検と判断されやすいでしょう。
ただし、「反省の態度を示せば必ず書類送検になる」というわけではありません。あくまで、捜査機関がさまざまな事情を総合的に考慮した結果、逮捕の必要性がないと判断された場合に限られます。
犯罪の種類
「書類送検」と「逮捕」どちらの手続きが取られるかは、犯罪の種類によっても判断が変わります。
たとえば、大規模な詐欺事件や組織的犯罪では、証拠隠滅や共犯者との口裏合わせのリスクが高いと考えられるため、逮捕される可能性が高いです。
性犯罪や傷害事件なども、被害者の保護や再犯防止の観点から、「被疑者の身柄拘束が必要」と判断されることが多いです。
犯罪の種類ではありませんが、否認事件(被疑者が容疑を認めない事件)でも、証拠隠滅や逃亡のリスクから逮捕される可能性が高いといえます。
一方、万引きや軽微な交通違反などの軽い犯罪(法定刑が科料や罰金程度のもの)では、身柄拘束の必要性は低いと判断され、書類送検で済む傾向にあります。
書類送検や逮捕をされると前科がつく?
書類送検や逮捕は、あくまで初期段階で行う刑事手続きなので、直ちに前科はつきません。前科は、検察官によって起訴され、刑事裁判で有罪判決が確定した段階でつきます。
ただし、書類送検や逮捕をされた事実は、「前歴」として捜査機関のデータベースに記録されます。
前歴は“捜査対象となった履歴”ですが、捜査機関内部の情報に留まるため、外部に漏れることは基本的にありません。
前科・前歴が記録・保管されるのは捜査機関と市区町村のデータベースに限られますが、前科は資格の取得を制限されるため、就職活動に悪影響が及ぶ可能性があります。
面接時に「前科はありますか?」と問われ、「ありません」と嘘をつくと、経歴詐称となり不利益を受ける可能性があるため注意が必要です。
前科と書類送検の関係については、以下のページをご覧ください。
書類送検されたら前科がつく?書類送検された場合の起訴率と不起訴率は?
検察統計調査によると、令和6年の刑事事件全体の起訴率は約32.6%・不起訴率は約67.4%でした。
これは、検察が受理した被疑事件のうち、約3分の2が不起訴処分となっていることを意味します。
書類送検の不起訴率を示す統計はありませんが、比較的軽微な事案が多いため、不起訴と判断されるケースも多いでしょう。
ただし、事件の内容や被害の大きさ、示談の有無などによって、起訴・不起訴の判断は変わります。不起訴の獲得を目指すには、刑事事件に強い弁護士による対応が重要です。
起訴と不起訴の違いについては、以下のページをご覧ください。
起訴と不起訴、それぞれの違いや生活への影響について書類送検・逮捕された後の流れ
書類送検や逮捕は「初期段階」の刑事手続きなので、その後もさまざまな手続きが行われます。
書類送検や逮捕後の対応によって、最終的に前科がつくかどうかが決まるため、手続きがどのような流れで進んでいくのかを前もって知っておくことが大切です。
以下では、書類送検(在宅事件)と逮捕(身柄事件)のそれぞれの流れを解説していきます。
書類送検後の流れ
書類送検では身柄拘束を伴わないため、以下のように手続きが進んでいきます。
- 捜査開始
警察が事件の捜査を行い、証拠や供述を集めます。 - 書類送検
捜査が完了すると、警察が捜査書類と証拠を検察官に送ります(送致)。 - 在宅起訴
検察が起訴・不起訴の決定を下します。在宅起訴された場合は“在宅のまま”刑事裁判に進み、不起訴となった場合は“事件終了”となります。 - 刑事裁判
略式起訴や正式裁判が行われ、裁判官から有罪・無罪の判決が下されます。 - 判決
裁判で有罪判決が確定した場合は、前科がつきます。
書類送検されるのは、被疑者に逮捕の必要性がないと判断された場合です。そのため、新たな証拠や余罪などが確認されなければ、起訴されても在宅起訴となる可能性が高いでしょう。
在宅事件の場合、被疑者は自宅で生活を送りながら、捜査機関からの呼び出しなどに対応することになります。
逮捕後の流れ
逮捕では身柄拘束を伴うため、以下のような厳格な手続きが進んでいきます。
- 逮捕
警察が逮捕状に基づき、被疑者の身柄を拘束します。 - 送致
逮捕から48時間以内に、被疑者の身柄と事件の資料が検察に引き継がれます(送致)。 - 勾留
検察は送致から24時間以内に、勾留請求(身柄拘束の延長を求める手続き)をするかどうか判断します。裁判官が勾留請求を認めると、まず“10日間”の勾留が実施されます。
勾留は必要に応じて“10日間延長”されるため、最大20日間の身柄拘束を受ける可能性があります。 - 起訴・不起訴の判断
勾留期間中または勾留期間終了までに、検察官が起訴・不起訴の判断を下します。 - 刑事裁判
起訴された場合は、正式裁判または略式裁判が行われ、裁判官から有罪・無罪の判決が下されます。 - 判決
裁判で有罪判決が確定した場合は、前科がつきます。
逮捕された時の流れを図で分かりやすく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説逮捕後72時間以内の弁護活動が運命を左右します
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書類送検・逮捕された場合の対処法
書類送検や逮捕は、最終的な刑事処分に大きな影響を与える重要な局面です。対応次第では、不起訴や減軽となる可能性を高められる可能性があります。
以下のポイントを押さえて、冷静かつ誠実に対応しましょう。
検察からの呼び出しや取り調べには誠実に対応する
「検察からの呼び出しを無視する」「取り調べを拒否する」などの行為は、捜査機関の心証を悪くし、逮捕や勾留のリスクが高まるため注意が必要です。
取り調べなどは基本的に平日の昼間に行われますが、都合が悪ければ日程調整できる可能性もあります。具体的な理由を伝え、別の日時に変更できないか確認しましょう。
捜査機関からの呼び出しを無視したり、連絡もせずに欠席したりする行為は避けるべきです。
どうしても出席できない場合は、弁護士に依頼して代わりに対応してもらうのが有効です。
刑事事件を得意とする弁護士であれば、円滑かつ適切に手続きを進めてもらえるため、安心して任せられます。
不起訴獲得のために示談交渉する
被害者がいる刑事事件では、被害者との示談成立が不起訴処分を獲得するための重要なポイントです。
示談が成立すると、被害者の“加害者(被疑者・被告人)に対する処罰感情”が和らいだとして、「起訴の必要性は低い」と判断される可能性があるためです(殺人事件などの重大事件を除く)。
万が一起訴されても、被害者との示談成立は被告人にとって有利な情状となり得ます。
ただし、被害者との示談成立は決して容易ではなく、示談交渉の場を設けることすら難しいケースもあります。
刑事事件に精通した弁護士に依頼し、被害者の心情に配慮しながら交渉を行うのがおすすめです。
刑事事件における示談については、以下のページをご覧ください。
刑事事件における示談とは?起訴された場合は裁判に備える
起訴された場合は、刑事裁判に向けた準備を行う必要があります。略式起訴で罰金刑となる場合も、金額の予測を立てて支払いの準備をしておくことが大切です。
正式裁判の場合は、証拠の収集や弁護方針の計画など、専門的な対応が不可欠となります。
弁護士と連携し、裁判で有利となる証拠の収集や主張の準備を進めておきましょう。そうすることで、無罪判決や減軽、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まります。
また、起訴された段階でまだ被害者との示談が成立していなければ、示談交渉も引き続き行いましょう。
裁判官から判決が下される前に示談を成立させられれば、有利な情状として考慮される可能性があります。
執行猶予について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
執行猶予とは?書類送検・逮捕された場合に弁護士に相談するメリット
刑事事件では、弁護士の存在が刑事処分の内容を大きく左右する可能性があります。
特に刑事事件に強い弁護士に相談すれば、以下のような法的サポートを受けることができます。
早期接見で取り調べのアドバイスができる
弁護士には「接見交通権」があるため、逮捕直後から接見(面会)が可能で、状況確認や精神的サポートを行えます。
逮捕直後は、基本的に弁護士以外の者との面会が禁止されるため、不安や緊張が大きくなりやすいです。
逮捕直後から行われる捜査機関の取り調べでは、供述内容によって事件の行方が左右されることもあります。
弁護士であれば、黙秘権の使い方や適切な回答方法をアドバイスできるため、不利な供述を避けることが可能です。
早期釈放の働きかけができる
弁護士は早期釈放の働きかけができるため、社会生活への影響や身体的・精神的負担を最小限に抑えることができます。
逮捕された場合、最大で3日間の身柄拘束を受け、逮捕後に勾留が決定すればさらに最大で20日間身柄を拘束される可能性があります。
つまり、合計で最大23日間の身柄拘束を受ける可能性があるということです。
弁護士であれば、勾留に対する意見書を検察に提出するなど、早期釈放の働きかけを行うことが可能です。
示談交渉を任せられ不起訴獲得の可能性が高まる
被害者のいる刑事事件では、被害者との示談交渉を弁護士に任せることが可能です。
逮捕・勾留されている場合は、示談成立が有利な情状として扱われ、早期釈放が期待できるでしょう。
また、示談成立によって不起訴処分や減軽となる可能性も高まります。
弁護士は、感情的な対立を避けながら適切な条件で示談を進めることができます。適切かつスムーズに示談交渉を進めたい場合は、刑事事件に強い弁護士の力がとても重要です。
書類送検・逮捕に関するよくある質問
書類送検や逮捕をされると会社にバレますか?
書類送検や逮捕された事実が、捜査機関から会社に直接伝わることはありません。
ただし、以下のようなケースでは会社に知られる可能性があります。
- 実名報道された
ニュースやネットの記事で名前が公開されると、会社関係者に知られる可能性があります。 - 被害者や目撃者が会社に通報した
事件関係者が会社に直接連絡した場合は、会社関係者に知られる可能性が高いです。 - 警察が職場関係者に事情聴取した
会社に関連する事件の場合は、警察が証拠品の確認や事情聴取のため、会社に捜査依頼をすることがあります。
書類送検は身柄拘束を伴わないため、有給休暇などを利用すれば、会社にバレることなく取り調べに対応できる可能性があります。
一方、逮捕は長期間の身柄拘束を受けるおそれがあるため、休む理由を説明できず会社にバレる可能性があるでしょう。
書類送検後に逮捕されることはありますか?
書類送検された後でも、検察官が「身柄拘束を行う必要がある」と判断すれば逮捕状が請求され、逮捕される可能性があります。
たとえば、以下のようなケースでは、書類送検後に逮捕される可能性が高いでしょう。
- 新たな証拠が見つかった
捜査の進展により、逃亡や証拠隠滅のおそれが高まったと判断されると、逮捕状が請求される可能性があります。 - 被疑者が呼び出しに応じない・連絡が取れない
捜査機関の取り調べに誠実に対応しないと、逮捕の必要性が認められる可能性があります。 - 容疑を否認している・供述に不自然な点がある
供述の信用性が疑われると、証拠確保のために逮捕される可能性があります。
書類送検は逮捕された場合に比べて軽い処分になりますか?
「書類送検=軽い処分」「逮捕=重い処分」とは限りません。
両者の違いは処分の重さではなく、捜査の段階で身柄を拘束したかどうかにあるからです。
いずれも起訴・不起訴や量刑を決めるための前段階に過ぎず、逮捕されても不起訴となるケースは少なくありません。反対に、書類送検でも起訴され、有罪となるケースもあるのが実情です。
最終的な刑事処分の重さは、検察官による起訴・不起訴の判断や刑事裁判で確定します。
ただし、逮捕は書類送検と違い、「一定期間身柄の拘束を受ける」という不利益がある点に注意が必要です。
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書類送検や逮捕をされた場合、刑事処分の判断をできるだけ有利なものにするため、早期段階から適切な弁護活動を行う必要があります。
書類送検や逮捕は刑事手続きの初期段階に過ぎず、対応を誤ると前科がついて今後の生活に深刻な影響を及ぼす可能性があるためです。
書類送検は身柄拘束を伴いませんが、刑事事件に精通した弁護士に依頼することで、円滑かつ適切な弁護活動が可能となります。
対応を弁護士に任せられるため、これまで通りの日常生活を送りながら、不起訴処分の獲得に向けた準備ができます。
弁護士法人ALGには、刑事事件に精通した弁護士が複数名在籍しており、充実した法的サポートの提供が可能です。書類送検や逮捕をされてお困りの方は、早急に弁護士にご相談ください。
