執行猶予でも前科はつく?期間満了で消えるのかなどを弁護士が解説
執行猶予がつくと、「今すぐ刑務所に入らなくて済む」ということが真っ先に浮かび、前科がつかない!と勘違いされる方が多くいらっしゃいます。確かに、今すぐ刑務所に入る必要はありませんが、有罪が確定している以上、前科はつきます。
前科がつけば、執行猶予期間中であっても、就職や資格の取得、海外渡航などで不利益を受ける可能性が高いでしょう。
この記事では、執行猶予と前科の関係に着目し、執行猶予期間が過ぎると前科は消えるのか?や、前科によるデメリットなどについて、詳しく解説していきます。
目次
執行猶予でも前科はつく?
執行猶予がついても、有罪判決であることに変わりはないため、前科はつきます。
前科とは、「過去に刑事裁判で有罪判決が下され、刑罰を受けた経歴」を指し、執行猶予の有無に関係なく有罪となった時点で前科がつきます。
裁判で“執行猶予なし”の判決を受けた場合は「実刑」となり、直ちに刑が執行されるため、日常生活が大きく制限される可能性が高いです。
一方、“執行猶予付き判決”の場合、いくつか守らなければならない事項はあるものの、基本的には普段通りの生活が送れるため、前科による制限の緩和が期待できます。
執行猶予とは
執行猶予とは、判決で確定した刑の執行を、一定期間(1年以上5年以下)猶予してもらえる制度です。
(例)言い渡された判決が「拘禁刑1年、執行猶予3年」の場合
→執行猶予期間である3年を問題なく過ごせば、刑の執行が免除されます。
簡単に言うと、執行猶予がつけば、刑務所に入らずに日常生活を送りながら更生の機会を与えてもらえるということです。
ただし、執行猶予期間中に再び罪を犯すと、猶予は取り消しとなり、確定した刑(罰金刑や拘禁刑)が執行される可能性が高まります。
一般的には、再犯の罪について、拘禁刑以上の実刑判決が執行猶予期間中に確定した場合、執行猶予が必ず取り消されます(必要的取り消し)。
執行猶予と実刑の違いや注意点について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
執行猶予とは?違いや注意点を解りやすく解説執行猶予期間が過ぎると前科は消える?
執行猶予期間が過ぎると、前科の扱いは法律上と事実上で違いが生じます。
法律上の扱い ➡ 執行猶予満了により刑の言渡しが効力を失う
事実上の扱い ➡ 執行猶予期間が経過しても前科の事実は残る
執行猶予満了により刑の言渡しが効力を失う
執行猶予期間が無事に満了すれば、「刑の言渡し」の効力がなくなるため、法律上は「前科がない」ものとみなされます。
刑法第27条 「刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。」
法律上は「刑罰を受けなかった人」と同じ扱いになりますが、前科の記録は残るため、再犯時のリスクが増すことに注意しなければなりません。具体的には、前科が再犯時の量刑判断で考慮され、より重い刑が下される可能性があります。
つまり、執行猶予満了後は、法的には刑を執行する義務がなくなり、前科による就業・資格取得の制限も受けずに済みますが、過去に有罪判決を受けた事実は完全には消えないということです。
執行猶予期間が経過しても前科の事実は残る
執行猶予期間が無事に経過しても、前科の事実自体は消えません。前科の記録は基本的に本人が死亡するまで削除されないため、生涯にわたって影響を受ける可能性があります。
例えば、捜査機関のデータベースには前科の記録が残るため、再び刑事事件を起こせば前科が不利に働くおそれがあります。再犯時の捜査や裁判で過去の記録が参照され、量刑判断に影響を与える場合があるためです。
市区町村が管理する「犯罪人名簿」については、刑の言渡しの効力が失われた時点で記録が抹消されます。
執行猶予期間が経過したからといって、前科の事実自体が消えることはないため、社会的にもさまざまな影響を受ける可能性があるでしょう。
執行猶予付き判決により前科がつくデメリット
執行猶予付き判決も、有罪判決であることに変わりはないため、以下のようなデメリットがあります。
- 就職・転職への影響
履歴書の賞罰欄に「前科なし」と記載すると、経歴詐称になる可能性があります。資格の取得が制限される、一部就けない職業があるなどのリスクも生じます。 - 勤務先・学校への影響
就業規則や校則により、懲戒処分・停学・退学などの処分となる可能性があります。 - 海外渡航への影響
パスポートを発給してもらえなかったり、一部の国でビザの申請を拒否されたりする可能性があります。 - 結婚への影響 など
信用問題となり、周囲から結婚を反対される可能性があります。夫婦関係の悪化を招き、離婚の原因にもなり得るでしょう。なお、「前科持ち」は法定離婚事由に該当することもあります。
前科が及ぼす影響について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
前科が及ぼす影響-生活や仕事にどう影響するのか前科があると執行猶予がつかない?
前科があっても、以下の「執行猶予がつく条件」を満たしていれば、執行猶予付き判決を受けられる可能性があります。
執行猶予がつく条件(刑法第25条)
- 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない
- 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない
- 今回の判決が「3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」である
- 情状に特に酌量すべき事情がある
前科があると、裁判で不利な情状として扱われるため、初犯よりも執行猶予がつきにくくなります。
しかし、被害者との示談成立や反省の姿勢、再犯防止策を適切に主張・立証できれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まるでしょう。裁判官は、犯行態様や情状などを考慮し、総合的に量刑を判断します。
前科が罰金・拘留・科料と軽微な場合
前科が罰金・拘留・科料である場合は、以下の条件を満たせば執行猶予がつく可能性があります。
- 今回の刑が3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金である
- 情状に特に酌量すべき事情がある
執行猶予がつく条件の1つは、「前に拘禁刑以上の刑に処せられていないこと」です。罰金・拘留・科料は拘禁刑以上の刑ではないため、この条件を満たします。
前科が執行猶予付きの懲役・禁錮刑(拘禁刑)で執行猶予期間が満了した場合
前科が「執行猶予付きの懲役・禁錮刑(拘禁刑)」の場合、執行猶予期間が満了していれば、以下の条件を満たすことで再び執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。
- 今回の刑が3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金である
- 情状に特に酌量すべき事情がある
※拘禁刑以上の前科があっても、執行猶予期間が満了していれば、法律上は「前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者」と扱われます。
刑の効力がすでにない以上、法律上は初犯扱いとなるのがポイントです。
前科が執行猶予なしの懲役・禁錮刑(拘禁刑)で出所後5年を経過した場合
前科が「執行猶予なしの懲役・禁錮刑(拘禁刑)」でも、出所後5年を経過した場合、以下の条件を満たすことで執行猶予を獲得できる可能性があります。
- 今回の刑が3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金である
- 情状に特に酌量すべき事情がある
つまり、過去に実刑判決を受けていても、出所から5年経っていれば、法律上は執行猶予の対象となります。
情状に特に酌量すべきものがある場合
情状に特に酌量すべき事情がある場合は、前科があっても再度執行猶予がつく可能性があります。
ただし、前回保護観察付きの執行猶予を言い渡された者が、保護観察期間中に再犯した場合は対象外となるため、注意が必要です。
「情状に特に酌量すべき事情」とは、主に以下のようなものが挙げられます。
- 被害者との示談成立
被害者への被害弁償や謝罪が済んでいる - 深い反省と更生の見込み
反省文の提出、家族や職場の支援、再犯防止策が整っている - 犯行態様が軽微
犯行態様に悪質性が認められない、被害範囲が小さい - 社会的影響や本人の事情 など
高齢、病気、扶養家族の存在など
情状酌量を目指すには、示談・反省・社会復帰の準備を徹底的に示すことが大切です。弁護士に相談・依頼し、有利となる事情を適切に主張・立証してもらうのが良いでしょう。
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前科をつけないために弁護士へ相談するメリット
前科を避けるための最善策は、「不起訴処分」の獲得です。
日本の有罪率は99.9%と高く、起訴されれば100%に近い確率で有罪判決が下されるため、弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。
弁護士に相談すると、以下のようなメリットを得られます。
- 被害者との示談成立により、不起訴の可能性が高まる
- 捜査機関による取り調べでの対応について、適切なアドバイスをもらえる
- 被害弁償や謝罪文の作成など、反省の姿勢を示す方法を教えてもらえる
- 再犯防止策の作成や準備についてサポートを受けられる など
刑事事件の知識や経験が豊富な弁護士であれば、より充実した法的サポートを提供できるでしょう。
不起訴にしたい・前科をつけたくない方は、以下のページも併せてご覧ください。
不起訴処分とは?無罪との違いや不起訴獲得のポイント執行猶予でも前科はつくため、回避するには早めに弁護士へご相談ください
執行猶予がついても、前科の事実は基本的に生涯にわたって残ります。
前科がつけば、資格の取得が制限されたり、就職できる業種が限られたりするなど、さまざまな場面で不利益を受ける可能性があるため、不起訴処分の獲得は特に重要といえます。
早期に弁護士へ相談し、示談交渉や検察への働きかけを行う必要があるでしょう。
弁護士は、被害者との示談成立や反省の姿勢を示すための戦略を早期に立て、前科の回避を目指します。
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