特別受益証明書とは?記載例や作成する際の注意点を解説
この記事でわかること
相続人の中に、被相続人から相続分以上の贈与(特別受益)を受けていた方がいる場合、特別受益証明書を作成することで、相続手続きを円滑に進められることがあります。
ただし、求められるままに作成してしまうと、本来受け取れるはずの遺産を放棄する結果になったり、借金だけを相続してしまったりする危険もあるので注意しなければなりません。
本記事では、【特別受益証明書】の意味や記載例、作成する際の注意点をわかりやすく解説していきます。
目次
特別受益証明書とは
特別受益証明書とは、亡くなった人(被相続人)から生前贈与などの特別受益を受けた相続人(特別受益者)が、自分の相続分がないことを示すための確認書類です。
相続分がないことの証明書や相続分不存在証明書とも呼ばれます。
“相続放棄”とは異なり、家庭裁判所の手続きは不要です。
特別受益により相続分がゼロになる人を明確にできるため、遺産分割協議や相続登記などの相続手続きをスムーズに進められる効果があります。
特別受益とは
特別受益とは、被相続人からの贈与や遺贈によって、特定の相続人だけが特別に受けた利益のことです。
相続の際に、特別受益を考慮せずそのまま遺産分割を行うと、相続人間で不公平が生じてしまいます。
そのため、相続人の中に特別受益者がいる場合は、特別受益を「相続財産の前渡し」とみなし、相続財産にいったん戻したうえで各相続人の取得分を計算する必要があります(特別受益の持ち戻し)。
特別受益が多額に及ぶケースでは、持ち戻しによって実際の相続分がゼロになることもあります。
特別受益の具体例
特別受益に該当するのは、相続人に対する遺贈と贈与(生前贈与・死因贈与)です。
遺贈は、基本的にすべて特別受益となります。
一方、贈与はすべて対象になるわけでなく、婚姻・養子縁組・生計の資本など、特定の相続人を優遇する目的の贈与に限定されます。
特別受益に該当するものと具体例
①遺贈
- 遺言によって相続人に与えられたすべての財産
②婚姻のための贈与
- 結婚持参金、支度金
- 結婚式費用
- 新居、家財道具、車などの購入資金 など
③養子縁組のための贈与
- 養子縁組の際の持参金、支度金
- 養子縁組を前提とした事業資金 など
④生活の資本としての贈与
- 住宅購入資金
- 不動産の贈与
- 開業資金や、家業を継ぐ子への事業資産の譲渡
- 扶養の範囲を超える生活費や、高額な教育費 など
特別受益証明書を作成する目的・メリットとは?
特別受益証明書は、特別受益者が自らに相続分がないことを証明し、相続手続きを簡素化する目的で作成されます。
さらに、特別受益証明書を作成することで次のようなメリットも得られます。
- 遺産分割協議への参加が不要になる
- 不動産などの相続登記に使用できる
- 未成年者の特別代理人の選任が不要になる
遺産分割協議への参加が不要になる
特別受益証明書を作成すると、特別受益により相続分がないことを示せるため、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産分割の方法を話し合う手続きです。
相続人全員の合意が必要なため、相続人の人数が多かったり関係性が複雑だったりすると、協議が難航して思わぬトラブルが起きる場合もあります。
特別受益証明書を作成すれば、協議などの煩わしい手続きや相続人間のトラブルを避けられるので、特別受益以外の財産を求めない方にとっては非常に有効な方法といえるでしょう。
遺産分割協議について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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不動産などの相続登記に使用できる
特別受益証明書は、法務局で不動産の相続登記を行う際にも使用できます。
通常、遺産分割によって取得した不動産の相続登記には、相続人全員が署名・押印した「遺産分割協議書」が必要です。
しかし、特別受益者が「自分に相続分がない」と特別受益証明書で示し、署名・押印と印鑑証明書を添えることで、その人は遺産分割協議書に署名・押印する必要がなくなります。
不動産を取得しない特別受益者全員が特別受益証明書を作成すれば、遺産分割協議書そのものが不要となり、証明書を添付するだけで相続登記が行えることもあります。
未成年者の特別代理人の選任が不要になる
特別受益者が未成年の場合、特別受益証明書を作成するだけで「特別代理人」の選任が不要になります。
通常、遺産分割協議や相続放棄といった手続きは未成年者だけでは進められず、親権者が法定代理人として対応します。
未成年者と親権者の両方が相続人となるケースでは、利益相反が生じるため、家庭裁判所で特別代理人を選任しなければなりません。
一方、特別受益証明書は「特別受益によって相続分がない」という事実を示すだけの書面なので、未成年者本人の印鑑証明書が添付されていれば、親権者や法定代理人の同意や署名・押印は必要ありません。
特別代理人を選任する手間が省けるため、相続手続きをスムーズに進められるのが大きなメリットです。
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特別受益証明書の書き方と記載例

特別受益証明書に、指定された書式はありません。
特別受益者に相続分がないことを示せれば問題ありませんが、最低でも次の項目は記載しておくべきでしょう。
- 書類のタイトル(特別受益証明書)
- 被相続人の氏名
- 被相続人の最後の住所(本籍)
- 被相続人の死亡年月日
- 特別受益があったこと、相続分がないことを示す内容
- 証明書の作成年月日
- 作成した特別受益者の住所
- 作成した特別受益者の氏名
- 作成した特別受益者の押印(実印)
特別受益証明書では、贈与や遺贈によって取得した財産の種類・金額・年月日などの具体的な内容まで記載する必要は基本的にありません。
曖昧な書き方をすると、後でトラブルの原因になりかねないため、内容はシンプルに、誤解のない表現で書くことが重要です。
相続登記に特別受益証明書を使う場合は、印鑑証明書も添付しましょう。
特別受益証明書に関するリスクと注意点
特別受益証明書は、相続手続きの簡素化に役立つ一方で、次のようなリスク・注意点もあります。
- 安易に特別受益証明書に署名・捺印しない
- 借金を相続したくない場合は相続放棄の手続きが必要
- 贈与税や相続税の申告が必要になることがある
安易に特別受益証明書に署名・捺印しない
特別受益証明書は、一度署名・捺印してしまうと後から取り消すのが難しいため、安易に応じると不利な遺産分割につながりかねません。
証明書には贈与や遺贈の具体的な内容まで書く必要はないため、特別受益者を遺産分割協議から外すことを目的に、他の相続人が簡単に作成できてしまう点にも注意が必要です。
「なぜ特別受益証明書が必要なのか」「本当に自分の相続分はないのか」を確認しないまま安易に応じてしまうと、適切な財産を受け取れず不利益を被るおそれがあります。
遺産を隠されたり、不公平な分割が行われたりしても、自ら証明書に署名・捺印した以上、覆すのは極めて難しくなります。
特別受益が明らかで、相続分がないと自身が納得できる場合以外は、他人が作成した特別受益証明書への署名・捺印は避けましょう。
借金を相続したくない場合は相続放棄の手続きが必要
特別受益証明書を作成しても相続放棄したことにはならないので、被相続人の借金を相続したくない場合は、相続放棄の手続きも必要です。
特別受益証明書は、あくまで「プラスの財産に関して相続分がないこと」を証明するものなので、借金を含む相続そのものを放棄したことにはなりません。
「プラスの財産は一切相続しないのに、借金などの返済義務は負う」という事態になりかねないため、マイナスの財産を相続したくない場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要があります。
期限を過ぎると基本的に相続放棄が認められないので、早めの確認と対応が大切です。
相続放棄について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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贈与税や相続税の申告が必要になることがある
特別受益証明書を作成した特別受益者は、遺産そのものを相続しない場合でも、贈与税や相続税の申告が必要になるケースがあります。
特別受益は、贈与や遺贈によって受け取った“利益”を意味するため、贈与の内容によっては贈与税、遺贈の内容によっては相続税の課税対象になる可能性があります。
「特別受益証明書を作成したから税務申告は不要」と誤解されている方も多いです。
申告漏れがあると、追加で加算税や延滞税が発生する可能性もあるので、受け取った財産の種類・金額・時期などをふまえて、税務申告が必要かどうかを慎重に確認することが大切です。
特別受益者が死亡していても特別受益証明書を利用できる?
特別受益者が亡くなり「代襲相続」や「数次相続」が発生する場合でも、特別受益証明書を作成し、相続登記などで利用することは可能です。
- 代襲相続の場合
代襲相続とは、本来の相続人(子供)が被相続人(親)よりも先に死亡した場合などに、孫や甥・姪が代わりに相続人となる制度です。
亡くなった相続人名義の特別受益証明書を作成し、代襲相続人全員が署名・押印すれば利用できます。 - 数次相続の場合
数次相続とは、相続手続きの途中で相続人が死亡し、新たに相続が発生した状態です。
亡くなった相続人名義の特別受益証明書を作成し、その相続人全員が署名・押印すれば利用できます。
ただし、提出先によって扱いが異なる場合があるので、事前に確認しておきましょう。
特別受益証明書に関するQ&A
他の相続人が特別受益証明書に勝手に署名・押印するとどうなりますか?
他の相続人が、本人の同意なく勝手に特別受益証明書に署名・押印した場合、その書類は「偽造」とみなされ、法的に無効となります。
無効な証明書に基づいて行われた相続手続きも無効となり、やり直しとなる可能性があります。
状況によっては、有印私文書偽造罪や偽造有印私文書行使罪といった刑事責任を問われることもあるので、気付いた段階で弁護士に相談し、早めに適切な対応を取ることが大切です。
相続税を申告する際に特別受益証明書を利用できますか?
相続税の申告において、特別受益証明書単体での利用はほとんど認められません。
ただし、「配偶者の税額軽減」などの特例を適用する際は、次のような条件を満たしていれば補助資料として認められる可能性があります。
- 特別受益証明書が、実際に特別受益として法定相続分以上の財産を受け取っている事実に基づいて作成されている
- 特別受益の明細や登記事項証明書など、他の財産を取得したことを客観的に示す書類がそろっている
特別受益証明書は、基本的に“相続関係”や“遺産分割の状況”を補足説明するための書類なので、利用にあたっては事前に提出先に確認すると安心です。
特別受益を認めさせるにはどうしたらいいですか?特別受益の証明方法はありますか?
特別受益を認めてもらうには、特別受益にあたる贈与や遺贈があったことを示す証拠が必要です。
証拠になり得るものは、次のとおりです。
- 贈与契約書、誓約書、念書
- 預貯金通帳、取引明細、残高証明
- 金融機関の取引報告書
- クレジットカード明細
- 不動産登記事項証明書、不動産売買契約書
- 自動車検査証、車の購入明細、売買契約書
- 学費の領収証、学費納入に関する書類
- 開業届の控え、取引明細や履歴
重要なのは、「特別受益の事実」と「特別受益者が特定できる資料」を積み重ねることです。
複数の資料を組み合わせると説得力が高まるので、なるべく多くの証拠を集めましょう。
特別受益証明書で不安なことがあれば、相続手続きに詳しい弁護士にご相談下さい。
特別受益証明書は、主に相続手続きを円滑に進めるために作成されますが、悪用されるケースも少なくありません。
特別受益の目的や金額によっては相続分がゼロにならないこともあるため、安易に証明書を作成するとトラブルに発展する可能性があります。特別受益証明書を作成するかどうかは、慎重な判断が必要でしょう。
相続手続きに詳しい弁護士であれば、特別受益証明書の必要性や書き方についてアドバイスできるほか、トラブルになった場合のサポートも任せられます。
「生前贈与を受けた相続人に特別受益証明書を作成してほしい」「他の相続人から特別受益証明書を作成してほしいと言われた」などとお悩みの方は、早めに弁護士へ相談してみましょう。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)





