略式起訴とは?前科はつく?流れや罰金相場をわかりやすく解説
略式起訴とは、簡単にいうと、公開の裁判を開かず、裁判官が書面を中心に審理を行う手続きです。
公開の裁判が開かれる正式起訴よりも、短期間で手続きが終了するといった特徴があります。
通常の起訴とは異なるため、「前科がつくのか」「どのような流れで進むのか」などの不安を抱える方も多いでしょう。
この記事では、略式起訴と通常の起訴の違いや前科の有無、手続きの流れ、罰金の相場などについて、詳しく解説していきます。
略式起訴(りゃくしききそ)とは
略式起訴とは、検察官が裁判所に対し、正式な裁判を開かず書面による審理で罰金などの刑を求める手続きです。
通常の裁判と比べて簡易的な方法で事件が処理されるため、比較的短期間で結論が出るのが特徴です。
ただし、略式起訴されると通常は有罪となり、罰金や科料といった刑罰が科されます。
略式起訴後は簡易裁判所から「略式命令」が出され、命令に従って罰金などの支払いを行う必要があります。
略式命令とは
正式な裁判を経ずに出され、100万円以下の罰金または科料を科す、略式手続における裁判所の命令です。
略式起訴と通常の起訴の違い
通常の起訴(正式起訴)は、公開の法廷で裁判を開き判決が下されますが、略式起訴は法廷での審理が行われず、書面による審理を中心に処理されます。
正式起訴の場合、被告人は裁判に出廷し、弁護人側と検察側がそれぞれ主張・立証を行ったうえで、裁判官から判決が言い渡されます。
一方、略式起訴の場合は、法廷での審理が行われないため、被告人が十分に主張する機会は基本的にありません。
| 略式起訴 | 正式起訴 | |
|---|---|---|
| 裁判 | 非公開の書面審理 | 公開法廷での裁判 |
| 被疑者の同意 | 必要 | 不要 |
| 裁判での判決 | 基本的に有罪 | 有罪または無罪 |
| 刑罰の制限 | 100万円以下の罰金刑または科料 | なし |
略式起訴の要件
略式起訴は、どのような事件でも認められるわけではなく、以下の要件をすべて満たす場合にのみ行われます。
- 簡易裁判所が管轄する事件であること
- 100万円以下の罰金刑または科料にとどまる事件であること
- 被疑者が略式手続に同意していること
略式起訴は、書面審理のみで結論が出る簡易な手続きなので、被疑者が十分な主張や立証を行う機会がありません。
そのため、被疑者本人の同意が必要とされており、被疑者が略式起訴に同意しない場合は、通常どおり公開の法廷で審理される正式起訴へと移行します。
同意するかどうかは、現状を踏まえて慎重に判断する必要があるため、不安な場合は弁護士への相談を検討しましょう。
略式起訴のメリット・デメリット
略式起訴のメリットとデメリットは、主に下表のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
略式起訴は裁判に出廷する必要がないため、早期に事件が終了する点が大きなメリットといえます。
通常の裁判では、起訴後から初公判まで1ヶ月以上かかることが多く、平日に何度も出廷しなければならないケースも少なくありません。
ただし、略式起訴は書面審理のみで手続きが進むことから、自分の主張を十分に述べる機会が少ないです。
拘禁刑は科されないものの、基本的に有罪となる点は大きなデメリットといえます。
略式起訴で前科はつく?
略式起訴では、被疑者同意のもと書面審理が行われ、略式命令が出されるのが通常です。そのため、基本的には有罪となり、前科がつきます。
出される略式命令は、「100万円以下の罰金または科料」の刑罰です。
前科がつくと、就業上の不利益(解雇など)や社会生活への影響が生じるおそれがあるほか、再犯時に刑が重くなる可能性もあるため注意が必要です。
前科を避けるためには、不起訴処分の獲得や正式裁判による無罪の主張などを視野に入れる必要があり、早期に適切な対応をとることが重要となります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
罰金でも前科がつく!略式起訴は会社にバレる?
略式起訴は非公開の書面審理で進められるため、会社にバレる可能性は一般的に低いとされています。
裁判に出廷する必要がないため会社を休まずに済み、捜査機関から会社へ直接連絡がいくことも通常はありません。
また、有罪となった場合も刑務所に収容されることはなく、罰金の納付によって手続きは終了します。
ただし、会社にバレる可能性がまったくないわけではありません。
例えば、横領など業務に関連する犯罪の場合や、会社関係者が被害者である場合は発覚のリスクが高まります。
また、社会的関心の高い事件であれば、報道される可能性もあります。
略式起訴で執行猶予はつく?
略式起訴は、罰金や科料を科す手続きであるため、執行猶予がつくことは通常ありません。
執行猶予は拘禁刑に付される制度であり、略式命令の対象とならないためです。
もっとも、罰金刑でも前科がつくことに変わりはなく、決して軽い処分とはいえません。そのため、略式起訴を受けた場合は、「執行猶予がつくかどうか」ではなく、「罰金刑を受け入れるかどうか」という点が重要となります。
なお、略式起訴に同意しない場合は、正式裁判に移行することになります。
執行猶予の詳細は、以下のページをご覧ください。
執行猶予とは?略式起訴の手続きの流れ
略式起訴は、主に以下のような流れで進みます。
- ① 検察官が略式起訴と判断
- ② 被疑者が同意書に署名・押印
- ③ 簡易裁判所による略式命令
- ④ 罰金・科料の納付
①検察官が略式起訴と判断
検察官は、捜査結果を踏まえ、被疑者を起訴するか不起訴とするかを決定します。
また、起訴する場合は、正式起訴と略式起訴のどちらにするかを判断します。
なお、略式起訴はすべての事件が対象となるものではなく、「簡易裁判所の管轄事件であること」など、一定の要件を満たす場合にのみ行われるのが基本です。
②被疑者が同意書に署名・押印
検察官は、被疑者に略式起訴の概要を説明し、同意するかどうかを問います。
略式起訴に同意する場合は、同意書に署名・押印を行いますが、正式裁判を選択することも可能です。
同意するかどうかは、略式起訴のメリット・デメリットを踏まえたうえで慎重に判断することが大切です。
③簡易裁判所による略式命令
被疑者の同意を得た後、検察官は、略式命令請求を行う旨を記載した「起訴状」や「同意書」などを簡易裁判所に提出します。
裁判官が提出書類を審査し、要件を満たしている場合には、原則として請求から14日以内に略式命令が出されます。
なお、内容に不服がある場合は、略式命令を受けてから14日以内に正式裁判を行うよう請求することが可能です。
④罰金・科料の納付
略式命令が確定すると、後日自宅に罰金・科料の納付書が届きます。
納付書が届いたら、記載された期限内に、指定の金融機関や検察庁で罰金や科料を一括払いで納付しなければなりません。
納付が完了すれば、刑事手続きは終了となりますが、略式命令は有罪判決と同様の効力を持つため、確定した時点で「前科」がつきます。
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略式起訴された場合の罰金の相場
略式起訴で科される罰金の相場は、20万~50万円程度です。ただし、法定上は「1万円以上100万円以下」のため、事件内容によって金額は大きく変動します。
また、下表のとおり、罪名によっても相場は異なります。
| 罪名 | 罰金額の目安 |
|---|---|
| 暴行・傷害 | 10万〜30万円程度 |
| 窃盗(万引き等) | 20万〜30万円程度 |
| 迷惑行為防止条例違反(痴漢・盗撮) | 20万〜30万円程度 |
| 無免許運転 | 20万~25万円程度 |
| 酒気帯び運転 | 30万~40万円程度 |
| 過失運転致死傷 | 10万~50万円程度 |
罰金を払えないとどうなる?
略式命令で決まった罰金を期限内に納付できない場合は、労役場留置(ろうえきじょうりゅうち)として労役に服することになります。
労役場留置とは、確定した罰金や科料が支払えない者が、刑事施設で労働に従事する制度です。
通常、罰金は1日あたり5000円程度に換算され、罰金額に達するまで労役が続きます。例えば、30万円の罰金が科された場合、約60日間の収容となります。
労役場留置には最長2年間の上限があるため、罰金の支払いが難しい場合は放置せず、早めに対処することが重要です。
略式起訴に不服の場合は申し立てを行う
略式命令の内容に納得できない場合は、正式裁判の請求を行うことが可能です。
ただし、「略式命令の告知を受けてから14日以内」に請求する必要があるため、注意が必要です。
請求を行うと正式裁判が開かれ、裁判官から判決が言い渡されると略式命令は効力を失います。
正式裁判では、被告人側に主張や立証する機会が与えられますが、その主張が必ず認められるとは限りません。
審理の結果によっては、かえって重い刑罰が科される可能性もあります。
そのため、正式裁判の請求をするかどうかは、証拠状況や事件の見通しを踏まえて慎重に判断する必要があります。
独断で決めるのではなく、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、適切な対応を検討することが重要です。
略式起訴について弁護士に相談するメリット
弁護士に相談することで、略式起訴を受け入れるべきかどうかのアドバイスを受けられます。略式起訴を打診された場合、同意すべきかどうかは慎重に判断する必要があります。
略式起訴は比較的短期間で手続きが終了しますが、主張や立証を行う機会は十分にありません。
被害者がいる事件では、示談交渉により不起訴処分を目指せる可能性もあります。
また、略式起訴に同意せず正式裁判に移行する場合も、弁護士による適切なサポートを受けることができます。
刑事事件における示談の詳細は、以下のページをご覧ください。
刑事事件における示談とは?略式起訴に関するよくある質問
公務員が略式起訴されるとどうなりますか?
公務員が略式起訴によって罰金刑や科料を受けても、直ちに失職することはありません。
公務員は、法律上、「拘禁刑以上の刑」に処せられた場合に失職すると定められているためです(国家公務員法第38条等)。
ただし、各機関で定められている懲戒処分の基準によっては、罰金刑であっても免職となる可能性があります。
また、処分の重さは、事件の内容や個別事情によって異なるだけでなく、職務との関連性や社会的影響の程度によっても左右される場合があります。
略式起訴の罰金はいつ払いますか?
略式起訴に同意した場合、あとから撤回できますか?
裁判所へ略式起訴が請求される前であれば、略式手続に対する同意の撤回は理論上可能です。
しかし、すでに手続きが進んでいることも多く、撤回が難しい場合がほとんどです。
略式命令が出された後でも、告知を受けてから14日以内であれば正式裁判を請求することができます。
この場合は通常の裁判に移行するため、主張や立証の機会を得ることができます。適切に対応するためには、早期に弁護士に相談することが重要です。
略式起訴を拒否したら刑は重くなりますか?
略式起訴を拒否しても、自動的に刑が重くなるわけではありませんが、正式裁判での審理によっては、より重い刑が科される可能性もあります。
反対に、正式裁判で有利な主張や証拠が評価されれば、無罪や軽い処分となる余地もあります。
略式起訴を拒否するかどうかは、「無罪を主張できるのか」「示談は成立できるのか」などの事情を踏まえて判断することが重要です。
安易に判断せず、弁護士に相談して検討することをおすすめします。
略式起訴を打診されたらすぐに弁護士にご相談ください
略式起訴は、裁判を開かずに比較的短期間で事件が終了するメリットがある一方で、有利な主張や立証を行う機会がないというデメリットもあります。
略式命令により罰金刑が科されると、基本的に有罪となり前科がつくため、略式起訴に応じるかどうかは慎重に検討しなければなりません。
略式起訴に同意すべきかどうかは、事件の内容や証拠状況、前科の有無などによって異なります。適切に判断するためには、弁護士に相談し、個別事情を踏まえたうえで検討することが大切です。
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後悔のない選択をするためにも、できるだけ早めに弁護士にご相談ください。
