令状(逮捕状)なしでも逮捕される?現行犯・緊急・通常逮捕による違い
逮捕は「令状(逮捕状)がなければできない」と考える方も多いでしょう。しかし、逮捕にはいくつか種類があり、令状なしでも逮捕できる場合があります。
どのような状況であっても、自由に逮捕が認められているわけではありませんが、突然令状なしで逮捕されることもあるため注意が必要です。
この記事では、令状(逮捕状)とは何かという基本的な内容から、逮捕状が必要な場合と不要な場合まで、詳しく解説していきます。
令状(逮捕状)なしで逮捕できる?
逮捕は、原則として裁判官が発布した令状(逮捕状)に基づき行われますが、例外的に令状がなくても逮捕できる場合があります。
逮捕には、通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕の3種類があり、このうち現行犯逮捕と緊急逮捕は令状がなくても逮捕可能です。
逮捕の種類については、以下のページをご覧ください。
逮捕にはどんな種類がある?逮捕状とは
逮捕状とは、裁判官が発布する「令状」の一種であり、特定の被疑者を逮捕することを許可する旨が記載された公的な書面です。
逮捕は、人の身体の自由を制限する重大な処分であることから、適法性や必要性を事前に裁判官が確認する仕組みになっています。
逮捕状の請求は、警察官や検察官が捜査結果を基に、逮捕の必要性を判断したうえで行われます。
裁判官は請求内容を精査し、逮捕の理由や必要性が認められる場合にのみ逮捕状を発布するため、請求すれば必ず認められるわけではありません。
なお、逮捕状には有効期間があり、原則として発布から7日以内に執行する必要があります。
逮捕状の記載内容
逮捕状の記載内容は、主に以下のとおりです。
- 被疑者の氏名、年齢、住居、職業
- 罪名(罪状の名称)、被疑事実の要旨
- 身柄を連行する警察署などの名称
- 逮捕状の有効期間
- 発布した裁判官の記名・押印
このように具体的な情報が記載されるのは、無関係の人が誤って逮捕されることを防ぐためです。逮捕状には、逮捕の手続きを適正に行うための重大な役割があるといえます。
また、逮捕状に基づいて逮捕が行われる場合は、被疑者に内容が提示されることで、どのような理由で身柄が拘束されるのかが明らかになります。
逮捕状は単なる形式的な書面ではなく、強制的に身柄を拘束するための法的な根拠となる重要なものといえるでしょう。
現行犯逮捕は逮捕状なしで逮捕が可能
現行犯逮捕は、刑事訴訟法第213条により、逮捕状がなくても行うことが認められています。
現行犯とは、犯罪の最中や直後の状況を指します。犯人であることが明らかなので、誤認逮捕のおそれは低いと考えられるでしょう。
また、その場で確保しなければ犯人が逃走するおそれがあるなど、緊急性も高いです。
このように、逮捕の必要性と緊急性が高い場合には、例外的に逮捕状なしでの逮捕が認められています。
現行犯逮捕とは
現行犯逮捕とは、まさに犯罪を行っている最中、または犯罪が行われた直後に、犯人をその場で拘束する逮捕の方法です。
現行犯逮捕の要件は、犯行と逮捕との間に時間的・場所的な隔たりがないことです。
犯人であることが明確な場合には、裁判官への逮捕状請求なしに、その場で身柄を拘束される可能性があります。
現行犯逮捕の特徴は、緊急性が高く、誤認逮捕のおそれが低い点です。そのため、警察官や検察官といった捜査機関だけでなく、一般人でも身柄を拘束することが認められています(私人逮捕)。
なお、私人逮捕された場合は、原則としてその後速やかに警察へ身柄を引き渡されます。
緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求
緊急逮捕は、重大犯罪に限り、逮捕状がなくても例外的に行うことができます。
緊急逮捕が認められるのは、逮捕状を請求している間に被疑者が逃走したり、証拠を隠滅したりするおそれがあるためです。
現行犯逮捕と似ていますが、緊急逮捕の場合は、逮捕時に被疑者へ身柄拘束の理由を告げる必要があり、逮捕後は速やかに逮捕状の発布を受けなければなりません。
逮捕状の請求が事後に行われる点が、現行犯逮捕との違いといえるでしょう。
また、ここでいう「重大犯罪」とは、死刑または無期・長期の拘禁刑にあたる罪のことです。具体的には、殺人罪や強盗罪、不同意性交等罪などが挙げられます。
緊急逮捕とは
緊急逮捕とは、裁判官による逮捕状の発布を待っていては対応が間に合わないほど、緊急性が高い場合に行われる逮捕の方法です。
緊急逮捕の要件は、以下のとおりです。
- 一定の重大犯罪に該当すること
- 犯罪の嫌疑が十分であること
- 逮捕状の発布を求める時間的余裕がないこと
- 事後に速やかに逮捕状の請求ができること
緊急逮捕はあくまで例外的な措置であり、4つの要件をすべて満たしている場合に限って認められます。
そのため、1つでも要件を満たしていない場合は「違法な逮捕」と評価される可能性があり、その場合は直ちに釈放されます。
通常逮捕は逮捕状が必要
通常逮捕を行う際は、原則として逮捕状が必要になります。
逮捕は、人の身体的自由を奪う重大な処分です。そのため、あらかじめ第三者である裁判官がその必要性や相当性を判断し、逮捕状を発布することが求められています(令状主義)。
令状主義は、捜査機関による不当な捜査や権限行使に歯止めをかけるための考え方です。
通常逮捕とは
通常逮捕とは、裁判官が発布した逮捕状に基づいて行われる逮捕の方法です。
憲法第33条や刑事訴訟法第199条1項に定められているもっとも基本的な逮捕の方法であり、後日逮捕とも呼ばれています。
通常逮捕の要件は、以下のとおりです。
- 罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
- 逃亡や証拠隠滅のおそれがあること
要件を満たす場合には、捜査機関が裁判官に対して逮捕状の発布を請求し、裁判官の判断を経て逮捕が行われます。
逮捕状が提示されない場合もある
通常逮捕は逮捕状に基づいて行われますが、逮捕状は原本が1通しか発布されないため、状況によってはその場で現物の逮捕状が提示されない場合もあります。
しかし、すでに逮捕状が発布されている旨と被疑事実の要旨を告げたうえであれば、捜査員が逮捕状を所持していなくても、通常逮捕を行うことが可能です。
これを、逮捕状の緊急執行といいます。特に、逃走中の被疑者や指名手配されている場合などに行われることが多いです。
その場で逮捕状が提示されなかったとしても、直ちに違法となるわけではない点に注意が必要です。
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逮捕状が出るまでの流れ
事件発生から逮捕状が出るまでの流れは、主に以下のとおりです。
- ①警察が事件を認知し、捜査を開始する
- ②捜査をもとに被疑者を特定する
- ③裁判官に逮捕状の発布を請求する
- ④裁判官が審査し、逮捕状を発布する
警察は通報などにより事件を認知した後、関係者からの事情聴取や証拠の収集といった捜査を開始します。
捜査結果から被疑者が特定されると、警察や検察は裁判官に対して逮捕状の発布を請求し、逮捕の準備を進めるのが一般的です。
裁判官は、逮捕の必要性や犯罪の嫌疑の有無を審査したうえで、問題がなければ逮捕状を発布します。
しかし、実務上は、逮捕状を請求する前に警察内部で厳しく精査が行われるため、裁判官が発布を却下するケースは多くありません。
逮捕状について通知されることはない
逮捕状が請求されたり発布されたりしても、その事実が事前に本人へ通知されることはありません。あらかじめ知らせてしまうと、被疑者が逃亡したり、証拠を隠滅したりするおそれがあるためです。
逮捕には、このような逃亡・証拠隠滅を防ぐ目的があるため、突然身柄を拘束されるケースも多いです。事件を起こした後に、何の前触れもなく警察が来ることも珍しくありません。
突然の出来事に戸惑うかもしれませんが、こうした対応は法律上予定された手続きであるといえます。
逮捕の前兆や予兆がないからといって、安心するのは大変危険です。
逮捕状の内容に覚えがなければ拒否できる?
裁判官が逮捕を認めて逮捕状が発布されている場合は、身に覚えがなかったとしても、逮捕を拒むことはできません。
逮捕状には強い法的効力があるため、仕事や予定を理由に拒否することはできず、逃走すれば指名手配となる可能性があります。
不利な状況に陥らないためには、冷静に対応することが重要です。対応が難しい場合には、弁護士に相談することも検討すべきでしょう。
逮捕された場合の対処法
すぐに弁護士を呼ぶ
逮捕された場合、最優先で行うべきなのは「弁護士への相談」です。
弁護士であれば、逮捕直後から接見(面会)が可能なため、早期段階から弁護方針を構築できます。
外部とやり取りが制限されるなか、具体的かつ適切なアドバイスを受けられることは、精神的負担の軽減に大きくつながります。
また、逮捕後に行われる捜査機関の取り調べでは、やり取りした内容がすべて供述調書として記録されるため、不利な発言は避けなければなりません。
取り調べでの対応は、その後の処分や起訴の判断に大きく影響します。なるべく早めに弁護士に相談し、対応方針を整理しておくことが重要です。
接見について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
接見とは?ご家族の方の不安を弁護士が取り除きます早期釈放を目指す
逮捕されると長期にわたって身柄拘束を受ける可能性があるため、早期釈放を目指すことが重要です。
逮捕後にそのまま勾留された場合、最長で23日間の身体拘束を受ける可能性があります。
その間は仕事や学校に行くことができず、家庭生活にも深刻な影響が及びかねません。こうした社会生活への影響を抑えるためには、弁護士による法的サポートを受けることが大切です。
弁護士であれば、被害者がいる事件では示談交渉を進めたり、検察官に対して勾留の必要がない旨の意見書を提出したりすることができます。
また、取り調べでの対応もしっかりアドバイスできるため、早期釈放につながる可能性が高まります。
刑事事件における示談については、以下のページをご覧ください。
刑事事件における示談とは?令状(逮捕状)を請求されるおそれがある場合は、早急に弁護士へご相談ください
逮捕は、必ずしも逮捕状が必要とは限りません。状況によっては、逮捕状がなくても突然身柄を拘束される場合があります。
また、いったん逮捕状が発布されれば、基本的に拒否することはできません。そのため、逮捕状を請求されるおそれがある段階で、できるだけ早く弁護士に相談し、今後の対応を検討することが大切です。
弁護士法人ALGでは、刑事事件に強い弁護士が迅速に対応し、初動対応から身柄釈放に向けた活動まで一貫してサポートします。事前に弁護士が関与することで、逮捕や勾留の回避を実現できる可能性が高まります。
突然の逮捕に備えるためにも、逮捕されるおそれがあると不安に感じる方は、お気軽にご相談ください。
