ニューズレター
2024.May vol.114
不動産業界:2024.5.vol.114掲載
賃貸物件のオーナーをしていた父が2年前に亡くなったため、親族間で相続の話し合いをした結果、私が賃貸物件を相続することになりました。ところが、相続の際、賃貸物件の相続登記を行うことを失念していました。今年の4月から相続登記が義務化され、相続登記をしていないとペナルティが課されるとも聞いています。遅ればせながら相続登記手続きを行うつもりですが、私は相続登記を怠ったものとして、ペナルティが課されてしまうのでしょうか?
令和6年4月1日から、これまで任意であった相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが法的義務となりました。相続登記を怠ったことにつき、正当な事由がない場合は、10万円以下の過料が科されることになります。この制度は、令和6年4月1日以前に生じた相続にも適用されます。
ご相談者様のご相談内容の場合、お父様が亡くなり、相続したことを知った日は2年前とのことですので、3年が経過する前にお早めに相続登記の手続きをとっていただければ、過料が科されることはありません。
相続人が相続登記を怠っているために、登記簿上から不動産の現在の所有者がわからない土地・建物が日本全国に数多く存在し、公共工事の阻害要因、空き家問題を生じさせる等、社会問題化している現状があります。そこで、不動産登記法の改正が行われ、令和6年4月1日から、従前は任意とされていた相続登記が義務化されました。
相続登記を怠ったために不動産の現在の所有者が不明になると、不動産に関して取引等をする時に悪影響が生じることがあります。
例えば、亡くなった親が賃貸物件を所有していたところ、当該物件を不動産会社等に売却したいと考えた時に、登記簿上の登記名義が曽祖父のままになっていたような場合、不動産登記の名義が売主と違う名義であることから、売買が円滑に進まないことが考えられます。そこで、いざ登記を自己名義にしようと試みたものの、曽祖父が死亡した時には数名程度であった相続人の数が、相続登記を怠っている間に複数名の相続が発生しており、数十名に膨れ上がり、権利関係が複雑化してしまっていたということもあります。そうすると、不動産売買にかなりの時間を要することになってしまいます。こうした事態を避けるべく、相続によって不動産の権利を取得した際には、早めに相続登記を行う必要があります。
今回の相続登記義務化は、令和6年4月1日以前の相続についても適用されるため、相続の手続きが終わったとお思いの方におかれても、今一度相続した不動産について相続登記が遺漏なく完了しているか確認する必要があります。今回の制度改正においては、経過措置が設けられており、令和6年4月1日以前になされた相続で得られた不動産については、令和9年3月31日までに相続登記を完了するよう求められています。
仮に、相続人が多数にわたるために遺産分割協議の長期化が見込まれる場合であっても、今回の制度で新しく設けられた相続人申告登記制度を活用し、自身が相続人であることを申告すれば、3年以内の相続登記義務を履行したものとして扱ってもらうことも可能です。いずれにしても、被相続人が亡くなった場合には、自身が相続人であるか否か確認を行った上で、早めに相続登記を行うことが必要となります。
相続人間で遺産分割の協議がまとまらない場合や、相続登記を怠ったことによって、不動産に関する権利関係が複雑化・紛争化した際は、弁護士等の専門家までご相談ください。