ニューズレター
2024.Jul vol.116
不動産業界:2024.7.vol.116掲載
数年前から私の所有する土地の上に原付バイクが放置されるようになりました。現在放置されている原付バイクは合計二台で、一つはナンバープレートのあるもの、もう一つはナンバープレートのないものです。誰のものかはわかりません。私としては、早いところこれらを敷地内から排除したいと考えています。どのような対応を取ればよいでしょうか。
ナンバープレート付の原付バイクについては、まず弁護士に依頼し、所有者を調査した上で、判明した所有者に対して、所有権に基づき土地の明渡しを請求することが考えられます。他方で、ナンバープレートのない原付バイクについては、「準遺失物(…他人の置き去った物…をいう)」(遺失物法2条)として警察に届け出ることが考えられます。
他人の土地上に、権限なく物を放置することで、その土地を不法に占有している場合には、その土地の所有者は、放置物の所有者に対して、土地の明渡しを請求することができると考えられています。
本件では、敷地上に、ナンバープレートのある原付バイクとナンバープレートのない原付バイクがそれぞれ一台ずつ放置されているとのことですので、敷地の所有者は、これらのバイクの所有者が判明すれば、その所有者に対して、土地の明渡しを請求することができることになります。
ナンバープレート付の原付バイクについては、所有者情報を地方自治体が保有しているため、ナンバープレート付の原付バイクの所有者を調査する方法としては、地方自治体に所有者情報を照会する旨の弁護士会照会をする方法が考えられます(弁護士法23条の2)。地方自治体から回答が得られれば、ナンバープレート付の原付バイクの所有者を知ることができるでしょう。
もっとも、かかる弁護士会照会については、地方税法22条で秘密漏えいが禁じられていることなどを理由に、回答を拒絶する自治体もあります。そのため、常に情報を取得できるわけではないことに注意が必要です。
弁護士会照会をしたにも関わらず自治体が回答を拒絶した場合には、裁判外において本件バイクの所有者の特定を図ることは困難となります。この場合には、(実務上確立している方法とまではいえませんが、)訴状の被告欄を「住所 標識番号●●市う●●-●●の原動機付自転車の所有者の住所 氏名 標識番号●●市う●●-●●の原動機付自転車の所有者の氏名」と記載して訴えを提起した上で、裁判所に対し、釈明処分としての調査嘱託(民訴法151条1項6号)を求める上申をして、調査嘱託により特定を図る方法が考えられます。裁判所がこれに応じて調査嘱託をかけた場合には、地方自治体から回答が得られる可能性が高いでしょう。
ナンバープレートのない原付バイクについては、自治体も所有者を把握していないため、弁護士会照会や調査嘱託の方法は使えません。そのため、ナンバープレートのない原付バイクについて所有者を調査することは容易ではないでしょう。
もっとも、この場合には、「準遺失物(…他人の置き去った物…をいう)」(遺失物法2条)として警察に届け出ることが考えられます。これが受理された場合には、3ヶ月間の公告後、拾得者が所有権を取得するとされていますので(民法240条)、所有権の取得の手続きが済んだ後は、自由に処分することが可能となります。
このように、原付バイクの放置事案は、法的な対応が難しい類型の一つです。まずは弁護士に相談して、対応について検討することをお勧めします。