ニューズレター


2017.May Vol.30

無催告解除特約は意味があるの?


不動産業界:2017.5.vol.30掲載

私は、建物をY氏に貸しているのですが、賃料を6か月も支払ってくれないので、催告することなく賃貸借契約を解除し、建物の明渡しを求めたいと考えています。Y氏と締結した賃貸借契約には、無催告で解除できる旨の特約(以下、「無催告解除特約」といいます。)はありませんが、このよう特約がなくても法律上の問題はないでしょうか。


賃貸借契約において無催告解除特約がない場合であっても、賃借人が賃貸借契約の継続を著しく困難にさせるようなことをすれば、賃貸人は催告なくして解除することができるという判例があります。ただし、無催告解除特約がない場合において、賃料の未払いだけを理由に無催告解除するためには、賃料の未払い期間がかなり長くなければ認めらない傾向にあります。裁判例では、賃料未払の期間が11か月続いても無催告解除が認められなかったケースもあります。本件の場合、賃料未払の期間が5か月ですので、その他の事情がなければ、無催告解除ができる可能性は低いといわざるを得ません。


仮に本件で無催告解除の特約があった場合、解除できる可能性は高くなるのでしょうか。


無催告解除特約がある場合、催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存在すれば、解除できるという最高裁判例があります。例えば、「賃料1か月の未払いがあれば、催告することなく解除できる」旨の無催告特約があったケースでは、未払賃料の期間が5か月で無催告解除が認められた裁判例もありますので、本件で仮に無催告特約があった場合、解除できる可能性は高くなると考えられます。

さらに詳しく

1 賃貸借契約における信頼関係の破壊と解除の関係

一般的に、当事者間の契約関係を一方の債務不履行に基づいて解除する場合には、法律上、催告をする必要がありますが(民法541 条)、当事者間で催告をしなくても契約を解除できる旨の合意(以下、「無催告解除特約」といいます。)があれば、催告をしなくても契約関係を解除することができます。
しかし、賃貸借契約においては、判例は従来から上記の一般論を修正し、当事者間の信頼関係の破壊の程度によって解除の有効性を判断しているので、無催告解除特約があるからといって必ずしも無催告で解除できるわけではなく、また、無催告解除特約がなくても無催告で解除が全くできないわけではありません。
では、無催告解除特約は実務上意味がないのかといわれると、実はそうではありません。

2 判例の考え方

(1)無催告解除特約がない場合
無催告解除特約の存在が否定された事案において、最高裁昭和35年6月25日判決は、「民法五四一条により賃貸借契約を解除するには、他に特段の事情の存しない限り、なお、同条所定の催告を必要とするものと解するのが相当である。」と判示し、結論として、家賃の滞納が11か月分あり、その前にも度々不払いがあっても、無催告解除はできないと判断しました。

(2)無催告解除特約がある場合
一方、賃料の未払いが1か月以上あれば無催告で解除できる旨の特約があった事案について、最高裁平成43年11月21日判決は、「契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である。」と判示しました。
そして、同判例の事案では賃料未払の期間が5か月分でしたが、結論として解除は有効であるとされました。

(3)小括
判例が使う「特段の事情がない限り、無催告解除はできない」という表現は、平たく言うと、原則として無催告解除はできないことを意味し、他方、「あながち不合理とは認められない事情があれば、無催告解除ができる」という表現は、一応、無催告解除はできることを意味しており、両者は微妙に異なっています。

以上のとおり、賃貸借契約を無催告で解除する場合、無催告解除特約の有無は解除の有効性の判断に影響があります。賃貸人が、比較的短期間の賃料未払を理由に無催告解除をしたいのであれば、契約書条項に無催告解除特約を入れておく方が望ましいでしょう。

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