ニューズレター


2023.Feb vol.99

家賃保証会社の追い出し条項について


不動産業界:2023.2.vol.99掲載

当社は、賃貸住宅の賃借人の委託を受けて賃借人の賃料等の支払に係る債務を保証する事業を営む会社です。当社は、当社と賃借人との間の保証委託契約書において、当社が、賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約(以下「原契約」といいます。)を無催告で解除することができたり、一定の要件のもと原契約の目的物となっている住宅の明渡しを実現することができたりするような条項(以下「本件各条項」といいます。)を含めたいと考えているのですが、このようなことは可能でしょうか。


結論としては、本件各条項を保証委託契約に含めることは困難でしょう。

ご相談と類似の内容について、令和4年12月12日に、最高裁判決が出されました。

当該判決においては、適格消費者団体が、家賃保証会社の使用している、本件各条項と類似の条項を含む契約書等の使用を差し止めるという請求をした事案において、本件各条項と類似した内容の条項の定めが、任意規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するものであり、かつ、民法1条2項に規定する基本原則、すなわち信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、消費者契約法に反するとの判断が下されました。

さらに詳しく

1 はじめに

上記最高裁判決の前審である大阪高等裁判所の判決においては、本件各条項と類似の条項が、消費者契約法に違反していないという結論が出されていたのですが、最高裁判所において、当該判断が覆されました。

2 大阪高裁判決について

⑴ 無催告解除条項について

高裁は、家屋の賃貸借契約において、一般に、賃借人が賃料を1か月分でも遅滞したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃料が約定の期日に支払われず、そのため契約を解除するにあたり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に、無催告で解除権を行使することができる旨を定めた約定であると解するのが相当であるという最高裁判決を根拠に、問題となっている無催告解除の条項(具体的には、家賃保証会社は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて原契約を解除することができるものとする、というものです。)も、上記最高裁判決と同様に限定的に解釈されるものであると判断したうえ、消費者契約法に反しないと判断しました。

⑵ 明渡条項について

家賃保証会社が、明渡をすることができる場合として、厳格な条件(具体的には、①賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠ったこと、②家賃保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡が取れない状況にあること、③電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借している建物を相当期間利用していないものと認められること及び④同建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看守できる事情が存すること、という条件です。)を課していること、賃借人にも明渡義務や賃料等の更なる支払義務を免れるというメリットがあるということから、明渡条項が、消費者契約法に違反しないと判断しました。

3 最高裁判決について

⑴ 無催告解除条項について

最高裁は、問題となっている無催告解除条項自体に何ら限定を加える文言がないなか、限定的に解釈を行うことは、消費者と事業者との間の取引における同種の紛争の発生又は拡散を未然に防止し、もって消費者の利益を擁護することを目的とする差止請求の制度趣旨に反し、相当でないと判断し、また、原契約の当事者でもない家賃保証会社が、無催告で原契約を解除することができるという内容は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるとして、無催告解除条項は、消費者契約法に違反しているとの判断をしました。

⑵ 明渡条項について

最高裁は、明渡条項は、その内容が一義的に明らかでない要件のもと、原契約の当事者ではない家賃保証会社の一存で、賃借人の使用収益権が制限されることを認める条項であり、消費者契約法に違反していると判断しました。

本ニューズレターにおいては、文字数の観点から、かなり簡略に説明をしたのですが、実際に本件各条項を保証委託契約に含めた場合の有効性を判断するのは容易ではありません。判断に悩む場合は、一度弁護士に相談することをお勧めいたします。

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