ニューズレター


2016.Jul Vol.20

害虫が発生した場合の賃貸人の責任


不動産業界:2016.7.vol.20掲載

私が、賃貸している居住用物件の賃借人から、物件内に蟻が出たとの申し出がありました。なので、私は、急いで専門業者に依頼して駆除を行わせたのですが、完全には駆除できないみたいで、今でも蟻は発生しているようなのです。蟻が出た部屋は、複数ある部屋のうちの1部屋だけらしいのですが、賃借人の方は、「気持ち悪くてもう住めないから、引っ越し費用を払ってくれ。」とか「引っ越し先が決まるまで、実家に避難するから、前払いした賃料は返してくれ。」とかいろいろ要求してきます。これらの金銭は払わなければいけないのでしょうか。なお、物件自体には何か瑕疵があるわけではありません。


物件内に害虫が発生した場合には、賃貸人は、賃借人の使用収益に支障がないように一定の限度で害虫駆除義務を負いますが、この害虫駆除義務の履行としては、害虫駆除の専門家に依頼して駆除を行わせ、賃貸人として必要かつ可能な対応を行えば足りるとされておりますので、害虫の完全駆除を達成できなくても、害虫駆除の専門家に依頼して駆除を行わせたのであれば、賃貸人としての物件を使用収益させる義務に不履行はないといえます。
したがって、債務不履行を理由とする引っ越し費用、前払い賃料の返還請求については応じる必要はないと考えられます。

さらに詳しく

賃貸人は、賃借人に対して、本件物件を使用に適切な状態で使用させる義務を負っています(民法601条)ので、本件物件内に害虫が発生した場合には、賃借人の使用収益に支障がないよう、一定の限度で害虫駆除義務を負っていると考えられます。そして、この害虫駆除義務については、完全駆除を達成することが望ましいものの、害虫駆除の専門家に依頼して駆除を行わせ、賃貸人として必要かつ可能な対応を行えば足り、害虫の完全駆除を達成できなくても債務不履行にはならないと考えられます(東京地裁平成25年12月25日判決参照)。したがって、上記の事案では、蟻の発生は完全には防ぎ切れてはいないものの、急いで専門業者に依頼して駆除を行わせていることから、賃貸人として必要かつ可能な対応を行っているといえ、債務不履行はないものと考えらます。

上記の事案で、賃借人が要求する引っ越し費用や前払い賃料の返還請求は、いずれも賃貸人の債務不履行があることを根拠とする請求ですので、債務不履行がない以上、賃貸人にはこれらを支払う法的義務はありません。

上記の事案とは異なり、物件内の部屋の全てに害虫が発生し、専門業者による駆除を行ってもなお使用不能な状態である場合には、賃貸人の負う物件を使用収益させるべき義務が果たせない状態であると考えられますので、その場合には、専門業者に依頼して駆除を行っていたとしても、引っ越し費用や前払い賃料を返還する義務を負う可能性が高いですので注意が必要です。

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