ニューズレター


2017.Nov Vol.36

時効取得と登記の関係


不動産業界:2017.11.vol.36掲載

私(X)は、平成19年1月1日から10年以上にわたって土地を占有したので、時効の完成により所有権登記の手続をしようと考えていたのですが、登記簿を見たら、平成28年1月1付でAがYに売買を原因として土地の所有権移転登記をしていました。私はまだ登記を完了していないのですが、Yさんに土地の所有権を取得したことを主張できるのでしょうか。


まず、Xさんが10年間、所有の意思をもって、平穏、公然とAの土地を占有し、占有の開始時に善意無過失であれば、Aの土地所有権を時効によって取得できます。その上で、Yは、Xさんの時効が完成する前にAから土地を譲り受けた者ですので、過去の裁判例によれば、Xさんは登記を完了していなくても、Yに優先して所有権を時効取得できる可能性が高いと考えられます。但し、売買登記の日が例えば平成30年1月1日だった場合には、過去の裁判例によると、Yは時効が完成した後に土地の所有権を譲り受けた者ですので、Xさんは土地の所有権登記を完了していない限り、Yが優先的に所有権を取得することになると考えられます。


さらに詳しく

1 所有権の時効取得

他人の物を一定期間にわたって占有した場合、法律上の要件を満たせば、当該他人の物の所有権を取得することができます(「時効取得」といいます。)。

具体的には、「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者」(民法162条1項)又は「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったとき」(民法162条2項)は、他人の土地所有権を取得することができると定められています。

2 不動産の所有権と登記

Aが自己の所有する土地をXとYにそれぞれ譲渡した場合、Xは不動産登記法上の所有権移転登記を具備しない限り、Yに対して、所有権を取得したことを対抗できないのが原則です(民法177条)。対抗できないとは、つまり、所有権を取得できないことになります。

では、XがAの土地を時効によって所有権取得をした場合、Xは、所有権移転登記を具備しない限り、Aから土地を譲り受けたYに対して、所有権を取得したことを主張できないのでしょうか。この点については、最高裁昭和41年11月22日判決は、「時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたつては、単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであつて、この関係においては、結局当該不動産についていかなる時期に何人によつて登記がなされたかが問題となるのである。そして、時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し、第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては、その第三者に対しては、登記を経由しなくても時効取得をもつてこれに対抗することができるものと解すべき」と判示しています。

すなわち、裁判例は、他人の土地を時効によって取得した者は、①時効完成前の第三者に対しては登記を具備しなくても、所有権を取得したことを対抗できますが、②時効完成後の第三者に対しては、登記を具備しない限り、所有権を取得したことを対抗できないというルールを定立しました。

3 本件について

本件では、Xさんは、平成19年1月1日から10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然とAの不動産を占有し、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、平成29年1月1日経過時に時効が完成し、Aの不動産の所有権を取得します。

そして、平成28年1月1日に土地を譲り受けたYさんは時効完成前の第三者に該当する可能性が高いので、裁判例によると、Xさんは、所有権移転登記を具備しなくても、Yさんに所有権の取得を対抗できる可能性が高いと考えられます。

他方で、平成30年1月1日に土地を譲り受けたYは時効完成後の第三者に該当する可能性が高いので、裁判例によると、Xさんは所有権移転登記を具備しなければ、Yに所有権を主張することができない可能性が高いと考えられます。

第三者が時効の完成前か後に現れたのかによって、所有権移転登記を具備する必要があるかないかが大きく異なりますのでご留意ください。

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