ニューズレター


2024.Jan vol.110

相隣関係制度の民法改正について


不動産業界:2024.1.vol.110掲載

自宅の敷地と隣地の境界を調査することになったのですが、境界標の調査のためには隣地に入らないといけません。隣地に立ち入ってもいいのでしょうか。

また、老朽化のため、ライフライン設備を敷き直すことになったのですが、その際、隣地にライフラインを引き込む必要があります。隣地の人に拒まれたら、ライフラインを設置できないのでしょうか。


令和5年4月1日施行の民法改正により、隣地使用権が明文化され、障壁・建物の築造・修繕の目的だけでなく、境界標の調査・境界に関する測量等を目的とする場合についても、隣地使用権が明示的に認められることになりました。

また、ライフラインの設置のために他人の土地・設備を使用しなければならない土地所有者のライフラインの設置権・設備使用権についても明文化されました。

そのため、上記ご質問の場合、隣地への立入りや、ライフラインの設置が可能であると考えられます。以下、詳しくみていきましょう。

さらに詳しく

1.隣地使用権の明文化

旧民法209条1項は、土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができると規定していましたが、これには、①「隣地の使用を請求することができる」という文言の具体的な意味が不明確であり、隣地所有者が不明である場合には対応が困難になってしまう、②障壁・建物の築造・修繕以外の目的で隣地を使用することが制限されてしまい、土地の利用・処分を阻害しているとの批判がありました。

そこで、今回の民法改正により、民法209条が改正され、土地の所有者は、一定の目的のために必要な範囲内で、隣地を使用することができるものとされ、土地の所有者に、一定の隣地使用権が存在することが明文化されるとともに、障壁・建物の築造・修繕の目的だけでなく、隣地使用の必要性が類型的に高いとされる「境界標の調査・境界に関する測量」と「越境した枝の切取り」の場合についても、隣地所有権が存在することが明文化されました。

もっとも、改正民法は、隣地所有者・隣地使用者(賃借人等)の利益にも配慮しており、土地所有者が隣地を使用する場合、隣地使用の日時・場所・方法は、隣地の所有者及び隣地使用者のために損害が最も少ないようにしなければならず(新民法209条2項)、原則的に、あらかじめ、その目的・日時・場所・方法を、隣地の所有者・隣地使用者に通知しなければならないことも定められました(新民法209条3項。例外的に、あらかじめ通知することが困難なときは、事後に遅滞なく通知することでも足りるとされています。)。

また、隣地使用権が明文化されたといっても、法定の手続によらずに自力で執行することは禁止されていることから(自力救済の禁止)、隣地所有者が拒んでいるにもかかわらず、土地所有者が隣地の使用を強行することまで認められたわけではなく、そのような場合には、隣地を使用したい土地所有者は、隣地使用の妨害禁止を求める訴訟を提起し、判決を取得する必要があります。

2.ライフラインの設置権・設備使用権の明文化

さらに、今回の民法改正により、ライフラインの設置権・設備使用権も明文化されました。(民法213条の2)

これまでも、他人の土地や設備を使用しなければ各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者は、他人の土地への設備の設置や、他人の設備を使用することができると理解されていましたが、明文の規定がないため、設備の設置・使用に応じてもらえない場合や、所有者が不明の場合には、対応が困難といった課題がありました。

そのため、今回の改正により、ライフラインの設置権・設備使用権が明文化されるとともに、事前の通知等のルールが整備されました。

具体的には、上記隣地使用権と同様に、ライフライン設備の設置・使用の場所・方法は、損害が最も少ないものを選ばなければならず、あらかじめ、目的・場所・方法を、他の土地・設備の所有者・使用者に通知する必要があり、損害が発生した場合には、償金を支払わなければならないことなどが定められました。

隣地使用権や、ライフラインの設置権・設備使用権に関するお悩みがあれば、弁護士までご相談ください。

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