ニューズレター


2022.Jun vol.91

親が認知症の場合の物件管理


不動産業界:2022.6.vol.91掲載

私の父は、居住用建物を所有し賃貸していますが、最近は、認知症が進み、日常的な会話も難しい状況です。そんな中、父が所有し貸している物件の入居者が賃料を滞納するようになり、早々に賃貸借契約を解除して明渡訴訟を提起したいと思っています。この物件は、父が死亡した場合には私が相続をすることになるのですが、現在は父が賃貸人です。ただ、早く明渡訴訟を提起しなければ、このまま賃料滞納が続くかもしれません。何か手立てはありますか?


相続が発生していない現時点においては、賃貸人はあくまでお父様であり、質問者様は賃貸借契約を解除することはできません。

この場合は、裁判所に成年後見開始の審判を申し立て、成年後見人の選任を待ち、成年後見人に明渡訴訟を提起してもらうことが考えられます。なお、裁判所に認められれば、親族である質問者様本人を成年後見人として選任してもらうことが可能であり、その場合は、ご自身が成年後見人として明渡訴訟を提起することが可能です。

さらに詳しく

1.成年後見制度とは

認知症、知的障害等の理由で判断能力が低下した方は、不動産や預貯金などの財産管理や、介護施設への入所などの身上保護のために必要となる契約を一人で行うのが難しい場合があります。また、契約内容がよくわからないまま不利な内容の契約を結んでしまうなど、悪質商法の被害にあうおそれもあります。

成年後見制度とは、このように認知症や知的障害等の理由で判断能力が低下した方の財産管理や身上保護等を手助けするための制度です。

成年後見人に選任された人は、判断能力が低下した本人(成年被後見人)の代理人として、本人が所有している不動産や預貯金の管理、介護施設の入所契約の締結等身の回りの生活をサポートします。

2.成年後見制度を利用するには

成年後見制度を利用するためには、本人や親族が裁判所に後見開始の申立てをする必要があります。その際は、申立書とともに、必要書類として、戸籍謄本や医師の診断書等の所定の書類、資料を裁判所に提出しなければなりません。

3.成年後見人について

成年後見人は裁判所が選任することになるため、申立てをした方の希望どおりの人が成年後見人になるとは限りません。

成年後見人は、本人(成年被後見人)の生活・医療・介護等、身の回りの事柄にも目を配りながら、本人を保護・支援します。たとえば、本人の不動産・預貯金等を管理したり、本人の希望や生活の様子等を考慮して、必要な福祉サービスや医療が受けられるよう、利用契約の締結や費用の支払等を行います。また、成年後見人等はその事務について家庭裁判所に報告する等して家庭裁判所等の監督を受けることになります。

このように、成年後見人は、本人の保護・支援のため重要な職務を担うことになるため、家庭裁判所は、候補者とされる親族が成年後見人として適格であるか否かについて、面接、調査することになります。たとえば、成年後見人候補者が本人と疎遠であったり、親族間に意見対立がある場合等には、候補者とされる親族が成年後見人に選任されない可能性が高いでしょう。なお、親族が成年後見人に選任されたとしても、これを監督する成年後見監督人も選任されるケースもあります。

実際のケースでは、弁護士等の専門家が成年後見人に選任されることが多く、令和3年の実績では、弁護士等の専門家が選任されるのは全体の8割程度、親族が選任されるケースは全体の2割程度となっているようです。

本件では既に認知症が進行してしまった方の場合であるため利用が難しいですが、自身の判断能力が低下した場合に備えて、前もって後見人となってほしい人と任意後見契約を結ぶ任意後見制度もあります。

自分がいざ判断能力が低下したときの財産管理について、周りに迷惑をかけないためにも、ご自身が元気なうちに専門家に相談し、任意後見契約を締結しておくなどの準備を整えておくことが重要です。

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