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不当労働行為の6つの種類と事例をわかりやすく解説!罰則はある?

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

不当労働行為とは会社が労働組合の活動を妨害することをいい、労働組合法により禁止されています。

この行為は団体交渉拒否など、団体交渉の場で発生するイメージが強いかもしれませんが、組合への経費援助の問題など、それ以外の組合活動においても生じる危険性が潜んでいます。

不当労働行為をしたときは会社に対し重いペナルティが課されるため、どのような行為が不当労働行為にあたるのか、前もって理解しておくことが重要です。

このページでは、法律が禁止する6つの不当労働行為と具体例や、不当労働行為を行った場合の罰則などについて解説していきます。

不当労働行為の6つの種類と事例

不当労働行為とは、会社が労働組合の活動を妨害することをいいます。

憲法が労働者に保障する権利(団結権・団体交渉権・団体行動権)を実質的に保護するため、労働組合の権利を侵害する行為は「不当労働行為」として、労働組合法7条により禁止されています。

具体的には、以下の6つが法律上不当労働行為にあたるとされています。

  • 不利益取扱い
  • 黄犬契約
  • 団体交渉拒否
  • 支配介入
  • 経費援助
  • 報復的不利益取扱い

以下でそれぞれの内容と具体例について見ていきましょう。

①不利益取扱い

不利益取扱いとは、労働組合員であることや、労働組合に加入したり結成しようとすること、正当な組合活動をしたことを理由に、社員に解雇など不利益な扱いをすることをいいます。

この不利益取扱いとは、解雇だけでなく、社員にとって不利益となる配置転換、降格、減給、懲戒処分、福利厚生における差別、仕事を与えないなどの嫌がらせも含まれます。

組合員であることを理由に職場で差別を受けるようでは、誰もが組合への加入をちゅうちょせざるを得ず、組合活動もおよび腰になってしまいます。そのため、労働組合であること等を理由に、会社が不利益な取扱いを行うことは、不当労働行為として禁止されています(労組法7条1号)。

不利益取り扱いの事例

不利益取扱いに該当するケースとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 労働組合員であることを理由に解雇や雇止め、本採用拒否、退職強要を行う
  • 労働組合に加入したり、結成しようとしたりしたことを理由に降格する
  • 組合活動が困難な場所への配置転換や出向を行う
  • 組合員であることを理由に基本給や手当、賞与などを減額する
  • 組合員だけ懇親会に参加させない
  • 組合員だけ人事評価を厳しく採点する

会社が社員の能力不足や勤怠不良など、労働組合の活動とは全く無関係の理由で解雇や降格などの処分を行ったのであれば、不当労働行為にはあたりません。組合から不当労働行為だと主張されたときは反論する必要があります。

ただし、能力不足を理由に解雇などした場合でも、社内での組合活動を一切禁止するなど使用者の日頃の言動から組合を敵視していることが明らかである場合は、裁判所より不利益取扱いにあたると評価される場合があります。普段から組合への嫌悪の発言や態度は控えるべきでしょう。

②黄犬契約

「黄犬契約」とは、会社が労働者を雇用する際に労働組合に加入しないことや、すでに加入している場合は脱退することを雇用条件として契約することをいいます。英語のyellow dog(ひきょうな裏切り者)を由来としています。

典型例として、社員を雇用する際に労働組合に加入しないことを約束させる誓約書を書かせるケースが挙げられます。黄犬契約は労働組合への不加入・脱退を強いることであり、労働組合の団結権を侵害することになり、不当労働行為として禁止されています(労組法7条1号)。

黄犬契約の事例

黄犬契約にあたるケースとして、以下のような事例が挙げられます。

  • 入社時に「労働組合に加入しない」「組合活動を行わない」という誓約書を書かせた
  • 応募者に「労働組合に加入しないなら採用する」と伝えた上で雇用した
  • 応募者が合同労組に加入していることを嫌って、面接時に脱退を求めた上で雇用した
  • 試用期間中の労働組合の加入を禁止した

③団体交渉拒否

団体交渉拒否とは、会社側が組合による団体交渉の申し込みを正当な理由なく拒むことをいいます。

会社が交渉のテーブルに着かなければ、労働組合の権利を保障した意味がなくなるため禁止されています(労組法7条2号)。

また、団体交渉拒否は交渉そのものを拒否するだけでなく、形式的には応じているが誠実に交渉しないことも含まれます。拒否すると会社に罰則が課されるためご注意ください。

ユニオンや自社の労働組合から団体交渉を申し込まれたときは、基本的に応じる必要がありますが、以下のケースであれば、正当な理由があると判断されて拒否できる可能性があります。

  • 子会社社員からの団体交渉
  • 交渉を重ねていてこれ以上交渉しても進展の見込みがない
  • 組合側のつるし上げや暴力行為等により平和な話し合いが期待できない
  • 裁判で解決済みの問題の交渉を求められた
  • 交渉内容が義務的団交事項ではない
  • 組合が弁護士の交渉の参加を拒否したなど

団体交渉拒否の事例

団体交渉拒否に当たるケースとして次が挙げられます。

  • 業務が多忙であることなどを理由に長期間団交に応じない
  • 直接会わずに文書や電話での回答のみとする
  • 会社の都合の良い開催場所にこだわり遠方での団交を拒否する
  • 交渉議題に関する資料の提示を具体的な理由を説明せずに拒む
  • 実質的な交渉権限のない会社担当者が団交に出席し、「持ち帰って検討する」「上と相談する」などの回答に終始する
  • 組合の要求を拒否する際に具体的な理由を説明したり資料の開示をしたりしない
  • 上部団体の同席を理由に団体交渉を断る

会社に求められているのは団体交渉への誠実な対応であり、組合の要求に強制的に応じるべき義務までは負いません。最終的に合意できなくとも誠実に交渉した結果であれば、団体交渉拒否には当たりません。

④支配介入

支配介入とは、会社が労働組合を支配したり、労働組合の結成や運営に介入することをいいます。例えば、不利益な扱いをほのめかして組合を会社の言いなりにすることや、組合活動を妨害すること、行き過ぎた組合批判、組合からの脱退勧奨などが挙げられます。

支配介入の事例

支配介入にあたるケースとして、次が挙げられます。

  • 労働組合の役員の選任に会社が口を出す
  • 労働組合への加入や組合活動への参加の有無を問うアンケート調査を行う
  • 社長や部長などが、社員が集まる会合で組合を非難する
  • ストライキを行えば組合員を懲戒処分することをほのめかす
  • 上司が部下の組合員に対し、組合から脱退すれば昇格させると持ちかける
  • 労働組合結成の中心人物への解雇・配置転換
  • 従来の組合には組合事務所を貸しているのに、新たに結成された組合には貸さない

支配介入は組合の結成や運営への干渉が行われればその時点で成立します。

例えば、組合の脱退勧奨が行われた際、行われた時点で支配介入が認められ、その結果実際に社員が脱退したかどうかは関与しません。

⑤経費援助

「経費援助」とは、会社が労働組合の運営費用を援助することをいいます。

経費援助は組合にとってお得であり、組合活動の妨害にならないようにも見えますが、会社がお金を出すと組合として強くモノが言えなくなり、会社に飼いならされてしまうおそれがあります。そのため、会社が組合に経費援助を行うことは禁止されています(労組法7条3号)。

ただし、例外として勤務時間中の組合活動への給料の保証や、ストライキ中の給料の保証、組合の福利厚生資金への寄付、最小限の広さの組合事務所の貸与は認められています(同法ただし書)。

つまり、組合活動を円滑に行うための支援は認められますが、組合が会社に依存してしまうような行き過ぎた経済的支援は認められません。

経費援助の事例

経費援助にあたるケースとして、以下が挙げられます。

  • 組合事務所で使う備品代や電話代を会社が負担する
  • 組合会議のための出張旅費を組合員に支払う
  • 組合専従社員の給料を会社が負担する
  • 新築祝金や出産祝金といった名目で組合役員に高額のお金を支払い、組合が上部団体に加盟することを妨害する
  • 組合の役員に対し役員就任前の平均給与と現在の給与との差額を手当として毎月支払う
  • 業務委託料という名のもと、他の組合に対し毎月お金を支払う

⑥報復的不利益取扱い

報復的不利益取扱いとは、以下を理由に会社が労働者に不利益な扱いをすることをいい、不当労働行為として禁止されています(労組法7条4号)。

  • 労働者が労働委員会に対して不当労働行為の救済申立てをしたこと
  • 労働者が中央労働委員会に不当労働行為の命令について再審査の申立てをしたこと
  • 労働委員会がこれらの申立てについて審査(調査、審問)し、または労働争議の調整をする際に労働者が証拠を提出したり、発言したりすること

労働委員会に対し、不当労働行為の救済を申し立てたり、審査や調整の場で発言したりしたことへの報復行為を禁止することで、労働者の権利をより厚く保護する目的があります。

この「不利益取扱い」とは、解雇のほか、配置転換、降格、減給、人事評価の低査定、嫌がらせなどの行為が挙げられます。

報復的不利益取扱いの事例

報復的不利益取扱いにあたるケースとして、以下が挙げられます。

  • 労働委員会に不当労働行為救済の申立てをしたことを理由に解雇した
  • 不当労働行為の命令について再審査申立てをしたことを理由に遠方に転勤させた
  • 不当労働行為の審査において、会社側の証人として出席した社員はその時間分を有給休暇として扱う一方、組合側の証人は無給とした
  • 組合が救済申立てを行ったことに対し、組合を一方的に批判する意見文を社内に掲示し、申立ての取下げを強制した
  • 労働委員会に労働争議のあっせんを申請した社員を批判し、申請を取り下げるよう圧力をかけた

報復的不利益取扱いにあたるかどうかは、労働者による救済申立てが認められたか否かにかかわらず、申立て後の会社の行為を踏まえて評価されます。

不当労働行為を行った場合の罰則

不当労働行為を行ってしまった場合でも、法律上の刑事罰はありません。よって、不当労働行為を行ったからといって逮捕されたり懲役刑が科されたりすることはありません。

ただし、会社として次のようなペナルティが課されるおそれがあるため注意が必要です。

労働委員会による救済命令に違反した場合

団体交渉の申し入れを正当な理由なく拒否するなど、会社が不当労働行為に当たり得る行為をした場合、労働組合は都道府県の労働委員会に対して不当労働行為の救済申立てをすることが可能です。これを「救済申立て制度」といいます。

労働委員会により不当労働行為にあたるかどうかの審査が行われ、該当すると判断された場合は、会社に対し不当労働行為をストップするよう救済命令が出されます。

労働委員会の救済命令に従わなかった場合は、以下の罰則が課される可能性があります。

  • 救済命令が労働委員会による手続きのみで確定した場合

    救済命令に不服がある場合は、会社側は裁判所に「救済命令の取消訴訟」を起こすことができます。これを起こさずに、労働委員会による手続きのみで救済命令が確定した後に、救済命令に違反した使用者は、「50万円以下の過料」に処されます。

  • 救済命令を正当と認めた裁判所の判決が確定した場合

    救済命令の取消訴訟が起こされて、裁判所により救済命令は正当であるとの確定判決が出されたが、救済命令に違反した使用者には、「1年以下の禁固もしくは100万円以下の罰金刑」が科されます。

損害賠償・慰謝料請求

不当労働行為によって労働組合や社員個人が損害を受けた場合は、民法上の不法行為にあたり、損害賠償や慰謝料の支払い義務を負うことがあります(民法405条1項、709条)。

特に解雇が不当労働行為にあたる場合には、社員は解雇期間中に発生した給与(バックペイ)も請求できるため、損害賠償金が高額となる傾向があるため注意が必要です。

不当労働行為とならないためにも、企業労務に詳しい弁護士にご相談ください

このページでは、不当労働行為の種類や具体例についてご紹介してきました。

労働組合の活動は法律で厚く保護されているため、会社において組合活動に対し何らかの処分を行う場合は、不利益な扱いなどの不当労働行為にあたらぬよう注意する必要があります。

もっとも、不当労働行為にあたるかどうかを判断するには高度な法的知識が求められます。

労働組合への対応にお悩みの場合は、企業労務を得意とする弁護士法人ALGにぜひご相談ください。

会社ごとの事情を詳しくお聴きした上で、不当労働行為にあたるかどうかの判断や、組合活動・団体交渉への対応方法などについて的確にご提案させていただきます。

この記事の監修

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弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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