団体交渉
#団体交渉
監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員
団体交渉は憲法28条で保障された労働者の重要な権利です。賃金や労働時間などの労働条件を会社と交渉する正当な手段であり、会社は誠実に対応する義務を負っています。
団体交渉の過程で会社に不誠実な対応があれば、不当労働行為とみなされる可能性があります。不当労働行為と判断されれば、会社に大きな不利益が生じるおそれもあるため、慎重に対応しなければなりません。
本稿では、団体交渉の進め方や注意点について詳しく解説していきます。
目次
団体交渉の進め方や流れは?
団体交渉は組合の申し入れから始まり、予備折衝、事前準備を経て交渉が実施されます。
交渉は、概ね1〜2ヶ月に1回のペースで行われ、平均して3〜4回の交渉で終結することが一般的です。
団体交渉の全体の流れは以下のとおりです。
- 労働組合から団体交渉の申し入れ
- 団体交渉前の予備折衝
- 団体交渉の事前準備
- 団体交渉の開催
- 団体交渉の終結
①労働組合から団体交渉の申し入れ
団体交渉は、労働組合からの団体交渉の申し入れによって始まります。
「団体交渉申入書」や「要求書」といったタイトルの書面が、郵送や直接持参で会社に届くことがほとんどです。
これらの書面には、団体交渉を希望する日時や場所、労働組合からの要求事項などが書かれています。
また、社員が労働組合に加入したことを知らせる「組合加入通知書」も同時に送付されることがあります。
会社は書面の内容を確認し、労働組合の要望を正確に読み取り、今後の対応を検討する必要があります。
なお、必要に応じて組合員名簿や組合規約の提出を求めることは可能です。
ただし、これらの書類を提出しないことをもって団体交渉を拒否することはできません。
その他にも、次のとおり確認すべきことがあります。
どこから申し入れられたか
交渉相手は、自社の社員で構成された社内労働組合とは限りません。
社員が個人で加入する外部の合同労働組合(ユニオン)の場合もあります。
まずは、申し入れ元の組合やその上部団体の名称を調べ、組織規模や事例、活動方針などを詳しく確認しましょう。
組合の性質や方針は、団体によって異なります。
金銭解決を重視する組合や、要望を押し通すために過激な行動にでる組合など様々です。
相手がどのような方針を持ち、どういった交渉を得意とするのかを事前に把握しておくことで、交渉に向けた適切な戦略を立てやすくなります。
組合を結成したのか
書面の題名が「組合加入通知書」の場合は、社員が外部の労働組合に加入したことを意味します。
「組合結成通知書」の場合は、社員が外部の労働組合に加入し、社内にその支部を設立したことを表します。
一方、書面の題名が「組合結成通知書」であった場合は、社員が外部の労働組合に加入し、社内にその支部を設立したことを表します。
結成型では組織拡大を図るため、社内でビラ配りなど組合活動を行う可能性があるため、注意深く監視する必要があります。
組合員に退職者が含まれているか
組合加入通知書や組合結成通知書には、労働組合に加入した社員の名前が書かれています。
当該社員が会社に在職中なのか、退職済みなのかを確認することが必要です。
退職済みの社員であれば、未払い残業代などが争点となることが多く、金銭面の折り合いがつけば、比較的短期間で解決できるケースが多いです。
対して、在職中の社員の場合は、給与アップや労働環境の改善などが争点になりやすく、長期化する傾向にあります。
当該社員の待遇だけを改善するのは、組合に未加入の社員との公平性を考えると不適切となる場合もあるため、より慎重に検討する必要があります。
さらに詳しく解雇した元従業員からの団体交渉に応じる義務はある?要求されている事項は何か
組合から送付された書面を精査し、要求内容を正確に把握しましょう。
たとえば、解雇無効といった個別の組合員の問題にとどまるのか、賃金制度の変更や賞与の増額など、社員全体へ波及する制度上の問題であるのかによって解決方針は異なります。
なお、賃金や労働時間、解雇などの「労働条件やその他の待遇」に関する内容は義務的交渉事項といい、会社は誠実に対応する義務があります。
一方で、義務的団交事項に該当しない任意的団交事項については、会社が拒否したとしても違法ではありませんので、可能な範囲で対応すればよいでしょう。
交渉義務を負う義務的団交事項の具体的な分類などについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
さらに詳しく団体交渉の協議事項とは?②団体交渉前の予備折衝
団体交渉の日時や場所などの条件は、組合の要求通りにする必要はありません。
交渉をスムーズにするためにも、以下の項目について「予備折衝」を実施します。
- 開催日時
- 開催場所
- 出席者
予備折衝で妥協すると、交渉の場で会社が不利になる可能性もあるため慎重に調整しましょう。
合意内容は口約束ではなく、書面に残して双方が確認できるようにしておきます。
後から「ルールが違う」といった混乱を招かないよう対策しておくことが大切です。
団体交渉の開催日時
団体交渉の日程は、出席者の都合がつかないなど正当な理由があれば、組合が指定した日時の変更を求めることは可能です。
代わりの候補日を提示する際は、組合の指定日から何週間も期間があかないようにしましょう。
過度な先延ばしは団体交渉拒否とみなされ、不当労働行為となる可能性があります。
可能な限り近い日程を提案すべきでしょう。
また、組合側が就業時間中の開催を求めてくるケースもありますが、拒否しても問題ありません。
就業時間内の開催は給与支払の有無といった別問題が生じてしまいます。
「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づけば、給与の支払いは不要ですが、無用なトラブルを避けるためにも、最初から終業時刻後に設定しておきましょう。
なお、協議が長引き議論が空転しないよう、交渉の所要時間は2時間程度にすることをおすすめします。
団体交渉の開催場所
団体交渉の開催場所についても日程と同様、組合からの指定に必ずしも従う必要はなく、双方が参加しやすい場所に変更を申し出ることも可能です。
開催場所として社内会議室を候補にする場合がありますが、他の社員への心理的影響や業務妨害の可能性を踏まえて、利用は控えるべきでしょう。
組合事務所を指定された場合には、第三者の介入や協議の長時間化が懸念されます。冷静に議論を進めるには外部の会議室を利用するのがベストといえます。
外部の会議室の費用については、最初から会社側で全額負担することをおすすめします。
これは、費用を折半にすると、コスト削減を理由に組合に有利な施設へ誘導される可能性があるためです。
団体交渉の出席者
組合が代表者の出席を強く求めるケースもありますが、法的には団体交渉に代表者の同席は義務づけられていません。
そのため、出席者は代表者ではなく人事部長などで問題ありませんが、交渉内容に対して一定の決定権をもつ立場である必要があります。
もし、決定権をまったくもたない担当者が出席すれば、終始回答を拒む対応となり、不誠実団交にあたる可能性があります。出席の人選は慎重に行わなければなりません。
会社側の出席人数は3名程度が一般的です。組合側にも同程度の人数制限を求めることも可能です。
人数を無制限とすると、大勢の組合員に囲まれ、冷静な協議が難しい状況に陥る可能性も考えられます。双方3~5名程度での開催を提案すべきです。
なお、回答書に当日の出席者名まで記載する必要はありません。出席人数のみ記載しておけばよいでしょう。
③団体交渉の事前準備
団体交渉の事前準備は必ずしておきましょう。
組合の要求に対する会社の方針やその根拠となる資料準備等がなければ、当日の話し合いで的確に回答できません。
要求に関する事実関係も事前に調査しておかなければ、真偽不明のまま交渉に臨むことになり、会社は不利な状況となり得ます。
団体交渉に入る前に、以下の準備を行っておきましょう。
- 事実関係の確認
- 回答書の作成
- 想定問答集の作成
- 出席者の意思の統一
- 議事録作成・録音の準備
事実関係の確認
労働組合が要求する事項について、正確な事実関係の確認を行うことが必要です。
残業代の支払い要求であれば、時間外労働の有無、ある場合にはその時間を確定する必要があります。
また、解雇の撤回を求めるものである場合は、解雇前の勤務状況や、どのような理由で解雇したのかを調査しなければなりません。
さらに、ハラスメント問題であれば、加害者への事情聴取等を行うことになります。
事実確認をしておけば、組合側から誤った主張がなされても、証拠をもとに冷静に反論でき、会社が交渉の主導権を握ることができます。
回答書の作成
申入書に書かれた組合の要求事項をよく検討した上で、回答書を作成し送付しましょう。
回答書を作成することで会社の意向を明確に伝えることができ、団体交渉に誠実に応じている証明にもなります。
回答書には以下のような内容を書き込みます。
- 団体交渉に応じる意思
- 団体交渉の日時・場所に関する回答
- 団体交渉の出席者に関する回答
- 今後の連絡窓口
- 要求事項に対する回答
要求事項が不明確な場合は、その点を明らかにするよう説明を求めても構いません。
組合が指定した期限に間に合わない場合でも、まずは「交渉に応じる意思がある」旨を記載した回答書を速やかに送付します。
回答書は1週間程度を目安に送るようにしましょう。
もし、回答期限が過ぎても何ら連絡がなければ、不誠実な対応と判断される可能性もあります。
想定問答集の作成
労働組合からの要求事項を踏まえて、当日の組合からの主張や質問を想定し、回答内容やその根拠について記載した想定問答集を作成しておきましょう。
問答集があれば、当日の回答方針が明らかになり、不正確な説明や失言を防ぐことができます。
また、会社側の回答に組合が反論してくることが予想される争点についても、労働法や裁判例などを調査したうえで、回答の準備をしておくことが必要です。
出席者の意思の統一
申入書の内容を踏まえて、想定される質問やそれに対する会社の方針を出席者の間で意思統一しておくことが大切です。
例えば、未払い残業代トラブルで、裁判になれば会社側が敗訴する可能性が高い場合は、団体交渉内で問題を解決するのが適切です。
この場合、どのぐらいの和解金を支払うのかを検討し、会社側の考えを一つにまとめておく必要があります。
なお、団体交渉の場で各々が発言すると回答内容に一貫性がなく、不誠実な回答として不当労働行為と主張されるおそれがあります。
事前に発言者を決めておき、他の出席者は発言を控えるようにしておいた方がよいでしょう。
議事録作成・録音の準備
団体交渉中の発言を巡って「言った・言わない」の問題に発展する可能性もあるため、交渉開始前に録音する旨を組合側に伝えましょう。
録音することで、相手の暴言や威圧的な態度への牽制となり、冷静な話し合いを促す効果も期待できます。
機器トラブルに備えて、レコーダーは複数準備しておいたほうがよいでしょう。
録音だけでなく、交渉内容をまとめた議事録を作成する場合もあります。
議事録は裁判になった際の重要な証拠となるため、正確な記録を作成しておきましょう。
ただし、組合側が作成した議事録に署名を求められた場合は注意が必要です。
双方の認識にズレが生じている可能性もあるため、組合側の議事録に安易に署名することは避けるべきです。
④団体交渉の開催
団体交渉当日の主な流れは以下のとおりです。
- 会場の設営
- 組合側の出席者の入室
- 団体交渉の実施
会場の設営
団体交渉当日は遅くとも開始30分~1時間前には到着し、会場の設営を行いましょう。
まずは録音機材の設置を行い、レコーダーの動作確認や電池残量やマイクの感度をテストします。
机の配置は、双方が対面する形式で、中央に十分な距離を保てるよう設置します。
会社側の背後に適度なスペースを確保しておけば、協議中の離席もスムーズになります。
また、資料を広げるスペースを確保し、不要な物があれば全て片付けておきましょう。
余裕を持って設営することで、落ち着いて対応でき、隙のない会場にできるでしょう。
組合側の出席者の入室
交渉の開始時刻になったら、組合側の出席者に入室してもらい、事前に協議した人数であるか確認しましょう。初回の交渉では、名刺交換を行う場合もありますが、組合側が拒否した場合には強制はできません。
交渉開始前に、録音の承諾を得ておきましょう。
組合側が録音を希望することも多く、その場合はそれぞれで録音の記録をとります。
団体交渉では場をコントロールするために威圧的な態度をとる組合もありますが、毅然として冷静に対応するようにしましょう。
団体交渉の実施
組合の担当者から要求の概要についての説明を受け、それに対して会社側が準備してきた回答や資料の提示を行います。
回答書を作成しているならば、組合側へ渡してもよいです。もし組合から譲歩の提案があれば、さらに譲歩が可能なのか、もしくは譲歩の限界なのかの見極めも必要です。
会社には誠実交渉義務があるので、交渉の場で真摯な対応を求められます。
しかし、事前に挙がっていない交渉事項に関する質問や主張については、安易に回答すると会社に不利益が生じる可能性があります。この場合は持ち帰っての検討としましょう。
⑤団体交渉の終結
団体交渉の結果、合意に至って終結する場合もあれば、合意には至らず交渉決裂となる場合もあります。
合意に至った場合
団体交渉で合意が成立した場合は、録音していたとしても口頭で済まさず、必ず合意書など書面を作成しましょう。書面には団体交渉当事者として労働組合だけでなく、社員にも署名・押印してもらう必要があります。
また、類似の要求の再発を防ぐために、「清算条項」を入れておくことも大切です。
清算条項があれば、合意書に定めた以外の義務が会社にないことを明確にできます。
合意内容によっては、他の社員に漏れると困る場合もあるため、「口外禁止条項」も入れておくべきでしょう。その他、解決後も会社への不満をSNSに投稿するなどの可能性もあります。
このような懸念があれば、労働組合と社員それぞれに会社批判を行わないとする「誹謗中傷禁止条項」を入れておくことが必要です。
交渉が決裂した場合
団体交渉は一度では合意に至らず、何回か開催して解決に至ることが通例です。
1回目の交渉で合意できなかったとしても、当日の交渉内容や2回目の交渉で回答すべき事項等を議事録でまとめて記録しておきましょう。
なお、労使の意見が対立して団体交渉が難航した場合に、労働組合や社員が以下のような手段をとる可能性があります。
- 街宣活動やビラ配り等の組合活動
- 紛争調整委員会によるあっせん手続
- 労働委員会への不当労働行為の審査申立て
- 労働基準監督署への申告
- 労働審判や訴訟などの法的手続き
このような場合は迅速かつ専門的な対応が求められるため、組合や社員の行動を意識しあらかじめ心づもりしておく必要があります。
団体交渉を進めるうえで注意すべきポイント
団体交渉は単に誠実であれば良いわけではなく、戦略的に対応することが不可欠です。
会社が不利な立場にならないよう交渉を進めるためには、以下のポイントを徹底しましょう。
- 正当な理由なく先延ばしや拒否をしない
- 粘り強く交渉を続ける
- 相手の発言にひるまない
- 団体交渉の場で安易な約束はしない
また、無視や一方的な打ち切りは不当労働行為となる可能性があります。
団体交渉でやってはいけない対応の詳細は、以下の記事もあわせてご確認ください。
正当な理由なく先延ばしや拒否をしない
団体交渉は憲法や労働組合法で保障された権利であり、会社には誠実に応じる法的義務があります。
正当な理由なく団体交渉を拒んだ場合は、不当労働行為として労働委員会の救済命令や行政指導の対象になります。
また、団体交渉に応じても意図的に日程調整を遅滞させたり、不合理な理由で先延ばしした場合も誠実交渉義務違反として不当労働行為になるリスクがあるでしょう。
ただし、正当な理由があれば団体交渉の拒否や延期が認められます。
正当な理由には以下のケースが挙げられます。
- 義務的交渉事項(労働条件等)以外の要求
- 組合側に暴力的な言動やルール違反がある
- 団体交渉申入れの方法に不備がある
団体交渉の拒否が認められる正当な理由や罰則等については、以下の記事で詳しく解説しています。
さらに詳しく団体交渉は拒否できる?粘り強く交渉を続ける
団体交渉は心身ともに負担の大きい業務ですが、安易に妥結せず、粘り強く交渉することが大切です。
会社が負う誠実交渉義務とは、誠意を持って協議を行う義務であり、必ずしも組合の要求に応じたり譲歩することを強制するものではありません。
組合からの要求が合理性に欠け不当なものであれば、毅然として拒否すべきでしょう。
ただし、ただ「できない」とだけ回答するのではなく、具体的な根拠を示して論理的に説明しなければなりません。感情的な対立が深まれば理解が得られにくい場面もありますが、冷静に事実に基づく説明を繰り返しましょう。
なお、説明内容に虚偽が含まれていた場合には不当労働行為と判断されるリスクがありますので、情報の正確性には注意が必要です。
相手の発言にひるまない
団体交渉の場で、あえて高圧的な言動を繰り返す労働組合も存在します。
こうした態度は譲歩を引き出すための戦術であるため、相手の発言に萎縮せず、冷静に対処しましょう。
また、「その場で決断しろ」等と凄まれたとしても持ち帰って検討することも問題ありません。
この際も、録音や回答書の事前準備が効果を発揮します。
相手の発言や要求に対し動揺せず、根拠や事実に基づく理性的な交渉を進めるようにしましょう。
相手の感情論や言動に飲まれないようにすることが大切です。
団体交渉の場で安易な約束はしない
団体交渉の場で、思いつきや組合の勢いに負けて、その場で約束してしまうということがあってはいけません。会社に不利な条件での合意となれば、取り返しがつかない事態になるおそれがあります。
たとえ口頭であっても安易な約束は決してしてはいけません。
組合側が書面を用意してくるケースもありますが、組合が作成した文書は、組合側にとって有利な内容で作成されていることが多いです。
よく検討せずその場でサインすることはやめておきましょう。
議事録でも覚書でもタイトルはどうであれ、労働組合との間で合意した文書は、労働協約となり強い効果をもつ書面となります。文書の提示があればその場での回答は避け、持ち帰って検討する対応としましょう。
団体交渉の対応を弁護士に相談するメリット
事前準備はもちろん大切ですが、労働問題のプロである組合を相手に、会社が完璧に対応するのは難しいかもしれません。組合には団体交渉の経験や労働法の知識などが豊富な担当者も多いため、不用意な発言があれば交渉の主導権を握られる可能性も十分考えられます。
不利な条件を飲まされるリスクを避けるためにも、早めに弁護士へ相談しておくことをおすすめします。
弁護士に依頼することで、交渉の方針を法的観点から整理し、合理的な着地点を見いだすことができれば、当日の交渉も冷静に対処できるでしょう。
また、回答書等の書面作成や交渉への同席といったサポートを依頼すれば、心強い後ろ盾となります。
団体交渉を弁護士に依頼するメリットの詳細は、以下の記事をご覧ください。
団体交渉の誠実交渉義務に関する裁判例
事件の概要
(平成28年(行ウ)第392号・平成30年1月29日・東京地方裁判所・第一審)
学校法人Yと労働組合Xは平成20年から平成23年まで、1年あたり4、5回の団体交渉を行っていました。
平成22年11月までの団体交渉では、X組合の出席者は5~7名でした。
しかし、9名で出席したところ、Y法人は出席者が7名より多い場合には次回以降の団体交渉を拒否すると主張しました。
その後の団交でX組合の出席者が8名であったことからY法人は、X組合の質問に回答しないまま退席しました。
この対応を受け、X組合は正当な理由のない団体交渉拒否であるとして東京都労働委員会(都労委)に救済を申し立てました。
申立に対し、都労委は団体交渉を拒否してはならない旨の命令を発しましたが、Y法人はこれを不服とし、再審査を申し立てました。再審査請求が棄却されたため、Y法人は命令取り消しを求めて提訴しました。
裁判所の判断
裁判所は、団体交渉に出席する人数や誰を出席させるのかは、当事者間の自主的な判断に委ねられるべきものであるとしています。
その上で、Y法人がX組合の出席者を7名に限定した点については、客観的な必要性や合理性がなく、これを理由に団体交渉の議題に入らないとの態度をとることは許されないとしました。
加えて、人数制限の必要性を問うX組合の質問に対し、誠実に回答しない対応は誠実交渉義務に違反すると判示しています。
人数制限に応じなかったことを理由に退席したY法人の行動は、正当な理由のない団体交渉の拒否であり、不当労働行為にあたるとして、裁判所は救済命令の取消請求を棄却しました。
ポイント・解説
団体交渉において、出席人数や出席者について要望を述べることや協議を求めること自体は許されています。
本件裁判においても、団体交渉のルールを当事者双方による協議によって作ることは望ましいものと考えられるとされています。
しかし、その求めをそのまま応諾しなかったからといって、それを理由に団体交渉に応じないとすることは許されません。もし、人数制限することについて客観的な必要性や合理性があるのであれば、具体的に説明することが必要です。
特段の事情なく、開催条件等に固執するのであれば、そのような対応は誠実交渉義務に違反する可能性があります。団体交渉を行うにあたって誠実交渉義務に反するおそれがあるのであれば、弁護士へ事前に確認するようにしましょう。
団体交渉の進め方は労働問題に精通した弁護士にご相談ください
団体交渉を円滑に進めるには、入念な事前準備と冷静な交渉、記録の徹底等が不可欠です。
しかし、団体交渉のプロである労働組合を相手に、会社が単独でこれらのプロセスを遂行するのは容易ではありません。
対応を1つ間違えれば、不当労働行為として法的リスクを問われる可能性もあり、慎重な対応が求められます。
弁護士であれば、事案ごとの法的リスクを精査し、会社の不利益を最小限とする交渉戦略を組み立てることが可能です。
弁護士法人ALGは、団体交渉を含めた労働問題に経験豊富な弁護士が多数在籍しており、貴社の状況に応じた柔軟な法的サービスを提供いたします。
団体交渉の事前準備や交渉の同席、書面作成など幅広く対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修
弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員
- 保有資格
- 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
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